LEGO BIG MORLの最新ツアーにみた、
15年続いてきた証とこれからも続いて
いくという確信

LEGO BIG MORL 15th Anniversary Tour 「十五輪」 2021.8.21 渋谷CLUB QUATTRO
結成15周年を迎えたLEGO BIG MORLの全国ツアー、渋谷CLUB QUATTRO・2デイズの2日目。カナタタケヒロ(Vo/Gt)、タナカヒロキ(Gt)、ヤマモトシンタロウ(Ba)、サポートドラマーの吉田昇吾(UNCHAIN)がステージに登場し、音を鳴らし始めた時点で、これはきっと最高の日になるぞと分かるタイプのライブだった。
オープニングは「取捨選択」からの「火のない所の煙が僕さ」で、昨年9月リリースの7thアルバム『気配』と同じ曲順だ。カナタによる「取捨選択」の静かな唄い出し。徐々に加わる楽器の音。バンドが助走するなか、カナタがマイクから離れて何か叫ぶ。サンプリングパッドから鳴らされていたビートが生ドラムに変わる。満を持してサビに入った瞬間、一気に開ける視界。タナカとヤマモトもコーラスで加わり、3人で力強く唄うメロディ。<右手にはあなたの手/左手は何を掴んだ>〉。3分に満たない曲は高揚感を保ったまま終わっていく。その高揚感を逃さんとばかりに、カナタ、掲げたギターを下ろしたあと、「アーユーレディ、渋谷!?」とフロアを指した。
そのあと、タナカのカッティングから始まるのが「火のない所の煙が僕さ」。『気配』は打ち込みを取り入れたアルバムだったが、ライブで演奏するときは同期を必要最低限しか入れていない。生のサウンドによるダイナミズムも相まって、この2曲によるオープニングは、音源で聴く以上に華やかなものに。さらにそのサウンドからはバンドの調子の良さが漏れ出ているため、観客は盛り上がり手拍子だって起こる。赤い照明。揺れる床。これでもかと観客を煽るしぐさをするメンバー。因みに、観客が手拍子したり腕を上げたりするたびに鳴っている「シャラララ……」という音は、ツアーグッズの鈴付きリストバンドによるものだ。
昼にFCイベントをやっていた影響だろうか。バンドは程よくリラックスできていて、とはいえ演奏が緩んでいるわけでもなく、萎縮せずに筋肉を動かせているような、ゆえにアンサンブルが冴えまくっているような印象を受ける。コンボというコンボが決まり続ける状態が続けば、演っている側もそりゃあ楽しくなるわけで、「Wait?」では、タナカがヤマモトを引っ張って一緒に跳ぼうとする、カナタが歌メロをアレンジして上に行くなど、自由なメンバーの姿が目立った。
レゴのアニバーサリーライブといえば、10周年のときの新木場STUDIO COAST公演を思い出す。ベスト盤リリースをはじめとしたプロジェクトのゴールとして花火を打ち上げたあの日の特別感もよかったが、今回のライブから伝わってきたのはもっとナチュラルな幸福感。“この日に向かって走ってきた”という感慨ではなく、“こうしてバンドは続いていく”という未来だった。「ユリとカナリア」を終えてMCに入ると、開口一番、「15年もやってりゃ分かるんですけど、俺らは今日調子いいです。あと十何曲あるんですけど、大船に乗ったつもりでリズムにだけ乗っとってください」とタナカ。彼の言っていたように、ライブは生物(なまもの)であり、その良し悪しは様々な要素が掛け合わさることによって決まるが、なのに、それでも今日は最高になっちゃったぞという喜び、それをみんなで分かち合う幸せがこの日の真ん中にあった。
「Call me」、「XXX(turkey)」、「曖昧を愛そう」と6th~7thアルバム収録曲を続けるダンサブルゾーンに対し、2ndアルバムからの「溢れる」では初期曲ならではの青さに正面から飛び込む。剥き出しのサウンドを鳴らしたあと、<衝動なんて簡単に片付けないで 運命線を傷口で書き足してきた>という「傷」の唄い出しが続くのもいい。「傷」は10周年のベストアルバムに新曲として収録された曲だが、ベースラインやギターカッティングのリズミカルさや弾みよう、ツービートになる終盤なんかは当時よりむしろやんちゃな気がする。一方、変わらないテンポのなかでシームレスに場面転換する演奏からは“5年後”だからこその洗練を感じた。それにしてもこの曲、ライブではなかなか披露されないが、もしかして10周年ツアー以来だろうか? だとすれば本家五輪よりも出現頻度は低いわけで、久々に演奏されたからこその威力、バンドの歩みを引き受け爆発させる力は凄まじかった。
