音楽愛に包まれた再スタート!木下百
花が事務所独立後初となるライブをB
illboard Live YOKOHAMAにて開催

木下百花が、事務所独立後初となるワンマンライブ公演『わたしのはなし 第4話 〜明日の始め方〜』を、7月24日(日)にBillborad Live YOKOHAMAにて開催した。
2月13日、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催された自身の生誕祭ワンマン公演『生きるとは』で事務所からの退所を発表し、フリーのアーティストとして活動していくことを宣言した木下百花。その日から約5ヶ月、思いのほか早い再スタートを切った木下が“再始動ライブ”の会場に選んだのは、自身初出演となるBillboard Live YOKOHAMAだった。ビルボードの象徴ともいえる、大きなシャンデリア、食事を楽しむための高級感あるテーブル……そんな会場には、期待感とともに、ちょっとした緊張感も漂っていた。
いよいよ開演の時間。会場BGMの音量が絞られ、客電が落ちると、無音のままサポートメンバーが登場する。この日のバンド編成は、これまでも木下とライブやレコーディングをともにした、ギター・伊東真一(HINTO / SPARTA LOCALS)、ベース・岡部晴彦、ドラム・吉澤響(セカイイチ)の3人に加え、鍵盤・奥田健介(NONA REEVES)を迎えた特別編成である。
吉澤の4カウントの後、奥田の奏でる繊細なエレピの音色に乗って、真っ白な衣装を身に纏った木下百花が登場。会場は温かい拍手に包まれた。少し緊張したような、はにかんだような様子でマイクの前に立つ木下が、「Billboard Live YOKOHAMA、今日はありがとう! よろしくねー!」 と挨拶した後に歌い始めたのはソロデビュー曲「わたしのはなし。再始動ライブの1曲目にソロデビュー曲を持ってくる、その意味合いはとても大きい。「環境は変われど、自分自身の軸はぶれない。」そんなことを感じさせる幕開けであった。

2曲目「5秒待ち」、3曲目「グリルパインベーコンブルーチーズアボカド」と奥田がグランドピアノを演奏し、楽曲はいわば“ビルボード仕様”のアレンジに。短いMCの後、4曲目には新曲「とき・めき・馬鹿・みたい」を初披露。岡部のうねるベースラインに吉澤の変則的なドラムビートと、伊東の小気味良いギターカッティングが絡み合う木下流のダンスナンバーだ。これまでと一味違った楽曲のテイストが、再始動までの5ヶ月間の充実ぶりをうかがわせた。

ここからは木下曰く“おしゃれゾーン”。幻想的なバラードの「ひかる」、どこか妖艶で夜を思わせる「悪い友達」と続く。「悪い友達」は去年末にリリースされ、そのミュージックビデオが2週間で150万回再生された、いわば代表曲である。音源では淡々と漂うエレピと洗練されたトラックが印象的であるが、ここでは奥田のエレピを伴奏に、木下がワンコーラスを自分のグルーヴで思いのままに歌い上げるというスペシャルなアレンジで披露。落ち着いた曲調に反比例するかのように、会場の熱量がぐっと上がっていたのが印象的であった。
「悪い友達」を歌い終えると、「ここからはもうふざけていいやつ(笑)」と木下。「今から後半戦です! 明るめの曲を詰め込んできました!」と告げると、次に演奏されたのは最新曲「天使になったら」。「ビルボードライブ仕様のバンドアレンジをしてきた」という「天使になったら」は、テクノポップから、鍵盤の効いたおしゃれなファンクロックに様変わり。どこかベント・ファブリックの「ジュークボックス」も感じさせる仕上がりになっていた。普段、自身のバンド・NONA REEVESではギターを演奏する奥田の、レアな鍵盤ソロもこの楽曲のハイライトであった。最後に「ダンスナンバー」、「家出」とアッパーな2曲を畳み掛けるように披露。木下はステージを所狭しと駆け回り、“少しでもファンの近くにいきたい”という気持ちを圧倒的なパフォーマンスに変えて、ライブ本編が終了した。

鳴り止まぬアンコールの拍手の中、再びステージに上がった木下はアンコールのお礼を伝えたのち、ひとりずつバンドメンバーを呼び込む。ゆったりと会場の空気を作った後、アンコールの1曲目に演奏されたのは「SWEET MEMORIES」であった。松田聖子のカバーであるが、これは事前にファンクラブ会員からカバー曲のリクエストを募り、その中から木下がバンドメンバーとともに選曲したものである。普段のライブでは、登場SEとして使用されているこの楽曲を、この公演ではアンコールで自ら歌うというのも、ファンにとっては嬉しい演出だったであろう。続いて、木下と奥田がこの日一緒に音楽を鳴らすきっかけとなった「えっちなこと」を演奏して再始動ライブの幕は閉じられた。

あっという間の70分。それでも「木下百花」というアーティストのこれまでと今が詰まった、そしてこれからの音楽人生を期待させるような、そんな密度の濃いステージであった。木下にとって初めてのBillboard Live公演であったが、ライブが始まるとそんな気負いは全く感じさせなかったし、いつも以上に伸びやかに、そして表情豊かに彼女の音楽を表現していたのではないだろうか。会場がライブハウスであろうが、Billboard Liveであろうが、もしホールであっても、そしてたとえ武道館のステージであったとしても、ぶれずに自分を表現し、会場の空気を自分の輝きで染めていくだろう。木下の、ファンを見る眼差しは、バンドメンバーを見る眼差しは、常に大きな愛で満ちている。だから彼女の歌う姿は美しく輝くのである。そう確信させられた夜であった。
木下百花  撮影:朝岡英輔
撮影:朝岡英輔

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