【特別座談会】うちの師匠、どうでし
ょう!? 三山ひろし、走裕介、桜井く
み子、松尾雄史が語る巨匠の姿(後編

歌手の皆様に、師匠について語っていただく座談会を特別開催。今回は、三山ひろし走裕介桜井くみ子松尾雄史の4名がご登場。三山ひろしの師匠・中村典正、走裕介の師匠・船村徹、桜井くみ子の師匠・藤竜之介、松尾雄史の師匠・水森英夫、巨匠たちの心温まるエピソードに、驚きの秘話が満載です!

取材・文:仲村 瞳

師匠たちの仰天エピソードの数々

ーー今のお話にも重なる部分もあるのですが、師匠に驚かされたのはどんなことでしょう? 松尾さん、いかがでしょうか?

松尾「歌が上手い。先生は歌手でしたので。でも弟子になる前は、そんなに先生が歌っている姿っていうのは知らないわけですよ。レッスンつけてもらって、『ちょっと俺が歌うから』って。すごく上手いんですよ。で、『わあ!』と思って。で、『お前、今のように歌ってみろ』と言われて。無理です(笑)。でも作曲家の先生は歌の上手い方が多いのではないでしょうか?」

走「そうでしょうね」

松尾「うちの師匠も歌手志望で山口から出てきて、歌手をやめて作曲家になったので。上手な人は多いですよね」
松尾雄史
ーーそういった時はどんな歌を歌われていたのですか?

松尾「何でも歌うんですよ。レッスンする曲は『ちょっと俺が歌ってみるから』って。そんなところですかね」

ーー桜井さんはどんなことでしょう?

桜井「そうですね、しつこいところです。良い意味でのしつこさ。あきらめない。粘り強いと言いますか。先生は5キロのジョギングをしているんですけど。その途中で、腕時計が壊れちゃったみたいで、部品の小っちゃいバネが道路に落ちちゃったんです。で、もう諦めるじゃないですか、砂だらけだし、見つかるはずがないって。その時はもう見つけられなくて、一回帰ったらしいんですよ。で、翌日また行って、そこでまた探して、毎日それを続けて、3日後くらいに見つけたんです(笑)」

一同「おおー!」

桜井「しつこいなあって思って(笑)。あと、私は修行時代に住み込みではなくて、先生のお宅から30秒のところに住んでいたんです。普段はカラオケのお店でバイトをしていまして、夜の11時半位に営業が終わるんですが、そこからレッスンが始まるんです。で、その時先生はお酒を飲んでらっしゃるので言葉も荒くなるし、そこでまたしつこさが爆発。言ったことができるようになるまで、OKが出ない。だから夜中の3時くらいまでずーっと歌のレッスン。『違う! 言ってるだろ!』って。『振りはこうだっ!』て言われて。それができない悔しさと、眠いっていうのもあるし、しつこいなあと思いながら、でもやるしないなっていうのはあるんですけど。そういう諦めない、粘り強くやるっていうのはすごくびっくりしました。でも今、私が歌手として歩ませていただいている中で、諦めない、粘り強くやるっていうのはすごく心の中の自分のルールというか、絶対何があっても諦めないっていう強さになっているかなって思います。そういう風に教えていただいたなって思います」

ーー三山さんは師匠に驚かされたことは何でしょう?

三山「非常に芸術的な部分があって、人と考えているところ思っていること、感性がちょっと違うんですよね。そういうところがやっぱり作家の先生だなと思えるところなんですけど。打ち込みはじめたらそればっかり、一生懸命なんですね。これは聞いた話なんですけど、朝に詞が来て、その詞にメロディをつけるということで、ご自宅の方で譜面を睨んでいて、ご家族の方が『それじゃ行ってくるからね』、『行ってらっしゃい』って夕方遅く帰ってきたら、朝見たのと同じ格好でずっと立っていたという話を聞きましたね。そのままの恰好で、ずーっと。途中で、お昼過ぎくらいに、出前を取ったらしいんですけど、その時に犬が逃げていったのも気づかなかったくらい集中して」

一同「(笑)」

三山「ずーっと立ったままで作曲して。でもそれが嘘じゃないなっていうのがわかる節があるので、その集中力たるやすごいなあと、それは驚きますよね。で、メロディが浮かんだらすぐ書けるように枕元に紙と鉛筆を置いっていうのを聞いて、やっぱりすごいなと思って。集中力が半端じゃないですね。もう他のことが一切入ってこないんですよね。音も何も入ってこない。僕もそういうところはあるんですけど。一つに集中型で、そればっかりじーっとやっている方だから、気持ちはわかるんですよ」

