《後編》芸能人が死んだ途端リスペク
トする風潮ってどうなの?

死後はハイエナが群がる音楽業界

 死後の過剰な再評価の裏には、著作権絡みの金の匂いがプンプンする場合もある。分かりやすいのが音楽業界だ。
 今年1月15日、胃がんで亡くなった音楽プロデューサーの佐久間正英。GLAYやジュディマリを育てたという素晴らしい功績から、業界での評価が高いのも納得だ。ただ、音楽好き以外は名前も知らない、一介の音楽プロデューサーだ。それなのに死んだと気付くと、やけに世間が大騒ぎ。ツイッター上にも、にわか音楽通が「お悔やみ申し上げます」など、定型文をつぶやきまくった。
 そしてこの騒ぎに便乗して「コンピアルバムの発売決定」との発表も。ちょっ……早すぎません!? 亡くなった直後にアルバムのリリース発表なんて。それって、「佐久間さん、そろそろヤバいらしいよ~」という情報を元に、あらかじめ準備を進めていたってことでしょ? 死ぬのを待っていたようで、買う方も複雑な気持ちになってしまいます。 ほかにも昨年12月に急逝した大滝詠一、亡くなってから早5年が経つ忌野清志郎、古くはhide尾崎豊ZARDの坂井泉水……。ミュージシャンが他界すると、急に彼らの歌声や作品が聴きたくなるもの。その死亡特需に便乗して、コンピだのベストだのと、死を悼む間もあたえずに荒稼ぎするのが音楽業界というところだ。
 生前は、最優秀新人賞もオリコン1位も紅白出場も獲得していない、“元アイドル”の本田美奈子.も「天使の歌声」と祭り上げ、未音源アルバム『心を込めて…』、リミックスアルバム『優しい世界』などを次々リリース。最後は、入院中、恩師に宛ててボイスレコーダーに吹き込んだアカペラ音源もCD化してしまうのだから驚嘆する。ファンには嬉しいのかもしれないが、「追悼」「再評価」というのが、便利な言葉として軽々しく使われてしまったのは残念だ。

芸人と映画監督でブレる松本人志

 こうした都合のいい再評価を見るにつけ、なぜ生きているうちに評価してしないのかと思うのだか、逆に「死んでから評価されたい」と言う者もいる。
「生きているうちはあんまり評価されんかもしれんけど、ダウンタウンで評価されたからいい。松本人志としては死んだ後の評価を期待して作っていきたい」
 映画『さや侍』公開の際の、“映画監督”松本人志の言葉だ。
 以前は、かのゴッホと自らを重ね合わせて、「死んでから評価されても腹が立つ」「一生理解できないままでいろ!」と発言していたはず。芸人としての松本人志はすでに充分な評価を得ているのに、死後の評価に任せるといった姿勢は、映画作りを諦めてしまったようで悲しい。 芸能人・著名人なんて、人に評価されるのも仕事のうち。ファンもマスコミも死に便乗して再評価するのではなく、生きているうちに評価してもいいと感じた。
 (文・編集部) オススメCD:『本田美奈子.クラシカル・ベスト~天に響く歌~』(DVD付) [Cd+Dvd](コロムビアミュージックエンタテインメント)/本田美奈子.
オススメBlu-ray:『HITOSI MATUMOTO VISUALBUM “完成"【豪華5枚組『寸止め海峡(仮題)』よりコント3本を追加収録】 [Blu-ray](よしもとアール・アンド・シー)/出演:松本人志

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