【インタビュー】フロム・アッシュズ
・トゥ・ニュー、ニューメタルの輝く
未来を背負って

米国ペンシルベニア州ランカスターで結成されたフロム・アッシュズ・トゥ・ニューは、バンドの中心人物でありラップとプログラミング担当のマット・ブランディベリーが描く理想をカタチにするために生まれたバンドだ。
順調に作品をリリースしキャリアを重ね始めた矢先に、3人ものメンバーが脱退する危機を経験するも、さらなる強力な新メンバーの加入を経て、2018年4月に彼らは2ndアルバム『ザ・フューチャー』を完成させた。ピンチをチャンスに変え、輝く未来を手にしたニューメタルの新旗手に話を聞いた。
──はじめに、バンドの歴史について教えていただけますか。
マット・ブランディベリー:フロム・アッシュズ・トゥ・ニューは2013年に始まった。俺はラップをするしギタリストでもありコンピューターで曲作りもする。その自分の曲をバンドでカタチにしたいって思ったのがきっかけなんだ。まずはシンガーが必要で、すぐに初代ヴォーカリストのクリスが加入してくれてフロム・アッシュズ・トゥ・ニューの歴史が始まった。
──あなたも十分に歌えるシンガーだと思いますよ。
マット・ブランディベリー:確かに歌えるかもしれないけど、自分では歌えない部分を補ってくれるシンガーを求めていたんだよ。ライブで歌うし叫ぶけど、俺はあくまでラッパーと思っている。だから、バンドとしてはメイン・ヴォーカリストが必要不可欠なんだ。
──ペンシルベニア州ランカスター出身ですが、今もそこが拠点ですか?
マット・ブランディベリー:いや、結成時のメンバーがランカスター出身だったから“拠点”になっているんだ。現在のメンバーは全員が違う場所に住んでいて、ドラマーのマット・マディロはフィラデルフィア州、新ヴォーカリストのダニーはニューヨーク州、ギタリストのランスはオハイオ州在住だ。ランカスターに住んでいるのは俺だけだよ。
──バンドが結成された年に最初の音源であるEP『フロム・アッシュズ・トゥ・ニュー』がリリースされましたが、結成直後にも関わらず、今のスタイルがすでに確立されていて驚きました。
マット・ブランディベリー:ありがとう。迅速に活動していきたいって思っていたから、すぐに音源を出したんだ。でも、こんなに早く音源の存在が世界中に拡がっていくとは思っていなかったよ。
──初めて曲を書いたのはいつ頃ですか?
マット・ブランディベリー:2004年くらいかな。ラップがバリバリに入った曲だった。ローカルバンドでギタリストとして活動し始めたのも2004年くらいなんだけど、そのバンドでは残念ながら曲作りに参加することができなかったんだ。

