THE BEAT GARDEN 4人での最後のステ
ージ『The Beat Garden one man liv
e tour「Afterglow」』をレポート

The Beat Garden one man live tour「Afterglow」

2021.8.7 リキッドルーム
ついにこの日が来た。8月7日、東京・恵比寿リキッドルーム、『The Beat Garden one man live tour「Afterglow」』ファイナル公演。13か所で1日2公演、ハイエースに乗って全国を巡った2年振りの楽しい旅の集大成であり、DJ SATORUがグループを離れる最後の日。楽しい、寂しい、楽しい、寂しい。花占いのように様々な感情が揺れ動く、Beemer(ビーマー=THE BEAT GARDENファンの呼称)の思い。デビュー5年、グループの歴史の大きなターニングポイントになる重要なライブ、いよいよ開幕だ。
全公演ソールドアウトのこのツアー、ファイナルのチケットを手にできたラッキーなBeemerたちと、オンライン生配信を見守るBeemerたちの思いを乗せ、メンバーがステージに姿を現す。1曲目は「本当の声」だ。強いビート、爽やかな疾走感、音の広がり、せつないメロディ。「行こうか東京!」とUが叫ぶ。SATORUもマイクを持ってコーラスに参加。「心で歌え!」とUが煽る。REIとMASATOも笑顔で拳を上げる。「answer」は派手なロックギターのリフを持った、初期THE BEAT GARDENらしさあふれるEDR(エレクトリック・ダンス・ロック)チューン。フロアを埋めたBeamerと共に、体いっぱい使った手振りとアクションでぐいぐい盛り上がる。期待通り、気合満点の立ち上がりだ。
THE BEAT GARDEN/U
「Afterglowツアーファイナル、東京、恵比寿リキッドルームにお越しのみなさん、THE BEAT GARDENです。今日は13か所26公演のファイナルのファイナルです。何度めましての人も、はじめましての人も、配信をご覧のみなさんも一緒に楽しんでいきましょう!」
「次の曲は説明はいらないから、踊るよ!」とU。ラテン風味のダンスチューン「ダンシング・マン」は、《くるくる回って》の歌詞に合わせてメンバーが手をくるくる、Beemerもくるくる。SATORUもステージ前に飛び出して、全員でくるくる。「リキッドルーム、こんなもんじゃないと聞いてますよ」とMASATOが煽る。エンディングをばっちり決めたSATORUが、「あー気持ちいいよ!」とはしゃぐ。「過去イチの「ダンシング・マン」、ありがとう!」と、Uが叫ぶ。理屈はいらない、楽しい。
「今朝、寝坊しました! ぐっすり寝たので思い切り楽しみたいと思います」(U)
「5月から始まったツアーも、もうファイナル。楽しいことは早いなと思ったけど、ただ楽しみにしていました」(REI)
「最初から最後感出してたら、寂しいでしょ? 徐々に出して行きます。できる子なんです」(MASATO)
「すごい楽しんでるなぁ、俺。(鳴りやまない拍手に)もういいよ! わかった!(笑)」(SATORU)
THE BEAT GARDEN/REI
たぶん照れ隠しだろう、ざっくばらんな言葉と笑顔でBeemerの思いに応えるSATORU。そしてオリコンウィークリー6位、LINE MUSICアルバムランキング1位を記録したアルバム『余光』から、この日が初お披露目となる新曲「Everglow」へ。端正なキックの四つ打ち、独特の浮遊感、ファンキーなギター。クールなダンスチューンでありつつ、「みんなに会えるまでの期間に4人で思ったことを歌にしました」(U)という、等身大の歌詞が胸に沁みる。REIのラップがいいアクセントになっている。続く「花火」も、四つ打ちのダンスチューンと、ポップでメロディアスなJ-POPの要素を組み合わせた、THE BEAT GARDENの進化系。ボーカル3人の気持ちの入り方が半端ない。歌の表現と歌詞のメッセージで直球勝負。アカペラコーラスできれいに締める、エンディングも完璧だ。
「世の中は音楽どころじゃないと言われている中で、本当にみんなに会えるのかな?と思っていました。帰って来てくれて本当にありがとう。音楽を聴いてくれる人がいるのは、本当に幸せなことだし、苦しかったけど、それは幸せだなと思いました」
