【インタビュー】DEZERT、ギターとの
確執「音楽的なギタリストは、今、ヴ
ィジュアル系をやらない」

DEZERTが、全国ツアー<DEZERT LIVE TOUR 2018「What is “Today” ?」>を開催中だ。同ツアーは約2年半ぶりのフルアルバム『TODAY』を掲げて行われているものであり、先鋭的かつ刺激的なバンドを輩出してきたMAVERICK D.C. GROUPが新たに発足させたレーベルMAVERICKの第一弾としてリリースされたという話題性はアルバムへの関心度を一層高めたようだ。しかし、注目すべきは彼らを取り巻く環境の変化ではなく、音楽性そのものの進化にある。そのサウンドメイクは目覚ましく、収録された10曲すべてがタイトでリアリティの高いロックチューン。鋭くシンプルな言葉で綴られたメッセージが胸を奮わせる。
BARKSは千秋(Vo)とMiyako(G)を招いて両者によるトークセッションを行なった。テーマは“ギターとの確執ついて”。「ギタリストが好きじゃない」を公言する千秋発案によるこのテーマは、果たしてDEZERTの今を象徴するものか、それとも逆説的なものか、はたまたシーンの概念を木っ端微塵に打ち砕くものか。いずれにせよ、『TODAY』のサウンドスタイルがこれまでと異なる側面をみせて、新たなDEZERTを指し示したことを考えれば興味深いテーマでもある。

両者のトークはMiyako加入時まで遡り、“千秋とMiyakoの真逆な関係”、“お互いの変化”、“ギター論”、“ヴィジュアル系とギタリスト”にまでおよんで個々のスタイルや『TODAY』に息づく必然性を浮き彫りにした。約10000字にわたるロングなトークセッションをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■この人はサイコパスなんですよ(笑)
■実は、あんまり感情がない

──サポートギタリストとして参加していたMiyakoが、DEZERTに正式加入したのが2015年。サポートから正式メンバーにするにあたり、どんな判断基準が働きました?

千秋:人間性ですね。僕は、ギタリストが好きじゃないんです。ギタリストにリスペクトを持てなかった。だから、もともとギター好きじゃなかったんです。それで“ギタリストは入れんとこうかな”と一瞬思ったんですよ。

Miyako:そう言ってたもんね。
▲千秋 (Vo)

千秋:“俺がギター弾こうかな”と。自分で弾けると思ってた、“余裕やろ”って(笑)。でも……難しかったんですよ。“これはギタリストを入れなあかん”と(笑)。ただ、ぶっちゃけ、誰でも良かった。うちのメンバーも、“千秋がいいなら誰でもいい”って考えで。それで何人か候補がいて、何人かとスタジオも入ったんですけど、一番ふざけてた、コイツは。

Miyako:いや、ふざけてたというか、違うんですよ(笑)。DEZERTはドロップチューニングでゴリゴリのバンドというイメージじゃないですか? でもスタジオに、自分はレギュラーチューニングのテレキャスを持っていって、コードを鳴らしたっていうだけで。

──いいクリーンサウンドを、DEZERTとの初スタジオで鳴らしてやったわけですね(笑)。

Miyako:いや、クランチサウンド(笑)。

千秋:ふざけてる!

──ははは!

Miyako:でも楽しかったですね。リハの途中から千秋くんもギターを弾き始めて。

千秋:まだ音源リリースしてない曲をずっとやってたもんな?

Miyako:そうそう(笑)。まさに“音楽=音を出して楽しんでる”ようなスタジオセッションだった。“楽しんでやってんだな、この人達”って。

千秋:そうでもなかったけど、俺ら(笑)。ギタリストが入るってことは、いろいろやらなきゃいけないこともいっぱいあるわけだから、全然楽しくなかった。そうしたらコイツは曲を覚えてきてへんし、面倒臭いなと思って。候補の他の人達も、例えば“DEZERTの歴史を背負っていける”とか“どういうキャラクターがいい”とか、しょうもないことで悩んでいて。でもこの人(Miyako)は、「バンドをしたい」って言ってて。なんかカッコええな、と(笑)。だったら俺も俺も、と。バンドをしようとなったのが、Miyakoが参加した約2年半前のこと。
▲フルアルバム『TODAY』トゥデイ盤

──サポート参加した直後からうまく転がり始めたんですか?

