柴田 淳

柴田 淳

【柴田 淳 インタビュー】
求めない、でも愛されたいーー
曝け出す心の葛藤を切り取る名曲集

《見せられているものが全てと まだ信じているの?》という辛辣かつ攻撃的な言葉で始まる1年振りのアルバム『ブライニクル』。好きな曲だけ作ったという今作の制作秘話についてじっくりと話してもらった。

今作はどのように作られたんですか?

曲作りは自分の見なくてもいい心の部分と向き合わないといけないので、作り始めるまでがものすごく辛いんです。曲作りそのものは大好きなので、エンジンがかかってしまえば楽しくなるんですけどね(笑)。なので、アルバムのリリースの予定がないとまったく曲を作らないんです。でも、今年の初めになって、まだアルバムの予定がない時に、ふと自分の中の決め事を全部リセットして、好きな曲を作ろうと思ったんですよ。ただ、いざ完成したら、全てが二時間ドラマのエンディング曲が似合う、悲哀あふれるものだらけだったんです(笑)。

実際、2時間ドラマのタイアップ曲も歌っていますしね。

そうなんですよね。我ながら、相性がぴったりだと思うんです(笑)。なので、もう開き直ってアルバムタイトルを“サスペンス”にして、全部統一感のある曲でコンセプトアルバムにするのも面白いなって思ったんです。

それ、最高に面白いじゃないですか!

私もそう思ったんですよ(笑)。レコード会社のスタッフさんたちも意外に賛同してくれたんですが、いざ制作を進め始めると“本当にそれでいいのか?”って思ってしまって…。セルフプロデュースだから責任は全部自分にあるので、途中で怖くなっちゃったんですよね。本来、アルバムは幕の内弁当のようにさまざまな曲が入ってないといけないっていう考えなので、ちょっとだけタイプの違う曲をつけ足して、タイトルも変えたんです。

でも、本来の“柴田 淳”をより体感できた気がしますよ。

そう言ってもらえると嬉しいんです。私自身、本当は変わりたいという気持ちもあるし、自分の中にはファンクやロックもあるんですが、それを表現できるまで自分の技術が達していないので、どうしても得意なピアノで作れるバラードが増えてしまうんです。でも、最近はミュージシャンの友達も増えてきて、いろんな刺激をもらうことが多いので、いつかはアレンジを違うジャンルのミュージシャンにお願いするのも面白いのかなと思うようになりました。

それもセルフプロデュースだからこそできることですね。

そうなんですよ。そういうことにわくわくする自分を客観的に見ると、“やっぱり私はミュージシャンなんだな”って思うんです(笑)。あと、大きな恋愛をしたり、失恋をするたびに、泣きながら曲を作っている自分がいて。そういう時にも自分が根っからのミュージシャンであることを感じるんです。もうこうなったら開き直って、永遠に感情の揺れを全て歌に、曲にしていくんだろうなって思っています(笑)。

(笑)。今回の主人公も、ずっと変わらない柴田 淳さんですよね。

基本はマイナス思考な私ですが、大人になっている分、ちょっとずつは成長しています。特に恋愛面に関しては、依存して相手に主導権を渡してしまうようなダメダメな恋愛をしていた初期の歌とは違う、少し攻撃的な歌が多いんですよ。

まさに1曲目の「Multiverse」から攻撃的ですよね。

最初の2行で相手のことを鼻で笑っていますからね(笑)。あと、一番最初に歌詞を書いたのが「人間レプリカ」なんですよ。この歌詞にある“心ががらんどう”という言葉が私をすごく表しているんです。若い時はどんなにダメな恋愛でも心が揺さぶられていたんですよね。でも、最近はタイトルである“ブライニクル”にも通じるような、心が凍り付いているように感じていて。今、40代で独身だからこそ、いつまでこんなに踏ん張らなくちゃいけないのかなって思うことが多々あるんです。とはいえ、若くないから甘えたい、愛されたいと思う自分に鍵をかけていて、常にファイティングポーズをしているのも辛いんだけど、それにも慣れた自分がいるんですよ。その感情が“レプリカ”っぽいなと感じたんです。

その気持ち、すごく共感する人が多い気がします。

自立した女性が多いと、きっとそういう人も増える気がするんですよね。自分ひとりで生きられるけど、どこかで甘えたい、愛されたいという諦められていない部分があるから辛いんです。その時に絶望とは違う、“どうしたらいいんだろう?”という戸惑いが生まれてしまうんです。そのリアルな気持ちが、このアルバムには全体的に描かれているんです。

まさに「そらし目で見つけて」はそんな気持ちの中で生まれた、どこか達観した片思いを描いた曲ですよね。

はい。青い光を放っている星って、そらし目をすれば視界の中に入るんですが、直視すると見えなくなるんです。まさにこの曲はそんな世界観を歌っているんです。“愛してくれなくてもいいから、ただ好きでいさせて”って、昔は同じことを言っていても本音ではそんなこと思っていなかったんです(笑)。でも、今の年齢になると相手の気持ちや見返りを求めず、ただ自分が好きでいさせてほしいって思えるんだと分かって驚いたんですよ。本当に年齢とともに恋愛への気持ちって変わるんだなって実感しました。

そんな濃い楽曲が詰め込まれたアルバムのタイトル“ブライニクル”の意味を教えてください。

“ブライニクル”って南極の海の中で極めて低温の塩水が流入した時に、つららのようなかたちの凍結が起こる自然現象のことなんです。すごいのが、これに触れると生物は凍死してしまうんです。私も制作中は全てに敏感になって、接触する人を傷付けてしまうので、まるで私のようだなと思って(笑)。さらに、先ほど言っていた凍り付いた気持ちを表現するにもぴったりだと思い、このタイトルにしました。どの曲も今の私であることは間違いないし、結局私が好きなのはこのアルバムに収録されているような曲なんだなと受け入れてもらえたら嬉しいです(笑)。

このアルバムが発売したらツアーもあるんですよね。

そうなんです。今からこれらの曲をみなさんの前で歌うのが楽しみなので、ぜひ遊びに来てくださいね。

取材:吉田可奈

アルバム『ブライニクル』2018年10月31日発売 ビクターエンタテインメント
    • 【初回限定盤】
    • VIZL-1401 ¥4,000(税抜)
    • ※初回限定ブックレット+豪華32ページフォトブック付
    • ※スリーブケース仕様
    • 【通常盤】
    • VICL-65028 ¥3,000(税抜)
    • ※通常ブックレット付

『JUN SHIBATA CONCERT TOUR 2019 月夜PARTY vol.5 ~お久しぶりっ子、6年ぶりっ子~』

2/02(土) 愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
2/08(金) 福岡・福岡市民会館
2/14(木) 大阪・オリックス劇場
2/27(水) 東京・NHKホール

柴田淳 プロフィール

シバタジュン:女性の深層心理を鮮やかに描き、美しいメロディーに乗せて歌うシンガーソングライター。幼少の頃よりピアノのレッスンを受け、20歳の頃より作詞作曲を始める。2001年10月にシングル「ぼくの味方」でメジャーデビュー。シンガーソングライターとしての活動の他にも、楽曲提供、ナレーション、ラジオパーソナリティーなど幅広く活躍している。柴田淳 オフィシャルHP

柴田 淳
アルバム『ブライニクル』【初回限定盤】
アルバム『ブライニクル』【通常盤】

OKMusic編集部

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