圧倒的世界観の裏側は緻密に組まれて
いた、D4DJ燐舞曲のプロデューサーが
明かす「クライノイド/群青のフロー
セカ」制作秘話

『DJ』を題材にアニメ『D4DJ First Mix』 やスマートフォン向けリズムゲーム『D4DJ Groovy Mix(以下:グルミク)』など、多方面に広がりを見せる音楽メディアミックスプロジェクト『D4DJ』。登場する6ユニットによる各2ndシングルが2021年3月17日を皮切りに半年間に渡ってリリースされている最中だが、SPICEではそんなニューシングルに携わったクリエイターに毎月密着中!今回は7月21日にリリースされた『燐舞曲』の2ndシングル「クライノイド」とカップリング曲の「群青のフローセカ」を手がけた、プロデューサー中山雅弘 WITH eMPIRE SOUND SYSTeMSに新曲の制作秘話などを伺った。ロックテイストが特徴的な燐舞曲だが、DJがテーマのD4DJにおいてどのようなコンテンツ作りを意識しているのか?異彩を放つ燐舞曲も「全ては設定のまま」と語るその胸の内をアツく語ってくれた。
■「燐舞曲は“選曲”を軸に」
――本日は燐舞曲のプロデュースを担当されている中山雅弘さんとeMPIRE SOUND SYSTeMSさんにお越し頂きました。改めて、それぞれがD4DJプロジェクトで担当されている事などをご紹介頂けますか?
中山:自分はD4DJプロジェクトのプロデューサーとして全体統括を担当させて頂いてます。その上で兼任という形で燐舞曲の音楽プロデューサーも担当し、実際の楽曲制作をeMPIREさんに力を貸して頂いて、二人三脚でやらせて頂いています。
――eMPIREさんは色々とベールに包まれている感じがあると思うのですけど、簡単にどういう活動をなされているのか伺えますでしょうか?
eMPIRE:「THE REBEL’ S eMPIRE」というゲーミングプロジェクトがあるんですが、そこから派生して組織させたゲームとミュージックに関わるプロジェクトを中心にプロデュースを行っている不特定多数のクリエイター集団です。自分含めまして構成員は特に公表していないのですが、今日は“中の人”代表として僕がお受けします。
――ありがとうございます!続いては、まずはお二人で燐舞曲をやることになった経緯を教えていただけますでしょうか。
中山:私はまず統括してる立場として、D4DJ全体を見て、各ユニットのキャラクター付けを考えていく中で「どういうユニットにしようか?」とか「音楽の方向性はこうしよう」など、ある程度イメージしていたので、原作イラストを描いているやちぇさんやゲーム開発のDONUTSさんと意見を交わしながら作っていきました。その一方で、ウチの木谷会長がD4DJで軸の一つとしている“フェス感”、いわゆるDJらしいデジタルなクラブサウンドの枠に捉われたくなくて、やちぇさんも言っている通り、全キャラクターの中で唯一マイクを持っている「青柳 椿」を軸にユニットの構成を考えた結果、ロックとアナログを基軸にした燐舞曲のアイデアが生まれて、それならeMPIREさんにお願いしよう!という経緯でスタートしました。
eMPIRE:実は中山さんとは以前お仕事させていただいたことがありまして、自分がロックと芸能、インディーとメジャーのハイブリッドだという事をご存知だったから僕を呼び出したんだろうなと思ってます。DJコンテンツとお聞きしましたが、ギターを持ったキャラクターが居て、ボーカルには歌しかなくて、“ロックとアナログ”を制作してくださいとのことでしたので、僕に全てを任せていただけるなら“設定の燐舞曲は作りますよ”と返答しました。しかし始めたら割りと大変でしたけどねw
中山雅弘
――“フェス感”という意味では確かに、夏フェスと呼ばれる大型ロックフェスやDJイベントではバンド曲を中心にしたDJタイムが設けられているイベントも多いですし、単にダンスミュージックやデジタルサウンドの音楽だけがDJで選曲される楽曲というわけでもないですからね。
