桐谷健太「このメンバーなら、最高傑
作」~舞台『醉いどれ天使』製作発表
会見レポート

日本をはじめ世界中に大きな影響を与えた名匠・黒澤明と、その多くの作品で主演を務めた三船敏郎。後に次々と傑作を生み出すことになる二人が初めてタッグを組んだ映画『醉いどれ天使』が、この度舞台化される。
演出は、バイオレンスからコメディ、最近では特撮テレビドラマまで多岐にわたる映像制作を務めている三池崇史。脚本は、骨太な物語を生み出し、人間を深く描き出す蓬莱竜太。三船敏郎が演じた松永に挑むのは桐谷健太。ほか、真田役には高橋克典、松永と同郷で彼に想いを寄せるぎんを演じるのは佐々木希、真田の診療所に訳あって身を寄せている美代役は田畑智子、松永と深い仲にあるダンサー・奈々江役は篠田麻里子、そして、松永の兄貴分・岡田を演じるのは高嶋政宏と、豪華な顔ぶれがそろった。
2021年7月19日(月)に東京都内で行われた制作発表の様子をお伝えする。
蓬莱竜太  オフィシャル撮影:田中亜紀 
ーーまず最初に、一言ご挨拶よろしくお願いします。
蓬莱:今回、黒澤明の名作を舞台化するということでお話をいただいて、どういうふうに映像を演劇としてつくることができるんだろうかと。演劇をやっている身としては、そのことをすごく意識して書いたので、これが演劇の『醉いどれ天使』になればいいなとすごく思います。
こういうコロナの時代で書いていたので、抗えない時代の中で生きるしかないというのが、今とリンクするなと思っているので、そこも意識して書いたので、そういうところも注目してもらいたいです。
三池崇史  オフィシャル撮影:田中亜紀 
三池:まぁ、本業ではないので、思いっきり全力でやっていこうと思っています。これだけすごいメンバーが集まっていて、逆に、デビューのされ方から今ここに至るまで、もちろんみなさん人気と実力はあるんですけど、役者という中でもみんなそれぞれ生き方が違った人間たちが、この明治座ですれ違うというか、交錯するというか。蓬莱さんの書いた脚本に通じるものもありますので、ぜひ劇場で目撃していただきたいと思います。
桐谷健太  オフィシャル撮影:田中亜紀 
桐谷:蓬莱さんの本当に素晴らしい本と、鬼才と呼ばれる三池さんと、ここにいらっしゃる個性豊かで魅力的なキャストの皆さんとやれることを本当に嬉しく感じます。このメンバーなら最高傑作になります。ぜひ観てください。以上です。
高橋:何度も何度も若い時から見ている黒澤作品の『醉いどれ天使』ですが、まさか自分が志村喬さんの真田をやらせていただくことになるとは、夢にも思いませんでした。憧れ以上の、なんでしょう、何もしなくても思い出されるセリフ一つひとつと、空気感と世界観と。しかし、あそこに映っていなかったものは、まだまだ蓬莱さんの脚本を読ませていただいた時に、ものすごく感じてですね、今は楽しみでなりません。
 
以前、『サラリーマン金太郎』というテレビドラマの延長線だった映画で、三池さんとご一緒したんですけど、全くの不完全燃焼だったので(笑)、今回は三池ワールドを三池さんとのコラボで、このメンバーと臨めることが楽しみです。それを明治座に乗せるというね。どんな芝居になるのか。楽しみで仕方ありません。よろしくお願いします。
高橋克典  オフィシャル撮影:田中亜紀 
高嶋:お久しぶりに製作発表の場にいます。いや、さすが三池組は豪華ですね。
三池:俺じゃない(笑)。
 
高嶋:僕が映画界で崇拝する黒澤監督と三船敏郎さんのコンビが始まった、記念すべき『醉いどれ天使』に出られるという。マネージャーから連絡が来た時に、「えっ、嘘だろ!?」と家で叫んだぐらい嬉しかったですね。ずっと三池監督の映画に出たかったんですけど、その願いがまさか舞台で叶うというのが。さきほど「本業ではない」と言っていましたが、いやいや、三池監督の舞台、観に行ってますから。本当に興奮しています。
 