──どんなサウンドのバンドだったんですか?
マット・ブランディベリー:ラップが乗っかったKoRnみたいなサウンドだった。一言でいうと“Nu Metal”だね(笑)。
──現在もバンドのソングライティングはあなたが担当しているんですね。
マット・ブランディベリー:曲作りには全員が参加しているよ。今作の制作もデータのやりとりで済ませるんじゃなく、実際に同じ空間で顔を合わせてアイデアを出し合い、それからプロデューサーを交えて曲を発展させていったんだ。
──グラント・マクファーランドというプロデューサーは、どういう人ですか?
マット・ブランディベリー:グラントはフロム・アッシュズ・トゥ・ニューの全ての作品のプロデュースを担当してくれているんだけど、彼はスターウォーズの曲をメタルコア・カバーしているギャラクティック・エンパイアのドラマーでもあるんだ(笑)。彼ら、2作目のアルバムをリリースするらしいよ。
──彼はバンドとどのように関わるのですか?
マット・ブランディベリー:ファーストアルバム『デイ・ワン』のときは、ソングライティングにも積極的に参加してくれたけど、今作ではプロデュースと音作りに専念してくれたね。彼とは進みたい方向性が近くて、何かアドバイスをもらったりするというよりは、同じアイデアを共有できるプロデューサーなんだ。
──今作『ザ・フューチャー』というタイトルには、どのような想いが込められているのでしょうか。
マット・ブランディベリー:前作のタイトルは始まりを意味する『デイ・ワン』で、今回の『ザ・フューチャー』が表しているのは“進化の過程”なんだ。未来の自分は、今を生きる自分が創り出しているっていう意味が含まれている。
──タイトル曲の「ザ・フューチャー」の“俺達こそが未来なんだ”というパートを子供たちが歌っているのがいいですね。
マット・ブランディベリー:ありがとう。ある夏の日に9歳の息子が友達を連れてスタジオに遊びに来たときに閃いたんだ。「未来テーマの曲だし、目の前の7人の子供たちに歌ってもらおう」ってね。それがとてもうまくいって、そのままアルバムに収めることができた。いま振り返っても、とても楽しい思い出だよ。
──今作と前作との違いはなんだと思いますか。
マット・ブランディベリー:まず曲作りのプロセスにおいての成長かな。チームとしてソングライティングに関わったという部分は前作との違いだと思う。歌詞の部分ではダニーがとても協力的だった。彼は半年近く俺の家に泊まり込みで作品作りに尽力してくれたんだ。俺達の曲の根底に常にあるのは“リアルライフ”でね、普段感じていることやメンバー同士で話していることをストレートに曲にしたものこそが人に伝わると信じているんだ。体験、経験したことを曲にするというスタイルは前作から変わっていないよ。
──2017年には、ヴォーカリスト/ドラマー/ギタリストという3人の脱退劇がありましたね。
マット・ブランディベリー:インターネット上でオーディションを行ったんだけど100人以上が挑戦してくれた。俺はラッパーだし声が低いから、メイン・ヴォーカリストは高音が出る人材を探していたんだ。そこに現れたダニーはまさに適任だった。彼は技術面ではまだまだ粗削りだけど、良い高音が出るし才能を感じさせてくれた。その後もオーディションは続けたんだけど、俺はダニーのことが忘れられなくなったんだ。人間的にも魅力がある男だしね。
──メイン・ヴォーカリストだったクリスはなぜ脱退してしまったのですか?
マット・ブランディベリー:手短に話すと、クリスにはバンドを続けていこうという気持ちが希薄だった。元々、バンドを最優先するタイプの人間じゃなかったしね。だから、バンドを離れるのも時間の問題だったのかもしれない。最終的にダニーが加入してくれてバンドの状態はとても良くなった。彼はクリーンもスクリームも使い分けることができるんだ。過去の作品ではスクリーム・パートは俺が担当していたけど、今作ではダニーが叫んでくれている。さらにダニーは、ギターもドラムもプレイできるマルチ・プレイヤーで、さらに言うと、ダニーには日本の血が入っているんだよ。
──えっ、そうなんですか?
マット・ブランディベリー:うん、彼の父親方の祖父は日本人なんだ。残念ながら日本語は話せないみたいだけど。
──ダニーの歌い方は、スリー・デイズ・グレイスを彷彿とさせますね。
マット・ブランディベリー:その指摘は間違っていないね。アダム・ゴンティアが居た頃だよね。
──新ドラマーには、元トリヴィアムのマット・マディロが加入しましたが、どういう経緯で?
マット・ブランディベリー:彼はトリヴィアムの作品『サイレンス・イン・ザ・スノー』(2015年)に参加した後、バンドを脱退している。同時期にフロム・アッシュズ・トゥ・ニューもティムがバンドから一時的に離れていたんだ。そこでツアー・ドラマーとして彼を迎えた。そのツアー中にマット・マディロがよく冗談で「もしドラマーがバンドを脱退したら俺に連絡してくれ」って言っていたんだ。その後、ティムが実際に脱退したとき、電話をして誘ったら二つ返事で加入してくれた(笑)。
──今作の全てのドラム・パートはマット・マディロが叩いているんですね。
マット・ブランディベリー:そうだよ。彼は良い意味で“マシーン”のようで、ビートが乱れないしミスを犯さない素晴らしいドラマーなんだ。彼の正式加入は確実にバンドをアップグレードさせてくれた。
──リズムギターを担当していたブランデンも脱退しているんですか?新作に収録されている「ゴーン・フォーエヴァーと「フォーガッテン」には彼の名前がクレジットされていますが。
マット・ブランディベリー:彼は辞めたよ。バンドに残ると言っていたんだけど、急に姿を現さなくなった(笑)。彼の名前がクレジットされているのは、アルバム制作の初期の段階ではまだメンバーだったからだよ。一緒に曲作りをしていたのに突然来なくなったんだ。
──ベーシストが不在のままですが、今後新たに加入させる予定はあるんですか。
マット・ブランディベリー:ないね。居ない状態で3年間やれているから、今は必要としていないんだ。
──作『ザ・フューチャー』からの1stシングル「クレイジー」は、耳から離れない強力なサビのメロディが印象的ですね。
マット・ブランディベリー:この曲は色んなメッセージを含んでいるんだ。狂おしいほどに夢中になって、そこから逃れられなくなる人間や物事を歌詞にした楽曲で、例えばドラッグがそうだよね。やっているときは気持ちがいいかもしれない、でも最後には地獄が待っている。
──「ウェイク・アップ」はアルバム1曲目に相応しいアッパーな1曲で。
マット・ブランディベリー:この曲では、スマートフォンに依存し過ぎて肌を画像処理しなければ不安で仕方ない現代人に向けて「目を覚ませ!ありのままの自分自身を受け入れろ」というメッセージを発信しているんだ。
──「マイ・ネーム」も強力なフックを持った曲ですね。
マット・ブランディベリー:この曲は俺の心の中の葛藤を書いたディープなものなんだ。過去を振り返ったとき、自分の夢に対して懐疑的な意見を言う人が多かった。「マイ・ネーム」には、世界が俺の名前を認識するまで突き進む…例え

