“ご当地ソングの女王”の水森かおり
にインタビュー 明治座『水森かおり
公演』に懸ける思いとは?

歌手の水森かおりが座長を務め、2021年6月18日(金)から明治座で開催される『水森かおり公演』。2019年3月に上演した『水森かおり特別公演』で初の単独座長を務めて以来、2年ぶりの明治座出演だ。
第一部は、華やかな大正時代の東京を舞台に、女子大生の令嬢に扮した水森かおりが、記者を目指して奔走するドタバタ喜劇を上演。第二部は、「鳥取砂丘」をはじめとした名曲の数々と、紅白の舞台で話題を呼んだ巨大ドレスを劇場バージョンで再現した特別衣裳を披露するのだそう。どんな公演になるのか、水森かおりに意気込みや見どころを語ってもらった。
いつも以上に舞台に立てる喜びを感じて
ーー今回の『水森かおり公演』出演にあたって、今のお気持ちは?
すごくワクワクしています。明治座さんの舞台は、自分自身が1周りも2周りも成長させていただける素晴らしい舞台なので、座長としてまた舞台に立たせていただける喜びをいつも以上に強く感じています。ポスターの写真撮影の時から、もうワクワクが止まらなくて。早くやりたい、稽古したいという気持ちで、ずっと過ごして来ました。コロナ禍でも来てくださるお客様方にいい舞台をお見せしたいなと。本当にワクワクが止まらない状態です。
ーー喜びを「いつも以上に」感じていらっしゃるのは、やはりこのコロナ禍だからですか?
 
そうですね。コンサートが延期になったり、中止になったりして。テレビの収録さえも、ほぼ無観客。お客様がいない中で歌う機会が増えたんです。だからこそ、お客様が目の前にいる感動を早く味わいたいし、皆さんとの一体感を存分に楽しみたいなと思っています。
水森かおり
ーー公演のことを詳しく教えてください。第一部では、記者を目指す令嬢女子大生役を演じられます。
 
ふふふ……大丈夫ですかね?(笑)。そもそも「令嬢」という段階でどうしようと思って。何しろ自分は下町育ちで、おてんばに育ってきたので、お嬢様でもない。ましてや女子大生と言われて、四半世紀以上も前じゃんと思って(笑)。まぁでも、逆になり切って、振り切って、割り切って、楽しみながらやれたらいいなと思っています。お嬢様といっても、トラディショナルなお嬢様ではなくて、社会進出をしたいというすごくパワフルな女の子の役なので、そこら辺は自分らしくできるのかな。お嬢様に見えるか、女子大生に見えるかということがとにかく心配ですが(笑)、それも含めて笑ってもらえればいいですし、楽しみながら自分自身もやれたらなと思います。
 
ーー大正時代ということで、雰囲気も華やかになりそうですね。
 
そうですね。今までの劇場公演でやらせていただいたときは、昭和30年代の現代劇ばかりで。今回のように、時代背景が全く違う世界をやるのは初めてなので、その点もすごく楽しみですね。衣裳やセットはどうなるんだろうと、楽しみにしています。
 
ーー脚本を読まれた感想を教えてください。
 
女子大生というのが、まだちょっと小っ恥ずかしいんですが……石倉(三郎)さんや三林(京子)さんなど、大先輩で芸達者の方々に囲まれているので。とてもテンポが良くて、気軽に、楽しく見ていただけるお芝居だなと思っています。いい意味で、難しいことを考えなくていいお芝居なので、すごく楽しいんじゃないかな。
紅白歌合戦で話題になった、巨大衣裳も観客の前で初披露
ーー第二部では、昨年末に大きな話題を呼んだ紅白で着られたお衣裳を披露されるそうで。
 
はい。今回、紅白以来初めて着ます。実は、年が明けてから2回コンサートがあったのですが、そのときの会場には衣裳が大きすぎて入らなかったんです(笑)。今回、この明治座さんで初披露という形になります。私自身がとても楽しみですね。
 
ーー画面越しに見ても、素敵なお衣裳でしたが、また生で見るとさらに迫力があるのでしょうね。
 
「瀬戸内 小豆島」という歌のお衣裳で、デザイナーの篠原ともえさんが「ステージを瀬戸内海の小豆島の海にしましょう」と提案してくださって、できあがったものです。昨年の紅白は無観客収録だったので、実際にお客様の目の前で披露することができませんでした。つまり、今回初めてお客様の前でこの巨大衣裳を披露することになります。明治座の舞台を小豆島の大自然に変えることができたらいいなと思います。
水森かおり
ーー篠原ともえさんがデザインされたお衣裳を水森さんはどのように受け止めていらっしゃいますか?
 
本当にいろいろと一生懸命やってくださいました。デザイナーとしての務めもそうですし、しっかりと私の気持ちにも寄り添ってくださって、あのドレスを作ってくださったんです。何度も何度も『瀬戸内 小豆島』の歌を聞き込んで、イメージを膨らませて、デザインも何十回書き直して、やっとできたのがこれですと見せていただいて。膨大な量の資料と試作品でした。初めて巨大衣裳を見たときに、感動して、涙が出てしまいました。
 
ーー篠原さんは、水森さんのどういうお気持ちに寄り添ってくださったのですか?
 
