サザンオールスターズとファンの熱い
グルーヴ!「みんなのうた」
今からさかのぼること約30年前の1988年にサザンオールスターズの『みんなのうた』は発売された。
まだまだレコードが数多く販売されていたこの時代。それほど昔の作品であるのに、いまだに色あせない輝きを放ち、多くの人に愛される魅力はどこにあるのだろうか?
『みんなのうた』の歌詞から、その魅力を説いてみたいと思う。
ファンを大切にする 「ファンのみんな」とサザンの歌
(一番)
(二番)
また、デビューから40年も経った今でも、ライブではファンへの感謝の言葉が繰り返し述べられている。
ファンとしては嬉しい限りだ。
ファンとしては嬉しい限りだ。
この曲でも「みんな」という言葉が入るフレーズでは、「虹のカーニバル」、「風のハーモニー」などの明るくてカラフルなイメージが歌われている。
雲に切れ間があることから、分厚く空をおおう雲ではなく、ふわふわした小さな雲で、切れ間から青空がのぞいているような、そんな風景が想起させられる。
「カーニバル」も「ハーモニー」も「みんな」と一緒でなくてはできない。
「みんな」とはファンとサザンのメンバーのことだろう。現にサザンはファンをいつも大切にし、ファンはどんなときも心からサザンを応援して、心地よいハーモニー(調和)を奏でている。
デビュー10周年を記念して、これからもずっとライブでファンと一緒に盛り上がれる曲として作られたような気がしてならない。
だから、この歌詞の「この場所」は「ライブ会場」で、「またライブ会場で、この曲で盛り上がろうね!」と言われたような嬉しい気持ちになってしまう。
この「波」は感情の波で、ライブ会場でファンと一体となった熱いグルーヴのことだ。
「みんなのうた」は恋愛を歌っていると同時に、ファンとの関係性を歌った複数の意味をもっている。
明るい曲調で親しみやすいサザンオールスターズらしい曲
サザンオールスターズの魅力の一つは、その音楽性の幅広さだ。
ラテン系のリズムの曲もあれば、しっとりしたバラードもある。昭和の歌謡曲の影響を受けた曲もあれば、ドゥー・ワップもある。
それらのすべてにサザンとしてのオリジナリティがある。各々の要素とサザンのオリジナリティが絶妙に合わさって、唯一無二の色を出している。
この曲はさらに、カラッとした明るい曲調と親しみやすさでサザンオールスターズらしいポピュラーソングとなっている。
みんなから愛され、音楽からも愛されるサザンオールスターズ
数年前、桑田佳祐が病気をしてから2年後に、夫婦で「今やらないと後悔することはやっておいたほうがいい」という話が出たそうだ。
そのとき、桑田佳祐の口から出た「やっておいたほうがいいこと」は、「こんなイベントがやりたい」とか「この人と一緒にレコーディングをしたらどうだろう?」といった音楽の話だった。
(株式会社「新潮社」発行、桑田佳祐著、「桑田佳祐 言の葉大全集 やっぱり、ただの歌詩じゃねえか、こんなもん」より)
ここまでくると音楽に対して、非常に強い愛情を桑田佳祐から誰もが感じるだろう。
なぜなら、サザンオールスターズのボーカルとしてもシンガー桑田佳祐としても、もう何十年も音楽をやっている。いつでも「音楽はもう充分だ」と思ったとしてもおかしくはない。
しかし、彼の場合は情熱が衰えるどころか、音楽に対する愛はますます膨らんでいるようにさえ感じる。
そんな素晴らしいボーカリストが牽引するサザン・オールスターズだからこそ、ファンたちは彼を愛することができる。
もっというとファンからだけでなく音楽からも愛されている。だからこそ、「みんなのうた」は輝きを増していくのだろう。
TEXT 三田綾子
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