【この2.5次元がすごい】宿敵の関係
性を視覚的に体感できる 舞台「憂国
のモリアーティ」最新作

(c)竹内良輔・三好 輝/集英社 (c)舞台「憂国のモリアーティ」製作委員会 コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズを原案に、ホームズの宿敵であるモリアーティ教授を主役にしているのが「憂国のモリアーティ」。「ジャンプ SQ.」にて2016年から連載され、コミックス累計発行部数は400万部を突破しているこの作品は、先日までアニメも放送されていた話題作です。昨年の第1作に続いて、現在上演されているのが「舞台『憂国のモリアーティ』case2」。
 メインに描かれるのは階級社会が根強い大英帝国全盛期のロンドンを舞台に、社会を変えるため悪となるモリアーティ兄弟と、対峙する探偵シャーロック・ホームズです。スピード感を必要とする、難しい推理の要素も大きく取り入れられた公演の様子をさっそく紹介します!
キャラクターの対比を表す象徴的な演出
 前作では荒牧慶彦さん演じるウィリアム・ジェームズ・モリアーティを中心に、モリアーティ兄弟がなぜ世界を正すために犯罪卿となったのかが描かれていました。そして、今作ではウィリアムと北村諒さん演じるシャーロック・ホームズの出会いや関係性をしっかりと見ることができました。
(c)竹内良輔・三好 輝/集英社 (c)舞台「憂国のモリアーティ」製作委員会 新国立劇場・中劇場(東京都)の奥行きのある舞台に設置されていたのは、大きなセット。高さのあるセットはモリアーティ邸や、列車、貧民街の街並みなど様々な景色を見せてくれます。さらに印象的だったのが、セットを使ってウィリアムとシャーロックを上手く対比させている演出です。ある意味では自分たちの目的を遂行するために、シャーロックを利用しようとしているウィリアムですが、それだけでない互いの信念も見えるのが2人の関係性のポイント。セットの動きや光の当たり方、対になるような立ち位置からそういった関係を感じられました。悪で悪を裁くウィリアムと、どんな理由であっても犯罪を許さないシャーロックの正義を視覚的にも見ることができるのも、舞台ならではの楽しみです。
 今作ではミステリーの定番である列車内での殺人事件が登場します。そこで、ウィリアムとシャーロックが推理対決を行うというわけです。駅に到着する前に解決しないと犯人に逃げられてしまうので、移動する列車の中での事件は時間との勝負。ここでも立体感のあるセットを上手く使い、スピード感のある物語が展開されます。観客をハラハラさせる演出も見事でした。前作でも感じた場面転換の面白さは健在です。
作品をより魅力的に見せてくれるキャストの力
(c)竹内良輔・三好 輝/集英社 (c)舞台「憂国のモリアーティ」製作委員会 理想のために冷酷な判断を下すウィリアムとそれに忠実に従うチームは言葉にすると残酷そうに聞こえます。ですが、彼らのファミリーとしての絆は温かく、それを見せてくれたのがキャストのみなさんでした。ウィリアムを筆頭に、モリアーティ兄弟の長男で瀬戸祐介さんが演じるアルバート、糸川耀士郎さんが演じる三男のルイスの絆は言うまでもなく、チームでのふとした会話に思いやりを感じる瞬間があちこちにちりばめられています。特にウィリアムは物腰の柔らかさに反して、大胆で冷たい決断が特徴ですが、弟へ向ける優しい言葉も印象的で荒牧さんがウィリアムの魅力を上手く演じているように感じました。
 そして注目したいのが、前作ではアイリーン・アドラーとして美女を演じた立道梨緒奈さんです。アイリーンは女性としての自分を捨て、ジェームズ・ボンドとして男装をしモリアーティのチームに加わります。立道さんが演じるジェームズのかっこよさと華やかさは見事で、前作でドレスを着ていたとは思えないアクションシーンにも注目です。
 原作が力をもっている作品ほど、舞台化する際に難しさがあるのではないでしょうか。今作は動きのある舞台ならではの面白さで、作品の新たな魅力を引き出しているように感じました。「舞台『憂国のモリアーティ』case2」は8月1日まで上演されるほか、千秋楽を含む複数の公演で配信も決定しています。

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