深い思いを込めたUのMCから、すべてのBeemerに捧げる「遠距離恋愛」へ。ラブソングの形を借りて、Beemerへの思いがストレートに伝わる。SATORUもマイクなしでずっと歌ってる。心は一つ、思いは一つ。ライブはいよいよクライマックスだ。「うちのDJからみんなに話をさせてもらってもよろしいでしょうか」と、Uが紹介する。SATORUがマイクを握る。
THE BEAT GARDEN/SATORU
「みんなにありがとうと伝えるツアーにしようと思ってたんだけど、みんなからの言葉のほうが大きくて、元気や勇気ばかりもらっちゃってます。3人に誘ってもらって音楽を始めて、みんなに支えられてやってこれたなと本当に思うし、寂しい気持ちはあるけど、THE BEAT GARDENはもっと成長して、武道館も東京ドームもやると思うし、その時に俺も含めてみんなでまた合流したいです。僕は、THE BEAT GARDENをやってきて本当に幸せでした。今日のライブでステージに立つのは最後だけど、みんなのことは一生忘れません。本当にありがとう」
つっかえながら、はにかみながら、涙をこらえながら。言葉を探し、気を配り、優しさで包み込む。一つ一つの言葉が生きている、SATORUらしい最後の挨拶。Uがそのあとを受ける。
「もともと友達で、DJがうまいから誘ったわけじゃないから、余計に寂しいです。でもSATORUは、家族のために生きていくと自分で決めました。俺らも、4人でもっと行けたんじゃないかという後悔も全部背負って、今まで以上に精一杯に歩んで行こうと思うので、これからも、どうか4人をよろしくお願いします」
俺ら4人の歌を歌います――。「エピソード」は、アルバム『余光』のラストを飾る、4人の始まりの風景を色鮮やかに綴った思い出の歌。歌いながら、UがSATORUを呼ぶ。REIとMASATOを呼ぶ。4人がステージ中央に揃う。さっきの挨拶では涙をこぼさなかったSATORUが、シャツの袖で目をぬぐう。逆光ライトが一層まぶしく見えるのは、涙を見せないスタッフの思いやりかもしれないと思う。歌い終えたUが「戻れ!(笑)」とSATORUに言う。たぶん照れ隠しだろう、ざっくばらんな言葉でSATORUの思いに応えるU。決して切れない絆がそこにはある。
THE BEAT GARDEN/MASATO
「俺らは友達だから、友達に戻る。また一緒に会いに行くから、待っててね」
恵比寿リキッドルーム、思い切り行くぞ! ラスト2曲は、悔いを残さず全力疾走。5年前のデビュー曲「Never End」を爆音で響かせながら、吹っ切れたようにステージを飛び回るU、REI、MASATO。笑顔に戻ったSATORUも、コーラスに加わり盛り上げる。そして最後はやはりこの曲、インディーズ時代からのキラーチューン「Sky Drive」だ。「行くぞ! メイク・サム・ノイズ! 腕回せ!」THE BEAT GARDENのEDR路線を確立した強力なダンスチューンに乗って、Uがハイテンションで叫びまくる。レーザービームが空間を切り裂き、重低音がフロアを揺るがす。EDRからポップな歌ものへ、デビュー5年間でゆるやかに変化を遂げながらも、過去を決して忘れない。THE BEAT GARDENの音楽の歴史と進化を、9曲60分に濃縮したライブパフォーマンス。THE BEAT GARDEN第一章のラストを飾る、美しいファースト・フィナーレ。
「下を向きそうになったり、気づいたら後ろ向きになったり、たくさんあったんだけど、今日まで頑張って生きてて良かったなって、ライブのたびに思わせてくれました。あなたの“生きてて良かった”になれるように、一所懸命曲を作って、4人で作った曲も精一杯歌って歩んでいくので、これからも4人を、THE BEAT GARDENをよろしくお願いします」
すべての音が消えたあと、笑顔で手を振る4人の顔に涙はない。東京ドームでやる日が来ても「おまえはスタンドだ!」と、UがSATORUをからかう。REIとMASATOが、一人一人のBeemerの顔を覚えるようにフロアを見ている。最後まで一人残ったSATORUが「本当にありがとう」と2回繰り返す。ほかに言葉が出て来ない。それが、何よりも雄弁だ。
楽しい、寂しい、楽しい、寂しい。それでも、やはり最後は“楽しい”を取ろう。4人は生きてゆく。THE BEAT GARDENは続いてゆく。また会う日まで。音楽は鳴りやまない。
取材・文=宮本英夫 撮影=Yuto Fukada

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