L→R 渡邊一丘(Dr)、HISAYO(Ba)、佐々木亮介(Vo&Gu)、アオキテツ(Gu)

L→R 渡邊一丘(Dr)、HISAYO(Ba)、佐々木亮介(Vo&Gu)、アオキテツ(Gu)

【a flood of circle インタビュー】
独創的なアイディアが光る
アニバーサリーアルバム

“音楽は何でもありだ”と
提示したい気持ちが強かった

その話からも親交の深さが分かります。続いて、『GIFT ROCKS』の後半について話しましょう。アルバム後半には楽曲を提供してくれたアーティスト5組の楽曲のカバートラックが収録されています。

佐々木
俺らは対バンツアーの時に、いつもカバーをやっていたんです。そこでカバーをすることの面白さを知ったし、カバーはいろいろ勉強になることがあるんですよ。カバーするバンドの魅力の秘密を発見できたり、自分たちの武器も分かったりする。それが次のa flood of circleの作品につながることがあるかもしれないと思って、今回の楽曲を提供してくれた5組のカバーをしたくなったんです。最初は5曲入りの作品をイメージしていたので、カバーは特典ディスクみたいな感じで別にしようかと思っていたけど、最終的にアルバムというかたちでいこうということになりました。

後半のカバートラックもリスナーはすごく嬉しいと思います。どの曲をカバーするかも悩ましい問題だったと思いますが、どうやって決めたのでしょう?

佐々木
一番シンプルだったのはUNISON SQUARE GARDENでしたね。彼らの曲はめっちゃ難しそうなのがいっぱいあって、2011年以降のものは厳しいんじゃないか(笑)。できないことはないだろうけど、ライヴでできる感じでカバーしたかったんです。それでUNISON SQUARE GARDENの曲でストレートにやれそうなものというところで、「WINDOW開ける」をチョイスしました。それに彼らとはもう15年来のつき合いで、ちょっとニッチな曲を選ぶとお互いの関係性を感じてもらえるかなというのもありましたね。あとは、それぞれとの関係の中で選んでいった感じです。THE BACK HORNの「コバルトブルー」は新宿LOFTの深夜のイベントで酔っぱらって、その場の勢いで山田将司さん(THE BACK HORNのVo)と俺とナベちゃん(渡邊の愛称)で「コバルトブルー」をやったことがあるんですよ。そういう思い出があるので、今回カバーすることにしました。

そんなふうに思い入れのある曲をカバーするのは素敵なことだと思います。

佐々木
新宿LOFT以外のいろんな思い出も蘇ってきて、この曲はすごく楽しかったですね。UNISON SQUARE GARDENの「WINDOW開ける」も彼らのトリビュートイベント(『Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Live~』/2019年8月28日@新木場USEN STUDIO COAST)でLiSAちゃんとか、さわおさんとかと一緒に出て演奏した曲でもあるんです。あと、彼らにツアーに呼んでもらった時、1曲目に「WINDOW開ける」をやったこともあるし。そういう曲です。
アオキ
「BLACK BANANA」は俺がやりたいと言いました。友達のワンマンライヴを観に行った時に、始まるまでのBGMで「BLACK BANANA」が延々とかかっていたんですよ。カッコ良い曲だと思ったけど、その時はReiの曲だということを知らなくて、ライヴが終わったあとにメンバーに訊いたらReiの「BLACK BANANA」だと教えてくれて。で、Reiの曲をカバーするという機会ができたんで、ぜひこの曲をやりたいと。この曲はギターソロとかも含めて、だいぶマッチョに仕上げましたね。
佐々木
原曲はもっとファンキーだし、音数も少ないんですよ。Reiちゃんは最初の3部作くらいまでミニアルバムを出していたんですけど、当時はアコギ主体で、軽く打ち込みが入っているような音源が多かったんです。フルパワーのバンドでやっていなかったので、この曲が一番オリジナルとギャップがあると思いますね。
渡邊
あと、我々はインディーズの1枚目からメジャーの最初のほうまで、ずっと杉山オサムさんというレコーディングエンジニアに録ってもらっていて、今回15周年ということで、久しぶりにカバー5曲分を録ってもらいました。最初の頃に突き詰めていたバンドの塊感みたいなものをこのタイミングでもう一回かたちにできて、それがすごく良かったと思っています。

