シキドロップが描く祈りの物語。三部
作の最終章『イタンロマン』に込めた
想いとは。

シキドロップの音楽は、居場所を見失った心にそっと手を差し伸べる。競争に勝てなかった者、常識からはみ出てしまった者、挫折や後悔に打ちのめされてしまった者ーー彼らが歌うのは、そんな社会から零れ落ちてしまった者達を肯定する歌だ。カバー動画の総再生回数が1億回を超えるなど、歌い手としてのキャリアを歩んできた宇野悠人(Vo)と、俳優として舞台や映画の仕事をこなす傍、音楽の活動も続けてきた平牧仁(Piano)による音楽ユニット・シキドロップ。2017年に出会い結成された彼らは、その年に初の楽曲「おぼろ桜」をリリース。SNSを中心に支持を広げながら、渋谷duo MUSIC EXCHANGEなどライブを成功に収めるなど、着実に自身らの楽曲を届けていった。これまで『シキハメグル』、『ケモノアガリ』と2枚のミニアルバムを発表してきた彼らが、3作目のミニアルバム『イタンロマン』をリリースした。“喪失”の物語を綴ったという1作目、“再生”をテーマに作られたという2作目、そしてその先にある“自認”を描いた本作と、三部作の完結編がこの度の新作『イタンロマン』である。平牧仁が描く物語には、人が抱える傷や痛みにそっと触れるような繊細さと、社会の影の部分をじっと見つめる眼差し、そして人から笑われるようなことに真剣に向き合うひたむきさがある。そうした抒情的な楽曲を、一歩引いた視点で歌いこなすことで客観性と大衆性をもたらしているのが、宇野悠人の声である。未だベールに包まれているところの多いシキドロップの背景に、ふたりのルーツや出会いから迫ってみた。

結成前夜

ー結成は2017年とのことですが、どういう経緯で活動を決めたのでしょうか。
宇野悠人:
僕もジンちゃん(平牧仁)も元々は全然違う所で活動していたんですけど、お互いそれまでの活動が1回なくなった時期があって。その頃に僕がYouTubeに上げていた「なんでもないや」って曲のカバー動画がバズって、その動画を見てくれてたのがジンちゃんなんですよね。で、「仲良くなろうぜ」みたいな感じでメールをもらって(笑)。その時はユニットを組むとは思っていなかったです。
ーなんでコンタクトを取ったんですか?
平牧仁:
その時舞台音楽を手掛けていて、主題歌のボーカリストを探してたんです。
ーなるほど。
宇野悠人:
ただ、その頃僕は音楽をやっていなくて、1回サラリーマンやってた時期なんですよね。なので誘われても僕はやらないぞっていう気持ちで一応返事だけはしてみた感じでした。
ーでも、平牧さんの中では今後活動していく上でのパートナーを探したい気持ちもあったんですか?
平牧仁:
下心はありました(笑)。でも、その時は僕も弱気になってたというか、挫折をして自分自身が弱っていた時だったので、悠人から音楽をやるつもりはないっていうメッセージを受け取って、自分もガンといける感じではなかったんですよね。人柄も含めて悠人の声が好きでしたし、舞台音楽をきっかけに何か見つけられたらいいなっていう気持ちでした。
ーでは、本格的にふたりでプロジェクトを進めようと動き出したのは?
宇野悠人:
舞台を2回やった後にジンちゃんから「こんな曲作ってみたんだけど歌ってくれない?」って言われて歌ったのが、一番最初にリリースした「おぼろ桜」でした。あの時はリリースするとは思っていなかったので、名前も「平牧仁×宇野悠人」で出したんですけど、一応それが始まりですね。
平牧仁:
そこで当時手伝ってくれてたアレンジャーさんがふたりいるんですけど、その人達が凄い良い曲だから絶対やったほうがいいよって言ってくれて。その方達に盛り立てられて「じゃあやっちゃう?」みたいな。
宇野悠人:
その一押しがあってやってみるかって思えたよね。もしもふたりだけだったら、そこで終わってたかもしれないです。
ー周囲の後押しもあり、腹が決まっていったと。
平牧仁:
あと、何かを選択するって、最後は度胸だなって思います。いくら考えても仕方ないからやってみるかっていう(笑)。それに結局どう転んだって僕は音楽が好きだから、じゃあせっかく縁があって恵まれた出会いがあったんだから、やってみようかなっていう気持ちでした。
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