千秋:大変だった。そのときから言ってたけど、「あまりギタリストだとは思っていない」と。ギタリストというよりも、メンバーの一人というイメージで接してたから。ギタリストとしてのリスペクトはなかったし、イラッとすることもあったし。メンバーとしてなら何でも話せるけど、ギターという観点になると、ガーッといろいろ言っちゃうから。俺の発言に、この人もイラッとすることあっただろうし。去年ぐらいまでずっとそんな感じやった。

Miyako:まずは「下手!」って言われて。言い返すようなことでもないんで、言われたことを受け入れて、ただただやるっていう。

──何気に器がデカい男ですか?

千秋:いやいや、この人はサイコパスなんですよ(笑)。実は、あんまり感情がないっていう部分がある。ライブ後にヘコむところも、他の人と違うし。そこはいいなと思いますけど。

Miyako:過去のバンド人生が意外に大変だったんです、いろいろと。いろんなことに揉まれながら生きてきたから、もしかしたらそうなっちゃったのかもしれない。人に何か言われてシャットアウトするというよりも、まずは全てを受け入れてみる、みたいに。

──結局、うまくいってるんですか?

千秋:うまくは……どうなんですかね。俺は、いつバンドを辞めてもいいと思ってたから。でも、俺自身、引き返せないところまで来ている感じもあって。そのギャップを、ライブで思いっクソ感情的になったりして埋めてたんです。でも気持ちが晴れることはなくて。2年半ぐらい前から、“昔は楽しかったな”という言葉が自分から出てくることも増えてきていて。その時期、音楽業界の人達からの意見もいろいろ入ってきたんですよね。“DEZERTはこうあるべき”とか“こういう音楽性でいくべき”とか。それを受け入れてみたものの、自分は消化できず、例えるなら下痢した状態がずっと続いていたんですよ。それがやっと、お腹に入れて、自分のものにしようと思ったのが、今年の春ぐらい。そうなったとき、ようやく、ギタリストとしてMiyakoと接しようとなったんです。今年になって初めて“ギタリスト=Miyako”ってことになった(笑)。それでアルバム『TODAY』という流れなんです。

──どんな意見も受け入れるMiyakoがバンドにいてくれることは、何らかの緩和作用にもなってきたんですか?

千秋:間違いなくそうですね。自分が音楽的に下痢している状態でもずっと来れたってことは、メンバーの大きな器があったから。それでようやく今から始めようかなと。
■バンドが人生になった
■そうなるための出発点が『TODAY』

──アルバム『TODAY』を作る前段階に、作品の構想も含めて、メンバーとはいろいろな話もしたんですか?

千秋:ツアー中にずっと話していて。具体的な構想はなかったですけどね、いろんな曲をやりたいし。一番最初に歌詞を書いていたから、曲調はどうでもよかった。ダウンチューニングだろうが、カポ付けようが。昔は“ゴリゴリのほうがカッコいいんじゃないか”とか、ちょっとあったんですけどね。今はチューニングを下げるとか意味が分かんない。だってレギュラーチューニングが一番鳴るようにギターは作られているはずなのに、わざわざ下げるかって。下げるなら、ちゃんと歌っちゃダメなイメージがあって、たとえば“Slipknotみたいに叫ぶのがカッコいい”みたいな。でも今回はちゃんと歌いたかったから、チューニングを下げる必要もないかって。結果的には下げちゃったけど。

──歌詞に引っ張られて曲やギターのアレンジを練ったんですか?

Miyako:歌詞も曲もある状態で、ですね。「TODAY」という楽曲がまずあって、伝えたいことやコンセプトが明確だったんです。そういう話もツアー中にメンバーでちょいちょいしていて。“届けたい”というひとつのところにメンバーで向かっていって、形になったアルバムだなと思っているんです。
▲Miyako (G)

──DEZERTは変わりましたよね? 前は攻撃的なスタイルだったけど、『TODAY』は千秋も言ったように“歌いたい”という気持ちが、新しいスタイルにも結びついている。

千秋:変わりましたね。変わろうとした。『TODAY』を客観的に見て思うのが、これはDEZERTの右ストレートじゃないんです。“これがDEZERTだ!”という感じではない。それ以前に自分は、“これがDEZERTだ”と思えるものをずっと持ってなかった。だから自分だけリングに立ってなかった状態。それが、やっと着替えて『TODAY』でリングに立った感じなんです。このアルバムだけでは俺は終わらないし、次も出したいからこそ、この音源をライブで形にする。

──Miyakoが正式加入して約2年半。Miyakoはテレキャスやジャガータイプを愛用し、出す音やフレーズもそれを活かしたスタイルでしょ。それが変化をもたらすきっかけにも?

