【Daijiro Nakagawa インタビュー】
耳の横でアコギを
爪弾いているかのような作品
高校生の時に作った曲など
見せてこなかった側面の数々
こうしたインストゥルメンタル楽曲の場合、だいじろーさんは曲タイトル、描きたい情景などを先にイメージしてから、フレーズを模索していく作り方ですか?
歌モノのようにメロディー主体で作るのも、コードを響かせて進行させるような曲作りも好きです。こだわりはなくて、好きなようにしてますね。
「diploma」のメロディーを聴くと、まさに卒業の日の清々しい空や桜の風景が思い浮かぶし、ギターで歌メロを弾いてる感じもしました。
「diploma」は高校の卒業あたりに作った曲なんですが、作った経緯はほぼ覚えてなくて。ただ、特性としてはメロディーやコード、バッキング的なものを別々に作るというよりは、同時に考えて作ったのかなと感じる曲ですね。久しぶりにこの楽曲を思い出して弾いてみたら“ええ曲やな”ってとても懐かしくなって、リアレンジしました。
「fall asleep」はAメロ、Bメロ、サビのように展開がくっきりある歌モノのようでもあって。
確かに展開がありますね。他の楽曲もそういった展開を作りたがる傾向があると思います。「realize」や「voyager」とか、特にそうかもしれない。作曲の際、歌心のあるアプローチをしたかったのかな。
「new ethics」のアコギの拍子感、それが変化していくさま、もたらす余韻もとても独特で心地良いものでした。
「new ethics」は確かにあまり見せてこなかった側面を作品として見せられたかなと。クリックではできないタイム感や曖昧な気持ち良さの狭間を行き来するような拍子感を表現できたと思います。普段アコギをポロポロ弾いてる時はこのような弾き方をすることが多いので、忠実に作品としてそういった手応えをみなさんに聴いてもらえますね。心地良さの正体についても常に考えてて、その答えに限りなく近いニュアンスが、この楽曲には込められてる気もします。
あとは、「sampo」が今までのだいじろーさんの印象とはかなり違って新鮮です。フォークシンガーみたいな飄々さ、のどかさが出てる感じで。アコギのボディーをカンカンと叩く音は住宅地を歩く中で聴こえてくる日曜大工とかの生活音のようでした。
この曲も高校生の時にふざけて作った曲です。当時、ラッキーという柴犬を飼ってて、ラッキーの曲を作りたくて作った記憶があります。散歩してる様子を表現したかったんだと思いますね(笑)。入れたら面白いかなって、あえて入れてみました。かわいい曲なのがポイントですよね。
制作を通しての発見や気付きを挙げるとすれば、どんなことでしょう?
好きなことに引けることなんてないと一周回って感じてて、“それならバランスを取って全部入れちゃえ”って常に考えてるんですよ。でも、今作はかなり引いちゃいましたね。引き算の音楽はいつでもできるから老後にするかなって決めてたのですが…自分は少し大人として成長し始めてるのかもしれません(笑)。
出来上がってみて、『in my opinion』はどんなアルバムになったと思いますか?
誰が聴いても“いい!”って思えるような作品にしたいという想いが強くて、それに伴う葛藤なども感じたりしたんですが、最終的に好きなことの中で試行錯誤できたかなと。なので、作品としての印象はとてもストレートになった自信がありますし、今まで表に出さなかったニュアンスやタイムなども作品に落とし込めました。息遣いとか空気感の入った作品って、普段の自分からすると思い切ってますよね。ただ、そんなことを感じさせないようなシンプルな伝わり方や良さを感じてもらえるかなと思ってます。
取材:田山雄士