『平穏世代の韋駄天達』最終回直前イ
ンタビュー 岡村明美&石田彰が語る
“師匠の思い、弟子の思い”

フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送中のTVアニメ『平穏世代の韋駄天達』。その最終話(11話)が、いよいよ9月30日(木)に放送される。放送に向けて、地球最強の戦闘力を持つ“最凶”韋駄天のリンを演じる岡村明美と、リンの一番弟子であるプロンテアを演じた石田彰の対談インタビューをお届けする。
【インタビュー】
左/リン(CV:岡村明美) 右/プロンテア(CV:石田彰)
――作品の印象をお聞かせください。
石田:倫理的に責められそうな描写の多い作品ですよね。でも深夜アニメとして放送する分には、それがかなりのアドバンテージなのかなとも思います。世間を煽る話題性だけを目指して作品を作るのは間違いだと思いますが、文句を言われないことだけを目指すのも間違いだと思いますから。だからこそ、こういった作品がアニメとしても許されているうちは、日本も安泰だなと思いました。エンタメは、多少の毒をはらんでいる作品の方が面白いと、個人的には思います。
岡村:(笑)。私は、タイトルを初めて見た時、てっきり陸上がテーマの作品だと思ったんです。
石田:NHKでやりそうな感じのね(笑)。
岡村:そうなんです! “韋駄天=走る”のかなって。タイトルのロゴにも足のマークが付いていますし、これは絶対陸上のお話だなと。ところが実際は、エロい! グロい! 「ノイタミナさんは攻めるな~」と、びっくりしちゃいました。私は、血が出たりすると「キャー!」って目を背けたいタイプ。アフレコの段階では絵に色が付く前なので大丈夫なんですが、オンエアを見ると「こんなに血が出てたんだ……!」と(笑)。でもこの作品は色遣いが独特なので、なんとか大丈夫です。とにかくドキドキしながらオンエアを観ているので、「キャー! うわっ! あっ!!」って驚いているうちに、毎話あっという間に終わっちゃうんです。
石田:あと、魔族が氷山から見つかるというエピソードが、『デビルマン』みたいだなって。
岡村:あー! 私も思いました!
石田:でも全然違うお話でしたね(笑)。神様・魔族・人間の三つ巴が描かれるのですが、それぞれこんなにも考え方が違うんだなと。
岡村:魔族の脳を改造しちゃうのも、なんだか懐かしく感じました。懐かしさと新しさが混在していて面白いですよね。
「このキャスティングは狂ってるな」(石田)
(c)天原・クール教信者・白泉社/「平穏世代の韋駄天達」製作委員会
――キャスティングについてはいかがでしたか?
石田:僕は最初、韋駄天側のキャストの情報しか知らなかったのですが、「このキャスティングは狂ってるな」と思いました(笑)。
岡村:あははは!
石田:メンバーに入れていただいてありがたいのですが、こんなキャスティング、今どきないと思うんです。詳しくは知りませんが、一体いくらかかってるんでしょう。そういった現実的な部分を考えても、なかなかそろわないメンバーがと思いました。でも魔族や人間側で若いキャストさんが入っていたので、きっと、韋駄天側が強いことを印象付けるためのキャスティングなんだろうなと。
岡村:私も、ひとまず自分のことは置いておくとして、「うわ、4番バッターばっかり!」と思いました(笑)。しかも、皆さんイメージとぴったり。となると、なんで私がリンにキャスティングされたんだろうって。
石田:なんでってことはないでしょう(笑)。
岡村:リンが800年生きているキャラだから? それともビジュアル? といろいろ考えました。
――収録の雰囲気をおしえてください。
石田:分散収録になってしまっているので、すべてを皆さんと一緒に収録できたわけではないのですが、僕は緒方さんと一緒に収録することが多かったです。イースリイのような役を演じる際の緒方さんのお芝居は安心して聴いていられるので、掛け合いの相手としても、とても演じやすかったです。気心の知れた役者さんですから、こちらも構えずにいられるのがよかったです。
「息をしなくてもセリフが言えるものか、練習してみたんですけど…」(岡村)
(c)天原・クール教信者・白泉社/「平穏世代の韋駄天達」製作委員会
