【vistlip インタビュー】
よく自分たちのこと考え、
見つめ直して
ベストアルバムを出そうと思った
聴き手が気持ちを切り替えられるよう
あえて曲間に余韻を残さなかった
ちなみに“MEMENTO ICE”というタイトルにはどういう意味があるのですか?
智
ベストアルバムっていろいろな商品がバーッと並んでるようなイメージがあるから、“SHOWCASE”とかいろいろな候補があったんですれど、「alo〔n〕e」の歌詞の中に《memory 氷》という部分があって、そこから“ICE”と使えたらいいなと。想いとか歴史を凍らせている冷凍庫みたいな。“MEMORY”だと自分の中ではそんなに重みが感じられなかったんですよ。似た言葉だけど、“MEMENTO”ならいろいろな意味が重なってくるので、そのふたつをくっつけようと。あとは、メンバーに“IN THE ICE BOX”とかそういうニュアンスにするか、“MEMENTO ICE”にするか訊いたりもして、最終的に“MEMENTO ICE”に決めました。
でも、ベストアルバムだと分かりにくいタイトルではありますね。
海
そういうことするから“分かりづらいバンド”って言われるんだよ(笑)。
(笑)。今回はほぼ時系列の曲順ということですが、どんなところが良かったと思いますか?
Yuh
曲順を考えなくて済む喜びがありました(笑)。やっぱりアルバムとなると考えるじゃないですか。
Yuh
セットリストもそうなんですけど、すごく大変で。そういうのがあるので、“今回は時系列でいいよね”という感じでパッと決まりましたね。
海
並べてみたら、しっくりきたしね。結果論だけど、たまたまこうなっただけではあるけど(笑)。
智
あとは、最終的なマスタリングの希望だったりはしたんですけど、Tohyaとかはオリジナルアルバム通り余韻を持たせたいタイプなんです。でも、今回に関しては、わざとバツバツにつなげてほしくて。そこはいつもと真逆でしたね。オリジナルアルバムの良さとベストアルバムの良さはまったく違うと思うので、ちゃんと聴き手が気持ちを切り替えられるようにしたかったんです。
せっかくのベストアルバムなので、それぞれに“これぞvistlip!”という曲や思い出深い曲についておうかがいしたいのですが。
海
このアルバムでなら、一番は「EDY」かな? “13年前にこれを作ったのはすごいだろ!”という感じですね。今聴いても純粋にカッコ良いと思える曲だし、古くない。僕の中では“今だったらこうしないよな”というのもないんですよ。だから、「EDY」は聴いてほしい。録り直しをしているんですけど、そのまま弾いてるのに“やべぇ、カッコ良い!”と思えるのはすごいなと。他の曲のギターだと“ここ変えたい”みたいなところがあるから(苦笑)。
そんな「EDY」ができた当時の感触はどうでした?
智
「EDY」を持って瑠伊とYuhと3人でメンバーを探していたくらいに自信があったんですよね。なので、海が言っていることは間違いじゃないというか。“この曲で成功できる!”くらいの感じでした。だから、今回再録するのは相応しいと思います。実際に歌ってみたところすごく簡単に感じて、当時はなぜあんなにレコーディングが大変だったのかまったく分からなかった。
智
それだけ時間が経ったんだと感じて、すごく面白かったです。
Yuhさんにとって思い入れのある曲は?
Yuh
僕は「MONOGRAM」「Timer」「DANCE IN THE DARK」の3部作です。「MONOGRAM」はパンチのある曲ができたと思ったんですけど、そこから“ああしたい、こうしたい”という行きたいところに到達できなくて…「MONOGRAM」はそれはそれでいいんですけど、個人的にはもっと寄せたい方向があったんですよ。そういうのが「Timer」に反映されています。「Timer」はちょっと他人の力を借りたというか、シンセを友達にお願いしたんで、さらに自分で音色を入れたりとかして、最終的に「DANCE IN THE DARK」が出来上がったという。なので、自分の曲の最新に行くまでの進化が、この3曲にあるんですよ。
確かに「MONOGRAM」のインタビュー当時、Yuhさんがすごく手応えを感じているのが伝わってきました。
Yuh
当時は“すごくカッコ良い曲ができた!”みたいな自信が持てた曲のひとつだったので。
ベストアルバムだとその変化の過程が一気に聴けるのがいいですね。
海
「Timer」を初めて聴いた時、“この人、頭の中どうなってんだ?”と思いましたからね。本気で驚かされた。“これ、どうやって作ったの?”と訊いたら“なんとなくできた”って言われたし。
Yuh
でも、同じ人が作った曲だと分かりやすい曲でもありますね。
では、智さんは?
