市村正親、武田真治、濱田めぐみ、ソ
ニンが子役たちと共に劇中ナンバー初
披露~ミュージカル『オリバー!』歌
唱披露&会見をレポート

チャールズ・ディケンズの長編小説「オリバー・ツイスト」を原作としたミュージカル『オリバー!』が、31年ぶりに新演出版として上演される。
開幕まで残すところ約1ヶ月となった8月23日(月)、都内にて歌唱披露イベントと会見が行われた。会場にはフェイギン役の市村正親、武田真治(Wキャスト)、ナンシー役の濱田めぐみ、ソニン(Wキャスト)、オリバー・ツイスト役のエバンズ隼仁、越永健太郎、小林佑玖、高畑遼大(クワトロキャスト)、アートフル・ドジャー役の大矢臣、川口調、酒井禅功(クワトロキャスト/※本田伊織は欠席)、さらにフェイギンのギャング団20名の総勢32名が登場し、一足早く劇中曲を披露した。期待感溢れる歌唱披露と和やかな会見の模様をレポートする。
最初に披露されたのは、濱田演じるナンシーが活き活きと人生を歌い上げる「It's A Fine Life / これが人生」。ステージ中央に紅一点で、大勢の子役たちに囲まれながら力強い歌唱を披露。辛い境遇ながらも明るく強く生きるナンシーのエネルギッシュな姿を印象づけた。
続いては、オリバー役のエバンス、越永、小林、高畑の4人が歌う「Where Is Love? / 愛はどこに?」。過酷な救貧院を追い出されたオリバーが、奉公先の葬儀屋で愛を求めて歌うソロナンバーだ。親の愛を知らずに生きてきた無垢な少年の想いが、それぞれの透き通るような美しい歌声に乗って響き渡る。
「お先にどうぞ」と言い合いながら腕組で登場したのは、ソニン演じるナンシーとドジャー。ジェントルマンを自称する少年ドジャー(大矢、川口、酒井)がちょっぴり背伸びをして、ナンシーたちレディに「I'd Do Anything / 何でもやるよ」と歌いかける愛らしい曲だ。フェイギン役の武田やギャング団の子どもたちも一緒になった掛け合いもあり、舞台上でどんな演出になるのか非常に楽しみなナンバーでもある。
4曲目は、市村演じるフェイギンがオリバーに世の中を生き抜く流儀を教える「Pick A Pocket Or Two / ポケットからチョチョイと」。市村は、少年たちを束ねる親玉フェイギンをコミカルな芝居と凄みのある歌声で体現した。フェイギンを囲む少年たちの表情も豊かで見どころたっぷり。色とりどりのスカーフを使った演出は、このナンバーならではの遊び心が感じられた。
最後に披露されたのは、4人のオリバーと4人のドジャーによる「Consider Yourself / 信じてみなよ」。葬儀屋から逃げ出した孤独な少年オリバーが、ロンドンの広場でドジャーに出会ったときのナンバーだ。ワクワクするメロディーと共に、二人の友情が芽生える瞬間が描かれている。
歌唱披露の直後に、挨拶と質疑応答の時間が設けられた。会見には市村、武田、濱田、ソニン、エバンズ、越永、小林、高畑の8名が登壇した。

