吉岡里帆、伊藤あさひ、鞘師里保らが
、岩崎う大ワールドに挑む 『スルメ
が丘は花の匂い』会見&ゲネプロレポ
ート

2013年にキングオブコントで優勝し、手がけた戯曲が岸田國士戯曲賞候補作にノミネートされるなど、実力派コント師であると同時に劇作家・演出家としても注目を集める岩崎う大(かもめんたる)。パルコ・プロデュース2022『スルメが丘は花の匂い』は、岩崎にとって初となるプロデュース公演の作・演出だ。キャストには、話題作への出演が続き、本作が舞台初主演となる吉岡里帆。さらに、伊藤あさひ、鞘師里保、岩崎う大、牧野莉佳、もりももこ、小椋大輔、ふせえりと、注目の若手からバイプレイヤーまで個性と実力を兼ね備えた俳優陣が顔を揃えた。初日前の会見には、吉岡里帆、伊藤あさひ、鞘師里保、岩崎う大、ふせえりが登壇。
吉岡里帆
ーー初日を迎えるにあたって、意気込みをお願いします。
岩崎:今の時期ですから、無事に初日を開けられそうなことにほっとしています。面白いものができたなという感覚はあるので、あとはちゃんと全部やれたらいいなという厳かな気持ちです。
吉岡:ゲネプロで初めて通しました。稽古を細やかに行い、一本筋が通った感覚です。今後も色々な都市に行けるので、皆さんにお会いできるよう健康面にも気を遣いながら完走したいと思っています。
伊藤:吉岡さんが言ったように、通すのが初だったので、スタートを切れたような気持ちがあります。もちろん本当のスタートは初日を迎えてからなので、僕らもお客様も健康なまま、千穐楽を迎えられるよう努力していきたいと思います。
鞘師:ワクワクする通しができました。緊張感のあるご時世ですし、来てくださる方も慎重な気持ちだと思います。みなさんの気持ちをほぐしていけるようなステージになっていると思います。
ふせ:本当に今日を迎えられて幸せです。稽古中はずっとマスクだったので、みんなの顔を見て初めてこんなに格好いい・可愛いんだって新鮮に感じました。すごく努力してこの日を迎えたので、健康に気をつけて走り続けたいと思っています。
岩崎う大
ーー今回はファンタジーコメディということで、コミカルなシーンが多くあります。演出の岩崎さんから見たみなさんの印象はいかがですか。
岩崎:鞘師はファンタジーの世界の人間という、我々が会ったことのない役に向かってすごく着実に進んでくれました。手がかからないクロエちゃんです。僕の娘の役でもありましたから、自慢に思う気持ちを役作りに利用させてもらっています。吉岡里帆ちゃんが演じる緑には、僕自身を結構投影しているというか、僕がこの世界にいたらどんなリアクションをするかを考えて書いています。役作りはなかなか難しかったと思いますが、だからこそ辿り着いた今は迷わず行けるのかな。初日に間に合わせるところにプロフェッショナル精神を感じました。あさひは面白いですよね。不思議な子。天然でもあるけど頭は良くて「ここはこうだから、こういう風にしてほしい」と言えばすぐ通じる。ナチュラルな面白さがあるので、その良さを消してしまわないように気をつけました。ふせさんは頼りにしています。ふせさんもコメディが主戦場ですから、お互いリスペクトしあってやらせてもらいました。
伊藤あさひ
ーーキャストのみなさんは、演出についてどう感じましたか?
