外村理紗(ヴァイオリン)インタビュ
ー~スタクラフェス2019で魅せる若き
才能

昨年、大盛況となった野外型クラシック音楽祭『STAND UP! CLASSIC FESTIVAL』(通称:スタクラフェス)。今年は9月28日(土)、29日(日)の2日間にわたって、横浜赤レンガ倉庫特設会場で開催される。のべ200曲以上という国内最大規模の演奏プログラムから、好みの曲を自由なスタイルで楽しみたい。ビールやワインを片手に名演に耳を傾けたり、潮風薫る芝生エリアで音楽を聞きながらピクニックを満喫したりすることもできる。クラシックの名曲だけでなく、ミュージカルやアニメ音楽のオーケストラ演奏なども予定され、大人はもちろん、子どもたちにとっても楽しいイベントになりそうだ。
スタクラフェス初日のGLASS STAGEで楽しみなのが、幕開けを飾る『クラシックジュエルズ~原石を探して』。現役高校生ヴァイオリニストとして活躍中の外村理紗(ほかむら りさ)と、昨年の同フェスにサプライズ出演した異才のピアニスト紀平凱成(きひら かいる)という二人の18歳の「今」を聴くことができる。外村は、昨年10月に第10回インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールで第2位(最年少ファイナリスト)となり、11月にはニューヨークで行われたYoung Concert Artists International Auditionで優勝を飾った、まさに、今聞きたい若手ヴァイオリニストの一人である。インタビューの席上、彼女は、「色々な国で活躍するヴァイオリニストになりたい」と夢を語ってくれた。彼女の現在と未来、そしてスタクラフェスにかける意気込みを訊いた。

外村 理紗

青空の下、クラシック音楽の魅力を届けたい
ーースタクラフェス出演の話を聞いた時の感想はいかがでしたか。
実は、去年、スタクラフェスが開催されることを知って、行きたいと思っていました。あいにく予定が合いませんでしたが。「フェス」という雰囲気の中で、クラシック音楽に詳しくない方でも楽しめるというのは画期的だと思います。そういう形でクラシック音楽の魅力を届けられるのは、かっこいいですよね。出演者に選んでいただけるとは思っていなかったので、とても光栄です。
ーー会場は横浜の赤レンガ倉庫界隈です。野外演奏の経験はありますか。
いいえ。屋外で演奏するのは初めてです。横浜は、度々、友達と遊びに行ったことがありますし、コンクールで訪れたこともあります。全日本学生音楽コンクールの会場は、横浜みなとみらいでした。小学生のときに参加した山手の丘音楽コンクールでは、帰りがけにご褒美として中華街へ連れて行ってもらったんですよ(笑)。何より、海と港が見えるのがとても素敵ですよね。
クラシック音楽のコンサートには、どうしても堅苦しいイメージがついてきがち。ですから、青空の下という開放的な雰囲気の中で、海風を感じながら、みんなが自由に聞くというスタラクフェスのコンセプトは素晴らしいですね。
外村 理紗
ーー外村さんは、サラサーテのスペイン舞曲集から第2番「サパテアード」を演奏されるそうですが、青空の下で聞くのにぴったりの曲ですね。どうしてこの曲を選んだのですか。
この曲をはじめて聞いたのは、ヤッシャ・ハイフェッツの演奏でした。明るく楽しい曲なのですが、彼の演奏には心の内側が垣間見えるような憂鬱な感じもあって、衝撃を受けたんです。今回の演奏では、そういったことの表現に挑んでいきたいと思っています。アップボー・スタッカートやフラジオレット、跳躍が出てくる一方で、歌うところもありますので、技術力と表現力の両方が試される曲です。
ーーご自身の演奏以外の時間に、スタクラフェスでやってみたいことはありますか?
屋外でクラシック音楽を聞いた経験がないので、皆さんの演奏をぜひ聞いてみたいです。ご飯食べながら、リラックスして楽しみたいと思っています。それから、やっぱり、五嶋龍さんの演奏を聴きにいきたいですね。以前、チャイコフスキーのコンチェルトの演奏を聞いたことがあるのですが、とても感動しました。
外村 理紗
さらなる飛躍に向けて
ーー外村さんとクラシック音楽との出会いについても興味があります。音楽を始めたきっかけを教えていただけますか?
母がヴァイオリニストで、自宅でヴァイオリン教室を開いていました。私が2歳頃の話ですが、上の階から聞こえてくるヴァイオリンの音に合わせて、箱と鉛筆でヴァイオリンを弾く真似をしていたんです。それを見たおばあちゃんが、「ヴァイオリンを買ってあげたら」と言ってくれました。それが、始まりでした。
小学校2年生の時に、ヴァイオリンをやっていた同学年の子が、「コンクールで賞を取りました」ってみんなの前で紹介されていました。その時初めてコンクールというものを知り、私も受けてみたいと思うようになりました。3歳の頃からずっと母に演奏を教わってきましたが、コンクールに出るなら本格的に、ということになって、母の恩師であった小林健次先生に師事することになりました。
ーー外村さんは、現在、18歳とお若いですが、既に内外のコンクールで数々の素晴らしい賞を獲得されています。順風満帆に見えるのですが、やめたいと思ったことはなかったのでしょうか?
中学受験のためにブランクを空けたこともありますし、中学校では、「勉強、勉強」という勉強熱心な雰囲気があったので、音楽と学業の両立が大変でした。勉強の方が楽しかった時期もあります。コンクールでよい結果が出るなどしていたら良かったのかもしれませんが、なかなか上手くいかず、「何のためにヴァイオリンをやっているのだろう」と感じた時期もあります。母は、「ずっと(ヴァイオリンを)やってきたのだから続けたら」って引き留めてくれましたが、6カ月くらい冷戦状態だったこともあります。

