新国立劇場2019/2020シーズンライン
アップ説明会~<大原永子・舞踊芸術
監督によるバレエ&ダンス編>

新国立劇場の2019/2020シーズンラインアップ説明会が2019年1月17日(木)に開催され、オペラ、バレエ&ダンス、演劇部門の各芸術監督が登壇した。バレエ&ダンスのラインアップについては、舞踊芸術監督の大原永子氏より説明があった。
大原永子芸術監督最後のシーズンとなる開幕演目はケネス・マクミラン振付『ロメオとジュリエット』だ。マクミラン作品はさらに『マノン』を上演するほか、シーズン最後には2018年に上演し大好評を博したクリストファー・ウィールドン振付・演出『不思議の国のアリス』を再演する。
ダンスでは中村恩恵と新国立劇場バレエ団のコラボレーション作品『ベートーヴェン・ソナタ』が再び登場するほか、ダンサーが自身の振付作品を披露する『Dance to the Future2020』は、今回は遠藤康行をアドバイザーに迎えて上演される。
さらに2020年夏にはオペラ・バレエ・演劇3部門の協同による子ども向けの新作オペラが制作され、これには新国立劇場バレエ団のダンサーも出演予定。同じく2020年夏は森山開次振付による子どもバレエの制作も予定されている。
監督のこだわり「ドラマチックバレエ」2作に、『不思議の国のアリス』再演も
大原監督は1999年に新国立劇場バレエ団にバレエミストレスとして就任して以来、監督補、芸術監督として20年余にわたりバレエ団にかかわってきた。2014年の芸術監督就任時に、目標のひとつとして「ダンサーの力の底上げとクオリティの向上」を掲げた。6年目を迎える現在、とくに海外のダンサーに比べ弱いといわれる日本人の演技力や表現力は「こちらが“やりすぎだ”と止めるほど、ダンサーたちは自主性をもって当たるようになってきた。互いに切磋琢磨し、非常に良い雰囲気だ」と話す。
そうしたなかで迎える2019/2020年シーズンを大原監督は「これまでのバレエ団の総決算」と位置付ける。
開幕演目である『ロメオとジュリエット』はバレエ団の技術・演技力・表現力すべてが必要とされるドラマチックバレエの大作で、「バレエ団の力の底上げにつながるチャレンジングな作品。マクミランの作品を上演できるカンパニーは世界でも限られており、そういう意味では国際的な名作を上演できる実力がついた」と話す。さらに大原監督がかつて渡英した折に、ドラマチックバレエに「衝撃を受けた」ことから、監督自身のこだわりとしてマクミランのもう一つの代表作『マノン』もラインナップに加わった。
このほか、クリスマス・シーズンのイーグリング振付『くるみ割り人形』は2017年の初演時から3年連続の上演となる。「若い学生などが劇場文化を学ぶため、また家族でバレエを楽しむにはうってつけの作品。バレエ自体は現代的で非常に難しい振付だが、これもまたダンサーを成長させる」と説明する。
恒例となったニューイヤー・バレエは、今シーズンは新国立劇場バレエ団の十八番ともいえるジョージ・バランシン作品『セレナーデ』のほか、『不思議の国のアリス』の振付家でもあるクリストファー・ウィールドンの『DGV』を初上演。これはニューヨーク・シティ・バレエ団がレパートリーとしているもので、フランス高速鉄道TGVのパリ/リール線開通記念に委嘱された、旅をテーマとした作品。マイケル・ナイマンの音楽も非常にいい。ここにさらに『海賊』『ライモンダ』のグラン・パ・ド・ドゥが加わる。
『ドン・キホーテ』は2016年以来の登場で、今回の全幕作品のラインナップでは唯一の古典作品だ。『不思議の国のアリス』は2018年の上演後から「再演を望む声が多かった」もので、新たなキャストも検討しているという。
ダンスは『ベートーヴェン・ソナタ』を再演
2019/2020シーズンのダンス公演は3作品のみ。11月に、2017年に初演され好評を博した中村恩恵と新国立劇場バレエ団とのコラボレーション作品『ベートーヴェン・ソナタ』が再び登場する。
また新国立劇場バレエ団のダンサーが振付に挑む『DANCE to the Future 2020』(DTF)は、今回は新たに遠藤康行をアドバイザーに迎えての上演だ。DTFはこれまでも平山素子、中村恩恵といった振付家がアドバイザーとして参加しており、今回の遠藤は「ダンス・ジャポン・プロジェクト」で共演もあり、新国立劇場ではおなじみだ。
6月は小野寺修二カンパニーデラシネラの『ふしぎの国のアリス』を再演。バレエ公演とともに「アリス」作品が2作並ぶことになるが、「その違いも楽しんでほしい」と大原監督は話す。
新国立劇場初の3部門協同作品も
新国立劇場では2019/2020年シーズンの目玉の一つとして、2020年夏の上演を目指し、オペラ・バレエ・演劇の3部門協同という初の試みで、子ども向けのオペラを制作予定。AIロボットなども登場する新感覚のオペラということで、音楽は初音ミクを起用したバレエにも携わった渋谷慶一郎、舞台演出は演劇芸術監督の小川絵梨子、指揮はオペラ芸術監督の大野和士。新国立劇場バレエ団のダンサーも出演する予定で、大原監督も「全面的に協力をする」と意欲的だ。
またバレエ団では毎夏「子どものためのバレエ」として、子ども向けの『白鳥の湖』『しらゆきひめ』『シンデレラ』を上演しており、2019年夏は『子どものための白鳥の湖』を取り上げる。さらに2020年はダンサーの森山開次振付による、日本を舞台とした新作の子どもバレエの制作を予定しているという。
新国立劇場バレエ団の演劇性や表現力が活かせるドラマチックバレエや現代作品、古典がそろった2019/2020年ラインナップ。大原監督は「日本の国立のバレエ団として、日本人ならではの勤勉さや誠実さ、繊細な表現力で“日本のバレエ”の形の一つを作り上げてきた。これをさらにいい形で次代にバトンタッチし、引き継いでいってもらいたい」と語る。監督のこだわりが凝縮された新シーズンの開幕は10月19日だ。

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