ばぶれるりぐる『いびしない愛』竹田
モモコ(作・出演)×チャーハン・ラ
モーン(演出)にインタビュー~「ズ
ルい所がたくさん出た、私にとって一
番恥ずかしい戯曲です」

高知県西部で使われる方言「幡多(はた)弁」を使った、ダークだけどカラッと笑える会話劇で注目される、大阪在住の劇作家・俳優の竹田モモコ。2020年に「第26回劇作家協会新人戯曲賞」を受賞した『いびしない愛』を、自身の演劇ユニット「ばぶれるりぐる」(注:幡多弁で「ばぶれる」は暴れる、「りぐる」はこだわるという意味)で上演する。先日新築移転した「インディペンデントシアター2nd」の杮落としシリーズの作品に選ばれたのに加えて、竹田の故郷・高知県でも2都市で公演を行う。
そのばぶれるりぐるで、全作品の演出を担当しているのが、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品などの宣伝美術で知られるデザイナー、チャーハン・ラモーンだ。関西では演出家としても活躍しているチャーハンだが、彼のデザイナー目線の演出が、ばぶれる独自の空気感を生み出したと言える。今や最強コンビとなりつつある、竹田とチャーハンに話を聞いた。

■幡多弁はリズムが面白くて、言い方を真似したくなります(チャーハン)。
──まず、ばぶれるりぐる結成の経緯からお聞かせください。
竹田 2018年に結成する前は、10年ぐらい役者をやっていて、その中で「もうちょっとこうしたら面白いのに」と、もどかしさを感じることがあったんです。暗いテーマのお芝居に関わることが多かったんですけど、もっと楽しく提供できるんじゃないかって。たとえば現実の会話だと、もっと核心の部分をヌルっとさせたりするじゃないですか?
──確かに竹田さんの作品は、脇道の会話が多いですよね。でも現実の会話でも、いきなり本音をガンガンぶつけ合うみたいなことは、めったにない気がします。
竹田 「もういよいよだ」って追い詰められないと、人ってなかなか核心を口にしないと思うんですけど、芝居だと割とストレートに表現してしまうことが多いなあと。そもそも人って、特に大人になってからは、簡単に口ゲンカしないですよね?
チャーハン そうそう。できるだけ避けよう、避けようとする。
竹田 でも「そういう芝居がしたい」と思っても、役者として(出演依頼を)待つだけではどうしようもない。やりたい芝居を一から自分で書いて、やりたい人たちと一緒にやる方が、ストレスなく創作活動ができると思ったんです。
それで2017年に初めて戯曲(『ほたえる人ら』)を書いて、知り合いの制作さんに「カフェ公演とかできへんかな?」という相談をしたら「この戯曲は劇場を借りて、ちゃんと上演した方がいい」と言って、あれよあれよという間に公演の手はずを整えてくれたんです。それで「ばぶれるりぐる」という屋号で、活動を始めることになりました。
竹田モモコ。 (c)︎horikawa takashi.
──その演出を、チャーハンさんに依頼した理由は?
竹田 チャーハンさん演出の舞台に、2回出演したことがあって、すごくバランス感覚のいい人だと思ったんです。それとチャーハンさんのお母様が、幡多郡大月町のご出身なので、明るいけどもどこか閉鎖的なあの土地の雰囲気が、すぐ伝わりそうだと思ったのも大きかったです。でも最初は、4回も断られました(笑)。
──三顧の礼を通り越して。
チャーハン 現場に作家がいるのが嫌なんですよ(一同笑)。いつも「自分で(演出)やったらええやん」って言ってるんですけど。
竹田 そう言って、毎公演断られてる(笑)。でも私は役者として出ているし、自分が書いた本はどうしても愛情があり過ぎるから、客観的に観れなくなるんですよ。だから他の人の手が入った方が、絶対にいい。
チャーハン 僕は「シティーボーイズ」が好きで演劇を始めたんですけど、竹田さんの本は会話の面白さで見せるという、シティーボーイズにも通じるような世界だったので、それなら僕でもある程度演出できそうだと。でも竹田さんがやっても、今よりトーンの低い、いいお芝居になると思いますけどね。
竹田 確かに私の頭の中では、もう少し落ち着いた芝居をイメージして書いてますけど、チャーハンさんの手にかかると、想定よりもアップテンポになるんです。やっぱり戯曲の中の面白い所を貪欲に拾いに行くし、字面だけだと怒っているような会話も、さほど怒ってないように見せるとか、ちょっとハズした演出も付ける。
だから毎回、私の考えた印象とは違う舞台ができるんですけど、そっちの方が助かります。頭の中で再現したものを目の前に出されても「あ、やっぱりこうなった」で終わるんですけど、そうならない方がお芝居は面白いと思います。
「ほたえる人ら」PV -whats 幡多弁-
──デザイナーの演出だなあ、と思う点などはありますか?
