ライムベリー、8ヶ月ぶり復活ライブ
開催 YUKA脱退もパーティーは続く
(参考:"可愛いラップ"を突き詰めたい ライムベリーが進む道)
ライムベリーは、MC MIRI(櫻井未莉)、MC HIME(持田妃華)、MC YUKA(大田原優花)、DJ HIKARU(信岡ひかる)からなる3MC・1DJのアイドルラップユニット。
昨年、8月の1stワンマンライブ以降、活動休止をしていたが、この度、約8ヶ月ぶりの復活ライブとなった。しかし、そこにはYUKAの姿はなかった。
活動再開がアナウンスされたのはライブの約二週間前。オフィシャルブログでは事務所の移籍と、YUKAの脱退、今後は三人で活動を続けていくことが報告された。
E TICKET PRODUCTIONこと、桑島由一によるプロデュース体制は、そのまま続行となったものの、昔から応援してきたファンほどYUKAの脱退をどう捉えていいのか困惑しているように思えた。
チケットは二部とも完売し、会場はぎゅうぎゅうの満員だった。今まで、彼女たちを応援してきたファンだけでなく、活動休止中に音源を聞いて興味を持った人や女性ファンの比率が少し増えたように感じた。
11時になり、一回目のライブがスタート。いつものように、DJ HIKARUがスタスタとターン・テーブルに向かって歩いてくる。「ポチッとな」HIKARUが指揮者のように両腕を広げると、大げさなファンファーレが鳴り響く。そして新しい自己紹介ラップ「WE ARE BACK!」がかかると、迷彩柄の上着に身を包んだHIME、MIRIが登場。一気に会場はヒートアップする。また、今回は「IN THE HOUSE」という新曲を披露。ライムベリー版「今夜はブギーバック」とでも言うような曲だった。30分弱のミニライブはあっという間に終わった。勢いはまったく衰えていなかった。
YUKAのパートは歌詞を変えてHIKARUが歌ったり、HIMEとMIRIに割り振られた。それがうまくハマっているかどうかは、まだ冷静に判断できない。
ライムベリーの楽曲はすべて桑島が担当し、四人が歌うことに特化したものとして作られてきた。だからこそ、圧倒的な完成度を誇っていたのだが、それは取り替えのきかない危ういバランスの上に成り立っていた。三人の声に対してYUKAの声は低く、そのことが学曲の音域の幅を広げていたのだが、三人の声の印象が重ならないようにするための個性の住み分けは、今後の課題となっていくことだろう。
ヒップホップではなく日本語ラップ。EDMではなくテクノと呼ぶ方がふさわしいライムベリーの楽曲は、90年代の電気グルーヴやスチャダラパーが好きだった人が00年代の萌えカルチャーを経由して、10年代の地下アイドル文化と合流することで、当時の空気を現在のものにアップデートしており、同じようなカルチャーに触れてきた立場としては、よくぞ過去と今をつなげてくれたと感謝したくなる。だが、それはあくまで裏方の話で別に知らなくてもいいことだ。
ライムベリーについて考える時、いつも「遊園地」という言葉が頭に浮かぶ。
桑島のプロデュースによって作り上げた音楽の遊園地は実に楽しく、一度入り込んだら一気に時間がすぎてしまう。おそらく、ライムベリーの女の子たちもまた、観客と同じ遊園地に遊びに来たお客さんで、楽しくはしゃぐ姿を見守ったり、いっしょに遊んでいるかのような距離感がとても好きだ。女の子が楽しそうにしている姿が一番の娯楽なのだ。
このような、ステージの女の子をただ見上げるのではなく、同じ目線でライブに参加する感覚はファン・カルチャーが独自の発展を遂げた地下アイドルならではのものだろう。
それは、4月29日に、アイドルDVDマガジン『IDOL NEWSING vol.1』の販売を記念して行われた渋谷WOMBでのクラブイベントを見た時に強く感じた。
出演したのはライムベリー、せのしすたぁ、いずこねこ。この三組は最近、メンバーの脱退や再編成がおこなわれたアイドルだったのだが、ライブで感じたのは、そういった「痛みの物語」よりも、観客とアイドルが同じ地平に立ってパーティーを楽しもうとする姿だった。実際、せのしすたぁはステージから降りて、フロアの中央に来て、なぞのMIXを繰り広げて盛り上げた。てっきり良質のポップスを歌うグループと思ったら、アイドル界のゴールデンボンバーだったとは……。
他にも、ライムベリーの「まず太鼓」でのサークルモッシュや、アンコールで歌われたいずこねこの「BluE」で、ステージのアイドルが全員でヘッドバンキングをする場面など、観客とアイドルの境界が曖昧になりいっしょにライブを作り上げる瞬間が、とても気持ちがいい。ちなみにこのライブが復活後のライムベリーのベストアクト。天井が高く音響が素晴らしかったこともあり、無心で楽しめた。
3組のライブを見ていると、この数年でアイドルという器は何かをするときの方法論として完全に定着したんだなぁと改めて思う。あとは、その器を使って何を表現するかの違いだけなのかもしれない。
YUKAの脱退が、ライムベリーにどのような影響を与えるのかはまだわからないが、今後は、その変化も含めて見守ろうと思う。パーティーはまだまだ続く。(成馬零一)