それと、やっぱり僕が思春期の高校生の時、クラブやディスコにいると、ベージュの革の上下の格好いい、高橋克典さんと、高校時代の縁を経て、また再び舞台で共演できる。これは最高です。自分自身楽しみにしていますが、この興奮を空回りさせないように、一つひとつ積み重ねていきたいと思います。よろしくお願いします。
高嶋政宏  オフィシャル撮影:田中亜紀 
佐々木:ぎんという役は、ダンスが好きで、ダンサーに憧れて、東京に来るんですけども、戦争で足をちょっと悪くしてしまうんです。その中でもエネルギッシュに生きていく強い女性で、すごく素敵だなと思いました。心も体も限界寸前の松永に寄り添うという役で、まっすぐに松永を思いながらも、たくましく生きていく女性を頑張って、一生懸命、演じられたらなと思います。よろしくお願いします。
佐々木希  オフィシャル撮影:田中亜紀 
田畑:今回この作品に出演させていただくんですけども、楽しみがいっぱいあって。もちろん明治座という劇場に立たせていただくのは初めてですし、三池さんの演出、蓬莱さんの脚本も初めてですし、映画の舞台化も初めて。その世界観をすごく楽しめたらなと思います。私自身お芝居をするのが久々なので、一生懸命皆様についていって、生きることに貪欲に、強い女性を演じられたらなと思います。よろしくお願いします。
 
篠田:まず、このお話をいただいたときに、本当に、嬉しくてワクワクして。自分自身、舞台自体が久しぶりなので、できるかなという不安とどきどきで、ワクワクしています。戦後時代を私自身はあまり知らないというか、生きてはいなかったんですが、戦後に生き抜く女性を私ながらに一生懸命演じたいなと思います。コロナ禍での舞台なので、自分自身どうなるか分からないですけど、千秋楽まで最後まで何事もないように無事に走り切りたいなと思います。ぜひみなさん、観にきてください。
田畑智子  オフィシャル撮影:田中亜紀 
ーー蓬莱さんはさきほど「演劇の『醉いどれ天使』になればいい」とおっしゃいました。そこをどう実現させられたのか。また、三池さんは、この作品を舞台化するにあたっての興味の持ちどころを今お答えいただける範囲で教えてください。
 
蓬莱:一番意識したのは、それぞれの登場人物のモノローグというか、独白というものを多く利用しているということですね。これは映画ではできないことで、映画では描かれていない心情を、心の声を、役者がどういう風に音に出して、今時点での心情を吐露していくことが、この舞台のリズムになっていくような構造にしているんですけども。
 
モノローグは演劇の基本中の基本ですので、そこを恐れず大胆に書いてみようということでやりました。あとは、定点から、同時にいろんなものを観られるのが演劇だと思うんですね。同時多発が起きているので、そこら辺を意識して書いたというか、こう喋っている裏ではどういうことが起きているのか。仕掛け的にも楽しめるんじゃないかなと。演劇的な手法を脚本では堪能しているということです。
篠田麻里子  オフィシャル撮影:田中亜紀 
三池:許されるんだったら、この場でみなさんに素晴らしい台本をお配りしたいぐらいです(笑)。これで、芝居で、心が揺れなければ、全て自分の責任だなと。すごくワクワクというか、興奮して、一気に読んでしまうんですけど、そのあと、本当に俺にできるのかと。稽古が来るのはずっと先だといいなと思っていたんですけど、あっという間に月日は流れまして、いよいよ稽古かというところで。非常に緊張しています。
 
自分としては、それほど昔につくられた映画ではないんですが、ひとつ特徴的なのが、今考えても信じられないんですが、終戦3年後にこの映画が作られたんです。要は近未来を描いていたんですよね。闇市を舞台に、人間たちがぶつかり合うという瞬間を描いていたんですけど、そのエネルギーは、映画そのものが持っていた。そのエネルギーがあった時代を考えると、自分たちにとっては古典。要は、シェイクスピア的なものであって。対決したり、どちらがどうとぶつかり合ったりすることではなくて、本当に題材として、受け取って、それを我々が再構築する。
 
映画との一番の違いは、一人ひとりこの人間がどこで生まれ、何をして、どうなりたかったのかというのがもっと明確になる構成になっています。それをあくまでも戦後に生きた人間たちを演じてもらいながら、舞台の上で、自分自身をさらけ出してもらう。演じているんだけど、そこに立っているのは演じているのは人間そのもの。心をむき出して裸のままぶつかり合う。そういう舞台にしたいなと思います。
三池崇史、篠田麻里子、田畑智子、蓬莱竜太(後列左から)、佐々木希、高橋克典、桐谷健太、高嶋政宏(前列左から)  オフィシャル撮影:田中亜紀 
ーーこの作品は、黒澤監督と三船さんの初タッグ作品で、この作品がきっかけで、タッグがその後も続いていきました。皆さんにとって、今につながっている、長いことやっている取り組みを教えてください。
 
