浦井健治「この時代だからこそ伝えた
いメッセージが息づいている」 ミュ
ージカル『GHOST』製作発表会見レポ
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2018年の日本初演から2年半、ミュージカル『GHOST』が2021年3月5日(金)から東京・日比谷シアタークリエにて再演される。本作は1990年に公開された大ヒット映画「ゴースト/ニューヨークの幻」を原作としたミュージカル。生死を超えた究極の愛の物語を紡ぐのは、初演に引き続き浦井健治、咲妃みゆ(Wキャスト)、森公美子。そこに今回の再演から桜井玲香(Wキャスト)、水田航生ら新キャストが加わる。日本版オリジナル演出は、『ミス・サイゴン』など数々の大作ミュージカルの演出を手掛けてきたダレン・ヤップが務める。
開幕まで約1ヶ月となる2月9日(火)に東京・帝国劇場にて会見が行われ、浦井、咲妃、桜井、水田、森ら5名のメインキャストが姿を見せた。
初演に引き続き、愛する恋人モリーを残してこの世を去るサムを演じる浦井は、「本作の魅力を一言で」という問いに対し「みなさんコロナ禍でたくさんの想いをそれぞれに感じていると思いますが、人と人の繋がりや寄り添う心の素晴らしさ、人は一人じゃないんだというメッセージが込もったミュージカルです」と答え、今この時期だからこそ伝えたいメッセージがある作品だと熱い想いを語った。
(左から)桜井玲香、浦井健治、咲妃みゆ
コロナ禍、しかも緊急事態宣言中の今、稽古場ではとにかく感染対策を徹底しているという。本作初参加となるサムの恋人モリー役の桜井は「ソーシャルディスタンスを取っている分、どうしてもみなさんとのコミュニケーションが難しくなっている気がします。そこを意識して、遠いながらも心を通わせられるように、どうやったらこの短期間で絆を作っていけるかなということを、日々考えながら稽古に取り組んでいます」とその難しさを語った。同じく本作初参加、サムの親友カールを演じる水田は「確かにマスクをつけて感染対策をしながらの稽古ですが、浦井さんや演出のダレンをはじめすごく明るい雰囲気。文字通り、風通しのいい稽古場だなと感じています」と笑顔を見せる。
(左から)水田航生、桜井玲香、浦井健治
初演から続投となる自称霊媒師のオダ・メイ役の森は、稽古の休憩中に(感染対策のため)一人で黙々と食事をするので、つい食事の回数が増えてしまうというエピソードを明かし、「本当はそこも“森自粛”しなきゃいけないんですけど(笑)」と、キャスト陣のみならず報道陣にも笑いを巻き起こしていた。
(左から)水田航生、桜井玲香、浦井健治、咲妃みゆ、森公美子
演出のダレン・ヤップは、時差2時間のシドニーからリモートで稽古に参加しているそうだ。浦井は「本来の演出家の席に、振付の桜木涼介さんが座っているのですが、彼を中心に多くのスタッフさんたちが何十倍という仕事をこなしてくださっています。みんなで一丸となってという空気もすごくありますね」と稽古場の雰囲気を語った。桜井とWキャストでモリーを演じる咲妃は「毎日のように演出のダレンさんと装置・衣裳のジェームズさんがリモートでお稽古場の様子を覗いてくださっています。オーストラリアという遥か彼方にいるけれど、不思議と心の距離は近く感じるんです。見守ってくださっているという安心感を感じながらお芝居をしています」とリモート稽古の様子を述べ、さらに「特に今回感じるのが、新キャストの玲香や水田さん、そしてアンサンブルキャストさんが率先して意見を伝えながら濃厚な稽古が進んでいくので、すごく勉強になりますし、風通しがいいなあって」と、日々学びの多い稽古場であることに感謝した。