竹田 やはり「僕はここでこういう絵が見たい!」という提示のされ方をしますね。俳優の気持ち的には「ここから動きたくない」と思っても「それはともかく、ここではこの位置にいてください」と言われたり。一瞬一瞬の絵の綺麗さ、面白さを大事にされているんじゃないでしょうか。
チャーハン 人の配置や立ち位置は、めちゃくちゃ指定しますね。あと「この台詞は怒鳴ってほしいから、怒鳴れるように感情を持っていって」とかいうことを、結構言うタイプです。
竹田 だからあまり、役者の心の機微に寄り添うタイプの演出家ではない(一同笑)。特にストレートプレイをずっとやってきた役者さんは、感情をどうつなげるかで戸惑うんじゃないかと。私は「チャーハンさんが言うことだから」と絶対的に信用して、割り切ってやっていますけどね。これからもずっと、演出していただきたいです。
限界集落の現実を、赤裸々だけど明るい笑いを交えて描いた、ばぶれるりぐる旗揚げ公演『ほたえる人ら』(2018年)。2019年に第2回公演として再演されている。 (c)︎horikawa takashi.
──ばぶれるりぐるを語る時に「幡多弁」は絶対に外せない要素ですが、高知の他の地域の言葉とは、またちょっと違うのでしょうか?
チャーハン 土佐弁は関西弁のニュアンスが強いけど、幡多弁はまた独特ですよね?
竹田 アクセントが平坦で、どちらかというと関東寄り……九州の言葉に近いかな? その中でも音が面白い言葉や、(他のエリアの人には)わからへんやろうなという言葉を、割とチョイスしています。
チャーハン 「意味がわからないのもサービスだよね」と話しながら作ってますね。全部が全部わかりやすくしたくないというか、嘘を付きたくないというか……。
竹田 空気みたいなのを伝えるのを優先してるので、わかりやすく書こうという腹がないんです。空気が伝わるのが一番。
チャーハン わかんなかったら、わかんないのもOKという感じ。でも大阪弁にはないリズムがあって面白い方言なので、観た後に言い方を真似したくなるんじゃないかと思います。
ばぶれるりぐる旗揚げ公演『ほたえる人ら』。 (c)︎horikawa takashi.
■コロナのことを書かないと、前に進めないと思いました(竹田)。
──『いびしない愛』は、幡多郡名産の「ふし」(注:宗田節という鰹節の一種)の工場が舞台です。竹田さんはもともとこの場所が嫌いだったと、チラシの挨拶文に書いていますが、なぜ今回あえて取り上げたのでしょう?
竹田 私の育った村は、たくさん「なや」(※ふしの作業場)があって、ずーっとふしの匂いがしてました。私はそれがすっごい嫌で「早くこんな村を出たい」と思ってたんです。でも2年ぐらい前になやを取材させてもらった時に、すごく素敵な空間だと思いました。
私はワンシチュエーション(の芝居)が好きなので、いつも「どうしたら、人を一ヶ所に閉じ込められるか?」と考えているんですけど、ふしの工場はちょっと暗い空間で、よその人を寄せ付けへんみたいな空気があるんです。それがいいなあと思って、なやの上にある事務所を舞台にしました。
──「日本劇作家協会」のサイトに掲載された脚本を拝読したのですが、新型コロナの騒動が起こってからの世界を、早くも舞台にしていましたね。
竹田 ちょうど戯曲の執筆中に、第一回目の緊急事態宣言が出たんです。言い方は悪いですけど、あの頃って世の中が、非常事態で浮ついてる感じがありませんでしたか?
──災害時によく感じる、非日常な状況に置かれているからこその高揚感みたいなものがあったことは、否定できないです。
竹田 そうですよね。もともとの戯曲にコロナは入ってなかったんですけど、どうしてもこの空気を反映しないと、自分は前に進めないと思って、コロナがある時間軸の話に最初から書き直しました。
母親の死をきっかけに再会した、バラバラの家族の人間模様を描いた、ばぶれるりぐる第3回公演『へちむくかぞく』(2019年)。 (c)︎horikawa takashi.
