「素敵な舞台になりますよ」。『歳が
暮れ・るYO 明治座大合戦祭』W主演の
佐奈宏紀&内藤大希にインタビュー!

毎年恒例、芝居とショーの二部構成で盛り上がる“る・ひまわり✕明治座『祭』シリーズ”、2018年版は『風林火山』をテーマにした『歳が暮れ・るYO 明治座大合戦祭』に決定! 第一部の芝居で描かれるのは、争いの世に生まれながら平和を願い続ける武田晴信と、異形の者として世を恨み続けて来た山本勘助の“青春友情物語”だ。そして──20名以上の手練の出演者が集う中、W座長には佐奈宏紀&内藤大希を抜擢! 今回はどんな祭が繰り広げられるのか、ビジュアル撮影を終えたばかりのふたりを直撃した。
ーーおふたりは前回の『る祭』で真田幸村役(佐奈さん)と真田信之役(内藤さん)で共演されていますが、まずは今回、座長に指名されたお気持ちからお聞かせいただけますか?
内藤:僕は最初、なにかの間違いかと思いました(笑)。でも相方が佐奈くんだと聞いて……前回兄弟役で出演していたので縁を感じて嬉しく思いました。あのときはもう僕を含む年上組が“佐奈にめろめろ”だったんですよ。
佐奈:いやいやいやいや(笑)。
内藤:宮下雄也くん始めみんなで佐奈くんをずっと構ってた。「なんか佐奈、可愛いよね」って。みんなの弟みたいな感じだったんです。
佐奈:ありがとうございます。
佐奈宏紀
内藤:そういうのもあって稽古場でのコミュニケーションはしっかりとれていましたし、とにかく佐奈とやれるならば、このたいへんな座組も乗り越えられるんじゃないかと思って。「相方が佐奈だったらぜひ」とお引き受けしました。
佐奈:……っていう連絡をもらいました。「佐奈とならやれる!」って(笑)。
内藤:ハハハッ(笑)。でもホントに今、彼、すごいじゃないですか。メキメキ成長中というか、まさに役者戦国時代を生き抜いていて。
ーー着々と領土を拡張中、と。
内藤:まさにそんな感じ!
佐奈:(笑)。でも自分自身は夢かなと思うくらい目まぐるしい日々で。その中で座長をやらせていただくとなったとき、僕は最初に明治座の周りに立つあの幟が浮かんで来たんです! 「佐奈宏紀」「内藤大希」って並んでて……「え、それウソだろ!?」って思った(笑)。正直僕で大丈夫かなぁって思いもありますけど、たくさんの方が期待してくださってるのでホントに頑張りたいですし、「しっかりやろう」と、すごく初心に帰った気がしました。初心というか、さらにここが新たなスタート地点だなって。
内藤:明治座がスタート地点っていうのもなかなかスゴいよ。
佐奈:だからこそ、今までやってきたことを活かしていくぞっていうよりも、ここでまたゼロからちゃんと考えようって思っています。失礼のないように頑張りたいです。
ーー佐奈さんの内藤さんの印象は?
佐奈:稽古場でも特別なにかを語り合っていたっていうわけではないんですけど、普段からスゴくよくしてくださって仲良く過ごしていたので、ありがたい存在でした。でも、刺されて倒れるときのカタチについては結構こまかく話し合いましたよね。「片足一段ずらしてみて」とか「身体もっと預けちゃっていいよ」とか。
内藤:そうそう。前回は全体的に稽古場でみんなでひとつのモノを創り上げているっていう時間が長かったので、お互いの空気感がよくわかる現場でした。一緒にいて、自然と安心できるところはありましたね。
佐奈:そうなんですよ。だからかな、殺されたときもものすごい「グッ」ときてましたね。非常にナチュラルななにかがこう……グワッと上がってきてた。「……兄よ……」みたいな(笑)。
内藤:ハハハハッ(笑)。
ーー今回演じるのは境遇も性格も正反対な男たち。その友情と絆の物語です。
内藤:あの……佐奈っていう人間が、もともとやさしいというかゆとりもあって……なんかそういう“備わってるモノ”がみんなをひきつけるんだろうと僕は思ってる。人ってそれぞれコンプレックスを持っているモノですけど、誰しもがそれを隠しながら、またときには向き合いながら生きていく中で、それをもたずになんのストレスもなく……本人にはあるんだとと思いますけど……他人から見ると羨ましいと思ってしまう生き方をしている人間もいる。それが佐奈であり、佐奈演じる武田晴信の質なんじゃないかな。彼はもともと他人に影響力を与え変えていける存在、真ん中に立つ資質をもつ人、なんですよね。
佐奈:ありがとうございます。いやぁ〜、なんかすごい褒められてます。
(左から)内藤大希、佐奈宏紀
内藤:褒めることでプレッシャーを与えていこうかと(笑)。
佐奈:やっぱり(笑)。いやぁ、ハードル高いですね。がんばらないと。
