『ゴッホ展』音声ガイドナビゲーター
・鈴木拡樹インタビュー 「相棒とし
て僕を役立ててくれれば」

9月18日(土)に開幕した『ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』は、世界中から絶大な人気を誇るフィンセント・ファン・ゴッホの展覧会。本展は、ゴッホに魅了され、世界最大の個人収集家となったヘレーネ・クレラー=ミュラーによるコレクションから、油彩画28点と素描・版画20点などが展示される。その音声ガイドナビゲーターを務めるのが、俳優の鈴木拡樹だ。

鈴木といえば、2016年に舞台でゴッホを演じたこともあり、インタビューでも「縁があるといいますか」とゴッホとの意外な“再会”に声を弾ませた。音声ガイドナビゲーターを務めるにあたり、ナレーションと台詞部分の強弱をつけた鈴木は、「道中の相棒として僕を役立ててもらえると嬉しい」と朗らかに話す。本インタビューでは、『ゴッホ展』の見どころならびに音声ガイドの聴きどころなどを語ってもらった。
『ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』
16年ぶりに来日した<糸杉>の傑作に注目、「この画一枚で情報量がどれだけあるんだろう」
――『ゴッホ展』の音声ガイドナビゲーターとなりました。鈴木さんは2016年の舞台でゴッホを演じたこともありますが、改めてゴッホについてどのような印象を持っていましたか?
以前、僕が演じたときに感じたゴッホさんは、先を行きすぎていた方なのかな、という印象でした。きっと天才同士なら共感できた部分もあったと思うんですけど、人になかなか理解されない理論を持っていた方なので、天才の域に達していないとわからないのかもしれない、という表現だとすごく感じていました。「鬼才」や「炎の人」と言われたりもしていますし、そうした感情的なゴッホさんの部分は、演じていた当時も衝撃でした。気難しいように感じる一方で、作品には力強さと同時に心の繊細さも出ているので素晴らしいなと思います。
――今回の展示で、鈴木さんが特に楽しみにしている作品は何でしょうか?
やはり16年ぶりの来日となった《夜のプロヴァンスの田舎道》です。タイトルも秀逸ですよね。天高くすーっと伸びているような糸杉が、一番最初に目に入ってきて。次にだんだん輝く星と、三日月がすごく印象的で、この世界観全体に吸い込まれていくように描いている印象を受けます。実は人物もいるんです。人物が描かれている画だと、僕は最初に人物に目が行くことも多いのですが、糸杉に関しては、人物よりも何よりも真っ先に糸杉を見てしまうので、すごいインパクトだと思っています。
――タイトルを知らないとしても、糸杉に目がいってしまいますもんね。
そうなんですよね。ゴッホさんは、そういうところも考えて描かれていたんだろうから、すさまじいですよね。何を印象づけるか、見る人の目線を考えているということなので。そうした部分が素晴らしいなと思いますね。
――観る人の視点に立つということは、鈴木さんの主戦場でもある俳優のお仕事にも通じそうです。
確かに、そうですね。どの部分を立てるか、どういう印象を持って観てほしいのかは、台本を読む時点で考えたりはします。それがやりとりの中で生きてきたりということで考えると、この画一枚で情報量がどれだけあるんだろう、とやはり感動します。
鈴木拡樹
ヘレーネに見る「先見の明」は、鈴木も持っている……!?
――音声ガイドナビゲーターを務めるにあたって、特にどういうことを意識されましたか?
ナレーション部分は基本的に平坦にしつつ、その中に聴いてもらいたい情報はピックアップしていこうと考えていました。今回は僕がセリフ部分もやらせてもらっているんです。ゴッホさんだけではなく、周りにいた人物が彼に対してどう思っていたのかというセリフパートもあるので、(ナレーションとの)差を作って楽しんでいただこう、というのがコンセプトでした。
――セリフパートとは、具体的にどのような内容ですか?
ゴッホさんは手紙も残されていて、「この絵は、実はこういうふうに思ったときに描いたんだよ」と、したためていたんです。そうした部分のセリフも今回ちらほらあります。なので、その手紙を書いていた当時の気持ちを具現化したりもしました。セリフは3パターン録っていただいて、その中からどれを採用するか、選んでいただいたりしています。やるたびに「こういう感じで」と指示をもらえたので、僕もすごく楽しくやれました。
