【10-FEET・山人音楽祭 2018】道は先
輩が譲るものではなく、後輩が押しの
けていくもの――10-FEETが見せつけ
た生き様と挟持。

山人音楽祭 2018【赤城ステージ】 10-FEET
今年の夏も10-FEETは大忙しだ。先月後半からは、毎週末のスケジュールがほぼフェスで埋まっている。さぞ疲労も溜まっていることだろう。しかし、今日は盟友の主催フェス。SEが終わる前から、たくさんのタオルが揺れるフロアに向かって「イェイイェイ!」とTAKUMAは気合い一発。そして、「行くぞーっ! 山人ーっ!」と鳴らすは「RIVER」のリフだ。濁流のようにクラウドサーファーが人の上を流れていく。
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「1 size FITS ALL」で強靭なミクスチャーロックを叩き込むと、グルーヴの激しさに比例しているかのようにフロアが大きく揺れる。みんなこの3人の登場を心待ちにしていたことがよくわかる光景だ。見回してみると、フロアの端っこまで人でびっしり埋まっているではないか。そして、一人残らず飛び跳ねている。まるであんこがぎっしり詰まったたい焼きのようだ。
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中盤以降は雰囲気を変え、テンポを落とした落ち着いた展開に。声を張ることなく、飾らないボーカルが印象的な「太陽4号」はグッとくるポイントだったが、余韻に浸る間はなかった。アウトロのギターの音がまだ残っている状態で、TAKUMAはドラムのKOUICHIに向かって「めちゃくちゃ面白いこと言ってくれ!」と急な無茶ぶりをする。こんな意味の分からないお願いにもすぐ対応できるのが、さすが結成20年を超えるバンドだ。「おっしゃ、お前らの気持ちはよーくわかった。自分の話をします。昔、高校の時にサッカーをやってました。部活で練習試合をやってたら友達が衝突して、鼻血がブワーッと出た。そんときに監督が『これ塗っとけ』と言って持ってきたのが、ムヒだったんや」そんなKOUICHIによる小話が終わると、TAKUMAが「蜃気楼!」とタイトルコール。なんだ、この曲の入りは。でも、どんな流れで始めようが「蜃気楼」は名曲なわけで。
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MCではTAKUMAはG-FREAK FACTORYに対する想いを語った。G-FREAKは、彼らが目標を見失ったときにいつも次に目指すものを教えてくれたという。ヒントや勇気もくれたそうだ。「若くて肌が綺麗なMy Hair is Badとかフォーリミ」といった若手バンドに言及しながら、TAKUMAはこう言った。「道は先輩が譲るもんじゃなくて、後輩が押しのけていくものや。おしのけられるもんなら、押しのけてみろ!」と。もし、この場に彼らと同世代の者がいたなら、きっと胸を打たれたことだろう。そして鳴らされた「ヒトリセカイ」はいつもよりも深く心に響いたのだった。今日はミドルテンポ気味な楽曲が多かったが、MCの内容も含めて、大人の渋み、迷い、それでも尽きない圧倒的な情熱を感じさせるものだった。

文=阿刀“DA”大志 撮影=HayachiN
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