走「だからけん玉が上手なんですね」

三山「やってる時は一心不乱でやっていますから。けん玉も気が付いたら3時間とかずーっと。それができるまで。しつこいってやつですね(笑)」

ーー走さんは、たくさんおありかと思いますが。

走「はい。驚かされたことばっかりなんですけども、特に趣味の多さ。ものすごい趣味が多くて、もう春先になってくるとソワソワしだすんですね」

三山「山菜取りですか?」

走「釣りですね。山菜取りも好きなんですが。セリとかタゼリ取ってこいとか、それを天ぷらにするんですけど」

三山「走さんが?」

走「はい。僕がするんですけど(笑)。釣り竿とか、新しいものが出たら出ただけ買ってくるんですよ。色んな道具も手入れして、フライもやってましたから、毛ばりを自分で作るんですよ。先生の仕事場があるとするじゃないですか。そしたら、そこにバイスって毛ばりの針を挟むやつがあって、色んな魚が喰いつきそうな疑似餌を作っていくんですね。それが目の前にあるんですよ。よっぽど好きなんですね。肝心かなめの作曲をするピアノはだいぶ向こうのほうにあるんです(笑)。他にも、汽車とか鉄道とか、いわゆる鉄ちゃんですね。鉄道ファンなんですよ。乗るのも好きなんですけど、ミニチュアのゲージ、Zゲージもありますからね。メルクリーンとかドイツの車種っていうんですかね、Zゲージ、Nゲージ、HO、ライブスチーム。で、それを準備するのは我々。『今日は何出しますか?』、『今日はZゲージにしてくれ』と。小さいZゲージを全部繋いで線路を作って、小さい機関車とか、電気で走るんですけど、毎日走らせていれば結構すんなり走るんですけど何日かに1回だと、線路がすぐ酸化しちゃうんですよ。なのでアルコールとかで拭いて。止まってしまうと『走、線区頼む』って。俺、鉄道員になってるんですよ(笑)」

一同「(笑)!」

走「『わかりました。完了しました!』って(笑)
走裕介
三山『もう、弟子っていうより友達みたいな感じですね。すごいなんか自分の遊び仲間を集めているみたいな感じですね』

走「もうその時は、先生もニコニコして」

三山「浮かぶわ、その絵が(笑)」

走「で、夜なんかもやったりするんですけど。もう飯食い終わってるんですよ。『ちょっとあれやってくれ』って。その時はNゲージとかですけど。畳三畳分位の線路ひいて。ウイスキーのロック飲みながら電気消して、『夜行列車』っていう曲をかけて(笑)」

三山「いいね、いいねー!(笑)」

走「♪夜行列車の~俺を乗せた~青い夜汽車よ~(笑)」

三山「いいね! そうですか!」

走「あと、ゴルフも一緒にまわらさせてもらいました。先生はシングルプレイヤーなんで、めちゃくちゃ上手なんです。まあ、距離は飛ばなくなったんですけど。まっすぐ行くんですよね。僕なんかやったことないのがいきなりやっていますから、当然OBですよね。で、キャディさんつけないで2人でまわるんですよ。だから先生の打ったボールを見ておかなきゃならない。自分の打ったボールも見ておかなきゃならない。でも、先生はまっすぐいくからだいたいあの辺だな、って僕はもう大変ですよ。右行ったり左行ったり。ゴルフってこんな大変なんだーって(笑)」

松尾「作家の先生はゴルフ上手な方多いですね」

三山「多いです。中村先生も、昔知ってる方は『寅さん』って言っているんですよ。愛称ですね。昔、中村寅吉っていうプロゴルファーがいて。ある時に飛行機のチケットを取るのに名前が中村しかわかんなくて。わかんないから寅吉って書いとけって。そこから寅さんになったらしい。実際にそれだけ上手かったんです。もうクラブの手入れも必ず綺麗にするし、結構飛ばす方だったらしいんですよ。ドラコンとか出たらたぶんすごいところに行くくらいだったらしくて。僕も中村先生と初めて二人で行った仕事が、先生の作家のコンペに、送迎をするっていう仕事だったんです。その時に先生は飛ばなくなって嫌になったって言っていましたね。作家の先生はやっぱり上手い人多いですね。」

走「本当に、多趣味なんです。まだ話し足りないくらい(笑)」

三山「あるでしょうねー! 僕は、船村先生とは一回しかお会いしたことがなくてお話も全然したことはないんですけど」

走「本当に、少年がそのまま大きくなったような人です。たくさん話はあるんです(笑)」

三山「弟子の生活が長かったでしょうから、先生の話題が豊富ですね。僕は3年しか一緒にいてお話する機会が少なかったので、プライベートではご飯食べたりするんですけど、あまりしゃべらない先生だし。でも、10年も一緒だともう、思い出がいっぱいですね」

走「病院に入院したりすると、付き添いで一緒の部屋に泊まるんですよ。寝た気はしないですよね。3時間くらいしか寝ない先生なので、さっき寝たと思ったらもう起きてるよ、って(笑)。俺は寝ているわけにいかないよなと思って、起きてるんですけど。病院でどんちゃん騒ぎをやったりとか(笑)。『酒はダメだけどワインはいいんだよ』って(笑)。東京からレコード会社の人達を呼んだりして(笑)」

一同 「(笑)」

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