千秋:それはないですね。全くもってギタリストの世界観を無視しているし、今も。好きな音楽があって、好きなことやりたいというんであれば、売れてからやればいい。そういうメンバーなんです、もともと。ベーシストのSacchanはもともと女性ボーカルのオルタナが好きだし。

Miyako:みんな、趣向が違うんです。

千秋:ドラムのSORAは今、ONE OK ROCKが好きやもんな。回りに回って、いろんな昔の外タレまで聴き漁って、“ONE OK ROCKが一番シンプルでカッコいい”と(笑)。

Miyako:俺はいろいろ聴くんですよ。学生時代はヴィジュアル系が大好きだったし、布袋寅泰さんもライブに行くぐらい好きだし。テレキャスを使っているのは、完全に布袋さんからの流れで。

──正式加入したからには、“このバンドに自分はこんな要素をもたらしてやるぞ”とか、いろいろ考えそうなものですが?

Miyako:確かにギタリストって我が強い人もいますよね。自分には我がないのかもしれない。バンドに一番いいものを、まず考えるというか。“自分がこうしたいとか、こういうことやりたい”よりも、そのバンドの楽曲に合ったもの。それを考えて形にすることが自分の役目。DEZERTはこれからもっともっと変わっていかないといけないし。“変わる”って、いいイメージを持たない人も多いだろうけど、変わることっていいことだと思うんです。やっぱり変わっていかないといけないし、バンドとしてより良くなっていかなきゃいけない。俺は変わっていきたいと思ってます。

千秋:カッコいい……(笑)。
▲フルアルバム『TODAY』通常盤

──サポートとして間近にいた時期から、バンドや千秋が変化していく様を感じ続けていました?

Miyako:そうですね。入ったばかりのころと今では全然違うし、メンバー全員、変化しているなと思う。だからこそ自分も変わらなきゃいけないし。切磋琢磨しているなと思いますよ。

千秋:その“変化”という単語にもいろんな意味が込められていると思っていて。例えばリスナー側だったら、“変わらないでほしい”とか“昔のままでいてほしい”とか。それは当たり前の気持ちだと思うんです。でもバンドなんて、みんな一緒だと思う。“ここが悪いから変わる”ってわけじゃないんです。“変わりたいから変わる”ってだけなんです。自分的には遊びの延長だったバンドが、……ちょっとカッコいい言葉になっちゃうんですけど(笑)、バンドが人生になった。そうなるための出発点が『TODAY』にある思想というか。たとえば夜、いろんな人とお酒を飲むのは楽しいじゃないですか。それが自分にとってライブだった。でも、“それだけじゃおもしろくない”と思ったとき、いいこともイヤなことも全て引っくるめて責任持ってやろうと。つまり遊びの延長にはしたくなくて、このバンドを。

──そこまでマインドが変われば、それは生み出すものにも変化は起こりますよね。

千秋:うん。

──人生というぐらいだから、アルバム制作においてもジャッジするポイントが高くなったでしょう。

千秋:もちろん。当たり前に、“いろんな人に聴いてほしい”って。“音楽って、聴いてもらって何かあるんでしょ?”っていう。自分の好き勝手にやるだけなら、狭い箱でずっとやっていればいいわけだから。

──この前、アイドル曲を手掛けるプロデューサーと話す機会があったんですよ。曲を作るにあたって、やっぱり「多くの人に聴いてもらえるように考えないとダメ」だと。簡単に言うと、「オナニーじゃダメだ、人に見てもらえるようなオナニーをしないと話にならない」と。

千秋:そのたとえ方で言うなら、“僕のオナニーを金にする”ってイメージがあったのかもしれないです、今までは。でも、俺はたいしたオナニーはできないってことに気づいたんです。引き出しはいっぱいあるけど。いろんなオナニーの仕方はできるけど(笑)、肝心の射精が全然気持ちよくなくて、“イケなかったわ”っていう。じゃあ、考えなきゃいけないですよね、という話なんです。でも不安はデカかった、今でもデカいし。けっこう好き勝手なライブしているイメージを持たれるかもしれないけど、僕が一番、フロアの盛り上がりだったりを気にしてる人間だったから。お客さんに踊らされる。お客さんもそれを知ってるから、おもしろいと思ったのかもしれない。で、俺が機嫌悪くなると、“オッ!”と思うみたいな。だから『TODAY』のライブは、“30cm上で歌おう”というイメージなんですよ。

Miyako:俺はフロアの反応とか、あまり気にしないかもしれない。

千秋:お客さんと近いと、この人は機嫌悪くなるんですよ。中野サンプラザでやったとき、「いや〜、客席が遠いっていいね」ってライブ後に言ってたぐらいだからね(笑)。ファンが嫌いとかじゃなくて、客席とステージが近いと、この人はイライラするっぽい(笑)。

Miyako:遠いほうがいいっすよね?