中山:そうなんです。その辺りは楽曲制作の際にも意識してお願いしていて、もちろんクラブミュージックにトラックを寄せた曲もあるんですが、基本はがっつりロックテイストの曲であって。燐舞曲が考えるDJは“ロックを中心とした選曲”でコンテンツと空間を作り上げるという部分に重きを置いています。
eMPIRE:DJってディスクジョッキー(選曲)という解釈があって、燐舞曲のスタート時点で“どのような順序と物語で音楽たちをセレクトしていくか”に重点を置きましたので、まずは大量に楽曲を用意することからはじめました。だから『Horizontal Oath』や、『クライノイド』ははじめから存在していた楽曲です。そこから他の楽曲たちと話し合い、どういった順番で出して(選曲して)いくのがお客さんたちにベストな状態で持ち帰っていただけるかが、燐舞曲で1番考えている判断基準かもしれません。「楽曲の公開順」を考慮し「ライブの選曲と繋ぎ」を重視し、トラックでは「メタルコア、ラウド、プログレ、Djentまで幅広く」ロックを選曲していけるようなユニットを目指してやってます。
――なるほど、そういったコンセプトでやられて来たのですね
eMPIRE:品川ステラボールでやったD4DJとして2回目のLIVEがありまして、あの時燐舞曲が夜公演のトップバッターを頂いたんですよね。その時、イベント1曲目に選曲する楽曲が燐舞曲のこれからのイメージを確立させるチャンスだなと考え選んだ楽曲が、初披露の『Leia』というカバー曲。これは今後『Horizontal Oath』という楽曲を燐舞曲というユニットで世に出すなら、そこまでのSTORYは“こうする”という考えが明確にありましたので、ここから“少し前を向かせるには”徹底的にそれまでの世界は作り込むと決めてました。
『Leia』の圧倒的な世界から作り上げた燐舞曲の世界線は明確に闇に堕ち、同日に初披露した『カレンデュラ』で補完しました。
先の公演で『Horizontal Oath』を初披露するにあたり、なぜ“月見山 渚”の歌の力を借りなくてはいけなかったのか。全ての設定は始めから決まっていて、だからあの日の選曲は『Leia』一択でした。そんな選曲をやってます。ややこしくてスミマセン。
■「クライノイドは渚を軸に作った曲?」
――続いて、今回の2ndシングル「クライノイド」について伺いたいのですが……
eMPIRE:「クライノイド」の話をするために、少し「カレンデュラ」の話をしても大丈夫ですか?
――ぜひ、お願いします。
eMPIRE:今回の楽曲「クライノイド」って“ウミユリ”という意味から来てるんですが、これは「カレンデュラ」と同じ花シリーズとして作った楽曲です。まず「カレンデュラ」では椿の生涯を歌いました。そのカレンデュラという花言葉には悲嘆、寂しさ、失望って意味があるのですが、そこから「クライノイド」、「フローセカ」という花シリーズの三部作を仕上げました。あくまで楽曲を作るための設定に過ぎませんが、そこには自分に失望し、寂しさから見上げて、悲嘆をする。そんな“歌”からメンバーは何を見るのか。そういった物語の比喩やコンセプトがゲームのストーリー上どのように絡み、影響となっていくのか。楽曲とは受け取り方はそれぞれだと思っていますが、楽曲としての何か軸と仮説は常に立てるようにして作ってます。
これは卵が先か鶏が先か、みたいな話なんですが、たまたま渚が持ってるギターの色が黄色だったんですよね。「カレンデュラ」を作った時、花の色が似た黄色だったので、僕から中山さんへ「渚のギター、カレンデュラって名前に設定してもらえませんか?」って提案して採用して頂いたみたいなエピソードもありました。それによって「クライノイド」「フローセカ」の軸もしっくりと定まりましたね。
