漫画でもドラマでもない、舞台版らし
い作品を~オリジナル新作ミュージカ
ル『東京ラブストーリー』製作発表会
見レポート

ミュージカル『東京ラブストーリー』の製作発表会見が2022年8月2日(火)、東京都内で行われた。
“恋愛の神様”と称される人気漫画家・柴門ふみが1988年に発表した漫画『東京ラブストーリー』は、その後ドラマ化され、日本のみならず、アジアでも爆発的な人気を集めた。原作はバブル時代の東京を舞台としているが、今回のミュージカル版では設定を2018年春から19年春という設定に置き換え、コロナ禍前、希望を持って東京で暮らす完治、リカ、三上、さとみの4人を中心とした恋愛模様を描いていく。
この日は、音楽を手がけるジェイソン・ハウランド、演出の豊田めぐみ、出演する柿澤勇人、笹本玲奈、夢咲ねね、濱田龍臣、唯月ふうか、熊谷彩春、綺咲愛里、高島礼子が登壇(※廣瀬友祐は体調不良、増子敦貴は新型コロナウイルスの陽性反応が確認されたため欠席だった)。
柿澤勇人
会見の冒頭、本作の楽曲5曲が初披露された。
 
地元愛媛の今治から上京してきた、永尾完治、三上健一、関口さとみの3人は、さまざまな人が行き交う東京で生活を送る。「この街で生きる」では、そんな1日の始まりを爽やかなメロディに乗せて歌う。

歌唱披露の様子
完治は赤名リカと出会い、2人の物語を紡いでいくが、その序章として観客を物語に誘う「願いの星」。カップルとなったリカと完治、さとみと三上だが、リカとさとみがそれぞれ彼と離れ、自分の道に進みだすことを歌った「私らしく」。自由奔放にふるまうリカと、振り回される完治のデュエット曲「この角を曲がれば」。そして、もう我慢するのはやめよう、声をあげよう! と群衆で歌う「声をあげよう」が披露され、会場を盛り上げた。
ジェイソン・ハウランド(中央)
続いて質疑応答が行われた。
 
ーーたった今世界初の楽曲披露を終え、今の心境はいかがでしょうか。また、日本への書き下ろしミュージカルは2度目となりますが、本作への意気込みを教えて下さい。
ジェイソン・ハウランド(音楽):(日本語で)「おはようございます」。僕の知っている唯一の日本語です(笑)。この作品に関して、とても自分自身ワクワクしております。このようにたくさんの才能あふれる方々と一緒に舞台に立たせていただくこと、とても嬉しく思います。
 
楽曲制作のお話をいただいたことを光栄に感じております。また、素晴らしいキャストの皆さん、演出の方とご一緒できることは大きな喜びです。日本の皆さんと、この物語とこの作品のスコアを分かち合えることを楽しみにしています。私自身、この作品をクリエイトするにあたり、とても大きな喜びを感じましたので、観に来ていただいたお客様にも大きな喜びを感じていただけるといいなと思います。(日本語で)「お疲れ様でした」。
豊田めぐみ
ーー数年をかけて脚本の佐藤万里さんと脚本を練ってつくってこられました。先日終えられたワークショップも含めて、作品への思いを教えてください。
豊田めぐみ(演出):この作品のオファーをいただいたのは、2018年の夏でした。2019年にこの作品のためにジェイソンと会いました。漫画でもなく、ドラマでもない、舞台ならではのものを作り出そうと、ジェイソンや脚本の佐藤万里さんとともに、本当に何度も何度も話し合いをしました。
実はまさに昨日、1週間のワークショップを終えたんですけれども、ジェイソンさんが全楽曲を立ち上げてくださって、2回も本読みの通し稽古することができました。そこの中で話し合いをして、また毎日少しずつ変えたり、大きく変えたりして。9月の終わりから始まるであろう稽古に向けての大きなステップを作ることができました。
他のクリエイティブスタッフとも既にいろいろな話し合いをしています。美術もほぼ出来上がっていて、あと衣裳、照明、映像。オリジナルの作品なんですが、随分早い時期にいろいろなことがもう目の前に見えているという状況です。キャストの皆さんと一緒に、これからどんなものができるんだろうと、私も本当に楽しみです。舞台の『東京ラブストーリー』というものを作り出そうと思っています。

柿澤勇人(左)、笹本玲奈
ーーキャストの皆さんにおうかがいします。今回の音楽と脚本に触れたときの印象、またこの作品にかける意気込みや、先日のワークショップに参加された方々はその手応えもお聞かせいただければと思います。
柿澤勇人(空キャスト/永尾完治役):『東京ラブストーリー』をミュージカル化するということで、最初は正直、どうなっちゃうの? と思っていました。僕の周り、つまり家族や今仕事をしている現場の先輩にも「お前、『東京ラブストーリー』のミュージカルやるんだろ? カンチが歌うの? リカが歌うの? さとみや三上も出てくるの?」という話になっていて。みんな不思議に思っていました。
 
