Suara

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【Suara インタビュー】
“頼ることは
恥ずかしいことじゃない”
というメッセージを伝えてくれている

遺された歌を歌い継いでいきたい
という想いも歌詞にはこもっている

カップリングの「百日草」も『うたわれるもの 二人の白皇』のエンディングテーマで、こちらはご自身で作詞されたそうですがタイトルはどこから取ったんでしょう?

百日草の花言葉が“絆”とか“不在の友を想う”というもので、今回のテーマにぴったりだと思ったんです。《崩れ落ちる 永久の定め》という歌い出しのとおり、この世に永遠なんてないのは分かっていても、永遠に続いてほしいと願っていたものが崩れてしまった悲しみから、この歌詞の物語はスタートするんですね。『うたわれるもの 二人の白皇』も前作『うたわれるもの 偽りの仮面』のラストで亡くなってしまった盟友オシュトルの遺志と、彼の着けていた仮面を引き継いで、ハクがオシュトルとして生きていくというところから始まるんですよ。

サビに《白い花びら》《紅い花びら》と出てきますが、百日草の花びらって実際に白と赤なんですか?

白、赤をはじめいろいろあるみたいです。1番の《白い花びら》はあなたの面影を刻んでいく“キャンバス”のイメージで、2番の《紅い花びら》は血だったり鼓動だったりという“生きている証”というイメージですね。『うたわれるもの』って大切な人の想いや遺していったやさしさをつないでいく…ということを描いているように常々感じているんです。オシュトルの遺志を継いだハクはもちろん、現実の世界でもハクを演じていた藤原啓治さんが亡くなられて、オシュトル役だった利根健太朗さんが今回からハクを引き継がれているんですよね。あと、今まで『うたわれるもの』シリーズにたくさん素晴らしい曲を書いてくださった作曲家の衣笠道雄さんも一昨年に亡くなられてしまったので、遺してくださった歌を私も頑張って歌い継いでいきたいという想いも歌詞には込めているんです。

「人なんだ」のサビに《その軌跡は きっと継る》というフレーズがありますが、まさしくそういうことですよね。この世界や社会自体も全て先人の残したものを受け継ぐことで発展しているわけですから。

そうやって世界は回りながら、どんどんつながっていくという壮大なスケール感を、私なりに描いてみました。サビの《巡り会える奇跡を信じて》は、ゲームの中で“またいつか旅をしよう”とオシュトルに向けたハクの台詞からきていて。『うたわれるもの』の世界では一貫して“輪廻”が描かれていますし、逝ってしまった人への想いをこれからも生きていかねばならない残された者の視点で描いているので、その部分も見ていただけると嬉しいです。

だから、儚さの感じられるバラードではあるけれど、決して悲しいだけの曲ではないですし、「人なんだ」は《うたわれてく》というフレーズで締めくくられ、「百日草」のAメロにも《うたわれる世界》というワードがあるところから、今作では特に『うたわれるもの』の本質に迫っていきたいという意志も感じました。

『二人の白皇』は『うたわれるもの』シリーズ三部作の最終章ですから、そのプレッシャーはありましたね。レコーディングでも“サビの部分は「まどろみの輪廻」(河井英里歌唱による2006年放送のTVアニメ『うたわれるもの』エンディングテーマ)を意識して歌ってほしい”と言うディレクションがありました。「まどろみの輪廻」はファンの方にとっては“TVアニメ『うたわれるもの』のエンディングと言えばこれ!”という曲でもあり、河合英里さんの歌も唯一無二の存在感があります。私もその歌を意識しながら、メロディーに合わせて言葉をやさしく切るような感じで歌ったりと挑戦しました。アレンジも少し無機質でループ感のある感じなので、そこから儚さだったりやさしさを感じてもらえたらいいなと思います。

ある意味、そこも輪廻ですね。そして、3曲目には昨年のシングル同様、半田麻里子さんの楽曲が。

前回のシングル(2021年7月発表の「戦刃幻夢」)で「言の葉」を書いていただいた時、確かレコーディング終了後に“次、どんな曲を作ってもらおうかなぁ!?”という話をしたんです。で、今まで半田さんに書いてもらった曲は透明感があったり、柔らかい雰囲気のものだったので、ガラッと変わって“ダークなロック曲も歌ってみたい!”とリクエストさせていただいたんですよ。

