ぬかるんだ恋にご用心「助演女優症2」

ぬかるんだ恋にご用心「助演女優症2」

ぬかるんだ恋にご用心「助演女優症2

そんな「クリスマスソング」のカップリングとして収録されている「助演女優症2」は「クリスマスソング」とは対照的に、心の奥の気だるい重さが光る一曲だ。
back numberの「助演女優症2」
「その指輪もせめて外して」という言い回しから察するに、主人公の女性と相手の男性は不倫の関係だ。
わざわざ”指輪を外して”と言わなければ気づけないところを見ると、相手の男性は配慮がなく、図太い神経の持ち主なのだろうなと勝手な想像が膨らんでいく。
彼女にとっての主役は間違いなく彼。でも彼にとって彼女は所詮二番手の「助演女優」だ。
どこかで自分じゃ一番になれないと分かっていながらも、彼に好かれる自分を演じ続ける彼女。
”虚しくても、好きだから抜け出せない”、そんな底なし沼が彼女の心の中にあるのだと感じられる。
不倫という揺らいだ関係性が軸にあるが、何故か「助演女優症2」には共感出来る部分がある。
それは”恋”という感情の片鱗が、この楽曲に散らばっているからだ。
言葉には出来ない彼女の本音

脈がない、相手に彼女がいる、友達としてしか見てもらえないなど、報われない恋は意外と多い。
でも相手に好きになってもらえないからといって、綺麗さっぱり諦められる恋ばかりではない。
恋人や好きな人の前で、かっこいい、可愛い自分で居たいと思うのは当たり前のこと。
それはたとえ想いの届かない相手の前だったとしても、その人に恋をしている以上同じことを思うだろう。
だから、主人公の女性も彼に会うとなると、ついつい「お気に入りの服」に手が伸びてしまうのだ。
そこには、”いつもと違う自分を見せれば、少しでも可愛くなれば、もしかしたら自分に振り向いてくれるかもしれない”という祈りにも似た、言葉には出来ない彼女の本音が滲んでいる様に思える。
関係が終わる為の一手になるから、あやふやな関係において「私あなたの何なの」という質問はご法度だ。
彼女はそれを分かっていたからこそ、最後の最後まで彼の本心を問う事が出来なかったのだろう。
自分達のおざなりな関係を悔やむ歌詞だが、この言葉の裏には”核心をついて終わるくらいなら、気付かないふりをしてこの関係を続けたい”という彼女の心の内が見えてくる。
彼女の様に関係が壊れるのが怖くて、自分自身を押し込めてしまう事は、恋愛において珍しくない。
恋人同士でも、報われない恋をしている人でもどちらにでも起こりうる事だ。
それは相手が好きで、この人の傍に居たいと思うから。だからこそ、どこか誤魔化して遠回りしてしまう時があるのだ。
そんな考えを巡らせて耳を傾けてみると、この曲の主人公は不倫をしている女性ではなく、報われない恋を大切にし過ぎて拗らせてしまった一人の女性に思えてくる。
成就するはずのない恋愛のぬかるみ

そんな彼女は「最後」という言葉を何度も使い、自分からこの行く当てのない関係を終わらせようとしている。
曲の最後「次の私を 探すんでしょう」と彼女は言うが、”自分の代わりが居る恋なんて、自分じゃなくてもいい恋なんて、そんなの空っぽで痛いだけだ”と誰より彼女自身が強く思い始めたからなのかもしれない。
「助演女優症2」という曲名から察しがつく様に、「助演女優症」という楽曲も存在する。是非、そちらも合わせて聞いて頂きたい。
主人公の女性がはまった成就するはずのない恋愛のぬかるみを、より肌でリアルに感じてもらえるはずだ。
彼女には次こそ、大切な人と自分にしかできない恋愛をしてもらいたい。
TEXT:柚香

アーティスト

UtaTen

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