【インタビュー】ギャロ、残酷さを突
き詰めた歌詞も全部ラブソング

ヴィジュアル系バンド、ギャロが3月14日にシングル「KERBEROS」をリリースした。
2009年より活動しているギャロはヴィジュアル系バンドの中でも異端と呼ばれることの多いバンドで、アーティスト写真を見ての通り独特のスタイルで活動している。なお、今回のシングルリリースは約1年半振り。ギャロよりこのシングルに込めた思いを語ったオフィシャルインタビューが届いたのでここに掲載する。
  ◆  ◆  ◆
――「KERBEROS」は、どんな構想のもとに作られたシングルでしょう?
ジョジョ(Vo):これは常日頃考えていることですけど、リリースする度に前の作品を超えたいという想いがあるんです。楽曲もそうだし、ヴィジュアル面もそうだし、全ての面で前作を超える作品を作りたい。今回もスタートはそこでしたね。だから“こういう方向性でいこう”ということは決めずに、それぞれが曲を持ち寄ってその中から3曲選びました。
▲ジョジョ(Vo)
カエデ(Dr):ただ、最初は各々曲作りをしていたんですけど、動き出したのが早かったのはジョジョでしたね。リード曲の「KERBEROS」はジョジョとワジョウの共作になって、そこでジョジョの中にはシングルに対して思うところがあったんだと思います。
ワジョウ(G):「KERBEROS」を作った時はジョジョが僕の家に来て、クラシカル・ロックをモチーフにした曲を作りたいと言ったんです。つまり、その時点でジョジョの中にはヴィジョンがあったんですよね。それでジョジョから曲のイメージをいろいろ聞いて、クラシック・ロックを聴いたりもしつつ「KERBEROS」を形にしていきました。
ジョジョ:「KERBEROS」の基盤になっているものは聴く人が聴けばすぐに分かると思うけど、我々がこういう音楽をやっても絶対に誰かと同じようなものにはならないという自信があったんです。自分のメロディーもそうだし、ギャロだからできることを詰め込むことができるし、歌詞の世界観もそうだし。そこを活かして、すごく良いところに落とし込めたことを感じています。
――同感です。「KERBEROS」の歌詞についても話していただけますか。
ジョジョ:今回は、僕のキャリアの中で一番残酷な歌詞にしたいなというのがスタートとしてあったんです。いつも通り残酷なものときれいなものの対比を活かしつつ、残酷さを突き詰めてみようと。でも、結果きれいに収まっちゃったな…みたいな。
――えっ? ……そうですか?
ジョジョ:僕以外の人間が見たら、すごく凄惨な歌詞だなと思うかもしれないけど、自分的にはもうちょっと書けたのに…というのがあるんです。この曲で初めてギャロを知った人とかは、何かの比喩として“人食”を使っているのかなと思うかもしれないけど、そうではなくて。僕の中にあるイメージを、ストレートに描きました。人食をテーマにした歌詞は音に乗った時の攻撃力が高いと思うけど、「KERBEROS」は普通に読み物として見てもクオリティーは高いかなと思う。そういう意味では、納得はしています。
――以前ジョジョさんと話をした時に、陰惨な歌詞であれ、残酷な歌詞であれ、愛を歌っていると話されていました。その辺りは、どうでしょう?
ジョジョ:「KERBEROS」も、愛はあります。基本はやっぱり愛情かなという。僕はギャロが始まって3枚目の音源を出した時から、もう全部ラブソングだと思って書いているので。
▲ノブ(G)
――リスナーの方には、そこをぜひ分かって欲しいと思います。では、「KERBEROS」のレコーディングはいかがでしたか?
カエデ:ドラムはデモの段階で、高速ツーバスだったり、メタリックなフィルだったりが希望として出ていて。そういうプレイは今までしたことがなかったし、そういうドラムを叩くことに最初は抵抗があった。でも、曲調としてドラムはこうあるべきだということは分かるので、みんなを信頼して“俺がこういうドラムを叩いた結果、どうなっても知らんぞ”くらいの気持ちで録りに臨みました。技術的な面では叩けるけど、これを叩いた時に自分っぽくなるのかなという疑問を感じる部分もあったんですよ。でも、録ったテイクを聴いて、自分らしさは出ているし、良いプレイができたんじゃないかなと思いました。
アンディ(B):「KERBEROS」はデモを聴いた時に、こういうタイプの曲はドラムとギターとボーカルがちゃんとしていれば成立するからベースはいいかなと思いました(笑)。だから、シンプルなベースになっていて特に話すことはないです。
――そんなことはないです。Bメロやサビなどでは動きのあるベースを弾かれていますし、高速ビートの中でウネッていることもポイントです。
アンディ:動くところは動こうと思ってフレーズを考えたけど、ウネりということは意識しなかったですね。だから、それは自然な結果です。というか、正直なところ俺は、こういう音楽は通ってきていないんですよ。当然耳にしたことはあるけど、自分でやったことはなかった。だから、俺のアプローチは正しいのか、間違っているのかがよく分からないんです。新しいことに挑戦するというところで刺激を受けたし、弾くのが楽しい曲ではありますけど。そういう曲だから、今後のライブで演奏していく中で見えてくるものがきっとあると思うんですよ。なので、それを楽しみにしています。
