【鈴木瑛美子 インタビュー】
五感を使って
私の音楽を体感してほしい
百変化を自由自在に
表現できるような自分になりたい
「Tell me」はアルバムの中で唯一ブリティッシュな匂いを感じさせる曲ですよね。
これはギターで作ったんですよ。前奏もイメージがあったから、ギタリストさんにお願いして弾いてもらいました。歌詞は私の恋愛経験です。当時の彼には女の子の友達がいて、私とつき合う前からの知り合いだから、楽しそうに私の知らない話題で盛り上がっていたりすると、私は寂しさを感じていたんです。“友達”っていう存在に嫉妬したりすることって少なからず誰でもあると思うんですけど…その気持ちを曲にしてみました。
そういう嫉妬心を描いた曲もあれば、「未来」のように叶わない愛を歌った曲もあって。こちらは3連符のちょっと暗めなムード歌謡を思わせるレトロな曲調ですね。
実はこういう曲のほうが大好きなんです。自分から生まれるものってマイナーな音を使ったものが多くて。“内側瑛美子”の根の部分が曲になって出てきちゃうとこうなるんです(笑)。
《傷に染みる酒が》や《知らない腰づかい》とか、歌詞も際どくて大人びていてドキドキしました。
この曲を作った頃はまだ19歳だったので想像で書いたんですけどね(笑)。大人になってお酒が飲めるようになった今の自分が聴いても、この歌詞は間違っていないと思いました(微笑)。これを書く前の私は制服を着て黒髪で清楚な高校生のイメージが表に出ていたんです。でも、実際の私はそういう部分だけではないから、この曲で“瑛美ちゃんってこうだよね”“瑛美ちゃんはこうじゃないと”と思っている人たちの考えを一度壊したかった。“いろんな曲を瑛美子は歌うんだぞ!”っていう意思表示がしたくて作ったんです。
そうでしたか。渋いガットギターからロックチューンへと変貌していく「重愛罪」も“内側瑛美子”から生まれた曲ですか?
そうですね。これは完全にとち狂っています(笑)。主人公は愛する気持ちが重すぎるんですよ。相手を苦しめちゃうから嫉妬しちゃいけない、気持ちをセーブして私ひとりで解決しなきゃいけないと思っているんだけど、少しはこの気持ちに気づいてほしいと思ってしまう。そんな苦しい気持ちを自分の中で爆発させた歌です。
このように恋愛を描いた曲もあれば、ベッドの上でダラダラとお休みの日を過ごしている自分をゆるいラップで歌った「Dalalife」みたいなチルな曲もあって。この曲の口笛はご自身で吹いているんですか?
はい。この曲は“オフ美子”ですね。
なるほど。そして、15曲を収めたCDとは別に、初回生産限定盤のみに付属されたDisc2では、歌でさまざまな国や音楽ジャンルへの旅を体感できる内容になっているのも面白かったです。
これはデビュー前から私がやりたかったことなんです。“瑛美ちゃんにいろんな曲を歌ってほしい”とずっと言われてきたので、そう言われると“自分はどこまで歌えるんだろう?”って試してみたくなりまして。今回は“World Trip”をテーマにいろんな国のトラディショナルな音楽を歌いました。曲のジャンルもさまざまですし、歌い方も変えているので、こっちはこっちですごく楽しめる一枚になっています。
歌っていてどの国が面白かったですか?
インドです!
「Pallu」ですね。
そうです。この曲では歌声を作っていますね。
和楽器で古き時代の日本を歌った「春待ち霞歌」も歌声を作っていますよね?
Disc2のほうが曲のテイストに合わせて声を作っています。ロックな「MAD CYCLE」も最後のシャウトとか、今まで試したことがない声で歌っていたり。
今作はDisc2も含めていろんな楽曲、歌唱を詰め込んだアルバムになりましたね。
はい。デビュー当時から“この先、どうなりたい?”と訊かれた時に“唯一無二の歌手になりたい”と答えていて。マルチにいろいろことをしていきたいと言っていたんですけど、それは今も変わっていないです。このアルバムはその第一歩で。七変化とは言わず、私は百変化を自由自在に表現できるようになりたいんです。このアルバムも曲ごとに表現が違うので、全曲を聴いていただければ、一曲聴くだけでは分からないいろんな鈴木瑛美子を感じてもらえると思います。
将来は海外進出も視野に入れておられるんですか?
はい! “海外でも勝負できるよ”“海外へ行きなよ”って言われても“自分は本当にまだまだです”と今は思っています。今のまま海外に出たところで、私程度の歌手はいっぱいいるんですよね。海外のすごい人たちのレベルまで自分はまだ到達してないというのは自覚しているからこそ、今はもっとスキルを磨いてから挑みたいと思っています。
1stアルバムですが内容の濃い作品になりましたね。
このアルバムには自作曲も入っていますし、いろんな曲を表現を変えて歌っている私が楽しめるので、これを聴いて鈴木瑛美子という歌手をより知ってもらえたら嬉しいです。私のことをご存知の方も、まだ知らないという方も、ぜひ楽しんでください!
取材:東條祥恵