千秋:普通は“近いほうがいい”とか“お客さんを感じたい”とかだろ?

Miyako:ああ、なるほど。俺はね、離れていれば離れているほどいい。でも、この前のライブのとき、アンコールで客席に降りてみたんです。最前列のお客さんの気分を味わったんですよね。あれはあれで“凄いな”と思いましたね。“よく前に行くな、頑張ってんだな”って。

千秋:そのコメントがヤバイ(笑)。

──ちょっと浮世離れしてる(笑)。

Miyako:でも楽しかったですよ、そのときは。3分ぐらいが限界でしたけど。
■「これは永遠だ」って千秋くんが
■俺は永遠に付き合いますよ

──3分超えると、客席に近いのは不快でしょうがないんだね(笑)。“人間性が気に入った”と最初に言ってたものの、千秋とMiyakoの性格は真逆ですか?

千秋:真逆です。自分が一番普通だと思ってます。だから、この人と反発することも今まであったんでしょうけど、そうなったら僕は強いんです。絶対に理解してもらおうと思って、言葉の嵐を。

Miyako:だから、全て論破される(笑)。

──論破されるわ、ライブ中にギターを取り上げられることもあるわ、散々な目にあってますね。

千秋:普通は揉めたら“出てくわ!”みたいなことにもなるじゃないですか。そうならないんですよ。ちょっと理解し合おうみたいになって。でもムカついたことはいろいろあったと思いますよ。

Miyako:ありますよ(笑)。ムカつくというよりは、“悔しい”ってときがあった。でも俺は、真逆だからこそ羨ましいんですよね。ストレートに物事を言えることが。MCもけっこうストレートに言うじゃないですか。人間味があって、どんな人にもハッキリと物を言うし、でも意外にいろんなことを気にする。俺にはそういうことができないから羨ましいなって。

──意外にも好かれていた(笑)。

千秋:いや、好きにならないとやっていけないですよ、このバンド。最近、そう思い始めてきた。“メンバーのみんな、俺の言葉を聞いてくれるな”とか、“理解してくれるな”とか。コイツら、悟ってるんですよ。みんなが俺を、グローブをはめてリングに立たせてくれようとしてたんです。でも、立ちたくないと言ってたのが、前までの自分で。だけど、結成して3ヶ月とかのバンドじゃないから、“自分からリングに立って、責任を取らないとあかんな”と。だから、“『TODAY』は、責任を取るからこういう感じでいきたいんだ”って。“俺たちは変わるんだ”っていう。

Miyako:だから千秋くんから言われましたね。「これは永遠だ、永遠に付き合っていくものだ」って。永遠に俺は付き合いますよ。
▲Sacchan (B)

──楽曲アレンジについてはこれまで千秋が作り込むことがほとんどでしたけど、レコーディング中、今回もメンバーにいろいろリクエストをしたんですか?

千秋:今回は全然。もちろん言いたいことやコンセプトは最初に伝えて、“あとは任せる”と。“ドラムはドラムで、ベースはベースで、ギターはギターでやって”と。今回、初めてそういう形でやったかもしれない。

──それはメンバーに対する信頼感ですか?

千秋:いや、ギタリストとしては信頼してない。それこそ、自分自身に対しても信頼していない状態で始まっているから。信頼というより“信用しようとしている”という感覚かな。

Miyako:本当に今回のレコーディングは今までと違って。メンバーでいろいろ話したり、ちゃんとプリプロして、短い時間ではあったけど、毎日のようにみんなで話をしたんです。そして、各自が曲に向き合って責任を持ってそれぞれのパートを録るっていう。

千秋:“聴いて良ければ、いい”ってだけの話ですよ。

──今回、DEZERTサイドから持ち込まれた“ギターとの確執”というトークテーマは、逆説的なものだと捉えてたんですよ。『TODAY』は、これまで以上に表現力の高いギタープレイがそこかしこに散りばめられたアルバムだから。