挨拶はオリバー役の4人から始まった。エバンズは「楽しいミュージカルにしたいです!」、越永は「頑張ります!」、小林は「こんなに素敵な舞台に立てるなんて夢のようです。頑張ります!」と意気込み、4人目の高畑が「お客様が元気に帰ってくれるように一生懸命努力するので、余裕があったら観に来てください」とコメントすると、会場ではドッと笑いが起きた。
続いて大人キャストによる挨拶。ソニンは「31年ぶりの再演ということで、こんな超大作に出演できることを光栄に思っております。精一杯努めますのでよろしくお願いします」とし、最後は子どもたちに習って「頑張ります!」と意気込んだ。続く濱田も「子どもたちは稽古場でもすごく元気で、素敵なキラキラしたエネルギーを放って、我々大人のキャストも負けていられないぞと一生懸命頑張っております。みなさまぜひ劇場に遊びに来てください。頑張るぞ!」と茶目っ気たっぷりに拳を掲げた。武田は緊張気味に「すごい超大作で、このような素晴らしい役をやらせていただけることを光栄に思います。一生懸命頑張ります」と一言。市村は「キャメロン・マッキントッシュからご指名がありまして、フェイギンをついにやることになります。毎日子どもたちにパワーをもらっています。頑張るぞ!!」と力を込めて語った。
その後は質疑応答の時間となり、役を演じる上で大切にしていることを問われたソニンは「ナンシーという役は、この作品の労働階級の中でも数少ない女性のキャラクターです。子どもたちのナンシーに対する信頼感や彼女の母性、辛くても笑顔で乗り切るタフさというものを大切にしたいので、今稽古場で子どもたちとたくさんコミュニケーションを取って毎日笑顔で過ごしています。それが本番にも活かせたら」と笑顔で答えた。同じくWキャストでナンシーを演じる濱田は「ナンシーという女性が今まで生きてきた中で、初めてオリバーという少年に出会って真実を見つけたときのひらめき、そのポイントを自分の中で探して舞台上でうまく表現できたらなと思います」と、自身の役作りについて述べた。
武田は改めてここにいることのすごさを伝えたいとし、「キャメロン・マッキントッシュさんの作品に出るということは、ミュージカルをやっている役者にとっては一つの目標。それと同じくらい、僕にとっては、市村正親さんと同じ役を演じさせていただくというのはすっごいことなんです」と隣に座る大先輩の市村を見つめながら話し、続けて「自分にとって重要なポイントは『オリバー!』という作品の大事なピースになること。そして市村正親さんの背中をしっかり追うこと」と真剣な眼差しで語った。対して市村は「子どもたちに『市村さんって大したことないじゃない』と言われないように、お手本となるような演技をしたいのと、とにかく僕はお客様を元気にさせるような役作りをしていきたい」と意気込みを見せた。
フェイギン役とナンシー役、それぞれWキャストの相手についてどう思うかという質問に、ソニンは濱田とプライベートで14年の付き合いがあることを明かし、「共演したいと10年以上言い続けて、同じ役かい! 共演できないじゃないか! という悔しさが最初にきました(笑)」と苦笑しながらも「こんな共作の仕方もあるんだというのを感じています。作品の中でナンシーの立ち位置や役割はデリケートで難しく重要な役でもあるので、二人で力を合わせて作っていこうねと。本当に刺激的な日々を過ごしています」と充実の稽古の日々を語った。同じく濱田も「ナンシーという役の裏面、表面、そしていろんな角度から話ができているので、お互いにないものを補い合いながら、フォローし合いながらやっていて、一番いいWキャストの状態じゃないかなと思っています」と述べ、二人の確かな信頼関係が感じられた。
今回の振付は日本人キャストに合う新しいものを作っているらしく、武田は「本来年下の自分が振りうつしを(市村に)させていただく関係になるかと思っていたんです。でも僕が市村さんから振りうつしをしてもらうという、多分、あっちゃいけない関係に甘えていて(笑)。それくらいお元気でタフでお芝居も率先してなさってくださって、今本当に背中を追いかけています」と尊敬の念を込めて語った。それに対して市村は「(武田)真治の年齢でフェイギンをやるっていうのはすごくいい勉強になるんじゃないかな。子どもたちや真治のためにも、僕は一生懸命良い芝居を見せたい。かわいい弟みたいな俳優ですから、ついに僕と同じ役をやるということで、僕は彼がいい俳優になるための素材かなという風に思っております」と述べ、これまでに培ってきた師弟愛を滲ませた。
最後に、オリバー役の4人に「演出のJP(ジャン-ピエール・ヴァン・ダー・スプイ)さんからの言葉で心に残っているものは?」という質問が上がると「(エバンズ)すみません、ちょっと考える時間をいただいてもいいですか?」「(越永)ごめんなさい、僕もちょっと・・・・・・」「(小林)すみません!」「(高畑)ごめんなさい!」と全員が回答に困るというまさかの展開に。オリバーたちに考える時間をと、代わりにソニンがマイクを持ち「初日に顔合わせをしたとき、演出家のJPさんが時代背景やどのように日本再演まできたのかという話をたくさんしてくださいました。その中で私が印象に残っているのは『この登場人物はみんな愛を求めているんだ』という言葉。今この世の中、寂しい思いをしていたり何か足りないところがあったりというものを、この作品を通して愛を求める登場人物に自分を重ねて、何か埋めて帰ってくださるんじゃないかなと感じました」と、稽古初日を振り返りながら述べた。その甲斐あってオリバーたちからは続々と手が挙がり、「(高畑)『Where Is Love?』などでJPさんにすごく深いお話をされて、JPさんの深い話をもうちょっと聞きたいと思いました」「(エバンズ)例えばどう演技をすればいいのかなというときに、とってもわかりやすく物語を追いながら見てくれて。とてもわかりやすく教えてくれるのがJPさんのいいところだと思います」「(越永)たっぷりお話をしてくれたときに、『オリバー!』の原作小説に書いていないことも教えてくれて、もっと聞きたいなと思いました」「(小林)『何回公演を重ねても、全て初めてなんだよ』と教えてくれて、それがすごく心に残って、自分がやるときもそれを心掛けたいなと思います」とそれぞれの言葉で一生懸命に答え、会見の場は実に温かな空気に包まれた。
ミュージカル『オリバー!』はプレビュー公演が2021年9月30日(木)〜10月6日(水)、本公演が10月7日(木)〜11月7日(日)に東京・東急シアターオーブでおこなわれ、その後、12月4日(土)〜14日(火)に大阪・梅田芸術劇場メインホールでも上演予定だ。ベテラン役者陣と大勢の子役たちによる、エネルギーに満ちた舞台の幕開けを楽しみに待ちたい。

取材・文・写真=松村蘭(らんねえ)

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