僕も最初話を聞いたときは、不安とかそういうことではなくて、どうなっちゃうんだろうというワクワクみたいなものがありました。振り返ってみると、数年前に僕は『デスノート』という漫画原作のミュージカル化をしました。あ、僕がしたんじゃないですね(笑)。作品に携わりました。
 
その時も同じような現象があって。夜神月とLが歌うの? どうなっちゃうの? そんな声がたくさんありました。でも数年経った今、日本では再演を何度も繰り返していますし、台湾での公演成功することができました。韓国でも連日ソールドアウトの超人気作品にまで成長しています。この『東京ラブストーリー』も日本でまずは成功させて、海外にもいつか進出できるような、そんな作品にしたいなと思っております。
歌唱披露の様子
柿澤:ワークショップ、僕も数日参加させていただきました。 本当にジェイソンの書いてくれた音楽が本当に全て素晴らしい曲で。素敵でキャッチーで、耳に残るし、ワクワクするような曲、そしてちょっと泣きそうになるような曲がたくさんありました。
 
まだまだワークショップの時点でいろいろありますので、これから台本やセリフもおそらく精査されて、ブラッシュアップしていくでしょう。この作品が成功するために、カンパニーと一緒に楽しみながら、苦しみながら、頑張りたいなと思います。よろしくお願いします。
笹本玲奈
笹本玲奈(空キャスト/赤名リカ):私もカッキー(※柿澤の愛称)と全く同じ印象で、最初に「東京ラブストーリー」をミュージカル化しますというお話を聞いたときに、どうなっちゃうんだろう? というのが正直な気持ちでした。昨年末に空チームの4人で読み合わせをしたんですね。そのときはまだ第4稿とかだったんですけど、それでもものすごく面白くて! 感想が「面白い」しか出てこなかった。
 
リカにしてもさとみにしても、同じ女性としてどちらにも感情移入ができるし、誰ひとりとして「なに、この人!」という人が出てこなくて。観ていて前向きになれる作品になっていたので、ますます楽しみになりました。
 
そして、最近デモでジェイソンさんが歌っているテープを聞きまして、楽曲の素晴らしさにまた感動しました。この素晴らしい楽曲と素晴らしいと脚本が合わさった、世界で初めて1から作り上げるミュージカルに出演できること、本当に嬉しく思います。これからの稽古もすごく楽しみです。皆様ぜひご期待ください。
夢咲ねね
夢咲ねね(空キャスト/関口さとみ):私も最初『東京ラブストーリー』はテレビドラマから入っていったんですが、その時点ですごくこの作品が好きで。そしてミュージカル化ということをお聞きして、みなさんと同じく「えっ、どうなるんだろう」と思いました。
 
でも、読み合わせやワークショップを通して、このメンバーで、今しかできない『東京ラブストーリー』が新しく生まれ変わるんだなと。すごく私自身も早く稽古に入りたいなととても楽しみにしております。どうぞ皆様、楽しみになさっていてください。
濱田龍臣
濱田龍臣(海キャスト/永尾完治役):自分は本当にミュージカルの経験が浅くて。いただいた台本を読んでいる中で、台本の中にも歌詞が書かれていたんですけど、ワークショップで歌を入れた本読みをしたときに「これがミュージカルか」としっかりと身体中で感じることができました。
 
もともと『東京ラブストーリー』という作品をミュージカルにする、その中で完治をやらせていただける。自分に対する期待やプレッシャーをひしひしと痛感しているんですが、だからこそプレッシャーや期待をいい意味で裏切るように精一杯努力していきたいなと思っているので、ぜひよろしくお願いします。
唯月ふうか
唯月ふうか(海キャスト/赤名リカ役):私もワークショップに参加させていただいたんですが、ジェイソンさんの楽曲が本当にどれも素敵で。先ほど会場でお披露目した、皆さんで手を叩きながら歌うような曲だったりとか、思わず体がノってしまうような曲、いろいろなジャンルの曲がたくさん詰め込まれている作品だなと感じました。
 
それぞれの役にフューチャーしていくと胸が痛くなるほど気持ちが分かったりして、きっといろいろな世代の方に観ていただいても共感できる部分が多いんじゃないかなと思うので、漫画やドラマを見たことがある方もない方もぜひミュージカル版の『東京ラブストーリー』を観て楽しんでいただけたら嬉しいなと思っております。頑張ります。
熊谷彩春
熊谷彩春​(海キャスト/関口さとみ役):最初にこのお話をいただいたときに、母親が一番興奮していて。私はドラマ世代ではなかったので、作品を見たこともなかった。でもこの作品に出演することが決まってから、漫画だったりドラマだったりを見させていただいて、本当にいつの時代も胸に刺さる作品だなとすごく思いました。
 