――そういう細かい設定に気付いた瞬間って嬉しいですよね……。
eMPIRE:「カレンデュラ」が渚のギターとなれば、歌詞の内容は“椿”はカレンデュラという“ギター”に縋っている歌となり、その先のストーリーにカレンデュラを持つ“渚”を軸に描いたのが「クライノイド」です。ここでようやく「クライノイド」の話に入るのですが、燐舞曲の始まりからあったこの楽曲を燐舞曲として歌えるまでのストーリーを設定し、今回2ndシングルの生産限定盤に付属しているゲームリリース直前のライブ「D4DJ D4 FES.~LOVE!HUG!GROOVY!~(東京ガーデンシアター)」で披露しました。
eMPIRE SOUND SYSTeMS
燐舞曲はライブを「ライブ」ではなく、「舞台:燐舞曲・〇章」として作ります。
これまで設定してきた物語をセットリストとMCと演出まで徹底して作り込み、それをキャストのメンバーが各キャラクターとして演じ切る。今回のシングル楽曲「クライノイド」の答えは「このライブ映像にある」と言っても過言ではありません。このライブで披露した「クライノイド」のSE、MC、なぜ渚ボーカルスタートなのか、なぜここまでマイクスタンドに向かって歌い切ることしかしてこなかった椿が初めてハンドマイクを取り、メンバーみんなとシンガロングしたのか。その物語の終着点らしさを描いています。
「クライノイド」は作った時から、必ず“渚と歌って”、間奏で“シンガロングする”と決めてました。そうやって選曲された楽曲です。
――めちゃくちゃ想いが込められてたんですね。
中山:カレンデュラの時は開発の方と相談しながらって話を先ほどしましたけど、それ以降は曲のイメージとか込められた想いみたいなものを説明した上で、ゲームのストーリーに使えそうなアイディアだったらご自由に取り入れてください!みたいな感じで開発の方にお渡ししているので、僕らからすると「あっ、ここ使われたんだな」という楽しみもありますね(笑)。
■「あなたの群青のフローセカを“探して”ほしい」
――では三部作の最後、群青のフローセカに込めたメッセージなどを教えて頂ければ。
eMPIRE:この楽曲は冬をイメージして作った楽曲ではありますが、フローセカ=ドライフラワーの持つ意味、“時間を支配する花”という設定をモチーフにしています。まず歌い始めの「遥か未来で 君に出会えたら」から、この時点で誰か時空を超えています。この設定から「もしもあの人が居なくなったら」という物語はあくまで“仮説”となり、燐舞曲のユニットストーリー全20話を受け、「この物語の中でもしも渚がいなくなった時に、椿ってどうなるんだろう?」というifの話をテーマに作った楽曲となります。信頼関係はそれぞれのメンバー同士、あるかと思います。だからこそ一番確執と自我のありそうなフロントマン2人を元に楽曲で描いたのが「群青のフローセカ」です。この楽曲は受け取り方によって、“君”はその人の大切な人にも当てはまるし、燐舞曲の各メンバーにも当てはまると思います。
僕の中では君を“渚”とイメージすることで、「君の笑顔を真似てた 僕みたいなんだ」という歌詞が、普段あまり笑わない椿が渚の笑顔を思い出して笑ってみたという絵は素敵だなと思いました。この楽曲はそういう設定で制作しましたが、楽曲とはそれぞれの「フローセカ」があってよいと思ってます。自分の思う誰かに当てはめて歌ってもらえれば幸いです。
――制作側としては、椿から渚に向けての曲だったんですね!意外な展開でした……。
eMPIRE:あと、ひとつ裏設定があるんですが、燐舞曲のメンバーが付けてる青い花飾りがあるじゃないですか、あれが「群青のフローセカ」なんです。それを探しているとも取れるように作ってます。実は燐舞曲のメンバーで唯一、渚だけがあの花飾りをつけてなくて、しかしそれに気づいたのは楽曲を作った後の話なんですよね。
――うわ!言われてみたら確かに……!!
