【カーリングシトーンズ
インタビュー】
俺たちの根っこはただの音楽小僧
寺岡呼人、奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本からなるドリームバンド、カーリングシトーンズが1stアルバム『氷上のならず者』を完成させた。全員が歌い、楽器を曲ごとに持ち回りで演奏する彼らの魅力、そして結成からの話についてリーダーの寺岡シトーン(Vo&Gu&Ba&Key)に語ってもらった。
バンドを組むなんて
最初はまったく考えてなかった
カーリングシトーンズの制作は振り返ってみていかがですか?
やっぱりそれぞれがバンドなりソロなりでフロントに立って、いろいろ背負って戦ってきた男たちだなっていう…パッと見では分からなくても、いざって時の力の出し方がすごいと思いました。ゆるいんですけど、でもちゃんと作品になっちゃう。このまとまり感って、ただ歳を取ったからって生まれるものじゃないし、ただ仲良しで集まったからって出るものでもないんですよね。なかなか言葉で言い表わせない独特のアルバムができたんじゃないかな。
結成の経緯としては、呼人さんのソロデビュー25周年がきっかけなんですよね。
正確に言うと、まず最初に僕のソロ25周年のためにライヴ会場を押さえられたってのがあって。この6人はいつもLINEグループで会話してるんで、“その日空いてる?”って連絡したら、たまたま全員が空いてたんですよ。“じゃあ、何かしらお願いしまーす!”みたいな感じで、その時はバンドを組むなんてまったく考えてなくて、“僕の25周年で一緒にイベントをやりましょう”くらいのやり取りだったんです。でも、前から“みんなで何かやりたいよね”という話はちょこちょこ出てきてたし、せっかくやるんだったらって。もしかしたら最初で最後かもしれないじゃないですか。それなら新曲とか作ったほうがいいかなと思い始めて、だんだんと“バンドにしちゃうのもいいな”ってなっていったんです。
それは呼人さんの発案で?
はい。“架空のバンドっぽいノリで組んで、ライヴをやってみるのはどうかな”と。“ひとり1曲でもいいから新曲作ってよ”ってライヴの3カ月前とかから始めて、本番までにほぼ新曲でやれるくらい曲が溜まったっていう。2018年7月の頭に6人で記者会見をやった、そのちょっと前ですよ、バンドになったのは。
デビューライヴ(2018年9月23日@Zepp Tokyo)の前後でレコーディングもされてました?
まずライヴのために6人全員で集まれるリハーサルの日が1日もなかったんですよ。なので、これはもうデモテープを作らないと絶対にライヴができないと思って。僕のスタジオにメンバーそれぞれ来れる時に来てもらって、1曲ごとに完成版を作ったんです。それを聴いといてもらえば、曲が覚えられてすんなりやれるだろうから。で、結果的に“録ったデモテープの音源ってどうするの?”みたいにメンバーもなってきて(笑)。7割くらいはできてたから、残り3割を今年6月に3日間の合宿レコーディングで一気に録り終えて、今に至る感じです。
このバンドをまとめるのは大変そうですね。
譜面も僕が全部書きましたし、たぶん世話焼きな人間がいないと回らない。『ゴッドファーザー』で言うところのRobert Duvalみたいな弁護士役が必要なバンドです(笑)。でも、みんなにも上手く泳がせてもらってますね。
実際、デビューライヴの感触はどうでしたか?
よくできたなーと思いますね、全員が集まれたのが当日だけって状況で。しかも、サポートメンバーもいない。なぜか奥田シトーンが“絶対に6人だけで演奏するんだ! なんとかなる”って宣言してたんですよ。終わってみればその決断は間違ってなくて、映画館でのライヴ映像の上映もクオリティー的に大丈夫か心配だったのに、そういう意味ではみんな本当にすごかった。あと、僕はリーダーとして“メンバーはきっと結構しゃべるし、ちゃんと時間内に収まるのか”という不安もあったんですけど、当日は逆にめちゃくちゃ巻いてることが分かって、ライヴ中にビビッたり(笑)。まぁ、巻いてることをリアルタイムで知れたから、むしろネタにしたりして、結局全てをエンタメにできた感じはあったかな。あとは、やっぱり世良公則さんですね。
シークレットゲストとして出演されましたね。
そうです。そもそも僕がカーリングシトーンズの企画書を最初に作った時、ライヴをするにあたって“ティン・パン・アレーみたいに誰かのバックバンドもやれるような存在になりたい”ってことを書いてたんですね。それがまさに世良さんが出てくれたことによって実現して、映像で観てもすごくいいな〜と感じました。Chuck Berryの『ヘイル!ヘイル!ロックンロール』じゃないけど、ある人を囲んでみんなが子供に戻ったかのように演奏してるのって、きっと世良さんを通ってない今の10代の人たちが観てもたまらないんじゃないかな。僕ら6人が少年の目で世良さんを見ながら演奏してた姿は。こうやって年齢を越えられるのが音楽の一番の魅力だと思うので、実現できたのは嬉しかったし、世良さんもずっと続けてきたからこそのスキルというか、ヴォーカル力も含めて素晴らしくて。本当にハイライトでした。