去年はコロナ禍で、会いたい人に会えなかったり、行きたいところに行けなかったり、見たい景色を見られなかったり。そういう方が多い一年だったので、故郷をすごく遠く感じた方も多いと思うんです。だから、私は歌を通じて、みなさんの故郷の海や山の景色を思い出してもらえたらいいな、という話をともちゃん(※篠原ともえの愛称)にしたんです。
ーーその思いは今回のセットリストにも反映されそうですね。
 
そうですね。私の場合はご当地ソングを歌わせていただいているので。今はなかなか自由に旅行も行けない状況ですが、こういう時だからこそ、歌で旅してほしいと思っています。明治座にいながら全国各地を巡っているような、そんな旅気分を味わっていただけるような構成にしたいと考えています。
また、昨年末の巨大衣裳のほかにも、紅白で着た歴代の等身大ドレスもお見せしたいなと思っています。久しぶりに着るドレスもあるので、着れなかったらショックなんですけど(笑)、目でも楽しめるステージにしたいですね。
ご当地ソングの女王として心掛けていること
ーー「ご当地ソングの女王」と言われている水森さん。水森さんご自身は、東京出身ですが、全国各地のご当地ソングを歌う時はどんな心がけをされているのですか?
 
今、ご当地ソングが125曲あります。初めて歌った歌が青森県の歌だったんですけど、私は東京生まれで、全然青森にご縁もゆかりもないし、青森の人は怒るんじゃないかなと思って。恐縮する気持ちで、いいのかなと迷いながら歌っていたんです。
でも初めて青森に行って、地元の皆さんの前で歌った時に、すごく喜んでくださったんですよ。「よくぞ故郷の歌を歌ってくれた! ありがとう!」って。あぁ、勝手に自分で思い過ごしていただけなのかもしれないと気づきました。こうやって皆さんが喜んでくださるなら、もっと地元のみなさんに愛していただけるように、応援していただけるように、認めてもらえるようになりたいと思い、その土地のことを勉強するようになりました。
その土地の歴史やお国言葉を調べて。現地に行ったら、必ずタクシー運転手さんに、ガイドブックには載っていないようなおいしいお店や安売りしているスーパーを聞いています。とにかくその地元に入り込もうと思って。そういう情報を言うと、「なんで知っているの?」と言われて、そこでまたぐっと距離が縮まるんですよね。
水森かおり
最愛の父を亡くして。これからの水森かおり
ーー昨年はコロナ禍でしたし、7月にはお父様を亡くされ、とても大変な一年でした。水森さんご自身、いろいろなことを考えられたと思います。歌い手として、何か目標が新たに生まれたり、考え方が変わったり、何か変化はありましたか?
 
歌い手さんはみなそうだと思いますけど、お客様の目の前で歌うことが当たり前だったのに、それが一気になくなって。自分はなんで歌っているのかな、歌手ってなんだろう、と考える日々でした。特に去年は25周年のメモリアルの一年で。これまで支えていただいたみなさんに感謝の気持ちを伝える場をたくさん考えていたんですけど、それも全部なくなってしまいました。改めて立ち止まらざるをえなくなったことで、見えたことや気づけたことはたくさんありました。
その中で、自分にとっての大きな支えだった父親が亡くなって。そこで、やはり自分には歌しかないなと思ったんです。歌を教えてくれたのは父ですし、「感謝を忘れるな。素晴らしい舞台に立てているのも、お前一人の力で立てているんじゃない。勘違いするなよ」といつも父から言われていました。本当に父の言う通りだなと思うんですよね。一人では決して舞台に立てない。特に明治座さんの劇場公演の舞台の時は、それを感じます。コロナ禍で、去年は何もできなくて、残念な気持ちはあるのですが、それ以上に、いろいろ考えることができて。それは、これからの水森かおりに全てがつながっていくと思いますし、とてもいい経験だったなと前向きに切り替えています。
 
ーーお父様を亡くされてから、犬を飼い始めたというお話をうかがいました。
 
そうなんです。自分がこんなに“犬おばさん”になるとは思いませんでした(笑)。これまでの人生で犬を飼ったことがなかったんですよ。何もかもが初めてなので、例えば散歩にしても、ルールがわからない。詳しい人に聞いたり、道ゆく犬連れの方に聞いたりして、日々学んでいます。でも、大切な命なので、しっかり責任を持って、家族みんなで育てています。犬を飼っていると、初対面の方とでも犬の話で盛り上がれるんですよ。そこが面白いですね。犬を通じた素敵な出会いがないかなと思って今期待しているんですけど。
 
ーー水森さんは「ご当地ソングの女王」、「巨大衣裳の女王」と称号がありますが、次に狙うは犬関連の称号でしょうか?(笑)
 
“犬おばさん”とかでしょうか?(笑)。いやいや、私なんてまだ初心者なので。でもね、1匹いたら2匹いても同じだよと言われて。2匹いたら3匹いても一緒だよと言われて。怖いです、自分が。どんどん増えていくんじゃないかなと思って(笑)
ーー最後に、舞台を楽しみにされているみなさんに一言お願いします!
  
コロナ禍で緊張感がある日々ですが、だからこそ、歌を聞いて、お芝居を見てほしいですね。エンタメって、こういうときだからこそ、とても大事だと思うんです。我々も明治座さんの関係者のみなさんも、お客様を万全の状態で迎え入れるように努力しますので、どうぞ安心して、劇場にいらしてください。緊張感ある日々を少しでもほぐしていただいて、「来てよかったな、また明日から頑張ろう」と明るい気持ちになるような時間を、一緒に過ごせたらと思います。大変な中ではありますけども、ぜひ来ていただきたいなと思います。
水森かおり
取材・文=五月女菜穂  撮影=荒川潤

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