CHISA

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【CHISA インタビュー】
“行間”を大事にした音楽を作りたい

“生きてる”という瞬間をちゃんと
閉じ込めたいし、嘘をつきたくない

レコーディング中の苦労など、何かエピソードがあればお聞かせいただけますか?

今回初めて参加してくれるミュージシャンの方もいたんですけど、みんなそれぞれにすごく刺激をもらいながら楽しんで演奏して、一緒に作ってくれていたのが印象的でした。“もうこれで最高じゃん!”と思うようなプレイでも、“もう一回、こういうアプローチでやってみるわ”みたいな。例え初参加でも、ひとつのチームとしてちゃんと音楽に向き合って愛情を注いで作ってくれる、こだわってくれるのは、めちゃくちゃありがたくて特別なことだと思うんですよ。レコーディングではそれが嬉しかったのと、これはまた全然違う話なんですけど、「ムーンラビットNo.2」という上ケンさんが作ってくれた曲にはコーラスがたくさん入っているんですね。“みんなで歌う曲にしよう”ということで、いろんなガヤをミュージシャンの方々に協力してもらって録っています。いつもは堂々と演奏してくれている人たちが、慣れない歌詞カードを手に“ここってこう入れるのかな?”って緊張しながら一生懸命歌ってくれたコーラスが、私は涙が出ちゃうぐらい嬉しくて、印象に残るレコーディングでした。

チームワークがそこには表れているわけですね。

そうですね。思い出しながら今も泣きそうになってます(笑)。

コーラスと言えば、M6「アイリーン」も透明感があって美しいですよね。ノスタルジックなメロディーラインが素晴らしい曲ですが、ちささんは歌っていていかがですか?

この曲はデモで歌ったものがそのまま本番の歌に採用されてしまったんですよ(笑)。歌った時に景色が浮かんでくる歌詞で、どこか懐かしい感じがするメロディーで、すぐにスッと入り込める楽曲だなと思いました。自分自身も心が丸くなるというか、柔らかくなりながら歌えた曲なので、なんとなく“あっ、ちょっと温かいな”とか“懐かしい気持ちになるな”と、聴いてくれるみなさんにも感じてもらえたら嬉しいです。

M5の「かよわき透明人間」は風船を擬人化した目線の歌詞なのかなとユニークに感じると同時に、もしかしたら亡くなった人の魂が近くにいる様を描いているのかなとも深読みしてしまいました。

そうですよね! 私は去年おばあちゃんを亡くしたんですけど、おばあちゃんの魂と風船を少し重ねてしまって…寂しい気持ちもあったけど、いつでも一緒にいてくれるんだと感じてちょっと強くなれるっていうか。そんな気持ちになる曲でしたね。

そういった複雑で繊細な心情が説明ではなく、ちささんの温もりのある歌声によって伝わってくるんですよね。やはり全ては”Between The Lines”なんだなと実感します。リリース後、このアルバムがどんなふうに届いてほしいですか?

なんとなく温かくなったとか、やさしい気持ちになったとか、ほんのちょっとでいいんですけど、聴いてくれる人の心が動いたら幸せだなって思います。リード曲「Candle」に関しては…孤独を感じている人って本当にすごくいっぱいいるんだなと。最近のニュースを観ていても、幸せそうに見えてもやっぱり人はそれぞれ誰にも言えない気持ちを抱えているんだなって、自分自身もそうだけど、改めてそう感じるんですね。だから、どうしようもなく心細く、不安になっている夜に「Candle」を聴いて、“明日もちょっと生きてみよう”と思ってもらえたら。この曲がちょっとした光になれたら嬉しいです。

お話が遡ってしまうのですが、ちささんは北海道ご出身で、音楽をするために東京へ来られたのですか?

そうです。短大では保育の勉強をして、保育園と幼稚園の先生の資格を取ってから上京しました。小学校4年生ぐらいの時から“歌手になりたい”という夢はずっと変わっていなかったんですけど、上京してようやく音楽を始めて。最初は養成学校みたいなところに入って勉強もして、その後ひとりで活動していたという感じです。

北海道で歌手になるのを夢見ていた頃と比べて、音楽に対する想いはどのように変わりましたか?

上京した時は夢しか見ていなかったと思います。妄想も入っていて、キラキラして眩しいくらいの世界だと思っていたけど、実際にこうして音楽を続けることは、基本は苦しいことしかなくて。心を、命を削って生み出しているから、楽しい瞬間というのは、例えばライヴだとか、人に届いた時ぐらいで。それ以外は苦しみながらも、夢しか見ていなかった頃とはまた違う、別の夢を描いているんですよね。夢のかたちも変わったと思うんですけど、当時はザックリと“たくさんの人に届けたい”と思っていたのが、今は…もちろんたくさんの人に届けたいけど、自分が“カッコ良い!”とか胸を張って“これだ!”と思える音楽を作って、それをたくさんの人に届けたいという気持ちに変わりましたね。当時は揺れ動いていたかもしれないし、自分のやりたいことにちょっと嘘をついていたかもしれない。でも、このチームになってからは、やりたいことに対して妥協しない…作るもの対してもチームのみんなも妥協しないし、本当に胸を張れる音楽しか世に出さないという感じなので。そこがちょっと変わったかもしれないです。

これまで実際にそうされてきたのだと思いますし、これから先もそういうプライドを持って、ご自身の中でのクオリティーコントロールをしていくんだ!という決意表明でもありますね。

そうですね。このチームには音楽にちゃんと向き合っている人たちしかいなくて、見せかけじゃないし、嘘をひとつもついていないんですよ。音楽って生きた証で、私は作詞作曲、そして歌うことが生きた証だし、ミュージシャンのみんなはレコーディングで命を削って残したその時のプレイとか音が生きた証だと思うから。その“生きてる”という瞬間をしっかりと閉じ込めたいし、嘘をつきたくないんです。ちゃんと向き合いたいし、向き合っている人に失礼のないよう、恥じないように音楽を作って届けたいですね。

では、最後に今後の目標や夢をお聞かせください。

とにかくどんな時でもワクワクしながら、物作りを大好きな人たちと一緒にして、届けるという、その当たり前なように見えてきっと当たり前じゃない“今”を確実に続けて、前に進んでいきたいと思っています。本当に“大好きだ!”と思えるものをちゃんと作り続けて、ちゃんと届けて、それが伝わるように活動していきたい。気づけばそれが伝わっていてめちゃくちゃ大きなプロジェクトになっていた…みたいなかたちが一番の目標です。そうしたら全国ツアーもしてみたいですし。あとは、大好きなみんなと海外でもライヴしてみたい、レコーディングしてみたいとか。“続けていく”というのが前提でそういった夢が広がっていくので、とにかく一日でも長く続けていくことが今後の目標だと思っています。今回のタイトルである“Between The Lines”のように行間を大事にして、何とも言えない気持ちを代弁するというか、寄り添えるような音楽を作り続けたいです。そういうものをちゃんと表現した音楽でありたいと思います。

取材:大前多恵

アルバム『Between The Lines』2020年11月11日発売 USMジャパン
    • UICZ-4479
    • ¥3,000(税抜)
CHISA プロフィール

チサ:多彩な表現力を持つ、シンガーソングライター「ちさ」、数々の有名アーティストの楽曲制作を手掛けてきたプロデュースチーム「PRIMAGIC」がタッグを組み、ソロユニット「CHISA」として、メジャーシーンでアルバムを2020年11月にリリース。CHISA オフィシャルHP

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