岡村:私も、最初の頃は韋駄天側のキャストさんと一緒に収録することが多かったです。リンは「プロンテア 久しぶりだのう」と落ち着いて言ってるのですが、私自身は「お久しぶりですっ! 石田さんっ!」っていう気持ちだったので、本番ではちゃんとリンの威厳を出さなきゃと思ったりしました(笑)。元の事務所の先輩ですし、石田さんのことは勝手にお慕い申し上げているのですが、こうして一緒にマイク前に立つ機会は多くはないので。
石田:そうですね。
岡村:なので、ついついうれしい気持ちが出てしまいました(笑)。あと、ハヤトはもともとリンのことを「クソババア」と呼ぶのですが、朴ちゃんがアドリブで「クソ」増し増しにしてくるんです(笑)! 「幼児体形」だの「クソババア」だの、ハヤトは言いたい放題なので、リンがどんなことを言われると殴るのか、一度調べてみたくらいです。
石田:(笑)。
――アドリブを入れられたら、それに反応しないといけないですもんね(笑)。
岡村:ちなみに、「ババア」は許してるみたいです(笑)。それから、リンは強いキャラクターですし、そもそも韋駄天は呼吸をしていないので、なるべくアクションの息は入れないようにしていて。一応、息をしなくてもセリフが言えるものか、練習してみたんですけど、すごく難しくて。これは死ぬなと思いました(笑)。なので、どうしようか考えて、あまり口を開かずに演じたんです。ついつい息のアドリブもしたくなってしまうのですが、それを我慢するのが挑戦でした。でも逆に、リンに殴られるキャラクターは、吹っ飛ばされたりボコボコに殴られたりと、やられるアドリブをしなきゃいけないので大変そうです。
(c)天原・クール教信者・白泉社/「平穏世代の韋駄天達」製作委員会
――魔族側のキャストさんのお芝居はいかがでしたか?
石田:収録は一度もご一緒できなかったのですが、宮本充さんが演じられているタケシタのお芝居が印象的でした。他のキャラクターは、個性的で我が我がというキャラクターばかり。そんななかで、タケシタの一歩引いているお芝居がすごく目立っていたんです。さすが宮本さん、うまいな~! と思いましたね。
岡村:私が気になっていたのは、バコードさん! ずっとバーコードさんだと思ってたらバコードさんだったんですよね。私も出来上がったものを観るまで、どなたが演じられるのか知らなかったのですが、オンエアをみたら龍田直樹さんのお芝居が本当に素晴らしくて……! 一番のお気に入りです。いつもバコードさんに注目して観ています。一緒に収録できた方でいうと、ブランディさん(演:本名陽子)。あまりにボコボコにしたので、一緒に収録しながらも、「なんかごめん…!」と。
石田:あはは。
岡村:しかもその時は、現場にオオバミ博士役のチョーさんもいらっしゃったので、私も心がめちゃくちゃになりました。私ばっかり汗をかいていたような気がします(笑)。
「プロンテアにとっては大抵のことは重大ではない」(石田)
――ご自身が演じるキャラクターについてお聞かせください。演じる際に意識していることなどはありますか?
石田:初登場時のプロンテアとイースリイのやり取りは、あえて怪しげに見せています。そうすることで、視聴者の皆さんに「このふたりは一体……?」と思ってもらえるようにする狙いがあるんだろうなと。なので、初登場時だけは独立した見せ方を意識しています。でもそれ以降は特に怪しく見せる必要がないので、ごく普通に演じています。
(c)天原・クール教信者・白泉社/「平穏世代の韋駄天達」製作委員会
ただ、リンに対しては平常心ではいられないのがプロンテア。ハヤトより能力が高いにもかかわらず、リンにはすっかり恐怖心を植え付けられているというギャップがあります。ハヤトがリンに対して全く動じないどころか、平気で向かっていくタイプなので、そことの対比の役割が与えられているんだろうなと。あとは、どんなに重大な局面であっても、たいして重大に捉えていない……というか、プロンテアにとっては大抵のことは重大ではないので(笑)。魔族が復活したところで、自分の力でどうにかできるという自信があるんです。だから、イースリイのように先のことを予想して作戦を練ることもないですしね。
(c)天原・クール教信者・白泉社/「平穏世代の韋駄天達」製作委員会
岡村:リンは、800年生きているんです。1話の冒頭のシーンでは、涙を流すなど、まだかわいらしい人間っぽい面がありましたが、今のリンは「~じゃろ」という口調の最強韋駄天ですよね。
600年かかってようやく笑えるようになった、リン
――これまでのエピソードのなかで、印象深いシーンがあれば教えてください。
