【HAN-KUN インタビュー】
今までにない作品というのを
心がけて作った
僕には音楽という表現があるので、
やるべきことはそれに尽きる
楽曲の話になりますが、アルバム冒頭「INTRO ~UNCHAINED~」からの「Red Alart」「Brighter Future」は現在の世に警告を鳴らし、聴く者の心に着火する曲になっています。やはり、まず現状から目を逸らさずにリアルを描きたかったと?
将来、この作品を振り返った時のため、書き記しておきたかったというのはありますね。“アルバム”というだけあって、今の時代の色がしっかり記されてあるべきだと思うので。時代を象徴するメッセージから始めたかったんです。
そこで「It Haffi Bun」では《喰らわすMusicが 狼煙をあげた》と歌ってますが、コロナ禍の中で自分ができること、やるべきことは音楽だったと?
どこかで何かが起きてて、誰かに手を差し伸べるという状況でもなく、みんなが横並びに大変な想いをしてるっていうのは、今までの人生の中で経験したことがないですからね。何かしようと思ってもエネルギーの向け方が分からないし、行動したくても動かないことが良しとされているし。それでも“待ってるだけじゃ何も始まらない”と考えた時、僕には幸運にも音楽という表現があるので、やるべきことはそれに尽きると思いました。そこで未来の音楽の在り方も真剣に考えたし、音楽が人の心とどう触れ合っていくかも考えたし。前向きに考えると、そこまで突き詰めて考える時間は今までなかったので、すごく貴重な時間になりました。これを財産として、ここから生きていこうというだけですね。
音楽的な挑戦というところでは「夏のエトセトラ feat. キヨサク(MONGOL800 / UKULELE GYPSY)」がすごく新鮮でした。
“レゲエ歌謡”みたいにとらえてもらえたら嬉しいんですけど。懐メロっぽいのに演奏してるのはジャマイカ人だし、キヨサクが歌ってくれることでアイリーな南国感も出ている。いい意味での歌謡感があるから、みんなが口ずさんでくれたら嬉しいと思って作りました。前作の『Musical Ambassador』で「あなたに」をカバーして、改めてカッコ良い曲だと思ったし、キヨサクとは前から“一緒にやりたいね”って話してたから…オリジナル作品にゲストを迎えることはなかったんですけど、前作で一番シンパシーを感じた彼と新しいことをやることで、想いの回収じゃないけど、点を線にすることができました。
先行配信された「よろしく」の動画では、ウクレレ一本の歌唱に挑戦してますね。
僕、ハワイアンレゲエが好きでよく聴いてるんですよ。レゲエの本土・ジャマイカではウクレレってあまり雰囲気伝わらない楽器だったりするんですけど、世界として大きく観た時、ハワイアンレゲエもすごく魅力的で。ハワイアンレゲエのいいところって、愛しか歌わないんです。レゲエでジャマイカ本土へのリスペクトもあるんですけど、自分たちの音楽として演奏してるところもすごく好きなところなんです。それって日本人がレゲエしてる感覚にも近いかなと思ったりして。ウクレレ奏者のシュウくんもレゲエをちゃんと理解して臨んでくれたので、ハワイのフレーバーもむちゃくちゃ詰め込めたと思います。
「Sunshine Love」「Summer Vibes」といった夏ソングも収録されてますが、今年は夏らしいことできました?
太陽をひたすら浴びました。この時期なのに自分史上一番焼けてるかも(笑)。リリックを考えたりアイディアを出すのも、ご飯を食べるのも、太陽を浴びながらでしたから。スタジオにこもることもないので、一番太陽を浴びた夏になったかもしれないです。科学的に証明されてるけど、太陽が気持ちをポジティブにしてくれるって本当だと思ったし、前を向けましたね。
今作を完成させて、この作品がもたらした変化やここから期待する変化ってありますか?
新しいことに挑戦できたってことで、ひとつ自信が持てましたね。振り幅ってところでもライヴを仮定した時に今まで以上のものを作ることができると思うし、もっといろんなお客さんに楽しんでもらえると思います。ポケットにいろんな弾を詰められたことは、すごく大きかったですね。あと、数えるほどですけど、オンラインライヴをやらせてもらって、未来に向けてのライヴの在り方もすごく勉強になったので、この作品を携えての配信をうまく使ったパフォーマンスを見つけられたらなって。僕はライヴ叩き上げって部分があるから、今までアルバムを作る時に“ライヴで披露するための作品集”というのが大前提にあったんですけど、今回はライヴを意識せず、作品だけに集中することができたから、“ライヴという出口を見据えないで作った作品をどうパフォーマンスしていくか?”というのは自分自身でも楽しみにしていて。今見えてる出口もあるし、そこでまた新しいことができればと。それが一番の楽しみですね。
取材:フジジュン