まさしく自由奪還の瞬間 10周年を迎
えたThe BONEZの47都道府県ライブハ
ウス・ツアー、熱狂と歓喜の中でスタ
ート

10th Anniversary 47 AREAS

2023.5.12 恵比寿リキッドルーム
結成10周年のアニバーサリー・イヤーを迎えているThe BONEZによる自己史上最大規模となるライブハウス・ツアー『10th Anniversary 47 AREAS』が、去る5月12日、東京の恵比寿リキッドルーム公演を皮切りにスタートした。これは今月から2024年1月までの長期間を費やしながら日本全国47都道府県、50ヵ所を巡演するもの。コロナ禍においてもさまざまなガイドラインのもとで「その状況下においてできること」を模索しつつ限界ギリギリのラインを求めるように精力的な活動を続けてきた彼らだが、当然ながら何よりも望んでいたのは、ライブハウスでライブハウス然としたライブを実践できる環境を奪還すること。このツアー自体が組まれた時点ではまだある程度残されていた世の中の規制もほぼすべて解除となり、まさに絶好のタイミングでの開幕となった。
当日は、当然ながら超満員。開演定刻の午後7時を10分ほど過ぎた頃にBGMの音量が大きくなり、場内が暗転。大歓声にまみれながらステージ上に登場したメンバーたちの表情は喜びが満ち溢れていたが、それはこの瞬間到来を待ち続けてきたオーディエンスについても同じことだった。“ジャーン!”という挨拶代わりの最初の一音に続いてJESSEが「始めようか!」と呼びかけた次の瞬間、最新アルバム『Yours』の幕開けを飾っていた「Love song」が炸裂した。
JESSE
今回のツアーはもちろん4月19日に発売されたばかりの同作に伴うものでもあるし、破裂寸前レベルまでエネルギーが詰め込まれたかのようなその作品像自体が、彼らが「何からも制限・抑圧されることのない100%のライブハウス公演」を念頭に置いていることをうかがわせるものだった。そして実際、同作の全12曲の収録曲のうちほとんどの曲がこの日は披露されたが、そうした楽曲たちが以前からの鉄板曲に勝るとも劣らない熱狂を生んでいたことが印象的だった。しかも、そればかりではなく意外な過去曲や、まさかのカバーも登場。ツアー自体が始まったばかりであるだけに具体的なタイトル等はあまり挙げずにおくが、この先もこのツアーのセットリストは、期待に応えつつ意外性も盛り込みながら研ぎ澄まされていくことになるのだろう。
T$UYO$HI
ZAX
そしてこの一夜を通じて改めて実感させられたのは、The BONEZがいかにライブハウスという空間を愛し、心底好きな音楽をやっているかということ。高まった熱を一瞬たりとも低下させようとしない全力疾走型のそのライブは、長いキャリアを持つミュージシャンの集合体とは思えないような、張り裂けんばかりの若々しいエネルギーに満ちたものだった。しかも重要なのは、無闇に暴走しているわけではなく、そこに経験に裏付けられたクオリティやコントロール術が伴っているという事実だろう。JESSEはライブの中盤、全員の気持ちを代弁するかのように「みんな待っててくれて本当にありがとう。これはみんなが勝ち取ったもの。これが50本も続けられるなんて恵まれてると思います」と語っていたが、純真無垢な子供の気持ちと大人ならではの経験値の両方を持ち合わせていることがこのバンドの強みであり、だからこそこうしたツアーも可能なのだろうと感じずにいられなかった。
JESSE
KOKI
T$UYO$HI
ZAX
最後の最後には決して広くはないフロアにウォール・オブ・デスが発生するまでに至ったこの夜のラスト・シーンは、ステージ上から次々にオーディエンスの波に飛び込んでいく4人の姿だった。そうした光景とは対照的に、ステージ終盤には、今回のツアーの東名阪公演ソールドアウトを受け、The BONEZ史上初のホール・ツアー(しかも対バン形式!)が実施されることも発表された。密なライブハウスとは異なる全席指定のホール公演だ。自由を奪還し、すべての垣根を取り払うように熱を広げていくロック・バンド、The BONEZの縦横無尽な動きから目を離さずにおきたいところだ。
The BONEZ

Text by 増田勇一
Photo by Yoshifumi Shimizu

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