特別展『人体―神秘への挑戦―』レポ
ート タモリも驚愕した、人体研究の
歴史と最新知見 超リアルな人体模型
や実物標本も

NHK総合で昨年9月から放送中のNHKスペシャル『人体 神秘の巨大ネットワーク』。タモリと山中伸弥のダブルMCでも話題のこの番組と連動した特別展『人体―神秘への挑戦―』が、2018年3月13日(火)〜6月17日(日)まで東京・上野の国立科学博物館で開催されている。人体研究の歴史と最新知見を最先端の映像技術などを用いて解説する本展。開幕前日に行われたプレスプレビューに参加し、タモリも驚いた人体の神秘をひと足早く鑑賞してきた。
NHKの特別番組で話題沸騰中の“人体の神秘”を鑑賞する
“人体の神秘”は私たちにとって永遠のテーマであり、未だ解明できない謎も数多くある。現在NHKで放送中の『人体 神秘の巨大ネットワーク』では、臓器や細胞が脳を介さずに「メッセージ物質」を送りあい、独自にコミュニケーションをしているという人体研究の最新知見を紹介。高精細CGなどを用いた映像で詳しく解説している。
本展では、テレビ番組で使われたCGや小道具なども交え、約140点の展示を通じて人体研究の歴史と最新知見を追っていく。第1章「人体理解へのプロローグ」、第2章「現代の人体理解とその歴史」、第3章「人体理解の将来に向けて」の3章で構成。なかでも第2章にもっとも大きなスペースが割かれ、循環器系と泌尿器系、神経系など、さらに5つのコーナーに分かれている。
『人体 神秘への挑戦』会場入口
プレスプレビューには、総合監修を務めた国立科学博物館 副館長兼 人類研究部長の篠田謙一博士、名誉研究員の山田 格博士ら、本展の監修に携わった5名の研究員が出席。代表して挨拶に立った篠田博士は、本展のコンセプトを解説。人体研究の歴史と今を知った上で、NHKの番組で紹介された最先端の説までを理解できる展示構成にしたと述べ、「人間がどうやって自分たちを理解しようと努力したのかを振り返りながら、将来自分たちがどのように人体を理解していくことになるかを考えるきっかけにしてほしい」と語った。
プレスプレビューに登壇した篠田謙一博士
ルネサンス期の天才が先駆けとなった近代解剖学の始まり
古代から行われてきた人体研究は、中世ヨーロッパで起こった解剖学の進歩によって格段に発展した。第1章「人体理解へのプロローグ」では、まずルネサンス期の中世イタリアにおいて近代解剖学のキーパーソンとなった2人の天才を紹介している。
最初に紹介されているのは、言わずと知れた偉人、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1453-1519)だ。幅広い学問に精通したダ・ヴィンチは、《アンギアーリの戦い》の中の戦士を描くために人体解剖を初めて行い、それをきっかけに人体構造の研究にのめりこんだという。その記録は後に『解剖手稿』としてまとめられ、近代解剖学の先駆けになった。
レオナルド・ダ・ヴィンチの『解剖手稿』より《腕神経叢》(画面右)
もうひとりは、ダ・ヴィンチと同じくルネサンス期のイタリアで活躍したアンドレアス・ヴェサリウス(1514-1564)。ベルギー出身のヴェサリウスはローマ帝国時代に書かれたガレノスの書で古典的な解剖学を学び、後にパドヴァ大学の教授に就任。1543年に解剖図譜『人体の構造に関する七章(通称・ファブリカ)』を残すなど、近代解剖学の先駆者と呼ばれた。
『ファブリカ』(De human corporis fabrica) アンドレアス・ヴェサリウス 1543年 広島経済大学
まるで『進撃の巨人』!? 超リアルな人体模型
続いて見られるのは、解剖学の教育に使われた人体模型である。ここでは19世紀に造られた蝋製模型の「ワックスモデル」と紙粘土でできた「キンストレーキ」が展示されている。このうち、男女のキンストレーキは19世紀前半のフランスで造られた八頭身の全身模型。骨格や筋肉が忠実に再現されつつ、わかりやすいよう静脈は青、動脈は赤に色付けされている。
(右)キンストレーキ(男性) 19世紀 金沢大学医学部記念館 (左)キンストレーキ(女性) 19世紀 福井市立郷土歴史博物館 ※3月13日(火)〜5月17日(木)までの期間限定展示
人体模型は明治の日本にも輸入されたが、国内に現存する当時の模型はこの2体を含めた4体のみ。現在の理科の学習に使われる人体模型よりも“人体らしさ”が濃く描写された模型は、『進撃の巨人』に登場する巨人にも通じるような生々しさがある。
キンストレーキ(女性) 部分
人体の実物標本も見られる! 比較展示で人体の構造と役割を知る
第2章「現代の人体理解とその歴史」では、ダ・ヴィンチの解剖手稿を導入として人体研究の進歩とその成果を「循環器系と泌尿器系」「神経系」「消化器系と呼吸器系」「運動器系」「人体の発生と成長」という順にたどっていく。その中には先駆者たちの功績の紹介と、顕微鏡など当時の研究道具も展示されていて面白い。
指で掴めるほど小さな「レーウェンフックの単式顕微鏡」