外村 理紗

ーー外村さんをヴァイオリンに向かわせたのは、何だったのでしょう。
中学校2年生の時に、リピンスキ・ヴィエニヤフスキ国際コンクールのジュニア部門を受けました。その時は2次選考で落ちてしまったのですが、初めて、ヴァイオリンのお友達ができたんです。コンクールという一つの目標に向かって、みんなが頑張っている姿を見て、「いいな」と思いました。そうした経験を経て、ヴァイオリンが好きであることが確信に変わっていった。ヴァイオリニストを目指すようになったきっかけですね。
中学校3年生では、全日本学生音楽コンクールを受けました。学業と音楽の両立は大変でしたが、決心できてからは前ほど苦ではなくなっていきました。
ーー外村さんにとって、音楽とはどういった存在なのですか。
自分の核です。人生のほとんどの時間をヴァイオリンと共に過ごしてきました。今では、すっかりオタクです(笑)。クラシック音楽が本当に好きなので、それなしは考えられないですね。
外村 理紗
ーー来年は大学進学の年ですね。今後のキャリアに関する考えを聞かせてください。
去年、アメリカのインディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールで2位を頂き、Young Concert Artists International Auditionでは優勝することが出来ました。それらがきっかけになって、アメリカに留学したいという考えが生まれてきました。
アメリカには師事したい先生もいらっしゃいますし、先生と生徒とのフレンドリーで緊密な関係性もいいなと思っています。ただ、TOEFLを取らないとアメリカの大学を受験できない。今は、そのために英語もやっています。
演奏面では、みんなで1つの曲を作り上げていくのが好きなので室内楽をもっとやっていきたいと思っています。ソロだけでなく、室内楽やオケとの共演など、幅広く活動できる演奏家になりたいですね。色々な国で活躍するヴァイオリニストになりたいというのが野望です。
――最後に、スタクラフェスで外村さんの演奏を楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします。
今回は、馴染み易い一曲を選びました。聞いてくださる方、一人ひとりが、リラックスして楽しい気持ちになってもらえるように演奏します。是非、スタクラフェスにお越しください。
外村 理紗

STAND UP! CLASSIC FES '19 外村理紗コメント
外村理紗プロフィール
2001年生まれ。3歳よりヴァイオリンを始める。2016年IMA音楽賞、第70回全日本学生音楽コンクール中学校の部東京大会第1位、全国大会第1位併せて兎束賞、東儀賞、かんぽ生命奨励賞を受賞。2017年、第86回日本音楽コンクール第2位受賞。2018年10月、第10回インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクール第2位受賞(最年少ファイナリスト)、日本人6大会24年ぶりの入賞。同年11月ニューヨークで開催されたYoung Concert Artists International Auditionにて優勝、日本人としては神尾真由子氏以来の快挙となる。原田幸一郎、神尾真由子、小栗まち絵、小林健次の各氏に師事。現在、東京音楽大学付属高等学校に特別特待奨学生として在学中。

VC Young Artist RisaHokamura | Introduction and Rondo Capriccioso | Indianapolis Competition
取材・文=大野 はな恵 撮影=安西 美樹

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