杉山さんもみなさんの成長された姿を見て、嬉しかったと思いますよ。

渡邊
成長したと思ってもらえるようなことをいっぱいしましたね(笑)。当時は杉山さんにめちゃめちゃ任せていたというか、本当にお世話になりっぱなしだったんですよ。いろんなことを教えてくれたし、アイディアもたくさん出してくれたし。サウンド面でもメンタル面でも支えてくれていた人で、今回久しぶりに一緒に作業でいたのが本当に嬉しかったです。
HISAYO
そのオサムさんとの作業でもバンドの初期衝動を思い出すことができたと思うし、選んだカバー曲達が偶然にも各アーティストの初期の曲たちだったこともあり、自然とメラメラと衝動が湧いてきましたね。アレンジ作業の時にそれらの原曲に改めて向き合ってると、バンドの始まりのワクワク感が音から溢れている感じがしました。なので、個人的にカバーアレンジしてる時のテンションは高かったと思います(笑)。「About A Rock’n’Roll Band」は逆にthe pillowsが長いキャリアの途中でもう一度、あえてバンド初期のような曲を作った曲だと解釈していて、私たちはそれを思いっきりやんちゃに演奏したい!という気持ちで取り組みましたね。
渡邊
あと、カバーに関しては全部の曲に言えることかもしれないけど、俺ららしさのほうが強めに出せたという自負みたいなものはあるかもしれない。提供してもらった5曲のほうは実験みたいなものだから、今後の自分たちの一部になっていくものがその中に入っている気がする。それに対して既存のa flood of circleらしさはカバーのほうが分かりやすく出ていると思います。

そこも今作の面白さになっています。それにしても、『GIFT ROCKS』は自分たちの楽曲は一切入っていないわけで、普段は自分達でオリジナルを作っているアーティストのアルバムとしてはかなりレアな作品と言えますね。

佐々木
そうなんですよ(笑)。自分たちでアレンジしたとはいえ、ほとんど出来上がってる状態でデモが来ていたから悩むこともなかったし。そういうアルバムを作って思うのは、バンドをやっていると“a flood of circleはこうだ”というのが大事な時もあれば、それに縛られてしまうこともあって、そこを行ったり来たりするんですよね。そういう中で、『GIFT ROCKS』は“a flood of circleはこうだ”ということに気づかされたり、壊されたりしたアルバムになったないう気がしていて。そういうところで、すごく良い経験になったと思います。それに、何年か前のジョン・メイヤーのアルバムに「ワイルドファイア」という曲があって、それはフランク・オーシャンが演奏して歌っているだけのトラックなんですよ。ジョン・メイヤーは何もしていない(笑)。“feat. フランク・オーシャン”と書いてあるけど、本当にフランク・オーシャンしか演奏してないという(笑)。それくらい音楽というのは“あり”なことがいっぱいあって、提供してもらった曲とカバーしか入っていないアルバムがあってはいけないわけじゃないと思っているんです。だから、『GIFT ROCKS』を世の中に発表する意味としては、自分たちの経験として面白いことをやったという以上に、もっと“音楽は何でもありだ”ということを提示したい気持ちが強かった…それを実現できたことに満足しています。
アオキ
音楽をする人の視点みたいな話になるけど、初心者から中級者に毛が生えた程度になる瞬間というのは、真似だけじゃなくて自分らしさを出せるようになった時だと思うんですよ。今回の『GIFT ROCKS』はもらった曲ともともとある名曲を自分のギターで表現するということで、自分のギターも見直せたという感じですね。a flood of circleの曲にギターを合わせる時とはまた違った感触があって、それはすごく楽しかった。あとは、このアルバムを機会に日本のバンドシーンで曲をギフトする文化が流行ったら面白いんじゃないかなと思う。
佐々木
そうだね。みんなハッピーになれると思うんですよ。ラッパーはみんなフィーチュアリングし合っているし、ソロアーティストは楽曲提供というのは普通のことじゃないですか。ロックバンドだけが楽曲を提供し合うということをしないんですよね。今回自分たちでやってみて面白さや意義みたいなものをすごく感じたので、ひとつのアプローチとして広がっていくといいなと思います。
HISAYO
『GIFT ROCKS』は私たちも楽しみながら制作したし、きっと曲を提供してくれたアーティストも楽しんでくれたと思うし、聴いてくれる私たちのファンや各アーティストのファン、みなさんが楽しんでくれると企画盤になったと思います。15周年という名目があって良かった(笑)。提供曲では自分たちの幅を広げてもらえて勉強になったし、カバー曲では自分たちの元からの武器を確認できる作業だったし、両方がa flood of circleの今後に非常に意味のある作品になったと思います。いいところだらけですね。
渡邊
『GIFT ROCKS』を作って感じたのは、技を借りたり、盗んだりするみたいなところがあるということでしたね。ただ、そこを考えていくと盗みきるのがいいのか、自分らしさを出したほうがいいのかという悩みが出てくるわけですよ。スキルの高いスタジオミュージシャンとかは譜面を見たり、デモを聴いたりして、そこにあるものを盗んで、そのまま音化することができますよね。『GIFT ROCKS』みたいな作品を作るとなるとそういう部分も必要になってくるけど、それができないのは自分の癖があるからなんだなと思って。でも、自分の癖を消してしまったら自分が叩く意味がない。その辺りのバランスをうまく保つ平均棒というような感覚でした。そういうことを改めて考えさせられる制作になって、その結果得られるものがたくさんありましたね。

『GIFT ROCKS』は冒頭に佐々木さんがおっしゃった“寄り道”の中でも最良と言えるものになりましたね。『GIFT ROCKS』のリリースが本当に楽しみですし、本作に関わった6アーティストが一堂に会するイベント『GIFT ROCKS LIVE』も注目です。