さらにワークショップに参加させていただいて、1幕2幕と通して歌も入れてやったんですが、本当に素敵な物語に、もっともっと豪華な音楽がついて。ミュージカル版ならではの『東京ラブストーリー』になるんじゃないかなとすごく今からワクワクしております。精一杯頑張りますので、ぜひ来ていただけたらなと思います。
綺咲愛里
綺咲愛里(長崎尚子役):私はこの話をいただいたときに、まずはと思い、91年のドラマを拝見しました。一瞬でこの世界に没頭しまして、本当に大好きな作品となりました。これから本格的に稽古が始まるのが楽しみです。先ほど披露された5曲は、本当に胸が躍る、思わず体が動いてしまう5曲でしたが、ミュージカルとしてどういう形に生まれるのか。素敵な皆様とこの作品を作っていけることが、とても今から楽しみです。
 
私は、空チームと海チームとどちらとも関わらせていただくことになっておりますので、そこも楽しみながら、精一杯演じたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
高島礼子
高島礼子(和賀夏樹役):『東京ラブストーリー』と言ったら、まず本を読ませていただいたとき「これ数十年前の作品だよね?」と思ったんですが、本当に今見ても感動できます。 実は当時、柴門さんの漫画と、オンエアされていたときのドラマ、ちょうど私デビューして間もない頃で、仕事にも恋愛にも何か思い悩んでいたときだったんですけど、この『東京ラブストーリー』にすごく力をもらった記憶があります。
 
今、このミュージカル版の『東京ラブストーリー』にキャスティングしていただいたというのは、本当に夢のよう。奇跡のように感じております。初ミュージカルではありますけれど、とにかく楽しんで頑張っていきたいなという思いがあります。
 
キャスティングされたときに、共演者の皆さんの舞台を観させていただきました。もう本当にこれからのミュージカル界を背負って、担っていく皆さんと一緒のステージに立てること、本当に鳥肌が立つぐらいドキドキしています。歌は正直、苦手というのを自慢にしていたぐらいなのですが、もう歌が得意だと言えるぐらいに。皆さんの足を引っ張らないように、頑張っていきたいと思っております。
これは年齢問わず絶対楽しんでいただける作品だと思うので、たくさんの方に、当時私が受けた感動を伝えられたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
歌唱披露ではジェイソン・ハウランドがピアノ演奏をした。
ーー作曲される際にどのようなことを大切にされたかを教えてください。
ジェイソン:自分の中で作曲する際に大切にしていたことというのは、いろいろと不安などを抱える若者が、そこから成長して大人になっていく過程というものを大切に思っておりました。 自分自身も大学を卒業して、大きな都会に引っ越していくという『東京ラブストーリー』のキャラクターたちと同じような経験をした思い出があります。
いろいろなことがすごくエネルギッシュで、とても速いスピードで動いている感覚がありました。なので、まず最初のところではそういったスピードをキャッチしたかったので、スピード感ある音楽が出てくるんですが、逆に物語が進み後半にいくにつれて、少し成熟して、落ち着いたニュアンスになることを心がけました。
歌唱披露の様子
ーー『デスノート THE MUSICAL』のお話もありましたが、オリジナルミュージカルに出演されるときに一番大切にされてること、心がけていることを教えてください。
 
柿澤:僕自身の問題でもあるかもしれないんですけど、くじけそうなときはたくさんあります。 でもやっぱり周りの仲間たちやスタッフたちは絶対に支えてくれる。
 
日本語のオリジナルミュージカル、日本発の作品を作るという思いのもと、みんなで一丸となって、何を批判されても、何を言われようと、私たちはもうやると決めたんだ、走るしかない、前を向くしかない——。そういう思いが一番大事なんじゃないかなと思ってます。
柿澤勇人(右)と濱田龍臣
ーー作品を心待ちにされているお客様にメッセージをお願いします!
濱田:はい……。
柿澤:大丈夫? さっきも緊張して、控室で「柿澤さん、(喉に手をあてて)ここまでに胃酸が上がってます」って(笑)。
濱田:いや、すいません。本当に緊張してて、結構今も頭がだいぶ真っ白ではあるんですが。……令和の今の時代だからこそ見せられる『東京ラブストーリー』になっていると思います。もちろんドラマを見ていた方たちも、見ていなかった方たちにも届くメッセージがあると思います。自分自身まだまだ未熟な部分が多いので、完治と一緒に歩んで成長していきたいなと思っています。ぜひ劇場でお会いしましょう。
 
柿澤:我々は、海外のミュージカルを日本版でやるということがあります。日本初演とか再演とかいろいろなパターンがあるんですけど、それだけでもかなりの労力を使うというか、体も心も疲弊するし、それを生むっていうだけでも非常につらいことがあります。
 
まして今このコロナの状況下で、日本でオリジナルミュージカルを作るというのは、もしかしたら無謀なんじゃないか。そう思う人がいると思います。
でも先ほど申し上げましたように『デスノート THE MUSICAL』で成功させた経験が僕らにはあります。今から数年後に「僕たち、あのときすごい頑張ったよね」、そして観ていただいた方に「すごいことやったんだね」と思ってもらえるような作品をつくりたい。演出の豊田めぐみさんについていって、カンパニー一同、一丸となって稽古に励み、日本公演を成功させたいと思います。 よろしくお願いします。
笹本玲奈、柿澤勇人、濱田龍臣、唯月ふうか(右から)
取材・文・撮影=五月女菜穂

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