清水崇監督(左)と大谷凜香

清水崇監督(左)と大谷凜香

【インタビュー】映画『牛首村』清水
崇監督×大谷凜香「ロケ中に、空気が
張り詰める瞬間を何回か感じました」

 ホラー界の巨匠・清水崇が放つ“恐怖の村”シリーズ。その『犬鳴村』『樹海村』に続く第3弾『牛首村』が、全国公開中。今回は、北陸最恐の心霊スポットとして名高い「坪野鉱泉」を主な舞台に、「牛の首」の伝説やあることにまつわる因習が絡む。清水監督と、シリーズ3作にアキナ役で登場する大谷凜香による、映画とは真逆の和やかなトークを公開する。
-大谷さんは、シリーズ全作に出演していますが、3作とも出演の仕方が強烈です。
大谷 年に1回の早いペースで作られているので、監督の中では次の案も進んでいると思いながら、次はどんな出演の仕方だろうかと。
清水 アッキーナに限らず死に方はほぼ僕が決めているかもしれない。例えば、『犬鳴村』だと、周りが見渡せる高所などなさそうな所で電話が掛かってきて、話している相手が目の前に落ちてくる…で、後から鉄塔が映るというアイデアを、脚本家に伝えた。だんだんと電話の声と実際の声が近づいてきて、しかも目が合いたいと(笑)。
大谷 そうなんですよ。落ちるときって、風とか強いし怖いし、目をつぶりがちなんですけど、頑張って目を開けていました。
清水 『樹海村』のときは、彼女が主役のオーディションに応募してきた。
大谷 そうなんです。
清水 そのときはまだ主役も決まっておらず、言っていなかったんで、プロデューサーに「大谷さんは、俺の中では決まっている。同じアッキーナの役があるから」と慌てて伝えました。
大谷 『犬鳴村』のときに真っ先に死んでいるから、「次回作があっても凜香は出ないよな」って皆から言われていたので。
-そうですよね。同じく3作ともに出演している遼太郎くん(笹本旭)は死んでないから分かるけど、アッキーナは毎回死んでいる。設定では別人?
清水 多分。「パラレルワールドなの」ってたまに聞かれるので、『樹海村』の舞台あいさつで、「3作目で謎が解けます」と僕が適当なことを言った。
大谷 おっしゃっていました。
清水 言ったんですけど、たぶん解けない。マルチユニバースって知ってます? 『スパイダーマン』の新作を見て、あっ説明するならこれだ…と。ドクター・ストレンジを連れてこようかと(笑)。
-大谷さんから見た清水作品の魅力は?
大谷 ジャパニーズ・ホラーをけん引されている存在で、小さい頃から『呪怨』は普通に知っていました。音が印象的過ぎて、目をつぶっていても思い出してしまう。だから小さい頃はお風呂のシャワーの音が嫌いで、無意識に恐怖心が浮かんでくるんです。
清水 僕は“お土産”と呼んでいるんですけど、ホラー映画を見た後に、家でシャワー浴びたりトイレに立ったり、一人になったときに思い出す、その頻度が多いものほど効果があるのかなと。自分が『E.T.』(82)で生涯の影響を受けたように、なるべくなら見てくれた方の生活や人生に爪痕を残したい。例えば…日本人の大半が泣ける=感動と思ってしまっていて、力技の押しつけがましい“お涙頂戴”でまんまと泣く…よかったあって。でも、そう言った割に少し後には何で泣いたか?覚えていなかったりする。“お土産”で引っ張りたいんですよね。その人の一生ずっと思い出させるくらいまで。
大谷 怨念ですか(笑)。
清水 でも、思春期や青春期に見たなら、ホラーじゃなくても、あるんですよね。僕もそうですし、どんなに優秀な映画がその後にできても、思春期や青春期に見たものが一番残っている。アクション映画でも恋愛映画でも。僕はずっと『E.T.』の感動は忘れないです。じゃぁ、何でホラー撮っているんだと(笑)。
-坪野鉱泉でのロケはいかがでしたか?
大谷 基本的に撮影が夜だったので、心霊スポットといわれる場所なのに景色がやたらきれいでした。山の中腹にあって、みんなで夕焼けを見たじゃないですか。ムチャクチャきれいでしたよね。街並みの先に海が続いていて、その奥に沈んでいく夕焼け。
清水 全部が融合していて。夕焼けとか花火を見ていつも思うんですけど、全く言葉を交わさないのに、今ここにいる人の気持ちが全部一緒になっている瞬間があると。そっちの方が感動しますね。誰かが死んだとか、うそくさいストーリーよりも(笑)。だから心霊スポットなのに、あの瞬間はすごかった。
大谷 不思議な感覚でしたね。
-清水監督の映画でいつも思うんですけど、撮影中は怖くないですか?
清水 僕はもう、いろんな所に行き過ぎていて、分からないです(笑)。しかも、どこへ行こうがこういう絵を撮りたい、こんな人物がこんな間合いで…といった妄想が先にあるので、上から人が落ちてくるとか。
大谷 お仕事モードになっているんですよね。
清水 だから、その妄想を具現化するために意識が動いているので、何か起こっても「ネタになるかな? いい予兆かも」と捉えてしまう。霊のせいで何か災いが…とか、そういう発想にならない。でも犬鳴トンネルは本当に怖かったです。坪野鉱泉も、夜はやっぱり怖いんですよ。普段来ない場所なのにロケ隊がワーッと来て、お弁当を食べたりもしている。よく見ると木がモゾモゾと動いているんです。野生の猿だった。においに反応したんだと思うけど、うじゃうじゃいた。あれは怖かった(笑)。
大谷 ハハハ、違う怖さですね。
清水 でも、夜は莉子ちゃんも、2人とも怖がっていたよね。
大谷 怖かったです。夏だったので、急に雨が降ったりやんだりして。一瞬ピタッと音が全くしなくなったと思ったら、急に風が吹いてきて木がざわざわしだしたり。空気が張り詰める瞬間を何回か感じました。坪野鉱泉は落書きが多いんです。莉子ちゃんが「それが浮かび上がってくる」とか言い出して。お願いだから疲れであってくれと私は思いました。
清水 ハハハハハ。言ってくれればスタッフが病院に連れて行ったのに(笑)。
-最後に『牛首村』のPRを。
清水 シリーズものとはいえ全部独立した話なので、前の作品を見ていなくても楽しめるし、一般向けのG指定なので、老若男女、できれば劇場で見てもらいたいです。当たり前ですが、映画というのはどんな映画監督も音も絵も劇場用に作り上げているので。過去2作も「ホラーが苦手」「絶対見ない」と言っていた知り合いから「目が覚めた」「ホラー愛が分かった」などの声を頂いていて、好きな方はもちろん、今回もそういう苦手な方にも見ていただけたらなと思います。楽しむ幅を広げてもらえたらと。
大谷 インターネットで配信している女子高生の役で、映画の中にはネット向きのアキナしか映っていないんですけど、学校や家にいるときには違うアキナがいて、そういう姿はSNS時代にはみんなが持っている。そういうもう一人の自分と向き合う作品にもなっていて、主演のKoki,ちゃんも一人二役をされているように、誰にでももう一人の自分と向き合うときが来たと思わせてくれるような、すごく怖い映画だと思います。
清水 素晴らしいPR。百点!
(取材・文・写真/外山真也)

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