【柴田 淳 インタビュー】
このアルバムを聴き終えたあと、
必ず泣いてしまう
このアルバムを聴き終えたあと、
必ず泣いてしまう
そんなサウンド面での試行錯誤を経た楽曲に乗せる歌詞は、やはり…。
はい(笑)。この一年がしっかりと反映されているものなんじゃないかと思ったのですが、いかがですか?
そうですね。改めて人生を振り返った時に、独身であること、さらに親との関係などいろんなことが重なって、すごく孤独を感じてしまったんです。それがステイホーム期間となって誰とも会えないし、世界規模でそういうことが起こっていたし、たくさんの訃報も入ってきて、制作中にすごく凹んでしまったんです。その結果、別に死にたいというわけではないんですけど、冷静に“死”について考えるようになったんです。
確かに、より死が身近なものになったかもしれないですね。
私、歌詞を書いている時って全ての鎧を外して、ものすごくデリケートになるんですね。そんな時に、まったく感情がなくなってしまったんです。欲しいものも、やりたいこともなくなってしまって…その中で“何を書けばいいんだろう?”と思いながらも、SNSでファンの人とつながって、おしゃべりをしている時は変に冷静なんですよ。それも逆に怖くて…。そんな状況で書いた歌詞ばかりだから、本当にディープなことを歌っていて。そんなだから自分でも訳の分からない歌詞になってしまったんですが、このアルバムを聴き終えたあと、必ず泣いてしまうんですよ。それは、全ての曲の中にあの時の私が見えるからなのかなって思うんです。自分に対して“頑張ったね”“なんとか乗り越えてきたね”って、そういう気持ちになって泣いてしまうのかなと。
リアルな気持ちがギュッと詰め込まれているわけですね。
はい。これまではいろんな個性やジャンルのものを詰め込んだ幕の内弁当のようなアルバムが多かったんですが、今回は…これは右目で、これは左目、これは鼻で口というふうにパーツが散りばめられていて、全部を聴いてひとつの顔が生まれるアルバムになっているんじゃないかと思っています。
…深いところまで行きましたね。
行きましたね~(笑)。歌詞だけを読んだら、サウンドと歌詞の世界観がまったく違うと感じると思うんですよ。きっと歌詞を読んだあとに曲を聴いたら、“えっ、こんなに明るいの⁉”って思うかもしれないですね(笑)。
確かに(笑)。そういう意味でも柴田さんって言葉に本当に嘘がないじゃないですか。
そうですね。“嘘を書いて何を得られるんだろう?”って思っているので、嘘を書く意味が分からないし、そんなのは楽しくないと思うんですよ。
でも、その言葉を使わないで自分を苦しめない選択肢もあると思うんです。
ありますよね~(笑)。でも、やっぱり恨み節から始まっちゃうんです…。それが好きなファンがいるから続けられているんですけど。私、“陰”と“陽”で言うなら、陽の人のほうが暗く感じるんです。
なるほど。
すごい明るい人のほうが、実は家に帰ったら暗いんじゃないかって思うんです。これは持論ですけどね。でも、私はずっとこういった暗い曲を書いて歌っているから、それを求めている人に届いたらいいなと思っていて。その時々に思ったことを自由に歌わさせてもらっているので、本当にありがたいと思ってます。
ほぼ日記ですよね。
私は柴田さんの楽曲をデビューの頃からずっと聴き続けているからこそ、もはや友達の話を聞いているように感じてしまうんですよ(笑)。
その時々の状況がうかがえるからこそ、初期の頃と今を比べて、どう主人公は成長したと思いますか?
いや~、ずっとダメな男性に引っかかっていますよね、この主人公は!(笑) いい恋愛をしていないんですよ。
あははは。
でも、結果として結婚しないまま今の年齢になって思うのは、結婚をしていたらここまでコアな部分まで潜り込んだ曲を作ることができなくなるだろうなって。当たり障りのない、まったく面白くない歌になっていくような気がするんですよ。あとは、恋をすると浮かれちゃって仕事を放棄しそうな気がする!
ダメです、ダメです!(笑)
そして、このアルバムのリリース記念のクリスマスライヴが開催されるわけですが、恨み節の曲をクリスマスに聴くという…。
そう言えば、そうなりますね(笑)。でも、このライヴを観てくれる人はきっと同類だと思うので、思いきり楽しんでもらえたら嬉しいですね。クリスマスに予定ができるわけだし(笑)。
あははは。そんなアルバムのタイトルの“蓮の花がひらくとき”ですが、どのような由来があるのでしょうか?
『バビルサの牙』(2014年12月発表のアルバム)や『ブライニクル』(2018年10月発表のアルバム)など、最近のアルバムの名前は“どこから仕入れてきたの?”と思うような言葉が多かったんですけど、それは制作中の普通じゃない状態のアンテナで辿り着いた言葉たちなんです。今回の“蓮の花がひらくとき”も、やはり制作中に伸ばしていたアンテナがキャッチしたものなんです。私、お花が大好きなのに、蓮のことは“泥が沈殿した澄んだ水の上に咲く”ということくらいしか知らなかったんです。
あまり身近なお花ではないですからね。
そうなんですよね。蓮って花が開く瞬間に音が鳴るんですよ。そこにすごく感動してしまって…。その現象と構造が、なんとなくこのアルバムと通じる感じがしたんです。
音が鳴るんですか!? それって素敵ですね!
いいですよね。その動画をYouTubeで、ぜひ観てみてください!
分かりました。なんか、全てにおいてディープなインタビューでした(笑)。
あははは。また次作の時もよろしくお願いします(笑)。
取材:吉田可奈
・・・
アルバム『蓮の花がひらく時』2020年12月23日発売
Victor
- 【初回限定盤】(SHM-CD+CD)
- VIZL-1836
- ¥4,200(税抜)
- ※LPサイズジャケット仕様
- 【通常盤】(CD)
- VICL-65456
- ¥3,000(税抜)
アルバム『蓮の花がひらく時』リリース記念配信ライブ
12/25(金) 開演 21:00
『柴田淳 Billboard Live 2021』
2/03(水) 大阪・ビルボードライブ大阪
1stステージ:開場17:30/開演18:30
2ndステージ:開場20:30/開演21:30
2/10(水) 神奈川・ビルボードライブ横浜
1stステージ:開場17:00/開演18:00
2ndステージ:開場20:00/開演21:00
2/13(土) 東京・ビルボードライブ東京
1stステージ:開場15:30/開演16:30
2ndステージ:開場18:30/開演19:30
シバタジュン:女性の深層心理を鮮やかに描き、美しいメロディーに乗せて歌うシンガーソングライター。幼少の頃よりピアノのレッスンを受け、20歳の頃より作詞作曲を始める。2001年10月にシングル「ぼくの味方」でメジャーデビュー。シンガーソングライターとしての活動の他にも、楽曲提供、ナレーション、ラジオパーソナリティーなど幅広く活躍している。柴田淳 オフィシャルHP