韻シスト・20周年アニバーサリーイヤ
ー “過去、今、そして未来の話” に
FM802 DJ中島ヒロトが迫る

「売れとるね」そんな軽口でスタートした今回のインタビュー。20周年のアニバーサリーイヤーを迎え、より注目を集める韻シスト。“今”の韻シストが今年20周年を迎えるというこのタイミングは、まるで今年のために20年走ってきたような、そんな必然を感じる。デビューの頃からの付き合いである自分は、ミュージシャンとラジオDJというよりも、大阪のストリートで出会った友達として、いろんな場面で時間を共有してきた。ある日の夕方、ミナミのカフェでいつかの飲み会のようにフワッと話し始めレコーダーを回した。日本を代表するヒップホップバンド韻シストの過去、今、そして未来の話を聞いた。
■今の韻シストについて■
韻シスト
ーー今の韻シストってどうなの?
BASI(MC):今、めっちゃ仲良いですね。音出す前に、めっちゃ話し合います。ビジョンを立ててそこへの道のり、音、リリックを決めていく感じですね。
SHYOU(Bass):昔からミーティングはしていたんですけど、今はミーティングから楽しいです。
サッコン(MC):面白いものを誰かが持ってきたら、それを柔軟に取り入れていこう! というチームワークが出来ていて、すごく良くなりましたね。「イメージの共有が早くなった」というか。イメージに対するスキルがついてきて具現化しやすくなったと思います。

韻シスト

TAROW-ONE(Drums):自分は一番後から加入したんですが、入った時からずっと楽しいです。PUSHIMさんのレーベルから『CLASSIX』を出して(※2016年からPUSHIMが主催するレーベルGroovillageに合流)、そこで出来なかったことを翌年の『Another Day』でやれて……(そこまで話したところで、BASI君の電話が鳴り、一時中断。話の腰を折られたタロウ君は……)結論は、毎日楽しい……です(笑)。
TAKU(Guitar):みんな良い意味で持ち場が決まってきましたね。前は、ひとつになるために、それぞれが自分の形を削って合わせていた感じでした。それが今はそれぞれ変な形なんだけど、合う部分を探してガチッとハマってるというか。お互いに無理がないですね。ここ1、2年は特に余白を残してお互いが「それええなぁ」と言い合える状況が出来ましたね。誰かがリード曲を持ってきても、その人が仕切るのではなく、みんなで構築していく。まさにサッコンが言ってたイメージの共有です。
■20年を振り返って■
韻シスト
ーー結成当初、20年後とか考えてた?
BASI:「おもろいからずっとやっていきたい」と漠然とは思っていたけど、20年は……そんなに甘くないやろ……と。ただ、この楽しいことが続けばと思ってたし、その思いは今も変わらないですね。
サッコン:もちろん今のビジョンはなかったです。当時のヒップホップの流行り方と今では全然違ったし。そんな環境の中で自分の思った1番新しいイケてるヒップホップをやり、また自分でもヒップホップを聴き、さらに理解して自分に取り入れる……それを繰り返して「今」がある感じですね。
1998年に結成し、3年後の2001年には、RD RECORDSから1st mini album『ONE DAY』をリリース。その後、2003年にはEpic Records Japanにレーベルを変え、3rd mini album『Hereee we go』をリリースし、2004年には1st single「Localスピーカー」をリリースする。