吉岡:私が演じる緑はう大さんの分身なので、ものすごく難しかったです。リアクションや間をちょっと変えると全然違う人に変わってしまう。私が少しでも迷うと、う大さんがすぐ察して例え話で説明してくれました。たとえば、気まずいシーンがすごく多いんです。そこで「お姑さんにキツいことを言われて、それをうまく受け流すようなイメージ」とか。そういうのを全部メモしちゃうので、台本がメモで埋め尽くされています(笑)。
岩崎:申し訳ないです。嫌われるぞ、俺。
吉岡:(笑)。一番メモした台本かもしれません。すごく細かいニュアンスを、諦めずに伝えてくれました。
伊藤:僕はう大さんの作品に出演するのは初めて。台本にたくさん書いたのは「トム、かわいそうに」です。台本を読んだ時はかわいそうとは思いませんでしたが、かわいそうに見えるようにというのをすごくメモしたなと。
岩崎:お話の流れ上そうなったけど、あさひの事務所にオファーした時は王子役と伝えたと思うんです。
伊藤:そうなんですよ。
岩崎:蓋を開けたら違ったけど、すごく素敵な役になってると思います。
鞘師:今回、ストレートじゃないですか。私は普段歌を歌っているんですが、この舞台の稽古も歌を紡いでいるような感じがしました。う大さんが演出する時、やってみせてくださるんです。それがなんというか、音やトーン、周波数まで伝わってくるんです。細かいことをシーンごとに重ねていったら結果1曲できたみたいな。
岩崎:僕自身は音楽に対しては苦手意識があるんですが、お笑い的にトーンや音は結構重要。音楽のプロにはそういう伝わり方をするんですね。
鞘師:稽古って、家でやってきたことをみんなの前で見せるので緊張しちゃうんですけど、それを通り越す楽しさみたいなものを感じました。
ふせ:私も同じく、う大さんはすごく音に敏感でこだわりがあると感じました。何十年かぶりの舞台ですが、演出家だなあと思いましたね。
ふせえり
ーー吉岡さんは初主演です。座長を務めてみていかがでしょう。
吉岡:座長ってもっと厳しいのかと思っていましたが、稽古が始まったら共演者の皆さんもう大さんもあたたかくて優しい方ばかり。たくさん助けていただいています。初めての座長がこんなに幸せなのは貴重な経験だと思います。
ーー共演者の皆さんの中で、稽古前と後で印象が変わった方はいらっしゃいますか?
岩崎:ふせさんの稽古終了から帰宅までの時間の短さには驚きました。体感15秒です(笑)。
ふせ:コロナ禍だから。それにずっといると、稽古場にも皆さんにも飽きちゃうじゃないですか。
一同:!?
ふせ:だから、さっと違うところに行ってリセットするんです。
岩崎:まあ、ふせさんが長く残られてもあれなのでいいですけど(笑)。
鞘師:私は吉岡さんですね。お上品で知性のある方という印象は変わりませんが、おっちょこちょいなところが垣間見えて。衣裳付き稽古で、ソフトボールのユニフォームを前後逆に着て「苦しい」って。
ふせ:「頑張りましょう! 本番ですよ!」とか言ってるけど衣裳逆だし! って(笑)。
岩崎:あと運動神経が悪くて、動いてみようかとなった時にあんまり見ちゃいけない感じの運動神経の悪さ(笑)。本人は真面目にやってるんですけど。
ふせ:本人が思ってるほどしっかりしてない。
吉岡:私はキビキビ真面目に、チャキチャキしてると思ってます。
ふせ:全然違うんですよ。
伊藤:こんなに言われてますけど、稽古中に誰かがふと「お腹減った」っていうとパッと反応して食べ物を渡してました!
吉岡:もうちょっといいエピソードなかったんですか(笑)?
ふせ:私が鼻を悪くして病院に通ってたら、漢方薬を買ってきてくれて優しいなと思いました。すごく嬉しかったです。みんなに気を遣う里帆ちゃんだけど、ちょっと抜けてる(笑)。
鞘師里保
ーーこの作品は、緑が物語の生まれる世界に迷い込む話です。みなさんが好き、この世界に入りたいと思う「物語」はなんですか?
