大坂なおみ選手が会見を避ける理由が
錦織圭の会見でわかったよ:ドラァグ
クイーン･エスムラルダ連載365

エスムラルダの「勝手にワイドショー！」

第365回　大坂なおみ選手が会見を避ける理由が錦織圭の会見でわかったよ　全仏オープン開幕直前の5月27日に、「選手の精神状態が軽視されている」と訴えて、試合後の記者会見には出席しないことを宣言。30日に行われた1回戦には勝ったものの、宣言通り試合後の会見を拒否し、4大大会の主催者合同で「違反を続けると大会からの追放、4大大会出場停止もあり得る」と警告されて話題となった、女子テニスプレーヤーの大坂なおみ選手。さらに31日、大坂選手は自身のツイッターで大会を棄権することを表明し、2018年以来、長い間うつ病に苦しんできたことを告白。

　こうした大坂選手の一連の行動に対し、「記者会見もプロの仕事のうちでは？」「うつ病であることを先に告白するべきだったのでは？」といった意見も。それももちろんわからなくはないけど、アタシはやはり「私は世界中のメディアに話す前に大きな不安の波に襲われます。本当に緊張し、できる限り最善の答えを出そうとすることにストレスを感じます」という大坂選手に同情しちまうわ……。

　チームスポーツにはチームスポーツならではの大変さがあるだろうけど、個人競技の選手、特に注目度の高い世界のトップレベルの選手が、日々大変なストレスやプレッシャーを抱えているのは想像に難くないわ。しかも大坂選手の場合、4大大会で4勝し、「追われる立場」になったこと、「一挙手一投足、一つひとつの発言が世界中のメディアに取り上げられる立場」になったことで、ますますそれが強まったはず。
もちろん、スポーツの世界でそこまで上りつめる人は、基本的にはかなりメンタルが強いほうだと思うわよ？　でも、やはり個人差があるだろうし、人間誰でも、心身の調子がいいときばかりとは限らない。ましてや大坂選手はまだ23歳。トップレベルの選手だからといって、「常に完璧であること」を求めるのは酷な気がするのよね。

　黒人襲撃事件への抗議の意を表明するなど、自分が正しくないと思ったこと、受け入れられないことに対しては、はっきりと「NO」をつきつけてきた大坂選手。そんな姿勢に対し共感する人も反発する人もいるだろうけど、こういう人がいるおかげで、今まで「それが当たり前だから」「それが社会というものだから」といった「暗黙のルール」に逆らうことができず、我慢を強いられてきた人が、勇気をもらったり、声を上げやすくなったりするんじゃないかしら。

ちなみに6月2日、男子シングルス2回戦で勝利をおさめた錦織圭選手の試合後の記者会見では、大坂選手に関する質問が集中したとのこと。各国のメディアのみなさん、大坂選手が嫌がったのは、まさにそういうとこだと思うわ……。

＜水曜連載＞※今回金曜更新

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【エスムラルダ：プロフィール】

えすむらるだ…1972年生まれ。94年よりドラァグクイーンとしての活動を開始し、各種イベント、メディア等に出演。2002年、東京都の『ヘブンアーティスト』ライセンスを取得。脚本家・ライターとしても活躍している。著書に「同性パートナーシップ証明、はじまりました。」（ポット出版、共著）
twitter：@esmralda001

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