阿部真央

阿部真央

【阿部真央 インタビュー】
人に届けるためには、
自分が楽しく歌うのが一番いい

何回もきける軽やかさと楽しさがある、
そういう曲を生み出せた

その自然な変化とチャレンジの日々の中、「I Never Knew」が生まれたきっかけは?

えーとね、失恋です!(笑) ただ、曲が生まれたきっかけはひとつの恋が終わったことだったんですけど、失恋したからこういう曲に仕上げたっていう感じではないんです。Aメロを変えて、歌詞も全部変えているので。

これもピアノで作ったのですか?

そうです。これまでのやり方だと、自分に限界を感じていて。昔、CHARAさんに“いろんなおもちゃを自分に与えて遊んでみるのがいいんだよ”と言われたことを思い出して、もう使っているものから変えてしまうのも策としてはありだと思ったんです。あと、音楽的な相談に乗ってくれていた信頼している友人と岡崎体育くんのふたりから、“阿部真央はR&B路線をやったほうがいい”と言われたっていうのもありますね。私の中でR&Bの人ってピアノを弾いているイメージがあったので、それもピアノで曲を作ることのあと押しになりました。

あるミュージシャンが“ギターとピアノでは出てくるメロディーが違う”と言っていたのですが、それは今作の質感に影響しています?

していますし、私の作り方だとピアノのほうが合っていることにも気づきました。私、頭の中でなんとなくメロディーを作ってから楽器を手にするので、ギターよりもピアノのほうが簡単に遊べるんですよ。だから、自由になったかもしれないです、メロディーは。

制作過程もスムーズでした?

スムーズでした。ただ、プリプロをしたあとの第一稿を聴いて“何か違うなぁ”と思っていて、そこからかたちになるまでに5カ月くらいかかっているんです。“これ、Aメロを作り直そうかな?”と思って、そこから先はスムーズでしたね。だから、時を待っていたのか、私のモード待ちだったのか…あっ! 2021年の秋だから、やっぱり動き出したのは金髪にした頃かも。そこから一気に動き出した気がします。

前作の「ふたりで居れば」(2021年2月発表の配信シングル)とは逆方向に吹っ切れているのが象徴的ですよね。

確かに。お洒落ですもんね。

アーバンな感じで。

そこは考えていなかったかも。でも、そう言われてみればそうですね。

最初に聴いて思ったのがそれと、新しいフェーズに入って新たな世界を作り上げているっていうことでした。

嬉しい! とはいえ、もう次の曲のレコーディングをやっているんですけど、同じような感じかって言うと、実はそうではなくて。だから、今までと違うことをやることに、本当に抵抗がなくなっているんです。むしろ、自然と楽しめていますし。

今作でESME MORIさんとタッグを組んだ理由というのは?

うちのディレクターにお洒落な音楽をやりたいと話したら、アレンジャーの候補にESMEさんを勧めてくれて。で、ESMEさんがやってらっしゃる曲を聴いたら、めちゃくちゃカッコ良いアレンジだし、音が楽しいと思ったから、“絶対にこの人にお願いしよう!”と。

今の“音が楽しい”という言葉ですごく腑に落ちました。トラックがカッコ良いのはもちろんですが、ひとつひとつの音に洒落っ気があるというか。

分かるー! そうなんですよ! 遊んでいるんですよね、ちゃんと。彼の頭の中で鳴っている音って洒落っ気があって、茶目っ気もあるっていう。

出だしのアンビエントな感じからゆっくり踊れるサウンドに変化していくし。以前に真央さんがダンサブルな曲が好きだと話していたのを思い出しました。

そう! もともとこういうのが好きなんですよ。だから、“やっとできた!”という感じかもしれないです。

アレンジに関して何かリクエストしました?

ESMEさんの持っている良さのひとつに、お洒落の枠組みの中で温かい遊びがあるっていうのがあるんですけど、実は第一稿のアレンジを聴いた時に“思った以上にニューヨークの小さなマンションの一室になっちゃったな”と思ったんです。最先端のお洒落さだった。それだと私の中で閉塞感があったんです。なので、ニューヨークのマンションからちょっと温かいところに出てもらって、床が木の楽しいバーみたいなところで、ピアノを囲んでひとりが歌い出したらみんなが踊り出す…みたいな気軽な雰囲気でって説明したり。あとは、ESMEさんのアトリエで“1番のBメロにノリの取っかかりができるビートを入れてほしいです”と話して、その場で作ってもらったり。そういうセッションはありました。

歌、声質の質感もちょっと変わった印象を受けました。肌触りが違うというか。

変わりましたよね。友人に聴いてもらった時にもそう言われて、“やっぱり!? 変わったよね”って。力強く歌うパートって今までは投げるイメージだった…“届けー!”みたいな(笑)。それをやめて、自分が楽しくアガる出し方に変えました。前に投げる感じじゃない…野球で言うと投手ではないっていうか。

バレーボールのトス的な?

そうそう、それだ! 競技が変わっちゃっている(笑)。でも、上には出すイメージなんですよね。人に聴いてもらう、人に届けるということは、私の中で最重要課題ではあるんですけど、それよりも大切なのは、“歌っている自分が楽しい”っていうこと。人に届けるためには、自分が楽しく歌うのが一番いいというか。その心境の変化はあったかもしれないですね。

より良い届け方というか。

そうだと嬉しいです。

“自分が楽しい”ということで言うと、後半のフェイクがまさにそうですよね。

めっちゃ楽しかったー。フェイクをしっかりと入れるためにレコーディングの時間をとってもらったのは初めてだったんです。改めて“難しいなぁ”と思いながら、楽しく取り組めました。

2021年の締め括りに新しい世界が鳴っているっていうのは素敵でした。

何回も何回も聴ける軽やかさと楽しさがある、そういう曲を生み出せたのは私にとってもすごい財産になっているので、ぜひたくさん聴いてほしいですね。

取材:竹内美保

配信シングル「I Never Knew」2021年12月15日配信開始 PONY CANYON
    • ※配信先の詳細は、オフィシャルHPをチェック
阿部真央 プロフィール

アベマオ:1990年1月24日生まれ、大分県出身。06年、高校2年生の時に『YAMAHA TEENS' MUSIC FESTIVAL』の全国大会で奨励賞を受賞。09年1月にアルバム『ふりぃ』でデビュー。感情的なアコギで押し出す、等身大でリアルな歌詞、表現力豊かなヴォーカル、バラエティーに富んだ楽曲、同世代の女性を中心に、幅広い層から注目と共感を集める。14年10月にデビュー5周年を記念して初の日本武道館公演を開催。16年5月、産休明け第一弾シングル「Don’t let me down」で完全復活を果たし、デビュー10周年となる19年1月にはベストアルバム『阿部真央ベスト』を発表し、2度目の日本武道館公演を成功させた。阿部真央 オフィシャルHP

「I Never Knew」
Lyric Video(Short Ver.)

OKMusic編集部

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