【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#248
シンガーソングライター・吉田拓郎の
言葉

作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。

あぁ面白かった

より

2022年6月29日にリリースされるラストアルバム『ah-面白かった』にて、52年間に及ぶ音楽活動に終止符を打つ吉田拓郎。その後の活動について、「コンサートツアーはまず絶対にない。レコーディングもないと僕は踏んでいる。ただ、僕は音楽が好き。音楽を愛していて一生の友達だと思っているので、その友達とは一緒にいたい。だからどこかで何か歌う可能性はある」と名言している。このインタビュー記事は、日本コンサート史上に残る伝説のイベント<吉田拓郎・かぐや姫 コンサート インつま恋>(1975年)、音楽番組『LOVE LOVE あいしてる』(1996年〜2001年)の裏話をはじめ、歌謡界の歴史的出来事に触れられる証言で満ちている。

ラストアルバムのタイトル『ah-面白かった』は、吉田の妻・森下愛子が出演したテレビドラマ『ごめんね青春』(2014年)での森下のセリフに由来する。主人公(錦戸亮)の明るい母親役を演じた森下が、若くして息を引き取る瞬間、酸素吸入器をつけたまま、「あぁ面白かった」という一言を残しているのだ。吉田は、この言葉を聞き、「なんてすてきな生き方を、残っている家族に言葉で残して天国へ行ったんだろう」「僕も家内も『(この世から旅立つとき)あぁ面白かった』って言いたいね、という話になって」と感慨にふける。 

吉田も森下も、母親に女手一つで育てられ、お互いに亡き母についてよく話すという。吉田は、「日本では女性の就職などがまだまだ考えられない時代。でもそうした苦労や悲しみを、僕の母も家内の母も、あまり口にしたことがない。どちらかというと明るく生き抜いたイメージが強い。『つらい』『悲しい』というのはほとんど聞いていない」と振り返り、「僕の音楽人生は、苦しいことや嫌なことをいっぱい体験したが、総じて『あぁ面白かった』なんじゃないの、というところに到達した」とも明かす。人生に限らず、何かを終える時には、このように「あぁ面白かった」と言って旅立ちたいものである。
吉田拓郎(よしだたくろう)
1946年4月5日、鹿児島県大口市生まれ。小学校3年生から広島県広島市で育つ。シンガーソングライター、作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー。日本におけるシンガーソングライターの草分け的存在のひとり。1965年、広島商科大学(現在の広島修道大学)在学中にロックバンド ザ・ダウンタウンズを結成。1967年、ザ・ダウンタウンズとして広島見真講堂で開催された『第1回ヤマハ・ライト・ミュージック・コンテスト』中国地区大会ロック部門で優勝。1968年、アマチュアフォークサークル・広島フォーク村を結成。1970年代当時、日本ではまだマイナー音楽だったフォークやロックをメジャー音楽に引きあげた立役者である。1970年、アルバム『古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう』(自主制作)をリリース。 同年、「イメージの詩」でシングルデビュー。1972年、CBSソニーに移籍。アーティスト兼プロデューサーとして活動する。移籍に合わせて発売した「結婚しようよ」が40万枚以上を売り上げる大ヒットとなった。続けて、同年に発売した「旅の宿」は、60万枚を売り上げ、オリコンチャートで1位を記録。その後、作曲の依頼も相次ぎ、モップスの「たどりついたらいつも雨降り」(1972年)、猫の「雪」(1972年)、森進一の「襟裳岬」(1974年)、かまやつひろしの「我が良き友よ」(1975年)、キャンディーズの「やさしい悪魔」(1977年)など、昭和歌謡史に残る名曲を数多く生み出している。作詞家でもあり、音楽プロデューサーでもあり、レコード会社の経営者でもあり、そのすべてにおいて日本の音楽界の革命的役割を果たしている。日本ポップス史におけるレジェンド中のレジェンドである。2022年6月29日、ラストアルバム『ah-面白かった』をリリースする。
仲村 瞳(なかむらひとみ)
編集者・ライター。2003年、『週刊SPA!』(扶桑社)でライターデビュー後、『TOKYO1週間』(講談社)、『Hot-Dog PRESS』(講談社)などの情報誌で雑誌制作に従事する。2009年、『のせすぎ! 中野ブロードウェイ』(辰巳出版)の制作をきっかけに中野ブロードウェイ研究家として活動を開始。ゾンビ漫画『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ~童貞SOS~』(著・すぎむらしんいち/講談社)の単行本巻末記事を担当。2012年から絵馬研究本『えまにあん』(自主制作)を発行し、絵馬研究家としても活動を続ける。2014年にライフワークでもある昭和歌謡研究をテーマとした『昭和歌謡文化継承委員会』を発足し会長として活動中。

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