(左から)桜井玲香、浦井健治、咲妃みゆ

初演組の浦井・森・咲妃に対して、初演時の印象的なエピソードについて質問があった。すると森はすかさず「とにかく浦井健治のズボンがよく壊れるという。1ヶ月の公演で5本替えていると衣裳さんから聞きました」と暴露。それに対して浦井が「幽霊だから人と違った動きをしてるんですよ。っていう言い訳(笑)。申し訳ございません(笑)」と謝罪する場面も。本作初演時、宝塚歌劇団を退団して一作目のミュージカルだったという咲妃は「前回はいっぱいいっぱいでしたが、今回は作品のカラーが体に浸透している部分があるので、浦井さんともより深くお芝居のことをお話しする時間が取れたなと思います。阿吽の呼吸と言うんでしょうか、考えていることや表現の方向性が、おこがましいのですが少々わかるようになったので。より一層、浦井さんとお芝居させていただくのが楽しいです」と話すと、浦井は「楽しくなり過ぎまして、昨日ダレンにオダ・メイとのシーンで楽しくなり過ぎてるよ、とダメ出しされたばかりでございます」と再び反省の色を見せていた。
(左から)浦井健治、咲妃みゆ、森公美子
会見の最後は、5人のキャストからメッセージが送られた。それぞれの言葉を紹介したい。
森「いつでも想ってくれる人がそばにいてくれるよ、というのが作品テーマだと思います。そういうメッセージや、心のエネルギーをもらえるようなミュージカルだと私は信じております。私自身、2019年に母を亡くしていて。その母がこの作品の初演を観たとき、ものすごい喜んでいたんですね。泣きじゃくってすごくよかったと言ってくれて。亡くなった彼女の祖母を思い出したそうです。この作品を通して亡くなった誰かを思い出すこともできるし、その方も浮かばれるんじゃないかなあって。そう思えた作品でもあるので、ぜひみなさんに観ていただきたい。この作品に出会うと、ちょっとだけ心が強くなれると思います」
水田「身体的な繋がりが難しくなっている時期ですが、だからこそこの作品を観ていただいて人と人との繋がりや、心と心の繋がりを再認識していただけたら。その尊さを『GHOST』を観ていただければ、より感じていただけると思います。劇場に足を運んでくだされば僕たちも嬉しいですし、何かあたたかいものを届けられる作品だと思っています。まだまだ稽古は続きますので、体調には気をつけて本番に向けて頑張っていきたいです」
桜井「この作品は甘いラブストーリーだけではなく、急ピッチでストーリーも展開していきますし、サスペンスなところがあったり、ワクワクしたり、いろんな感情になると思います。観終わると何かに包まれているような穏やかな気持ちになれる作品です。きっと劇場の中でいろんな人の想いが交わる場所になると思うので、みなさんの想いもたくさん受け止めながら、日々日々進化していく作品になればと思います。ご都合がつくときは劇場に来ていただければ嬉しいです」
咲妃「2018年の初演を経て、2021年版『GHOST』はよりブラッシュアップされたものになっていけるなと既に感じています。自分自身の経験としても、世の中で起こっている出来事としても、本当に舞台に立たせていただけることって当たり前ではないなと痛感する毎日です。一日一日お稽古を重ねている今ですら、こうして会見でみなさまにご挨拶しているこの瞬間ですら、やはり尊いなと感じています。感謝すべきことは数えだしたらきりがないのですが、すべての身の回りの出来事に感謝しつつ、お客様に劇場で無事お目にかかれる日を心待ちにしながら、健康第一でお稽古に励んでいきたいと思います。劇場でみなさまをお待ちしております」
浦井「この時代だからこそ伝えたいメッセージが、この作品には息づいている気がしています。人を思いやること、寄り添うことの意味、そういったものをたくさん感じられる作品です。セットについても、日本版は宝石箱のようなガラス細工のような中に魂がたくさんこもっている、そんなセットを目指したというのを初演時にプランナーの方がおっしゃっていたんです。その中心にはきっと心と心の繋がりがある、そう信じていいんだというような癒やしが存在している作品だと思います。自分もこの場で初めて言いますが、僕も2019年に父親を亡くしまして、仲間も亡くなったり、諸先輩が亡くなったり……その先に生きている我々がやっていこう、そういう歩みの中で生きていると、すごくいいことに巡り会えるんですね。そんなことを感じていただけるような作品だと思ってしっかりと取り組んでいきますので、ぜひとも劇場に足をお運びください」
和気あいあいとしながらも、作品の持つメッセージを大切に、そしてエンターテインメントの灯を消さないという想いで真摯に作品に向き合っていることが伝わってくる会見だった。
なお、浦井、桜井、森の3人は、会見と同日2月9日(火)の「うたコン」(NHK総合 19:57~)に生出演する予定だ。舞台とは一味違った、この日だけのスペシャルバージョンで披露される『GHOST』のパフォーマンスもどうぞお見逃しなく。
(左から)桜井玲香、浦井健治、咲妃みゆ
取材・文・写真=松村蘭(らんねえ)

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