蓬莱:すっごく、答えに困りますね。一番長くやっているのは、仕事ですかね(笑)。
 
田畑:私も仕事ですかね。この仕事しか知らないというか。今取り組んでいることとすれば、そうかな。あとは舞台に上がらせていただく前に、今までお世話になった監督や、この世にはいらっしゃらないんですけど、私の尊敬する役者さんとかを思い浮かべて、一人ひとり思い浮かべて手を合わせて出るというのはやっています。
 
高嶋:中学3年からずっと取り組んでいることがあることがあるんですけど、食べ歩きです。生きがいのひとつですね。
 
桐谷:散歩ですかね。僕も取り組んでいるということじゃないですけど、いい気持ちで散歩するみたいなことは。朝から晩までお仕事でなければ、基本、行きますね。
 
高橋:僕も仕事ですかね。なんとか続けさせていただいている。あとは、結婚生活ですかね。
 
佐々木:仕事もそうなんですけど、結構どろどろとした映画が好きで、三池さんの作品とかもすごい見ていて。いつもそれを暗い中で見たりするのが好きで、続いています。ホラーまで行くと怖いんですけど、人間の深いところまで描いているような作品が好きで、一人で見たりとかしています
 
篠田:私は舞台が好きで。観るのも好きだし、出るのも好き。AKBと出会えたことが、劇場で毎日ステージに立つという緊張感だとか、舞台はお客さんが入ってひとつの作品になるというか。自分だけではないエネルギーや人の力で、すごくこんなにも変わるんだなという刺激があるので、やめられないものというか。刺激があってすごく好きなものは、舞台かなと思います。
 
三池:出会いということであれば、自分が監督になったのが30歳の時。Vシネマが全盛期で、それぞれの街に1軒2軒レンタルビデオショップがあって。自分の仕事はそこの棚を埋める、ややバイオレンスちっくな作品を。メインのお客さんが、地方の孤独な青年に受けて、バンと。すごく自由にやれたし、すごく楽しかったんですけど、自分の撮った作品を見て、この監督にこれを撮らせてみたらいいんじゃないかと、それまでの自分と違うところまで引っ張ってくれたきっかけが中沢(敏明)さんというプロデューサーがおりまして。実は今回の舞台も、中沢さんの企画なんですよ。
そういう意味では、あの時に、「これ、誰が見るんだよ」というVシネマを撮っていなければ、中沢さんの目に止まることもなく、出会うこともなかった。そういう点では『醉いどれ天使』は自分にとっては、全く思いもしない場所にたどり着いたという。その出会いと運命みたいなものを感じていて。より責任を感じるんですが、責任感に潰されそうな時は、開き直るしかないので。
 
もう一人出会いで言うと、妖怪とか、いろいろ出会って、今、アマビエさんはもっているんですけど(笑)、8月13日から『妖怪大戦争 ガーディアンズ』始まりますので、そちらもよろしくお願いします(笑)。
三池崇史、篠田麻里子、佐々木希、高橋克典、桐谷健太、高嶋政宏、田畑智子、蓬莱竜太(左から)  オフィシャル撮影:田中亜紀 
ーーちなみに、監督が続けていることはありますか?
 
三池:お互いのフィールドで、お互いの仕事を、どこに行くためじゃなくて、その作品のために命を懸ける。何か自分がそこにいくために映画を作るのではなくて、今与えられた目の前の作品の登場人物たちを追求していくという。野心の道具にしないということを教えてくれて。愚直に取り組んでいくということです。
 
ーー最後に桐谷さん、メッセージをお願いします。
桐谷:名作映画の舞台化ですけれども、全く違った魅力的なものを見せられると思っています。本当に僕自身ワクワクしていますし、舞台は生モノなので、1公演1公演、最初で最後だと感じながら出し切って。
舞台を観た方が、空の感じ方が変わったり、もっと幸せに生きてみようとか、楽しく強く生きてみようとか、そう思っていただけるように、エネルギーと波動を惜しみなく出していくので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います。
取材・文=五月女菜穂

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