ディズニー最新ミュージカル『アナと
雪の女王』劇団四季・公開稽古レポー
ト「ありのままの自分で生きる」

2021年6月24日(木)、JR東日本四季劇場[春]にて開幕するミュージカル『アナと雪の女王』。『美女と野獣』の初演以来、25年間にわたりディズニーとタッグを組んできた劇団四季が、満を持して送り出す最新作だ。
本作の初日に先駆け、四季芸術センター(横浜市・青葉区)で行われた出演候補者たちによるメディア向け公開稽古と合同取材会の模様をレポートしたい。
劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
この日、メディア関係者に披露された『アナと雪の女王』からのナンバーは3曲。アソシエート・ディレクターのエイドリアン・サーブル氏より「はじめまして、たのしんで」とのチャーミングな一言があり、緊張感とやわらかさ、あたたかい空気が混在する中で俳優たちがスタンバイ位置につく。
最初の1曲は大人になったアナ(町島智子)の登場シーンで歌われる「生まれて初めて」。ベッドで眠っていたアナが侍女たちに起こされ、これから始まる1日を楽しみにしながらドレスをまとっていく映画版でもおなじみのナンバーだ。

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
アナ役候補者の1人、町島は非常に表情豊か。大きな瞳と周囲を明るく照らす雰囲気はまさに”夏”を象徴する少女・アナそのもので目が離せない。これが四季での初の大役とは思えないほどの安定感で最初のナンバーを歌い切った。
劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
2曲目は「サザンアイルズのハンス」~「危険な夢」。アナとハンス王子(塚田拓也)の出会いから、エルサ(岡本瑞恵)が戴冠の儀式を終えるまでが展開する。
劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
映画版ではディズニー作品の中でも”異色”のプリンスとして登場したハンス王子。塚田演じるハンスはそんな”異色”さを綺麗に隠し、爽やかでキラキラした空気をまとってアナの前に現れる。ここでもアナのアクティブな動きが存分に生き、クリストフ(北村 優)が運ぶ氷の上でのハンスとアナとのやり取りがキュートに映えていた。
劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
クリストフの相棒、スヴェン(中野高志)もここに登場。この役を担う俳優も大変な技術と体力が必要になりそうだ。

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)

自身の運命が変わる戴冠式に現れたエルサ(岡本瑞恵)。アナとハンス、アレンデールの人々の明るさや希望とは異なる恐れや不安、自身への問いかけ、王座に就くことの誇らしさといったさまざまな感情の混在を繊細に魅せる。

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
エルサ役候補の1人、岡本を稽古場取材で見るのは『アラジン』初演以来。未来に向かって強く明るく生きるジャスミンとは一味違い、大人としての葛藤が強く表出するエルサの造形を目の当たりにして、俳優としての成長を感じた。

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)

戴冠式の荘厳な雰囲気から、エルサの即位を祝うパーティーで、ふたりの父・アグナル王(阿久津陽一郎)がアナと踊っている姿も印象的だった。これはすでに死去した父王が別の人の姿を借りてエルサとアナに会いに来たという解釈なのだろうか。
劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
と、この2曲が終わったところで、エイドリアン氏とアソシエート・コレオグラファーのチャーリー・ウィリアムズ氏がアクトエリアに向かう。エイドリアン氏はアナ役の町島に、チャーリー氏はエルサ役の岡本とパーティーに出席する俳優たちに向かってそれぞれノート(=アドバイス等)を出していた。
劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
この時のノートで印象的だったのが、戴冠式からパーティーへの流れの中で「荘厳な雰囲気からよりハッピーにな空気を出して。周囲の人々がハッピーになることが(王位につくことにまだ迷いがある)エルサへの強いプレッシャーになるから」というチャーリー氏の言葉だ。それを聞き、真摯に頷く俳優陣の姿が頼もしい。

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
そして最後に披露されたのが誰もが知るあのナンバー「ありのままで」(ここでもエイドリアン氏の「これから歌われるのは皆さんが初めて聞く曲です」とのジョークが)。

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
周囲で共演者たちが見守る中、エルサ役の岡本が前に進み出て、ありのままの自分で自由に生きる決意をパワフルに歌い上げる。舞台版では映画版と違ったさまざまな”魔法”がこの1曲に仕掛けられているのだが、その効果もエルサの歌の力あってこと。岡本はすべてのプレシャーをはねのけるように素晴らしい歌声を響かせていた。

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
その「ありのままで」の歌唱が終わった瞬間、これまで四季の稽古場ではあまり見たことのない事態(?)が起きた。カンパニーの拍手が鳴り響く中、アナ役の町島が、歌い終わったエルサ役の岡本のもとに駆け寄り、泣きながら岡本をハグ。その光景はまるで本物の姉妹の姿を見ているようで、”姉”を心の底から称える町島の涙と、”妹”を同じく泣き顔で受け止める岡本の様子が胸に刺さる。
劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)

四季の稽古場に入れてもらうたびに”劇団としての強み”を感じるのだが、今回もそれは健在。一本筋の通った心地よい緊張感と、海外クリエイターのノートや指摘に即座に対応する複数の通訳と日本側関係者。また、感染症対策のスタッフが合同取材時に登壇者に向かって細かな指示を出している姿にも安心感があった。
劇団四季『アナと雪の女王』取材会(撮影:鈴木久美子)
公開稽古では棒を振る指揮者の姿も見えた。これはもしかして生演奏への布石……?と、楽しい想像を働かせながら隣の稽古場へ。ここで行われた合同取材会にはエイドリアン氏、チャーリー氏、エルサ役候補者の岡本瑞恵、三井莉穂、アナ役候補者の町島智子、三平果歩の各氏に加え、劇団四季代表取締役社長の吉田智誉樹氏が登壇。
劇団四季『アナと雪の女王』取材会(撮影:鈴木久美子)

出演候補者たちからは、コロナ禍で初日が延期になった際の想いと役にかける気持ちが語られ、クリエイター陣からはミュージカル版は映画版に比べ、新曲が大幅に足されていることや、登場人物の関係性により重きを置いた構成になっていることが明かされた。また『アナと雪の女王』前売りチケットの販売数が『アラジン』を抜いて、劇団四季での記録を更新したとの報告が吉田社長からあり、報道陣からも声が上がっていた(5月31日時点で約23万9千枚)。

劇団四季『アナと雪の女王』公開稽古(撮影:鈴木久美子)
ライブエンターテインメント業界が疲弊する今、非常に明るいニュースとともにその全貌が見え始めたミュージカル『アナと雪の女王』。稽古場でのあの熱量が凍った世界をどう溶かしてくれるのか、開幕を楽しみに待ちたい。
取材・文・一部撮影=上村由紀子(演劇ライター)

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