──その中でも、ふし工場を経営する姉妹の間にある、様々なコンプレックスの感情が、やはり妹がいる私にとって、すごくリアルでした。
竹田 あ、良かったです。私一人っ子だし、何やったらちゃんとした家族もいないので(笑)。でも友達などの話を聞いて「あ、家族ってこんなに面倒くさいんだ」「血のつながりがあると、こんなにやりにくいんだ。みんな大変やな」と思いながら、想像して書きました。
──あのややこしさを、想像だけで実感を込めて書けたのはすごいです。その戯曲が「日本劇作家協会新人戯曲賞」を受賞。
竹田 むちゃくちゃ恥ずかしかったですね(笑)。私の中では、一番恥ずかしい戯曲なんですよ。自分のとってもズルい所が、一番出てる作品なので「なんて恥ずかしいものが、こんなにたくさんの人の目に触れることになるんだ」と思ってます。
チャーハン でも、とてもまとまった面白い話なので、演出がやりやすそうな作品です。とは言っても、今回も最初は(演出を)断ってたんですけどね(笑)。でも蟷螂(襲)さんが出ると聞いて、竹田さんが初めて演出するのに、いきなり蟷螂さんは大変だと思って。
竹田 キャスティングは全部私がしてるんです。特に(ふし職人の)ヨロさんは、蟷螂さんに当て書きしたような役だったのでお声がけしたんですけど「共演はしたいけど、演出はホンマに無理なんで」って押し切りました。
チャーハン でもやっぱり面白いですね、蟷螂さんは。年下の僕らにも、すごく気を使ってくれますし。ただ、ものすごく役に入り込んで「本当にヨロさんがそこにいる」と感じるぐらいの説得力があるので、ダメ出しがしづらいんです(笑)。思ったように動かなかったら「あ、俺の方が間違ってるのかな?」と。
竹田 「ヨロさんがそう言うのなら、そうやな」ってなるんです。台詞が違ってる時は、さすがに「読んでいただけると助かります」と言いますけどね。
ばぶれるりぐる第三回公演『へちむくかぞく』。 (c)︎horikawa takashi.
──竹田さんは姉妹のどちらの役ですか?
竹田 妹の方です。でも当初は、姉は私で、妹は是常(祐美)さんにと思ってオファーしたんですよ。でもチャーハンさんが「逆で行こう」と言い出して「えーっ?!」ってなりました。
──実は私も戯曲を読んでる時、妹役は竹田さんを想定してたんです。
チャーハン そうでしょう? そっちの方が自然だと、僕も思ったんですよ。
竹田 本を書いた時はそうは思わなかったんですけど、演じてみて「ずいぶん筋の通ってない、嫌な人だなあ」と気づきましたね(笑)。
チャーハン 甘えたさんなんですよ、とっても。
──そこもやはり、チャーハンさんの采配があってこその発見でしたね。故郷に錦を飾ることになる高知の公演は、やはり特別な気持ちがありますか?
竹田 幡多弁の本場に行くので、本当はめちゃくちゃ緊張してるんですが、考えないようにしています。いつも通りに面白いと思うものを作って、いつも通りにやろうと思わないと、ちょっと精神が保てないんじゃないかって(笑)。
チャーハン 自分でも「何でこんなに意識してないんだろう?」と思うぐらい、意識してないです。多分今はコロナ対策で、淡々と稽古をしているからじゃないかと。飲み会とかで雑談の時間がもっとあったら、きっと「高知、楽しみだね」って話をするから、意識が強まるかもしれない。でも今は本当に稽古場に行って、稽古中もあまりバカ話はせず、終わったらそのまま帰るので「芝居を作る」以外の意識が、あまり持てないのかもしれません。
ばぶれるりぐる第三回公演『へちむくかぞく』。 (c)︎horikawa takashi.
──まだばぶれるりぐるを観たことがない人に、何か注目ポイントや、伝えておきたいことなどはありますか?
竹田 えー? 特にないかなあ。
チャーハン あれ、あれあれあれ! 泥谷(将)さんの実家が土佐清水なんですけど、『いびしない愛』というタイトルだから、昼ドラみたいな男女のドロドロの話だと、母親に思われてるって(一同笑)。
──標準語にすると「汚らしい愛」ですから、確かに誤解されそうですね。
竹田 確かに確かに。それは伝えておかないといけませんね。
──決してキレイとは言えない複雑な感情のアレコレを、コメディかと思うぐらい愉快な会話で見せる芝居だから、安心して観に来ていただきたいですよね。とはいえ高知県まで行っても、コロナ対策で呑みに行けないというのは、かなり痛手なのでは……。
チャーハン それ! 本当に!! 2・3ヶ月ぐらい前は「土佐清水なら呑めるかなあ?」って考えてたんですけど、甘かったなあ。
竹田 高知で呑みに行かれへんなんて、何しに行くんやろう? って思います(一同笑)。
ばぶれるりぐる第4回公演『いびしない愛』公演チラシ。 [宣伝美術]チャーハン・ラモーン。

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