ここで前半が終了。MCでアルバム『気配』のツアーがまだできていないことに触れ、周年ツアーだがアルバムの曲も届けたいという話をすると、表題曲の「気配」から後半を始めた。「気配」はコロナ以降の世相を強く反映した曲だが、“2020年を思い出す”というよりも“今の曲として向き合う”という温度感にならざるを得ないのは、諸々の状況が改善したと断言できない現状があるからか。白熱する楽器隊にカナタのファルセットが絡み、膨れたサウンドがサッと止むと、「ドドッ……」という吉田のキックから「Spark in the end」へ。さらにカナタの弾き語りから「あなたがいればいいのに」が始まり、喪失や、その先を生きていく人の悲しみ・祈りを唄う曲が続けて届けられた。それにしてもベストコンディションで演奏される名バラード「あなたがいればいいのに」は最高だ。カナタの透き通った歌声はとてもよく伸びているし、ギターソロが牽引する間奏のロックな展開も痛快。そして最高潮の盛り上がりとともに迎えるラスサビよ………! 最後の一音まで大切に届けると、完全に照明が落ちたタイミングでフロアから拍手が起こった。
曲間を繋ぐドラムのリズム、「みんなが狂えるような曲を用意したので、心ひとつにしてもらって次の曲に行きたいと思います」(カナタ)という言葉があの曲の登場を予感させたところで、ライブはいよいよクライマックスへ。ヤマモト主導でみんな一緒に同じリズムを手拍子し、「余裕がある人はステップを踏んでもらえたら」とぎこちなく動くカナタを横目に「正常な狂気」に入ると、今年3月にリリースした「潔癖症」がライブ終盤とは思えないほどエネルギッシュに鳴らされた。
「天使くんと悪魔ちゃん」のあと、カナタがコードを鳴らしながら「RAINBOW」を唄い始める。これまでのライブであればシンガロングが起きていた場面だが、この日は当然フロアから声は上がらない。しかし照明は観客を照らし、メンバーは晴れやかな表情でフロアにいる一人ひとりを見つめている。振り返ってみれば今回のセットリスト、「溢れる」然り、「正常な狂気」然り、このあとアンコールで演奏された「Blue Birds Story」然り、みんなで一緒に唄える曲が多く入っていた。それは、シンガロングがなくても物足りない感じにはならないだろうと曲を信頼していたからこその選択だったのかもしれないし、“またいつか一緒に唄おう”という観客へのメッセージだったのかもしれない。いずれにせよ、実際に声は上がらずとも、“声を上げてしまいたくなるほどの何か”を湧き上がらせる曲であることは確かで、フロアには熱っぽい空気が充満した。
上がった腕の力強さ、いつになく長い拍手などから観客の熱量は読み取れたが、実際に一人ひとりと向き合うメンバーが受け取っているものはもっと多く、タナカは「やってよかったですわ。みんなのいい顔こんなに見れて」と語り、「この空間を15年かけて作れるようになったのかと思うと、曲やりながら感慨深いものがありました。15年ってスゲーっすわ」「別にええこと言いたいわけじゃないですけど、まさかの連続の人生の中で、15年LEGO BIG MORLが続いているということが……そして15年ついてきてくれたあなた方一人ひとりが宝物です」「残り1曲、本当はみんなと唄いたいけど、キンタはもちろん、僕もシンタロウも一生懸命唄います。最後まで聴いてってください。ありがとうございました」と続ける。そんなMCのあと、アルバム『気配』の最終曲「HOW TO」で本編は終了した。
そういえばここまでMCにほぼ触れてこなかったので最後に触れておくと、まず、このご時世でのツアーということもあり、現場スタッフや来場者への感謝をしっかり言葉にしていたのが印象的だった。とはいえ、療養から復活したヤマモトをイジッたり、「物販のサコッシュが全然売れない」とあけすけに言ったりと、飾らないやりとりも健在。伝えるべきことはしっかり伝えつつ、全体としては自然体なテンションだった。MCにおけるその温度感は2021年現在のバンドのモードと地続きのものであり、そのモードは、生活に根差した愛を唄った新曲「愛を食べた」にも反映されていた。この曲で描かれる“愛”同様、きっと今の3人にとってLEGO BIG MORLとは、それぞれの生活の中にごく当たり前に存在しているものなのではないだろうか。だからこそ、MC中ヤマモトが誤ってシンセを鳴らしてしまったとき、カナタからポロッと出てきた「15年やってきてよかったわー」のあまりに名言じみていない感じに、逆にグッときてしまったりする(なぜあのタイミングでそう言ったのかは多分誰にも分からないが)。
LEGO BIG MORLがここまで続いてきたこと、LEGO BIG MORLがこれからも続いていくこと。たった2点(しかしそれ以上に何が必要なのだろうか?)をごくシンプルに、そして丁寧に伝えたライブだった。なお、このツアーが終わっても15周年は続いていく。「1年間かけて盛り上げていきたいと思います」とのことなので、今後の報せも楽しみにしていたい。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=西槇太一

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