ーーそしてその晴信の真逆にあるのがコンプレックスの塊ともいえる山本勘助、内藤さんが演じる人物というわけですね。
内藤:僕は始め、「ほかさようさんが『祭』シリーズの脚本を……」とうかがったときはなんかちょっと結びつかなかったんですよ。でもこのふたりの物語ならやはりドラマがあり、“演劇”っていう感じが強くなるでしょうし、そういう闇を抱えていたりするキャラクターが中心にいるのはやっぱりほさかさんっぽいなって思ったり。さらにそれがどう板垣(恭一)さんの演出と掛け合っていくのかは、想像がつかない分、とても楽しみです。
佐奈:たぶん……晴信もただやさしいだけの人ではないと思うんですよね。
ーーそこにもほさかさんの“ひと味”があるはず、と。
佐奈:特出して「やさしい」と見えている人って、意外とそこじゃない部分を細かく演じることでそっちが浮き上がって見えて来るんだと思うんです。なので最初は「やさしい」は一旦置いておいて、逆に晴信のコンプレックスをまず探ってみたい。「なんでやさしいのか」というところも含め、一度彼の深層を掘り下げてみようとは考えてます。
ーーそうすることで、よりふたりのシンパシーの根源にも近づけそうですね。
内藤:僕は前回初めて参加させていただいたんですけど、このシリーズはホントに本人が出るというか、本人基調のところに役を寄せるっていう……ネタ的なところも役者の私物を持ち出して来ちゃったりとかね(笑)。普通は役に本人が透けてないようにするところをその逆の感じで行っちゃうし、台本自体もパロディが盛り込まれてたりという遊び心が多いのが特徴だなって思っています。今回はまたそこの部分をどういう塩梅にするんだろう……芝居パートもがっつり重そうですし。
内藤大希
ーードラマの重厚さと同時に、ほさかさんの中にある“おもしろ”の発動もあるはずで…。
内藤:そこがね、僕はまだちょっと想像つかなくて。でもいいバランスで組み立てたいと思いますし、楽しみですね。
佐奈:僕も前回「ホントにここまで徹底してメリハリを付ける舞台もそうそうないな」と感じました。ときには“自分”が表に出つつ、でもそこからズバッ! と急に流れを本編に戻すっていうのはそんなに簡単なことではないですし、でもそこをしっかりやらないと創って来たモノがガラガラッと崩れてしまうので……。さっきまでふざけてたのに、急に「あれ? 泣ける!」とか、全体的に意外と繊細なバランスで成り立ってる舞台だったので、そういう塩梅を探るのは新鮮で楽しかったですね。
ーー賑やかさの中にある本質。実はとても高度な演目である。
内藤:うん、そうなんですよね。
佐奈:板垣さんの演出の元、みなさんが一切ふざけてないっていうのがやっぱりいいメリハリで、自然とこちらももっていってもらえるところも多く、やっていてすごく「芝居してるな」って感じていました。心が引っ張られることがたくさんあった。達成感がある作品でしたね。
ーーでは今回の座組で個人的に注目しているポイントなどはありますか?
佐奈:僕が一番「うおっ!」って思ったのは、上杉謙信を貴城けいさんが演じるっていうのが、もうすでに相当「ぐおっ」と来てまして……ヤバいです(笑)。写真からすでに超強そうなオーラがビンビン出ていますから、僕も晴信としてもっともっと強い空気を作っていかなきゃ勝てない! 上杉チームとのバトル、楽しみですね。
内藤:僕はやっぱり今川義元役の泉見洋平さん。ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス、『SHIRO』……ずっと観ていましたから、こうして舞台でご一緒して歌も歌えるというのが不思議な感じですね。前回の原田優一さんもそうでしたが、ミュージカル界のレジェンドのような方とご一緒できるのはホントに素敵だな、勉強になるなと思っています。
ーー二部のオリジナルユニットによる “音楽ショー”はいかがですか? こちらも前回が初体験でしたが。
佐奈:二部はやってるときは超楽しいんですけど、本番中は時間が足りなくてグループの打ち合わせも一部と二部の間の10分くらいの間にやるしかなく……そこで日替わりのネタを仕込むっていうのは、ホントに大変でしたね。前回はそれこそ座長の安西(慎太郎)くんや辻本(祐樹)くんに「今日どうします??」って頼ってた感じだったんですが、今回は僕もしっかり軸として頑張らないといけないのでね。今からネタ帳をつくっていろいろ拾い集めていこうかと思ってます。やっぱり……ウケたいですから(笑)。
佐奈宏紀