岩崎:僕は『浦島太郎』ですね。これが昔話だと思うと面白いし暴力的なオチもあり、考察しようと思えば色々考えられる。
吉岡:子供の頃、絵本やディズニー、おとぎ話が大好きだったので、一番はなかなか選べないですね。
ふせ:私は『シンデレラ』。サクセスストーリーが好きなんです。
鞘師:物語とはちょっと違うんですが、ミニチュアが大好きで。シルバニアファミリーのお家で暮らしたいって夢があります。
吉岡:すごい話が飛んだね(笑)。でもフワッとしてるし、かわいいし。ミニチュアでほしいかも。
伊藤:ファミリーつながりで、僕は『SPY✕FAMILY』ですね。アーニャのお兄ちゃんになりたい。
吉岡:こんなに脱線するような質問でした(笑)? 私は『不思議の国のアリス』かな。アリスが違う世界の人たちと出会って、それぞれに変化が起きる。スルメが丘と似たパワーがありますよね。
ーー最後に、吉岡さんからメッセージをお願いします。
吉岡:『スルメが丘は花の匂い』は、何の変哲もないOLが物語が生まれる世界に迷い込んでしまう話です。ちょっと夏休みっぽいというか、私が演じる緑と一緒に別世界に迷い込む楽しさや緊張感を味わっていただける作品だと思います。ぜひ劇場に観に来てください。
※以下、ゲネプロのネタバレあり。
【あらすじ】
世は空前のソフトボールブーム!草ソフトボール中に謎の穴に落ちた縁 緑(えにしみどり 吉岡里帆)は、スルメの匂いが漂う「スルメが丘」という廃れた町に迷い込んでしまう。緑が暮らしていた世界とはあまりにも異なるその世界では、「物語」の主人公になることが何よりも大事だった。「シンデレラのようになりたい」と夢見る親切な町娘クロエ(鞘師里保)には、ある物語の登場人物になる運命が。物語の持つ魔力を彼らは最後まで信じられるのか? そして緑の運命は――。
舞台上には、絵本のようなあたたかみとノスタルジーを感じさせるセット。ファンタジーな印象の町に大量のスルメが干してある様子がシュールで、緑が迷い込む不思議な世界へのわくわくが高まる。
吉岡演じる緑は、周りに合わせて好きでもないソフトボールを続けているOL。異世界に迷い込んだ彼女が、現実とは違う常識や価値観に戸惑いながらも周囲と交流する様子が微笑ましい。クロエ役の鞘師は、純朴で優しい中にも芯の強さがある少女を魅力的に演じる。両親や町の人々の期待を一身に背負う健気な彼女だが、緑との出会いで心境に変化が。二人が徐々に打ち解けてお互いの“普通”を話すうちに、覆い隠していた自身の本当の思いに気付いていく様子、育った環境も常識も違う二人が影響を与えあい、姉妹のようになっていく過程が愛らしい。
クロエが「スルメ姫」になるという予言を実現するため、大切に育ててきた過保護ぎみな両親を演じるもりと岩崎は、娘を溺愛しているからこそ予言に不安も感じる複雑な親心を繊細に見せる。夫婦や親子のテンポの良いやりとりも心地よく、緑と共に彼らの団欒にお邪魔しているような気持ちになった。コメディシーンが多いもののシリアスな部分も担い、物語に緩急をつけている。
クロエに想いを寄せる幼馴染・トム(伊藤あさひ)は、応援したくなる不憫さのある少年。間の取り方や佇まいが絶妙で、しっかり者の姉・ジーノ(牧野莉佳)、ケンカ友達のような存在である旅人(小椋大輔)とのやりとりもかわいらしい。
両親たちをはじめとする人々が語る「自らの物語」など、笑った後にふと考え込んでしまうシーンも多く、本当に絵本や童話のような楽しさと教訓がある作品だと感じた。
幸せとは何か、価値観の違うもの同士が共存するにはどうすれば良いかという普遍的なテーマを、少女たちの交流を通して描くファンタジーコメディ『スルメが丘は花の匂い』。王道でありながら個性的な物語の結末を、ぜひ劇場や配信で見届けてほしい。
本作は7月22日(金)~7月31日(日)に東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA にて上演される。なお、7月23日(土)17時の回はイープラス「Streaming+」にて、本編及びスペシャルトークショーの配信も実施(アーカイブ(見逃し)配信あり)。東京公演後は大阪、福岡、広島、高知、愛知、福島の6ヶ所を巡演する。
取材・文・撮影=吉田沙奈

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