――本展は、ゴッホの世界最大の個人収集家となったヘレーネ・クレラー=ミュラーのコレクションからの展示です。そのあたりについても、音声ガイドでご紹介されているんですか?
そうですね。この収集家のヘレーネさんもやはり天才と言いますか、ゴッホさんと同じく、先を行く人だったんだな、という感じがしますよね。ゴッホさんの作品は、彼が生きていらっしゃるときには数点しか売れなかった状態だったので、そこに目をつけて買うこと自体すごいことだと思います。ヘレーネさんがいたからこそ、ゴッホさんの作品はここまでちゃんと残った状態で世に出ているんですし。弟のテオさんも、ゴッホさんが生きていたときからずっと「お兄ちゃんはすごい」と肯定し続けていましたし。このふたりの力は計り知れないなと思います。ですので、今日(こんにち)『ゴッホ展』ができているのに大きく関わったふたりのエピソードも、ご紹介しています。ゴッホさんだけではなく、周りの支えてくれた方にも興味を持って見て、聴いていただければ嬉しいです。
鈴木拡樹
――ちなみに、鈴木さん自身は「先見の明」があるほうですか?
僕には見極めの能力、ありません(笑)。自分の感性で「これはすごい」というのを見抜いてとかは……ないです(笑)。
――例えば、「この俳優さんは絶対人気になると思っていた!」などが的中したりは……?
周りで同じく演劇をやっていたりする人間は、才能のかたまりばかりなんですよ。だから、売れていった過程を見ていても、「まあ、うん! だろうね……!」と誰しもが納得の目で見ているはずなんです。だから、僕の目がいいとかではないですね。やっぱりすごい人はすごいです。
――そうした世に出ていった人たちの共通点はあると思いますか?
やっぱり情熱の部分というのは大きいのかなと思います。情熱の向け方は本当に人それぞれですけど、ある種の狂気を感じるぐらいの執着を作品に対して感じる人は、やっぱりいるんです。お客さんがそれに引き込まれるのは至極当然だろうな、と思います。
――鈴木さんも、そのおひとりということですよね。
情熱は注いでいるつもり、です(笑)!
鈴木拡樹
鈴木がハマった意外なもの「人が見たら狂気を感じるかも(笑)」
――ヘレーネでいうゴッホのように、何かに魅せられたり、強烈にハマったようなこと、過去に鈴木さんはありましたか?
執着と呼べるまではないですけど……ハマったものは結構ずっと買い続けたりするタイプではあります。僕、コンビニにも売っているようなタイプのカフェラテが大好きなんですよ。いつも大量に買ってストックしているんです。冷蔵庫の中にはびっしりダース以上つまっている状態のカフェオレゾーンがありまして。それは……もしかしたら人が見たら狂気を感じるかもしれません(笑)。ダース分ぐらいないと、ちょっと不安になるので。
――いつから、そんなダース買いを……?
もう何年になるんですかね~……。割と長いと思います。その商品に出会ってからなので、5~6年は経っていますかね。
――飽きないんですね! ひとつのものにハマると買い続ける傾向は、ほかのものでも同じですか?
すべてに当てはまるわけではないんですけど、あります。期間は短かったりしましたけど、グミにハマった時期もあって、何種類も買い集めて、みたいなハマり方をしたときもありましたね(笑)。ポテトチップスや、お菓子とかが多いです。
――いろいろなお話、ありがとうございました。最後に、展示と音声ガイドを楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。
ゴッホさんのみならず、絵画というものに自分自身がもっと興味を持ちたくて、という思いもあり、今回音声ガイドナビゲーターという形で関わらせてもらいました。美術館はお友達と行ったとしても、大きな声でしゃべりながら、細かく解説してもらいながら回るのは難しいと思いますので、ぜひそういうときのお助けとしてガイドを利用してほしいです。特におひとりで行かれる方には、道中の相棒として僕を役立ててもらえると嬉しいです。見て回って、詳しくなっていただきたいです。
鈴木拡樹
鈴木拡樹が音声ガイドナビゲーターを務める『ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』は、2021年9月18日(土)から12月12日(日)まで、上野・東京都美術館にて開催。

取材・文:赤山恭子 写真:大橋祐希
衣装協力:〈シャツ〉Wizzard(ウィザード)
[問い合わせ先]TEENY RANCH(ティーニー ランチ)03-6812-9341

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