内藤:佐奈はそういうところもストイックなんだよね〜。オモシロも譲らない。僕は前回、自分たちがやるのがあんなに本格的なユニットだと思ってなくて、パロディだから楽しくお見せ出来ればいいよねって考えてたら……本番に向けて韓国の先生がいらして、すごく怖かったんですよ! 「そんなに!?」っていうくらいめっちゃ厳しくて……今思えば「パロディだからこそ本家を超えるくらいの気持ちで」という真剣さで取り組んでたわけです。甘く考えてると痛い目を見るぞ、というのを痛感しましたね。なので、今回も真剣に頑張りたいです。
ーーそしてさらに大晦日の公演は毎年恒例、年越しカウントダウンも控えています。
内藤:本番中、僕たちは実質8時間公演後、みたいな感じで……。
佐奈:そうなんです……。
内藤:だから身体はすでにくたくたなんですけど、お客さんのパワー、カウントダウン後からの熱量がスゴい! 前回はそれに圧倒されたっていうイメージでした。
佐奈:僕が印象に残ってるのは、昼公演が終わって、「わ〜、もう夜公演がすぐ始まるよ」って言いながらクタクタになってた年配組の方々が、カウントダウンで年超えた瞬間にあんなにはしゃいで。「うわぁ〜〜!!」って。
内藤:(爆笑)。
佐奈:まさに年は越えたけど若返ったって感じで、みなさん急に十代二十代に戻ったという(笑)。「これがる・ひまマジックなのか!」と思いました。
内藤:そしてさらに……ほんとに全部が終わった瞬間、一気に四十代越えくらいになってましたけどね(笑)。
佐奈:なってたなってた(笑)。「お祝いだしちょっと乾杯でもして……」って声かけても「イヤもう家帰るわ」って(笑)。
内藤:あのギャップはヤバかったです(笑)。
ーー全部搾り取られちゃうわけですね。
佐奈:舞踏会後のシンデレラのカボチャ、みたいな感じでしたね。
内藤:ホントそう(笑)。でもさ、僕ら8時間公演って言ったけど、その本編、基本的に座長ふたりはどちらかが絶対舞台上にいるっていう感じでず〜っと出てるでしょ? 自分は数曲歌って、あとポイントポイントでの出番だったけどそれでも身体くたくただったので、安西と辻ちゃんを傍目で見ながら「ほんとにこの舞台の座長って大変だな」思ってたのが──いや、次は自分じゃん!って(笑)。
内藤大希
佐奈:わっ、ほんとですよ〜!
内藤:まずはちゃんと体力つけておかないとなぁ。
佐奈:そうですね。僕は歴史のベースもしっかり勉強し直しておきたいです。役を掘り下げるのももちろんですけど、もっと視野を広げて室町時代……戦国の時代にはどういう背景があったのかなっていうのをおさらいして。あと『風林火山』は見ておかなきゃと思ってて……今朝、買いましたけどね。
内藤:そうだ! 佐奈はすぐ買っちゃう子だった(笑)。
佐奈:はい。みなさんに貸し出しもしますよ。なんなら解説付きで(笑)。
ーー準備は着々、ですね。
佐奈:自分でいろいろ勉強しつつ……板垣さんはすごくディスカッションしてくださる方なので、稽古に入ったら僕が考えたプランを持っていって、現場でしっかりすりあわせて創っていきたいと思っています。
内藤:あとはやっぱりほさかさんの脚本、だよね。どうなるんだろうなぁ。このシリーズの人間関係って、いざフタを開けてみて「わ、この人はこういうキャラになったんだ」という意外なアプローチが多いんですよ。今回も個性的な方たちがそろってますので、稽古場で互いの感じを見ながら役を固めていきたいですし、佐奈のいう通り板垣さんともしっかりディスカッションしながらどういう方向性で物語を進めて行くのかってところを見つけ出せれば…絶対素敵な舞台になりますよ。
ーー楽しみです! では最後に改めて本番に向けた意気込みをお願いします。
内藤:僕は去年の『る年祭』で初めて明治座に出させていただいて、ホントに歴史のある劇場ですし、若いお客さんもそういう場所に足を運ぶってなかなかない体験だよなと思いました。今回も僕らを観たいと思ってくださったお客様にあの場所へ来ていただけるように頑張りたいです。よろしくお願いいたします。
佐奈:まさか21歳で、このメンバーの中で、こうして真ん中に立たせていただくっていうのは自分でも思ってもいなかったですし、貴重な体験だというのも噛みしめながら……でもやっぱり第一に観に来てくださるお客様を楽しませることを考えて突き進みたい。ただの時代劇じゃありません。歌あり踊りあり涙あり笑いありのエンターテインメント、みなさまの元へお届けいたします!
(左から)内藤大希、佐奈宏紀
取材・文=横澤由香 撮影=荒川 潤

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