韻シスト

ーー結成からあっという間にメジャーデビュー。この頃は?
BASI:生意気でノリノリ(笑)。
SHYOU:「俺たちが一番カッコ良い」と思ってました(笑)。
BASI:うーん、俺は怒られたら逆ギレしたり(苦笑)、一番分かってなかったですね。遅刻しても逆ギレしてみたり……怒られても分かってないというか。ホント、すいませんでした(苦笑)。
サッコン:海外のヒップホップアーティストのメチャクチャさが、カッコ良いと思ってたところがありましたね。De La Soulとか見てて。まぁ、単純にイキッてました(笑)。
BASI:それで、その都度少しずつ学んできたというか。いわゆる社会人経験のない中で、バンドが社会でバンドから学ぶことが全てでしたから。挨拶のこと、美しくしておく。どんどん皆がいい方向でチューニングされていったと思います。
BASI君の「美しくしておく」という言葉が、すごく印象的で、今の韻シストの根っこを感じたような気がした。
BASI:SHYOUは最初からちゃんとしてましたね。チューニングを合わせてくれてた。
SHYOU:「ちゃんとしていかなあかん」という気持ちはありました。メジャーレーベルからリリースすることで、たくさんの大人の方と関わるごとに学んでいったと思います。自分たちが音源を出すことにこれだけの人が関わってくれているんだなと。いろんなポイントで気付かされましたね。
その後、メンバーの脱退や自主レーベルからのリリース、いろんな苦労や努力と共に日々を積み重ねてきた。
韻シスト
■そして、唯一無二の5人が揃い韻シストにしか出せない音が出来た■
ーーTAKUが2006年に加入したんだよね。
TAKU:「普通にファン」というか“韻シスト・ヘッズ”だったので嬉しかったですね。サポートメンバーから正式加入の時も、みんなすごくフレンドリーに迎えてくれて。まぁ、優しくも怖い時もありましたけど(笑)。
ーーそして3年後、TAROW-ONEが2009年に正式加入して。
TAROW-ONE:前メンバーのクーマ(Dr)が脱退したいって話を聞いた時は、友達だったし辞めるなと話しました。ライブが決まってるのに出ないって言うし……。TAKUとは付き合い長かったし、突っ走ってる韻シストをここで止めるわけにはいかないと思って……。で、俺がサポートでという話になったんです。サポート自体はいろんなバンドで前からやっていて叩き方も任されてたけど、韻シストのサポートで入った時、スタジオ入ってリハをやりながら曲を覚えるんですけど、メンバーから「そんなに叩かんでええ、シンプルに」という言葉がすごく新鮮でしたね。引き算の美学というか。これはやっぱり長くやっているからこそ築き上げられて出来たものだなと。
ーーホント、偶然にして最高の出会いだよね?
BASI:僕ね、たまにこうやるんですよ……。
BASI君は、自分のほっぺをつねる仕草をした。これに、メンバー一同爆笑。
TAKU:本当にそんなことする人、BASIさんしか見たことないっスよ(笑)。一番覚えてるのは、LIFE ISGROOVE(※KenKenムッシュかまやつ・山岸竜之介のトリオ)のブルーノート東京のライブに参加した時。「バン・バン・バン」を皆で歌うことになり(※「バン・バン・バン」〜ムッシュかまやつが所属していた、ザ・スパイダースの名曲)、KenKenが「堺さん!」って、ステージにゲストを呼んで。みんな「堺さんって?」ってなってたら堺正章さんが登場して。「マチャアキやん!」って(笑)。ふとBASIさん見たら、ほっぺたをつねってて(笑)。
BASI:マチャアキ、神々しかったんですよ(笑)。これは現実か? みたいな。
TAKU:サッコンさん、思わず「マチャアキ!」って言ってましたからね(笑)。
BASI:長くやってきたから、マチャアキに会えたんやなぁって(笑)。
■20周年アニバーサリーイヤーの2018年■
ーーいよいよ、韻シストの更なる快進撃が始まって。
SHYOU:2011年にリリースしたアルバム『BIG FARM』が、メンバーにとっての大きなターニングポイントでしたね。
TAKU:その前の年、2010年にLIL FARMを設立(※メンバーとマネージャー Taco-Riceで設立した音楽事務所&レーベル)したのが一番大きな出来事でした。そこからの6年、リリースやライブ、そして新たな人との出会い、まさに種を蒔いて収穫を繰り返して『CLASSIX』に辿り着いたと思います。設立から本当に濃い活動をしてきましたね。
ラジオ局にいて『CLASSIX』リリース時の局内のザワつきは凄かった。各番組チームはこぞってOAし、リスナーの反応も大きかった。単純に長年の友人としても嬉しかった。翌年の『Another Day』のリリースでメディアのシーンにおいても、完全に韻シストが確立したと強く感じることが出来た。20周年を迎える2年程前からの状況のさらなる好転は、“偶然”ではなく積み重ねてきた上での“必然”である。
韻シスト
ーーそして、20周年のライヴはなんばhatchで3days!?
SHYOU:出演者発表、ポスターとか、いろんなものが揃ってきていよいよだという高まりがすごいですね。ほんまに3日間やんねんなと。
TAKU:フジファブリックとの共演も楽しみですね。Charaさん、PUSHIMさん、KenKen、いろんな人との出会いが事務所を作った2010年あたりから一気にすごくなって。影響も受け合ったし。あの頃からのグルーヴがたくさんの出会いを生んだと思います。山内総一郎(フジファブリック/Vo,Gt)と自分は学生時代からの友達で、それこそギターの腕を競い合ってました。つい先日打合せを2人でしたんですけど(※2日目のオープニングアクトとして“激論”〜山内総一郎✕TAKUのユニットが対談&ライヴ)、2人とも飲み過ぎてしまって、まさに激論でした(笑)。なので当日、お楽しみに。
サッコン:ずっとやってきた自主企画イベント『NeighborFood』のスペシャルという形で出来るのが嬉しいですね。20周年の重み、みんながフォロー・バックアップしてくれたことを再確認して、面白いパーティーが出来たらと思います。
BASI:20周年、特に後半の10年間、メンバーも話してたいろんな出会い、そして仕事がたくさんあって、音がゴゴゴッって聞こえてきそうな流れの1つの着地点かなと。おかんや家族が「どの日に行こかな」って話してくれたり、コンビニのポスターを見て「あ!」と思ったり。やっぱ嬉しいですね。ブルーノートとかも、もちろんすごかったけど、全てを超越した時間になりそうです。
韻シスト×中島ヒロト
とにかく楽しみである。ライヴの準備も進めながら韻シストは新しいアルバムにも着手しているそうだ。「ヒップホップでバンドって何?」という周りの目から始まり、今やヒップホップバンドのカッコ良さ素晴らしさを定着させた韻シスト。逆に、「ヒップホップバンドの認知がある中で、それに固執せず魅力を感じる新しいことに、今まで以上に挑戦していきたい。今まで出したことのないサウンド曲を届けていきたい」と締めくくってくれた。
6月のなんばhatch 3daysを前に、5月12日(土)午後7時から、アメリカ村三角公園前特設ステージにてフリーライヴを開催することが決定した。ちなみに当日、FM802ではこの模様を生中継する。ミナミの街で遊び、アーティストとして育った韻シストが、また、ミナミに新しい伝説を作る。是非、目撃してほしい。
取材・文=FM802 DJ中島ヒロト 撮影=森好弘

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