「脳の神経線維模型」 スイス・ブシ社製 1893-1910年 ブールハーフェ博物館所蔵 (c)Rijksmuseum Boerhaave,Leiden V25313

それぞれのコーナーでは、人の器官の構造と役割を理解できるよう、人体と各分類の動物の標本を比較展示。心臓、腎臓、脳、腹部消化器系が並べられている。たとえば心臓ならば、シーラカンス、オオサンショウウオ、アライグマ、アジアゾウなどの標本が展示され、体内の血液量、心室と心房の数が視覚的にわかる。
第1章「人体理解へのプロローグ」の比較展示風景
なお、人体から摘出した実物標本には仕切りが設けられるなど配慮がなされ、希望者だけが見られる仕組みになっている。
巨大な「キリンの胃」も展示
体内のコミュニケーションがシンフォニーを奏でる
第2章の後には、テレビ番組のスタジオ収録で使われた小物が展示されている。そのなかには、ブロックで組み立てられたタモリの人体模型もあった。
ブロック製のタモリ
そして続く「ネットワークシンフォニー」では、宇宙のような暗闇空間を体内に見立て、メッセージ物質が伝達される様子を音と光で表現。「酸素が欲しい」「カルシウムが足りない」といった体内のやり取りがシンフォニーを奏でる。こんな神秘的なコミュニケーションが自分の体内でも起こっていると思うと、「人体の中には宇宙がある」なんてロマンチックな言葉も確かにその通りだと感じられてくる。
神秘的な「ネットワークシンフォニー」
ゲノム解析などの最先端科学が人体研究の未来を変える
第3章「人体理解の将来に向けて」では、DNA分析やゲノム解析といった人体研究の最先端に関する展示がある。ゲノムとは、ひとつの生物が持つすべての遺伝情報の総体。すなわち、各生物が持つ生命の設計図のようなものだ。
第2章と第3章の間では、彩色された臓器の顕微鏡画像が見られる
ここで注目すべきは、本展が初公開となる縄文人女性の復顔像だ。北海道の礼文島から出土した3,800年前の頭蓋骨からDNAを採取し、最新技術によって古代人のヒトゲノムを解析。それをもとにこれまで骨格からでしか想像できなかった縄文人の顔がリアルに復元されている。その表情は現代の日本人と比べても大きな相違はないが、ゲノム分析を通じて精度の高い復元が可能になることは、いまだ未解明の謎を解く上で人類研究の未来を指し示すものといえよう。
縄文人女性の復顔相
本展の音声ガイドナビゲーダーは、タレントの小島瑠璃子が担当。展覧会グッズも特別パッケージの「かっぱえびせん」やトートバッグ、クリアファイルをはじめ、かわいらしくユーモアたっぷりなものがそろっている。
展覧会オリジナルグッズも多数
我々にとってもっとも身近な存在でありながら、知らない部分も数多い人体。「人間とは何か?」などと考えてしまうとやや難解に感じるが、この特別展を訪れてみれば数多くの発見ができるはずだ。きっと「人の体の中って面白い」「もうちょっと自分の体を大切にしよう」などと、訪れた人それぞれが人体について考える良い機会になるのではないだろうか。

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