Miyako:それについては一言、ありがとうございます(笑)。千秋くんが言ってたんです、「今回は曲が一番偉い」って。だったら、どうしたら曲が一番良くなるのかを考えて、いろいろなギターやアンプも使ったし。機材の数は今までで一番使って、本当にたくさんのサウンドで表現した。千秋くんの作るデモは、わりと完成された状態なんですよ。今まではそれをトレースするようにレコーディングする感じだったんですけど、今回は“ここはこういうアレンジ”、“こんな音でいこう”とか、メンバー間で綿密に話し合いながら、曲の細部まで組み立てて。

千秋:今までは“自分が作曲者だ”、“作曲の意図は”とか、いろいろ言っていたんですよ。今回は、“それはもういい”と。デモが上がった段階で、“この曲に対する一番いいアプローチをして”と。ボーカルを入れるときも、“これは俺の作った曲だから好きに歌おう”とは全く思わなかったし。仕上がったアルバムを聴いて、“ちょっと曲に申し訳なかった”というところも、実はいろいろ出てきているし。でも今回は、メンバーに対して細かいことはホントに言ってない。

──結果、音として返ってくるものが、自分が意図した最初の理想と違っても、それを楽しめる余裕が出てきたんですか?

千秋:そうですね、それを楽しんではいないですけど。“何か違う”と思えば、もちろん言いますよ。でも、“オイッ!”という感じではなかった。“ちょっと違うんじゃないか、こっちのほうがいいんじゃない?”って、普通の話し合い。それをしたほうがバンドもいいってことに気づけたんですよ(笑)。今まではデモ音源のほうが好きだったんです。“この曲を一番理解しているのは自分だ”って感じで。でもみんなで考えて作ったほうが楽曲のクオリティは上がるし、初めてデモよりいいものができたなって思いましたよ。
──つまり、ギタリストのことがちょっとは好きになっちゃいました(笑)?

千秋:ギタリストですか? それともMiyakoのことですか?

──両方です。

千秋:相変わらずギタリストは好きじゃないですけどね。速弾きもいいとは思わないし、カッティングは好きだけど別にいいとは思わない。

──そう言いながら千秋はカッティングがうまいですけどね。

千秋:カッティングしかできないんですよ(笑)。でも、うちの曲にはカッティングが少ない。カッティングを打ち出してるわけでもないし。最近はあんまりやってないから、カッティングにキレがなくなってきた(笑)。

──布袋好きのMiyakoとしては、カッティングも十八番でしょ?

Miyako:最近は飲みに行って、酔っ払いながらBOOWYの「BAD FEELING」を弾くっていうことを楽しんでます(笑)。
■僕は今、このアルバムで言ってることを
■伝えたい。それしかないんです

──そもそも、千秋はギタリストの何が好きじゃないんですか?

千秋:嫌いじゃないんですけど、もともとギターのアレンジにそんなに魅力を感じたことがないんです。基本、ボーカルしか聴いてなかったから。ボーカルを聴いていると、“ベースが大事”ってことになってきて、そうなると“ドラムも大事”ってなるんです。たいした知識もなく自分で楽曲を作っていたからかもしれないけど、ギターってボーカルの帯域と被るんですよ、アレンジも含めて。 “スゲー邪魔、ギター、マジうぜえ”って。だから“ギターはイヤだな”って感覚になったんだと思う。自分のイメージでは、順番的に上からボーカル、ベース、ドラム、ギター。そう考えると、ギターは最後のひと手間というか。例えばパスタを作って、お皿に盛って、その次に何をするかというのがギター。それで一流料理に変わることもあると思う。でも、ギターがいなくても成り立つと思ってるんで。

──調味料的な感覚なんですかね。楽曲はメロディ、リズム、ハーモニーが三大要素であり、ギターは装飾だと。ただ、ギタリストはそこをとっくに理解しているものでしょ?

Miyako:うん……多分(笑)。

千秋:これはギター論になるんですけど、2000年代からのネオヴィジュアル系って、“穴の空いたダメージジーンズ”のイメージなんですよ。昔の人が見たら、“穴が空いてるんだから縫いなよ”ってなる。でも俺らは、製品としてダメージジーンズってあるから、当たり前にそれを履くでしょ。ヴィジュアル系もそうなっちゃったと思うんです。メイクして人と違うことをするのがヴィジュアル系のフォーマット、みたいな。だから、おもしろくないんですよ。先人でもあるX JAPANとかLUNA SEAとか、ちゃんとしたジーンズを履いてたと思うんです、そもそもの楽曲のクオリティが高い。そういう中で、“ちょっとダメージしてみよう”とか、それがカッコよかった。でも今は、最初からダメージジーンズがカッコいいってことになってるじゃないですか。

