長塚圭史唯一の未発表作品を、新生阿
佐ヶ谷スパイダース総出演で上演 舞
台『桜姫~燃焦旋律隊殺於焼跡~』

2019年9月10日 (火) ~ 9月28日 (土) 吉祥寺シアターにて、阿佐ヶ谷スパイダース『桜姫~燃焦旋律隊殺於焼跡(もえてこがれてばんどごろし)~』が上演される。
本作は、2009年にコクーン歌舞伎番外編として上演され、話題を呼んだ『桜姫~清玄阿闍梨改始於南米版(せいげんあじゃりあらためはじめなんべいばん)』の発表されなかった全く別のバージョン。作・演出を手掛けた長塚圭史が本作で最初に目論んだのは、荒唐無稽な鶴屋南北の「桜姫東文章」の物語を、混沌の渦であった敗戦直後の日本に表出させようというもの。
物語の主人公は、楽隊を追いかけながら、どこまでも堕ちてゆく美しく無邪気な桜姫。そして運命に導かれ、彼女をストーカーのごとく追い回す聖人・清玄。極悪人・権助は自らがみるみる巻き込まれてゆくことに気がつかない……。
2019年版として、長塚が新たに大きく改訂を加えた『桜姫』。新時代の夜明けに、新生阿佐ヶ谷スパイダース総出演で本邦初上演される。
■ 長塚圭史 (作・演出) メッセージ
『桜姫~燃恋旋律隊殺於焼跡~』は平成 21 年に書き上げた四代目鶴屋南北の『桜姫東文章』を底本とした私にとっては唯一の未発表戯曲です。
そう浅ましくもこれまでは書いては発表してきたのです。しかし今作に限って発表なぞというあくせくした浅ましさとは無縁の、大事に大事に温存されてきた劇、というわけでは勿論ありません。遂に書き上げて祝杯をあげたところでまあ人生ですから生きているわけですので色々あって、もう一作『桜姫~清玄阿闍梨改始於南米版』というのを書いたのですね。それを懸命に書いているうちに、うっちゃられてしまった劇なんですね。作者に捨て去られてしまった、いわば忘却の劇。そうしてもう殆ど霞んでしまって、およそ消失しかけていたところを、この霧散劇を読んだ数少ない人物であり、現在は我らが劇団員でもある山田美紀氏がハッと思い出し、作者の元に連れッ戻してくれたのです。
十年前、私は魅惑の登場人物たちの虜になっていました。大衆に今も愛され続けている桜姫の物語の中を生き続ける者たちの宿命と倒錯を、戦後を舞台に描いていました。江戸の四世南北という人がそもそも相当に荒唐無稽なのに、私がそこにまたおかしなことを混ぜ込むものだから、さてどうやったらいいものかという場面の目白押し。大変おもしろいことになりそうなのです。
今回は吉祥寺シアターを丸一ヶ月借りて、またぞろりと我らが世界をお披露目しようと思うのです。乞うご期待!
■ 山田美紀(阿佐ヶ谷スパイダース 演出助手) メッセージ
『桜姫』は元々、四代目鶴屋南北の『桜姫東文章』を原作として、10年前に長塚が現代版として書き上げたものです。その際、二つの『桜姫』が産まれました。戦後日本を舞台としたものと、それに更なる改訂が重ねられた南米が舞台の『桜姫』。当時上演されたのは、鋭い日光と強い影を感じさせる「南米版」でした。今回お届けするのは、南米の激しい日差しの後ろに陽炎のように消え失せた、もう一つの『桜姫』です。
当時、戯曲を読んだ私の脳内には、焦土と化した焼け跡をあてども無く彷徨う、捉えどころのない一人の少女が居りました。不思議な楽隊に導かれ、いや、楽隊を導きながら少女はその刹那を生きようとします。
ある日の長塚との企画会議中、突然ひょっこりと彼女が「わたしはまだここにいる」と呼びかけてきました。「わたしの物語はまだ始まっても、終わってもいない」。脳内の彼女は 10 年の時を経て尚、焦土に立ち続けていたのです。儚げに見えた少女は焼け野原にも、10年前の喧騒にも、今この瞬間の東京にも、驚くべき生への執着をもって存在していました。
目まぐるしく変化する期待と不安がそこかしこにある 2019 年、その中で「生きる」ということだけに邁進していく人々の、長塚らしい優しい残酷さを持ったお伽話のような悪夢のような物語を「阿佐ヶ谷スパイダース」でお贈りします。
登場人物を見守る楽隊の音楽には長塚作品に数々参加してくださった荻野清子さんをお招き致しました。荻野さんの音楽と、風変りな少女と、妄執にかられた男たちの『桜姫~燃恋旋律隊殺於焼跡~』。ご期待ください。
【ものがたり】
清玄の足取りは覚束ない。その時一人の男、権助とぶつかる。権助の目つきはケモノのようである。清玄はその恐ろしい眼から、しかし視線を逸らさずにいる。権助もまた同様に。やがて互いに顔を背け、歩き出した瞬間、完全に点対称で動いた事に一瞬振り向く二人だが、気のせいだとそのまま歩んでいく。
戦後復興の救世主、慈悲深き聖人と呼ばれる清玄の孤児院さくら学園。今日、『彼女』はそこから嫁ぐ。彼女が見つめる窓の外を楽隊が通る。
「あっちですよ、お嬢さん。物語はあっちで始まります」

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