eMPIRE:結構そういった偶然の一致がこの燐舞曲をやってると割りと起こってて、中山さんか誰か開発の人がタイムリープしてんじゃないのかな?ってリアルに思う時もあります(笑)
全てにおいて「軸は揺ぎなくある」ので、その道を進んでいくと自然に同じようなイメージを持っていただけている開発スタッフさまとどこかで合致することがこれからもあるんだろうなー、と思って燐舞曲やってます。今回の楽曲はもちろんですが、今後の楽曲や燐舞曲の展開でも何か繋がりが作れればなと思います。
――今回は2ndシングルのインタビューだったんですけど、今後がめちゃくちゃ楽しみになるお話でしたね。
eMPIRE:カレンデュラからの三部作はフローセカで一旦表現したかったことは歌い切ったんですが、今後の“花シリーズ”でいうと第四章となる「BLACK LOTUS」が既に完成しています。
この楽曲は燐舞曲オリジナルとしてはもちろんですが、アニメのタイアップ曲ともなりますので
「燐舞曲」とアニメ「D_CIDE TRAUMEREI」の世界観と設定を融合させた楽曲となりますので、是非アニメと燐舞曲のストーリーと追いかけてもらえたら、思惑などいろいろ分かってくるとは思います。楽曲には今回、椿と葵依を登場させていますので、これまでの花シリーズとはまた違った物語になっていくと思います。
――最後に、クリエイターの方に直接お話を伺える機会なので、お聞きしている質問なのですが、この記事に興味を持ってくれた人の中には、将来、作曲の仕事などをやってみたいと思っている人もいるかと思います。そのような方に向けてアドバイス等あればお聞きしたいです。
中山:自分はゲームのシナリオも書けないし、絵も描けないし、曲も作れないんですけど、プロデュースの仕事の良いところは自分がスゴイ!と思う才能を持ったクリエイターの方々をマッチングさせる企画、機会を作り、テーマを提示するとそれに沿って作っていただける幸せな仕事じゃないですか。クリエイターの皆さんの良い所を引き出して、みんなで素晴らしい仕事が出来た時はやっぱりやりがいを感じますし、何も出来なくても「何かを生み出したい!」という強い気持ちがあればきっと良い仕事ができると思いますので、自分みたいな人も、決して悲観しないでクリエイティブに挑戦してほしいなって思います。
eMPIRE:歌詞はプロデュースという観点では重要なポイントだと思っています。世界の設定から出演者、一人称から語尾まで。燐舞曲では全楽曲の作詞にeMPIREが入っています。これは決められた設定をブレることなく世界にまとめ、前後の繋がりを作るためにやっています。
作品を受ける時、楽曲単体での判断も大事だが、その作品の前後の楽曲、これまでのストーリーや設定を軸にして制作をしていくことが「点」と「線」となり太くなってくと思ってます。
まずは作品の特性を知り、そして前後の流れに意識を少しだけ置いて制作をしていけば何かその先に見えるものがあるのかも知れませんね。
――一見、DJユニットとしては異色に思える燐舞曲が1番重視しているのが、実はDJにとって1番重要な”選曲”の部分だった、という話が聞けたのが個人的にはすごく腑に落ちたというか、感動しました。本日は貴重なお話をたくさん伺えて楽しかったです!ありがとうございました!
インタビュー・文:前田勇介

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • SUPER★DRAGON / 「楽楽★PAINT」
  • OLDCODEX / 「WHY I PAINT ~なぜボクがえをかくのか~」
  • みねこ美根 / 「映画の指輪のつくり方」
  • POP TUNE GirlS / 『佐々木小雪のイラスト花図鑑』
  • POP TUNE GirlS / 『涼水ノアの、ノアのはこぶ絵』

新着