佐々木
『GIFT ROCKS』を作るにあたって楽曲提供してくれたみんなには“8月26日は空けておいてくださいね”と言って、新木場USEN STUDIO COASTを押さえました(笑)。“超自慢の面子”です。周年というのはそれまでの出会いだったり、やってきたことだったりを、周年というものを借りて見せびらかす期間だと思っていて、それをライヴというかたちでできるのはすごく嬉しいです。今はライヴがやりにくい、フェスがやりにくい世界だけど、a flood of circleはギリギリやれるかたちを探しながら実現してきたので、15年もそうだし、コロナ禍の中でのライヴという意味でも、ひとつの集大成になるような良いライヴを観せたいですね。それに、15周年はまだそこでは終わらないからこのイベントを楽しんで、その先の活動や次のアルバム作りとかに良い状態で進んでいきたいと思っています。
アオキ
このイベントは他の5組に会えるのも嬉しいし、観れるのも嬉しいですね。よくよく面子を見てみたら、めちゃくちゃ手強い相手ばかりなんですよ。そんな中ね、カッコ悪いライヴを観せられないので、すごく気合が入っています。
渡邊
まだ2カ月くらいあるけど、もう練習しているんだよね?(笑)
アオキ
してる。練習しつつ、“良い曲やなぁ”っていう(笑)。すごい面子が揃った、観応えのあるライヴになるのは間違いないので楽しみにしていてほしいです。
渡邊
ドラムってライヴ中にステージの袖とかを見れるんですよ。他のバンドのメンバーが観てくれていることを想定して、今から緊張しています(笑)。ギフトしてもらった曲を演奏するわけだから、すごく緊張すると思うんですよ。だから、俺もちゃんと今から練習しておこうと思っています(笑)。
HISAYO
ライヴでのラインナップを見てみて、改めてすごいアルバム作ってしまったんだと(笑)。お客さんに楽しんでもらえるように、あとは提供してくれたアーティストが見てくれた時に“俺(私)の提供した曲が一番いいやん!”と思ってもらえるように、どの曲も大事に練習して育てていきたいですね。何はともあれ、15周年の私たちの今を全力で出しきりたいと思います。

取材:村上孝之

アルバム『GIFT ROCKS』2021年8月11日発売 Imperial Records
    • TECI-1740
    • ¥3,300(税込)
アルバム『GIFT ROCKS -FIFTHTEEN edition-』2021年8月11日発売 Imperial Records
    • TEI-190
    • ¥4,950(税込)
    • ※テイチクオンライン限定盤
    • ※通常盤、オンライン限定盤ともに初回プレス分のみ「ギフトパッケージ」仕様

ライヴ情報

『GIFT ROCKS LIVE』
8/26(木) 東京・新木場USEN STUDIO COAST
出演:a flood of circle、Rei、THE BACK HORN、the pillows、SIX LOUNGE、UNISON SQUARE GARDEN

『A FLOOD OF CIRCUS 2021 in NAMBA』
10/08(金) 大阪・なんばHatch
出演:a flood of circle、the pillows、ハンブレッダーズ

『a flood of circle15周年ベストセットツアー ”FIFITHTEEN”』
10/28(木) 千葉・LOOK
11/05(金) 神奈川・横浜F.A.D YOKOHAMA
11/06(土) 茨城・水戸LIGHT HOUSE
11/12(金) 北海道・札幌PENNY LANE24
11/14(日) 宮城・仙台CLUB JUNK BOX
11/18(木) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
11/20(土) 福岡・CB
11/25(木) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
11/27(土) 広島・セカンド・クラッチ
12/18(土) 石川・金沢vanvan V4
12/19(日) 長野・J
12/23(木) 東京・Zepp DiverCity TOKYO

a flood of circle プロフィール

ア フラッド オブ サークル:2006年結成。下北沢、渋谷を中心にライヴ活動を開始。ブルース/70年代のロックをルーツとした重厚かつフリーキーなサウンドに、佐々木の圧倒的なヴォーカルを加えた他に類をみない独自のスタイルを追求する。早熟な音楽センス、そして卓越したライヴ・パフォーマンスには定評があり、『FUJIROCK FESTIVAL』など数々の大型フェスにも出演を果たす。09年4月に1stフルアルバム『BUFFALO SOUL』でメジャーデビューを果たし、結成15周年となる21年8月には、THE BACK HORN、SIX LOUNGE、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)、山中さわお(the pillows)、Reiが作詞作曲をし、AFOCがレコーディングをしたという前代未聞のアルバム『GIFT ROCKS』をリリース。a flood of circleオフィシャルHP

「GIFT ROCKS」MV

『GIFT ROCKS』Teaser Movie

『GIFT ROCKS -FIFTHTEEN edition-』
Teaser Movie

【GIFT ROCKS -Movie-】
田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)
× a flood of circle

【GIFT ROCKS -Movie-】
SIX LOUNGE × a flood of circle

【GIFT ROCKS -Movie-】
Rei × a flood of circle

【GIFT ROCKS -Movie-】
THE BACK HORN × a flood of circle

OKMusic編集部

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