誰かに邪魔されたとしても自分の夢は簡単にあきらめないという強い想いを込めたんだ。
──8曲目「ノーウェア・トゥ・ラン」には、ニコラス・ファーロングとコリン・ブリテインという外部のソングライターが共作者として関わっていますね。ニコラスはパパ・ローチ、ブリンク 182、オール・タイム・ロウなどと仕事をし、コリンはジョン・フェルドマンの元で働いていましたが、彼らとの仕事はいかがでしたか?
マット・ブランディベリー:実はこれはレーベル側からの提案でね「この曲のためだけにLATCHに行くなんて…」って最初は正直乗り気じゃなかった。でも、彼らは俺達の望みを全て理解していて、結果的にとても自然な流れで満足のいく楽曲が生まれたんだよ。
──今作のジャケットは?
マット・ブランディベリー:今回のアートワークに用いたのは、最も強固な形と言われている三角形だ。アートワークの三角形は過去/現在/未来を結んでいて、それを包み込むように舞い上がる白煙は俺達(From Ashes To New=灰から新しいものを創造する)が未来へと向かっていることを表現しているんだ。前作『デイ・ワン』は、ある少年が破滅していく地球を別の新たな惑星から眺めている姿を描いたものだったけど、それは「過去の破壊と新たな未来の誕生」を表現したものだったんだよ。
──10代の頃は、どのような音楽を聞いていたのですか?
マット・ブランディベリー:一番影響を受けたのはエミネムだね。当時はヒップホップばかり聴いていた。2パック、DMX、ノトーリアス・B.I.G.、ジャ・ルールとかね。ロックは、リンキン・パークをきっかけに聴き始めて、最も強く影響を受けたロックバンドは、ブレイキング・ベンジャミンだと思う。
──最近聴いているアーティストは?
マット・ブランディベリー:ラッパーのNFが発表したアルバム『Perception』は最近のお気に入りだね。
──2016年には<ONE THOUSAND MILES TOUR 2016>に出演するため初来日を果たしていますが、東京ではONE OK ROCK、オール・タイム・ロウ、パリスと同じステージに立っていますね。
マット・ブランディベリー:全てがよい思い出だったよ(笑)。品川のレストランでとてつもなく辛いソース・チキンを汗だくで食べたことは今でも思い出深いなぁ(笑)。東京でショーを2日間やることができたのはとても幸せな経験だった。それ以来「アメリカ以外の都市で一番好きな場所は?」と聞かれたら「間違いなく東京だ」って答えているよ。また近いうちに日本に行けたらいいな。
取材・文:澤田修(ZIP-FM REAL ROCKS)

編集:BARKS編集部

写真:Graham Fielder

フロム・アッシュズ・トゥ・ニュー『ザ
・フューチャー』

【通常盤CD】GQCS-90567 ¥2,300+税

※日本語解説書封入/歌詞対訳付き

1.ウェイク・アップ

2.クレイジー

3.マイ・ネーム

4.ゴーン・フォーエヴァー

5.ブロークン

6.フォーガッテン

7.エナミー

8.ノーウェア・トゥ・ラン

9.レット・ゴー

10.オン・マイ・オウン

11.ザ・フューチャー
【メンバー】

マット・ブランディベリー(ヴォーカル/キーボード/プログラミング)

ダニー・ケイス(ヴォーカル)

ランス・ドゥードル(ギター/ヴォーカル)

マット・マディロ(ドラムス/ヴォーカル)

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