総合演出・宮本亞門×主演・大和田美
帆による『日本一わきまえない女優「
スマコ」』の無料公開が開始 稽古場
レポートも到着
稽古場レポート
そんな中、役者から本番の衣装が持ち寄られて衣装合わせが始まった。えええ~! これだけのメンバーで自前の衣装を持ってきたり貸し合ったりするってなんか小劇場の劇団みたいで新鮮! なんて心の中がどういうわけかキラキラした気分に……(笑)。福士誠治と波岡一喜が20代の頃に共演した思い出話に華を咲かせる中、宮本亞門と土屋監督が役のイメージに合った衣装を決めていく。
そしていよいよ、最初で最後の立ち稽古! シーン稽古では土屋監督がカメラワークと役者配置が説明され、そこに台本を持った役者が様々なアプローチをして、宮本亞門がさらにアクティブな演出をつけていく。台本を持ってのリーディング演劇なのに、台本があるようないような、熱気ある芝居の掛け合いが繰り広げられる。舞台演出家と映画監督によってシーンが彩られていく稽古場は今まで見たことがなくて、新鮮で面白かった。何よりも宮本亞門が特段に嬉しそうで、シーン稽古が終わったら、少しの休憩を挟んで、マスクを着用したまま初の通し稽古。筆者は稽古中に宮本亞門が全く水を飲まないことを心配していたが、それを忘れるほど作品が立体的になり、全シーン出ずっぱりで挑む大和田美帆の熱演も相まって50分の通し時間があっという間に過ぎ去った。とにかく、宮本亞門の大和田美帆に対する演出は注文が多くて細かい。大和田美帆には松井須磨子を演じる重圧もあるはず。さらに手練手管・経験豊富な俳優陣と対峙して挑むわけで、それでも、パワフルに通し稽古を乗り切った。
通しの後、キャスト・スタッフの熱気が換気で冷却されていくのがよくわかった。やはりリモート稽古では体感できない稽古場の醍醐味があるのだな…と、わかっていながらも体感してつくづく思う一夜になった。
対面ではないが大和田美帆演じる松井須磨子の喜怒哀楽に胸が熱くなり、福士誠治演じる島村抱月の須磨子への愛と演劇に対する情熱が伝わってきた。たった三回の稽古で二人は愛憎入り混じる純度の高い濃厚な男女を表現していた。
短い人生を妥協せず、わきまえない女として日本中からバッシングされても、精一杯女優を演じ続けた松井須磨子の生き様は、演劇を知る人も演劇を知らない人も年齢も性別も問わず、全ての心に強く美しく刻み込まれるに違いない。ぜひ松井須磨子の楽屋を見届けてもらいたい。力強い希望を持てるようになるはずだ。
最後に、このリーディング演劇はきっと新しい表現を打ち出せるはず――エンターテインメントが持つ無限の可能性を信じられる、そんな期待感が高まる稽古場だった。
大正7年11月夜。とある芝居小屋の楽屋。壁には松井須磨子主演『カルメン』ポスターと【本日初日】の貼り紙。
芸術座の見習い劇団員、一ノ瀬春男とともに楽屋で支度をする松井須磨子。その隣にはひとりの男の姿が。
そこへ刑事・曽根崎徳夫と若い役場の中年・矢代廉太郎がやって来て、須磨子に島村抱月を殺害したのではないかと尋問を始める。
抱月とは須磨子が、愛した男で、つい数日前にスペイン風邪で命を落としていた。
「愛する人間の葬式を終えたばかりだというのに舞台に上がるのか?」、「お前がかかっていたスペイン風邪を故意に抱月へ感染させたのではないか?」と言いがかりをつける二人。さらには抱月の本妻・市子もやって来て、「お前が抱月を殺した、舞台に立つ資格などない」 と須磨子に迫る。
スペイン風邪という流行り病によって、愛する人を失っても、舞台に立ち続けようとする女優 松井須磨子。
彼女を突き動かすものは、一体何なのか?そして、須磨子の隣にいる男は、はたして誰なのか?
日本の女優第一号ともいわれた松井須磨子の、【強く】、【儚い】、 その生き様を鮮やかに描く ―。
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