YUKI

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【YUKI インタビュー】
20周年をお祝いする曲としても、
この曲が相応しいと思った

同時リリースされたEP『Free & Fancy』とシングル(アニメ盤)「鳴り響く限り」。EPにも収録された「鳴り響く限り」は自身も以前よりファンである『ダンス・ダンス・ダンスール』のTVアニメ版オープニングテーマで、似た部分を持つ主人公と自分を重ね合わせながら作られた。さらに同EPにはもうひとりの主人公をイメージして書いた「ハンサムなピルエット」の他、「パレードが続くなら」の全3曲を収録。彼女の作品愛、今の気持ちが詰まった一枚について訊いた。

私は《笑いながら》生きていく
という覚悟をしている

3曲入りのEP『Free & Fancy』がリリースされました。シングルカットもされた「鳴り響く限り」は、いつ頃、どういう想いで作られた曲なんですか?

私はジョージ朝倉さんの漫画が好きなんですけど、彼女の漫画で『ダンス・ダンス・ダンスール』というバレエを描いた作品があって。その漫画がアニメになるということで、オープニングテーマのお話をいただいて、それがちょうど私のソロ活動20周年のシングルをどうしようかなと思って曲を探していた時だったんです。昨年リリースした「Baby, it’s you」(2021年3月発表のシングル「Baby, it's you / My lovely ghost」)を昨年のコンサートで歌った時、お客さんは声を出せなかったんですけど、なんとなく一緒に歌っているような感覚があって、それでやっぱりこういう曲がいいなと、「Baby, it’s you」の次にリリースする曲として、そして20周年の今の私の心境が歌えたらと思っていました。作品の主人公・村尾潤平くんと私は突き進む感じが似ていて、潤平くんと自分を重ね合わせるというか、そういうところも歌えるといいなと。そして、YUKIの20周年をお祝いする曲としてもこの曲が相応しいと思いました。

歌詞はいつものように曲を聴きながら出てきたんですか?

まず、いつものように映像が浮かびました。少年が細い身体でひたむきに踊る姿が見えましたね。“鳴り響く限り”というのは、何かが起きる予感の音が鳴り響く、何かが起こる予感がするということなんですけど、それを言葉にすると、なんだか分からないけどワクワクするとか、調子が良いとか、そういうことだと思うんです。私の音楽人生が続いているのは、その“予感の音”が鳴り響いているからなんだということで。これを見たいとか、この音を鳴らしてみたいとか、そういった好奇心はまだまだなくならないんです。

“鳴り響く限り”というタイトルには、YUKIさんの想いが凝縮されているような気もします。

この言葉は“心臓の鼓動が止まるまで”という悲しいことでもあるんです。刹那的ではあるんですけど、心臓が動かなくなるまでは笑って突き進む。その覚悟の歌です。自分の仕事をまっとうする覚悟。つまり、覚悟が弱いと人に何か言われた時、すぐに意思が揺らいでしまうけど、私は《笑いながら》生きていくという覚悟をしているんです。何を言われてもいいから笑っていたい。私は思いきり生きて死にたいと思ったんです。そういう覚悟はここ数年でさらに強くなっています。

《荒れる海原に飛び乗って 遊びたい》という歌詞は、どんなことも楽しむYUKIさんの姿そのままという感じがします。

私は初めてのことでも面白いと思えることが多いんです。“面倒くさいな”“大変だな”と思っても、それが面白いと思えるというか。例えば仕事でも、ずっと同じ人とやるより大変でも新しい人とやりたいのかもしれないですね。さらに、例えば好きになったレストランでは行くたびに違うメニューを頼みたいタイプ。美味しかろうが美味しくなかろうがチャレンジしたい…きっと好奇心がすごくあるんだと思います。そして、例えそれがあまり好きではないと思っても、笑って済ませられるというか。そのほうが楽しいのかもしれないですね。

「鳴り響く限り」のレコーディングはどのように行なわれたんですか?

歌入れの前は“こういうふうに歌って、こういうふうに声が鳴っていて、こういう感じでオケと合うのがいいな”というように、数日前ぐらいからイメージトレーニングをしています。家で何度も歌ってからレコーディングスタジオに入るんですけど、スタジオに入って実際のオケで歌うと、ちょっと違ったなということもあるんです。歌っている時に思いつくメロディーもあって、その場で歌詞を変えることもあります。「鳴り響く限り」の《強い風 流される雲の 隙間に 青い空》という部分は私の歌が入ってからブラスアレンジを入れてもらっているんですけど、歌詞にあるように、空を見ていたら風が吹いてきて、雲の隙間にチラッと青い空が見えて、“あれがもっと広がらないかな?”というようなイメージが広がってきて。そうしたら、その歌詞を聴いてブラスアレンジもそのイメージになっているんです。アレンジャーさんは私の歌詞を聴いて、《隙間に 青い空》の部分が一番エモーショナルなんだろうと考えてくれて。私はピークというよりも転換のイメージがあり、“青空を広げるためにどうしたらいいんだろう? でも、思っているだけでは何も進まない、次は何をすればいいんだ?”と主人公が力強く思っているイメージだったんですけど、そこに私の想像以上のブラスアレンジが入ったので、すごく気に入っています。

2曲目の「パレードが続くなら」は晴れ晴れと人生をパレードのように続けていくような軽やかな曲ですね。言葉がクルクルと舞い上がるように、サラサラと舞い落ちるように流れて、すごく気持ち良く展開していく曲だなと思いました。

自分のヴォーカルの声の太さとか、高くいくところの上がり方はすごく面白かったのでチャレンジしましたね。私はレコーディングでは一曲通して歌うことが多いんですけど、この曲はセクションごとに全然違うアプローチができると思って、セクションで分けて歌入れをしました。フレーズごとにすごく好きなところがたくさんあるんですけど、歌っている中で作られたパートもたくさんあります。《ススメ ワタシノパレード ヒキコモゴモ アルガ》という部分は、私があとから足したメロディーなんですけど、歌っていたらパレードの光景が頭に浮かんできたんです。それで、シュプレヒコールがどうしても入れたくなって。お洒落した子供たちやダンサーがカッコ良く練り歩きながら何かを主張している…というものを入れたくなったんです。シュプレヒコールが鳴っている中で、ザッザッザッという足音が聞こえてきて、みんなで歩いている中心に私がいて、《ススメ ワタシノパレード》と歌うんですよ。みんなが私を祝っている感じです。

歌詞にある《「永遠はない」》という言葉はよく言われる台詞ですが、ここではそれは嘘なんだと言っているんですね。

《盛大なパーティは オールナイトロング 夢みたいだ》とか《「永遠はない」なんて 哀しい嘘 言わないで》というところでは、全ては終わるものだということへの無情を歌っていますね。でも、この人は信じているんです。“永遠はない”ということも分かっているけど、“そんなことは言わないで”という願い…。私の曲で「同じ手」(2010年3月発表のアルバム『うれしくって抱きあうよ』収録曲)があるんですけど、その中で《変わらないものなど無いと聞くけれど/君と過ごした時間は永遠だ》という歌詞を書いたことがあるんです。その時も曲を聴きながら出てきた言葉だったんですけど、確かに私の中の“その時”は永遠なんです。“永遠はないなんてない”、その時はそういう気持ちでした。自分の中で、“この瞬間は永遠なんだ”とコンサートの時も私はいつもそう思っています。そして、私のパレードは永遠だと願っています。
YUKI
EP『Free & Fancy』
シングル「鳴り響く限り」【期間生産限定盤(アニメ盤)】(CD+Blu-ray)

OKMusic編集部

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