智
やっぱり「Underworld」と「July VIIth」(7月7日の周年ライヴでのみ演奏する楽曲)ですかね。演奏する機会は滅多にないし、すごく大切にしている曲なので。特に「Underworld」は、それが収録されたアルバム(2017年3月発表のアルバム『BitterSweet』lipper盤のみに収録)の当時だけじゃなくて、今でも最高の空間ができた時にだけ演奏するというスタンスでやっているので、それは今後も続いていくんだろうなと。でも、「Underworld」が演奏できる時、俺は感動して泣いて歌えなかったりして“結局、歌えてねえじゃん”みたいな(苦笑)。
海
本編が終わって楽屋に戻った時に“じゃあ、やろうか”となるから、その時期に新曲が多かったりすると、メンバーは“あれってコードは何からだ?”ってなることもあるんです(笑)。
メンバーの中でもサプライズ感があるんですね(笑)。
智
それだけ思い入れが強いというか、すごい存在感のある曲だったりするので。
Tohyaさんと瑠伊さんはどんな曲を選んでいたでしょうね。
智
Tohyaは自分の曲を選んでいるような気がする。あっ、でも、他のメンバーの“こいつは天才だな”と思った曲かな?
智
本当に嫉妬して、そう思っているんですよ。彼にないものが他のメンバーにあったりするので。
海
酔っぱらうと怒ってくるからね。“なんでYuhはあのコード進行で、あんないい曲が作れるんだ!”って(笑)。
Yuh
Tohyaは言ってくれるんですよね。そうやって思ってくれているから、ちゃんとライバルであれるように頑張らないといけないって常に思っています。
瑠伊さんだったら何を選びそうですかね?
海
瑠伊はファンの目線に一番近いものを選びそう。あの子はやさしいから(笑)。「-OZONE-」か「SINDRA」を言いそうな気がする。
現段階で年内にライヴが予定されていますが、どんなかたちになるのでしょうか?
智
“どうせやるなら”ということで、今のvistlipが考える、今の状況下での最大限のライヴが提供できるかなとは思っていて。アコースティックではなく、もともとのオリジナルでもない、しっかり作り込んでアレンジしたものを届けます。アップテンポなものも、みんなが安心して観られるじゃないですですけど、今の状況下でできるものを目指してのアレンジだったりするので。本当に今しか観れないものになると思います。
Yuh
アコースティックだったらコロナが明けてもできるからいいですけど、今回の形式はこの時期にしかやらないから大変なんですよ。でも、大変と思いつつも楽しくはありますね。
取材:キャベトンコ
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アルバム『MEMENTO ICE』2020年12月23日発売
マーベラス
- 【vister】(2CD+DVD)
- MJSA-01305~7
- ¥3,800(税抜)
- 【lipper】(2CD)
- MJSA-01308~9
- ¥3,000(税抜)
12月19日(土) 東京・赤羽ReNY α
1部:OPEN 15:00 / START 15:30
2部:OPEN 18:30 / START 19:00
ヴィストリップ:2007年結成。リアルで等身大な言葉を紡いだ歌詞と、多種多様な要素を融合させた楽曲にキャッチーなメロディーライン、時折ラップも織り交ぜた他に類を見ないミクスチャー感を持つビジュアル系ロックバンド。ひと言では言い表せない世界観とメンバーの特異な個性が際立つパフォーマンスを武器にしたライヴは必見。結成日の7月7日にはZeppTokyoにてワンマン公演を行なっており、毎年たくさんのファンで会場は埋め尽くされる。vistlip オフィシャルHP
『MEMENTO ICE』
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