石田:前半は、韋駄天側が圧倒的に有利なところがポイントかなと。プロンテアとハヤトが封印のある島で魔族と戦っていて、イースリイは研究所でピサラと一騎打ちするっていう、それぞれの戦闘シーンは、プロンテアの「相手も決まったし、戦おうか」というセリフもあって印象的でしたね。プロンテアと、ハヤト&ポーラ組は、視聴者の方も心配していなかったはず。となると、イースリイが果たして知略で勝てるのかどうかが、ドキドキしたはず。それぞれ三者三様の戦い方を見てもらえたんじゃないかな。今後の見どころは、逆にけちょんけちょんにやられていた魔族側が、どう巻き返してくるのかという部分。組織が散り散りになっていった先で、魔族たちがどう策をひねり出してくるのかを楽しみにしていていただければと思います。
岡村:私は、まずリンの過去が印象的だったんです。おじい様たちが魔族を封印してからの50年間、何もできずに恐怖と戦っていたリンが、はたと起き上がって350年間自らを鍛え上げ、そのあとプロンテアを引き出してからはさらに200年鍛え上げ、600年かかってようやく笑えるようになったことが、すごく切なくて。頑張って強くなったんだね、大変だったねって。韋駄天は神なのですが、あんなに泣くところも人間っぽいですよね。いまはすごく強くて飄々としているけれど、ものすごく頑張ったんだなってことが印象に残りました。今後は……頭のいい人たちがいろいろ読み合ってどうにかなっていくと思います。
石田:(笑)。
岡村:私たち“脳筋チーム”は、戦ってなんぼなので! 「立ちはだかるやつらは皆皆殺しじゃ!」というテンションでやっていくと思います。
(c)天原・クール教信者・白泉社/「平穏世代の韋駄天達」製作委員会
「恐怖に勝つにはそうするしかなかったと思うと…」(岡村)
――師弟関係であるリンとプロンテアを、お互いにどうとらえていますか?
石田:プロンテアにとってのリンは、恐怖の対象。でもその恐怖を植え付けられることになったのは、リンが先代の犠牲を経験しているからなんです。まだ成熟しきっていなかったリンが、何とか立ち直って、自分で次の世代を育てあげなければいけないという危機意識があったからこそ、プロンテアもあそこまで強くなったわけで……。そういう側面があることを、視聴者の方は最初から知っているので、どんなに「クソババア」と言われていても、リンはただの鬼教官には映らないんですよね。プロンテアも、その辺は一応聞いてはいると思います。ただ……なにせ半殺しにされている当事者なので(笑)、彼は恐怖の方が大きいんでしょうね。「なんで俺はこんな目に合うために引き出されたんだ?」と思ってるんじゃないでしょうか。
(c)天原・クール教信者・白泉社/「平穏世代の韋駄天達」製作委員会
岡村:リンは、プロンテアを見つけた時、ものすごくうれしかったと思います。「一人前と呼べるのはプロンテアだけ」と言っているので、リンのなかにも一人前に育て上げたという意識があるんでしょうね。最初のうちは人間味のあったリンが、あそこまで脳筋になってしまったのは……きっと鍛えすぎたせい? 戦うための脳になるくらい鍛えたんでしょうね。恐怖に勝つにはそうするしかなかったと思うと、切ない!
――クライマックスに向けて、ファンの方々に向けて、今後の見どころ含めてメッセージをお願いします。
石田:一昔前なら、PTAに「見ちゃいけない番組」とリストアップされそうな内容の作品です。ということは、今見られるうちに見ておかないと、いつ見られなくなるかわかりません(笑)。そういう意味でも危険な作品ですので、お見逃しなく!
岡村:この作品は、懐かしい雰囲気がありつつ、斬新な部分もあって面白いんです。サブタイトルが文字として表示されるのではなく、1話なら岩に、掘って書かれていたりするんです。それを探しながら見るのがすごく楽しくて。いろんな面で視聴者を裏切ったり、ものすごく期待をあおってくる作品なので、一度見たらきっとクセになるはず。こんな作品、私は初めてだったので、すごく楽しかったです。最後まで楽しんでくださいね。
アニメ『平穏世代の韋駄天達』最終話は、9月30日(木)24:35~ フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送。
取材・文=実川瑞穂

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