沢城みゆきが「LUPIN THE IIIRD 峰不
二子の嘘」で感じた“嘘と本当”

 「ルパン三世」のスピンオフシリーズ「LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘」が、5月31日から劇場公開される。「次元大介の墓標」(2014)、「血煙の石川五ェ門」(17)に続く今作では、抜群の美貌を武器に男をまどわす峰不二子をフィーチャーし、ミステリアスな彼女の知られざる一面がうかがえる。2011年に増山江威子から役を受け継ぎ、3代目の峰不二子を約8年演じている沢城みゆきに、「LUPIN THE IIIRD」シリーズの魅力と本作のタイトルにある“嘘”について聞いた。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)
――「LUPIN THE IIIRD」シリーズは、絵柄もストーリーもよりアダルトなテイストです。普段のテレビシリーズと演じるときの心構えが違うところはあるでしょうか。
沢城:「金曜ロードSHOW!」の「ルパン」は“ファミリールパン”で、小池健監督のシリーズは“ダークルパン”とキャストの間では呼んでいます。栗田貫一さんがよくおっしゃるのですが、“ダークルパン”ができたことによって「ルパン」という作品に振り幅が生まれ、とてもよかったと思っています。“ダークルパン”は描き手も演じる側もリミットを外せるんです。“ファミリールパン”は、みんなで同じ振りのダンスがあって照明もよく当たり、自分のいいところをたくさん見てもらうショーのようなところがありますが、“ダークルパン”はまるで闘技場のようといいますか。相手に何をされるかも、こちらが何を仕掛けるも分からない。そんなふうにドキドキしながらアフレコしているところが普段の「ルパン」との違いで、みんなにいい顔をしないというか(笑)、「真っ向からやって大丈夫」と思いながら臨むことができます。
原作:モンキー・パンチ (c) TMS――峰不二子のシンボルであるセクシーさも、本作ではより奥深い感じがあって、セリフまわしも裏を読むものが多かったように感じました。
沢城:「LUPIN THE IIIRD」シリーズでは、いい香水の匂いがするセクシーさというよりも、もっと本能的に色っぽい感じが香ればいいなと思いながら収録に臨んでいます。ただ、セクシーの定義って非常に難しいですよね。声色をかえて「ねえ、ルパ~ン」と呼びかければセクシーなのかというと、それだけではけしてないはずなのですが、増山江威子さんが演じてきた不二子が言うと、「そんなに言うならやってやるよ」と相手に思わせる説得力が生まれてきます。あのセクシーさは増山さんのマドンナ的な輝きがあってのものですので、どうしたら自分ならではのセクシーをだせるのか常に考え続けています。
――ご自身と不二子に共通点はあると思われますか。
沢城:あったらいいですよね(笑)。私は不二子のようなハードな生活にはまったく興味がなく、毎朝あったかいお味噌汁とご飯で生きていたいと思うような人間です。
 以前、増山さんから伺ったのは、「不二子は盗むことそれ自体が好きなのではないか」ということでした。盗む対象は人の心でも物でもよくて、盗んでしまったら「はい、おしまい」となる。そのお話が印象的で、それからは自分でもそうした部分を大事にするようになりました。
原作:モンキー・パンチ (c) TMS――本作の不二子は、ジーンという男の子と行動をともにします。不二子の色気が通用しない子ども相手のやりとりで、これまでとの違いなど感じられたでしょうか。
沢城:ジーンとのやりとりについては、音響監督の清水(洋史)さんから明確なディレクションがありました。不二子とジーンは大真面目に言い合っているのに第三者から見たら面白おかしく見えるようにつくりたいといわれて、「なるほど」と。いつでも相手を懐柔することができる不二子が今回はその枠外にいる。そうしたところを今回はハイライトとして見せていきたいので、そこはいつもよりちょっと(キャラクターの枠を)越えてやってみましょうという感じです。なので私としては、大真面目にイライラしたり、ジーンに振り回されて右往左往したり、とにかく一生懸命にやっています。そうした不二子を皆さんが引きで見たときに面白く見えていたらいいなと思っています。
――不二子とジーンを追うビンカムについてはいかがでしたか。
沢城:見た目は大人ですが、ビンカムもジーンと同じ子どもだと感じました。ジーンは意思をもっている子どもですが、ビンカムは意思をもっていなかった子どもなのかなと。不二子にとってはビンカムのほうが懐柔できるタイプで、意思をもっているジーンは思うようにできないイレギュラーなタイプです。その差が、物語のなかで2人の命運を分けているような気がします。
ビンカム(CV:宮野真守)原作:モンキー・パンチ (c) TMS――実際に演じてみて、本作の不二子をどう思われましたか。
沢城:私にとって不二子は、すごく遠くにいる人なんです。演じながら「ギリギリ見えている」感じでずっとやってきているので、今回もその距離自体は変わらないのですが、さきほどもお話したようにジーンが登場したことによってイレギュラーな不二子が見えたというのはあります。けれど、そのことによって更に彼女が謎めいてしまったところもあるんですよね。「あ、この人でもイライラするんだ」と一瞬近くに行けたと思ったら、さらに遠くに行ってしまったという……。
 不二子って誰にも理解できないから、みんなが追いかけたくなる存在でもあると思うんです。それが彼女独特のかわいげにもなっていて、しかも嫌味にならない絶妙なバランスですよね。脚本を書かれた高橋(悠也)さんがどういう思いで今回の不二子を書かれたのかは分かりませんが、彼女のベールを暴こうと思って描いているのではないように感じました。どこまでいっても私たちの手のひらの上に乗せて全部を眺めまわせるような女の人ではないのだなと今回も思わされました。
――本作の不二子は、「ひょっとしたらこれは本音を言っているのでは」と思える言葉を時折発していたように感じました。ただ、タイトルにもあるようにそれさえも“嘘”であるようにも思います。沢城さんは、収録のさいどんなふうに考えられていましたか。
沢城:これまで不二子は“できもしない嘘”をたくさんついてきていますよね。でも、彼女のなかで “できないならば絶対についてはいけない嘘”のラインがあって、たぶんそこは生理的に分けているんじゃないかと思っています。今回そうしたラインに抵触する部分が見え隠れしていて、それはジーンがそれだけ不二子のなかに踏みこんできたからなのかもしれません。
――モーテルで不二子が、ジーンをベッドに押しつけながら発したセリフは自分自身に言っているようにも思えました。
沢城:そんなふうに彼女のセリフの裏表を考えてみると面白いですよね。怒っても、優しく抱きしめても、すべてポーズかもしれないところが不二子の魅力のひとつですから。そんななか、私が個人的に「ああ、ここだけは本当のセリフだな」と思ったのは、バーでジーンについて話しているときに「あいかわらず気まぐれな女だな」とルパンに言われた彼女が返す、「できもしない嘘だけはつきたくない。それだけよ」というセリフでした。あの一言だけは本当なんじゃないかなと思えて、演じていて少しだけ不二子にさわれた感触がありました。

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