ダークなロック曲なのにタイトルは“The Light”というのが面白いですね。

そうなんです(笑)。歌詞でも最初はダークに沈み込んでいるんですけど、そのうち少し前向きになって、エンディングでは“光がだんだん近づいてくる”という意味合いのコーラスを半田さんと私でかけ合って、最後には光を目指していく展開が素敵だなぁと思ったんですね。どんなに落ち込んでいても人間どこかで“這い上がらなきゃ”っていう心境になってくるんですよ。私自身そういう経験があって、もう這い上がるのもしんどいところから1日経ち、2日経ち、1カ月経つと“そろそろちょっと起き出してみるか”となる。この先も続いていく人生を歩んでいこうとすると、何かひとつ光を見出していかないと動けないという想いになってくるので、そこは歌詞にすごく共感できたところですね。

聴き始めと聴き終わりで受ける印象が変わるのは、そのせいなのかも。タイトルどおりのポジティブな気持ちで聴き終えて、もう一回聴き返そうと頭に戻った時、“あれ? こんな暗い曲だったっけ?”と思ったんですよ。

確かに印象が違うかも! ピアノとベースがエモーショナルにかけ合うエンディングも気に入ってますし、少しずつ前向きに心が変化していくさまみたいなものを、アレンジでも表現してもらっている感じはしますね。私、歌う時、わりとバックの音に引っ張られるタイプなので、曲が進むに従って自然とヴォーカルも前向きな感情が出たんじゃないかと。最初のキーワードは“ダークなロック曲”だったのに(笑)。

それだけで終わる曲ではなかったと。リリックは抽象的というか、闇と光の狭間にある感じですよね。

実は最近、半田さんが書いた別の楽曲の歌詞についてうかがう機会があったんです。その時に“聴いてくれた人それぞれが感じたことが正解だと思うので、伝えたいことを決め込んでいるわけではない”とおっしゃっていたから、これもそうなのかもしれないですね。そもそも私、半田さんに限らず歌詞を提供してくださった方に“これはどういう意味ですか?”とかって、あまり訊いたことがないんですよ。歌手はフィルターであり語り部、もしくは媒介であると思っているから、あまり自分の感情とか感覚は入れすぎないようにしていて。私が作詞者の意図を知らなかったとしても、聴き手がいろんなことを汲み取ってもらえるような歌になればいいなと思って歌っています。

今回のシングルはどんな作品なった実感がありますか?

今回のシングルは新旧のSuaraがパッケージされた作品になっていると思いますので、たくさんの方に聴いていただきたいですし、TVアニメ主題歌としては2016年1月発売のシングル「天かける星」以来なので、“Suara、まだ現役で頑張ってるんだぞ!”っていうところを見ていただきたいです。

取材:清水素子

シングル「人なんだ」2022年7月27日発売 F.I.X. RECORDS/KING RECORDS
    • KICM-3373
    • ¥1,430(税込)
    • 初回製造分
    • アニメイラストスリーブ
    • (C)2022AQUAPLUS
Suara プロフィール

スアラ:学生時代からバンド/ユニットを組み、精力的にライヴ活動を行なう。2005年9月に「睡蓮-あまねく花-」でデビュー。TVアニメ『ToHeart2』のエンディングテーマ「トモシビ」、同じくTVアニメ『うたわれるもの』のオープニングテーマ「夢想歌」を歌うなど、その歌声がアニメ・ゲームファンをはじめとする広い層に届き、注目を集める。10年から香港・韓国などでライヴを行ない、韓国や台湾でもCDを発売するなど、ワールドワイドな広がりをみせている。“Suara”とはインドネシア語で“声”を意味する。Suara オフィシャルHP

「うたわれるもの 二人の白皇」
ノンクレジットオープニング映像│
「人なんだ」/Suara

OKMusic編集部

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