ライムベリーは、MC MIRI(櫻井未莉)、MC HIME(持田妃華)、MC YUKA(大田原優花)、DJ HIKARU(信岡ひかる)からなる3MC・1DJのアイドルラップユニット。
昨年、8月の1stワンマンライブ以降、活動休止をしていたが、この度、約8ヶ月ぶりの復活ライブとなった。しかし、そこにはYUKAの姿はなかった。
活動再開がアナウンスされたのはライブの約二週間前。オフィシャルブログでは事務所の移籍と、YUKAの脱退、今後は三人で活動を続けていくことが報告された。
E TICKET PRODUCTIONこと、桑島由一によるプロデュース体制は、そのまま続行となったものの、昔から応援してきたファンほどYUKAの脱退をどう捉えていいのか困惑しているように思えた。
チケットは二部とも完売し、会場はぎゅうぎゅうの満員だった。今まで、彼女たちを応援してきたファンだけでなく、活動休止中に音源を聞いて興味を持った人や女性ファンの比率が少し増えたように感じた。
11時になり、一回目のライブがスタート。いつものように、DJ HIKARUがスタスタとターン・テーブルに向かって歩いてくる。「ポチッとな」HIKARUが指揮者のように両腕を広げると、大げさなファンファーレが鳴り響く。そして新しい自己紹介ラップ「WE ARE BACK!」がかかると、迷彩柄の上着に身を包んだHIME、MIRIが登場。一気に会場はヒートアップする。また、今回は「IN THE HOUSE」という新曲を披露。ライムベリー版「今夜はブギーバック」とでも言うような曲だった。30分弱のミニライブはあっという間に終わった。勢いはまったく衰えていなかった。
YUKAのパートは歌詞を変えてHIKARUが歌ったり、HIMEとMIRIに割り振られた。それがうまくハマっているかどうかは、まだ冷静に判断できない。
ライムベリーの楽曲はすべて桑島が担当し、四人が歌うことに特化したものとして作られてきた。だからこそ、圧倒的な完成度を誇っていたのだが、それは取り替えのきかない危ういバランスの上に成り立っていた。三人の声に対してYUKAの声は低く、そのことが学曲の音域の幅を広げていたのだが、三人の声の印象が重ならないようにするための個性の住み分けは、今後の課題となっていくことだろう。
ヒップホップではなく日本語ラップ。EDMではなくテクノと呼ぶ方がふさわしいライムベリーの楽曲は、90年代の電気グルーヴやスチャダラパーが好きだった人が00年代の萌えカルチャーを経由して、10年代の地下アイドル文化と合流することで、当時の空気を現在のものにアップデートしており、同じようなカルチャーに触れてきた立場としては、よくぞ過去と今をつなげてくれたと感謝したくなる。だが、それはあくまで裏方の話で別に知らなくてもいいことだ。
ライムベリーについて考える時、いつも「遊園地」という言葉が頭に浮かぶ。
桑島のプロデュースによって作り上げた音楽の遊園地は実に楽しく、一度入り込んだら一気に時間がすぎてしまう。おそらく、ライムベリーの女の子たちもまた、観客と同じ遊園地に遊びに来たお客さんで、楽しくはしゃぐ姿を見守ったり、いっしょに遊んでいるかのような距離感がとても好きだ。女の子が楽しそうにしている姿が一番の娯楽なのだ。
このような、ステージの女の子をただ見上げるのではなく、同じ目線でライブに参加する感覚はファン・カルチャーが独自の発展を遂げた地下アイドルならではのものだろう。
それは、4月29日に、アイドルDVDマガジン『IDOL NEWSING vol.1』の販売を記念して行われた渋谷WOMBでのクラブイベントを見た時に強く感じた。
出演したのはライムベリー、せのしすたぁ、いずこねこ。この三組は最近、メンバーの脱退や再編成がおこなわれたアイドルだったのだが、ライブで感じたのは、そういった「痛みの物語」よりも、観客とアイドルが同じ地平に立ってパーティーを楽しもうとする姿だった。実際、せのしすたぁはステージから降りて、フロアの中央に来て、なぞのMIXを繰り広げて盛り上げた。てっきり良質のポップスを歌うグループと思ったら、アイドル界のゴールデンボンバーだったとは……。
他にも、ライムベリーの「まず太鼓」でのサークルモッシュや、アンコールで歌われたいずこねこの「BluE」で、ステージのアイドルが全員でヘッドバンキングをする場面など、観客とアイドルの境界が曖昧になりいっしょにライブを作り上げる瞬間が、とても気持ちがいい。ちなみにこのライブが復活後のライムベリーのベストアクト。天井が高く音響が素晴らしかったこともあり、無心で楽しめた。
3組のライブを見ていると、この数年でアイドルという器は何かをするときの方法論として完全に定着したんだなぁと改めて思う。あとは、その器を使って何を表現するかの違いだけなのかもしれない。
YUKAの脱退が、ライムベリーにどのような影響を与えるのかはまだわからないが、今後は、その変化も含めて見守ろうと思う。パーティーはまだまだ続く。(成馬零一)
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