──なるほど。

千秋:曲を聴いててわかるんです、“このバンドの曲はギタリストが作ったんでしょ”って。変な転調とか、ムチャクチャなソロフレーズやサウンドメイクってのは、だいたいギタリストがやってる。ベースとかドラムの人が曲を作ると、すごく音楽的になることが多いんですよ。でも、ギタリストは全然音楽的じゃない。だから嫌いで(笑)。俺は、“音楽的なギタリストは、今、ヴィジュアル系をやらない”と思ってるんです。また批判が殺到しそうだけど(笑)。
▲SORA (Dr)

──ダメージジーンズのたとえ、わかりやすかったですけどね(笑)。『TODAY』というアルバムはそのフォーマットとは全く違うってことでしょうし。ところで現在は、次のツアーに向けたリハ期間です。ツアーに向けたテーマなどもありますか?

千秋:基本的にセットリストを変えないツアーにしようと思ってるんです。セットリストが同じでも、昨日と今日では全然違うライブになるじゃないですか。そこで僕はどう変わるべきか、ここは変わらないほうがいいのかとか、自問自答する準備を今のツアーリハではしてます。新たな挑み方をしようとしているのは間違いないです。

Miyako:お客さんに向けてやるけど、自分達が楽しくなくなっちゃったら本末転倒になっちゃう。もちろん辛いこともあるんだろうし、もがくこともあるはずだけど。それもまたバンドをやっている楽しさのひとつでもあるんだろうと思ってます。ひとつずつ何かをクリアしていくことで、自分達の進むべき道も見えていくんじゃないかと思ってます。

──アルバム『TODAY』を発表後、いろんな意見もメンバーのもとに届いていますか?

千秋:SNSをやってないから届きにくいけど、やっぱり届きますよ。この前のライブでも手紙をもらったり。いい意見だけじゃないですよ。“メンタル弱いんだから、やめてね”って思いますけど(笑)。「この音楽が好き」と言われれば嬉しいし、「変わったから好きじゃない」と言われれば悲しいですよ、当たり前に。でも僕は今、このアルバムで言ってることを伝えたい。それしかないんです。だから何回かライブに来てみてよ、と。過去が好きだった人も、今が好きな人も、未来の人も、一度、ライブに来てみてほしい。それぐらい、僕らは覚悟を持ってやっているから。

取材・文◎長谷川幸信
■DEZERTオリジナルフルアルバム『TODAY』

2018年8月8日ON SALE


【トゥデイ盤 -特殊パッケージ3枚組仕様 (CD+2DVD)】DCCA-67 ¥8,000+tax
<DVD収録内容>
▼DVD Disc1
<DEZERT LIVE TOUR 2017”千秋を救うツアー2” TOUR FINAL>at 中野サンプラザ LIVE映像
01.「おはよう」
02.  sister
03.「誤解」
04.「排泄物」
05.「教育」
06.「変態」
07.「おやすみ」
08.「脳みそくん」
09.「ピクトグラムさん」
▼DVD Disc2
『TODAY』レコーディングドキュメント映像


【通常盤 (CD)】DCCA-70 ¥3,000+tax
<CD収録内容>※トゥデイ盤/通常盤共通
01.沈黙
02.おはよう
03.蝶々
04.浴室と矛盾とハンマー
05.蛙とバットと機関銃
06.Hello
07.insomnia
08.オレンジの詩
09.普通じゃない㈽
10.おやすみ
11.TODAY


■<DEZERT LIVE TOUR 2018 「What is “Today” ? 」>
8月18日(土) 大阪 CLUB QUATTRO
8月19日(日) 大阪 CLUB QUATTRO
8月25日(土) 福岡 DRUM Be-1
8月26日(日) 福岡 DRUM Be-1
9月01日(土) 名古屋ボトムライン
9月02日(日) 名古屋ボトムライン
9月15日(土) 仙台darwin
9月16日(日) 仙台darwin
9月23日(日) 札幌cube garden
9月24日(月・祝) 札幌cube garden
▼チケット
前売:4,000円(税込)
※オールスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要
一般発売:2018/5/26(土)〜

■<DEZERT LIVE TOUR 2018 「What is “Today” ? 」TOUR FINAL>
11月18日(日) 東京 Zepp DiverCity Tokyo
開場17:00 / 開演18:00
▼チケット
前売 ¥4,500(tax in)
※1Fスタンディング ※入場時ドリンク代別途必要
一般発売日:9月8日(土)〜

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