ノヴ:僕は「KERBEROS」のデモを聴いて、“来たっ!”と思いました。僕は元々X JAPANのHIDEさんが好きでギターを始めたので、こういう曲は好きなんです。それに、メタル系のコピーもいっぱいしていたし。でもそういう路線でオリジナルをやるのは初めてだったので、あの時代を思い出しながらギターのアプローチを考えていきました。ギャロではワジョウさんと僕の役割分担や棲み分けみたいなものがあまり決まっていないんです。僕が自分のパートを考えてワジョウさんに投げたら、それに対してワジョウさんがギターをつけて、それを聴いてアレンジしてまた投げて…というやり取りを重ねていく。そういう構築の仕方なので、この曲も1人がバッキングに徹して、もう1人がリードという形ではなくて。2人のギターが有機的に作用する形になっています。
▲ワジョウ(G)
ワジョウ:カエデやアンディと同じように、僕もこの手の音楽はちゃんと通ってはいないんです。だから相当悩みながらギターを考えました。メタルに寄せるんじゃなくて、自分らしさを出したいという気持ちがあったんですよね。だから、僕のやり過ぎるくらいやってしまってメンバーに煙たがれるところとか、ギターを重ねずに1本で通したがるところとかは今回も活かしました(笑)。それに、メタリックな曲だけど、シングルコイルPU(註:シャープな音が出るタイプ)のギターを使って音圧よりもエッジを出すようにしたというのもあって。結果的に面白い感じになっているんじゃないかなと思います。
ジョジョ:僕もメタルは通っていないんですよ。たぶんメンバーの中でも一番通ってないと思う。僕はパンクスだったので、メタルは敵視していたんです。“こういうハイトーンって、なんなの?”と思っていたし、楽器にしても“そこまでのテクニックとか必要ないだろう”と思っていた。でもバンドを長くやってくる中で、やったことがないのに批判するのはおかしいよなという気持ちになってきて。それに、レジェンドと呼ばれている人達と会う機会とかもあって、そうすると先輩達でさえいろんな悩みを抱えて音楽をやっていたりするんですよね。それを知って、一層やらずにディスるのは違うなと思うようになったんです。それに今後戦っていくうえで自分の引き出しを増やすのは良いかなと思って、今回新しいことに挑戦しました。でも、ハイトーンも含めてそんなに苦労することもなく、別にいけるじゃん…みたいな感じでしたね。「KERBEROS」は出だしで一番低い音域で歌っていて、最後にすごいハイトーンが出てくるという流れで、1曲の中での振り幅がすごく広いんですよ。そうやって下から上まで出ているというのが、今の自分の中では美しいものなんです。だから、これはこれで良いかなと思っています。
▲アンディ(B)
――「KERBEROS」は、新たなギャロの魅力を味わえる1曲になりましたね。カップリングについても話していただけますか。
カエデ:2曲目の「蛔蟲」も、今までのギャロにはあまりなかったテイストの曲です。この曲は方向性のテーマみたいなものをジョジョから貰っていて、そのモチーフになる世界観みたいなものが自分の中にあって。そこに自分らしさも入れて曲を作ったらどうなるんだろうと思って、作曲に取り掛かりました。ジョジョから言われたテーマというのは、僕の中では退廃感があって、モノクロームなイメージだったんですね。そこから広げていって形にしました。
ジョジョ:「蛔蟲」の歌詞はすごく平たく言うと、ストーカー、変質者を描いています。今回の3曲を並べると歌詞も歌も一番“らしい”かなという気がしますね。“好きでしょ、こういうの”みたいな(笑)。僕のベーシックになっている歌い方はクラシカルなヴィジュアル系に通じるところがあって、この曲はそれを押し出した。だから“分かりやすいジョジョ感”みたいな歌になっていると思います。
アンディ:もう1曲の「神鯨型潜水艦・黒鯨」は、元々は僕とジョジョが前にやっていたバンドの曲です。ジョジョさんがあの曲をやりたということで、持ってきました。今回録るにあたって、ちょっとリ・アレンジしましたけど。昔のバージョンを聴いたら、いくつか手直ししたいところが出てきたんですよ。ただ、パソコンが無くなってしまっていたので、iPhoneでガレージバンド(註:作曲用ソフト)を使ってアレンジし直しました(笑)。
ジョジョ:それに、歌詞も書き替えました。今回の3曲の中で、この曲の歌詞が一番時間が掛かりましたね。何年か前に出した「INCUBUS」(2015年5月27日リリース)というシングルに入ってる「神風型駆逐艦・闇風」という曲も前にやっていたバンドがルーツになっている曲で、ギャロのシングルに入れるにあたって歌詞を書き替えたんです。アンディと前にやっていたバンドは海賊がモチーフで、今ここでパイレーツ感を出すのもな…というのがあったから。それで、大日本帝国海軍と海賊と、ホラーを混ぜ込んで歌詞を書いたんです。この曲もその流れを汲んで歌詞を書くことにして、元々鯨について歌った曲だったので、“鯨=潜水艦”だなと思って。潜水艦の中にいる乗務員が亡霊とかゾンビとかだったらギャロのイメージに合うなというところから入っていって書き上げました。
▲カエデ(Dr)
――今回のシングルは、必聴といえる3曲が揃いましたね。「KERBEROS」のリリースに加えて、3月から4月にかけて行われるギャロの主宰ツアー<GALLOLUDE No1>も楽しみです。
カエデ:<GALLOLUDE No1>は黒百合と影というバンドとダブル・ヘッドライナーという形で、あとは僕のこだわりとして、なるべく地元のバンドと競演するようにしました。東京のバンドだけで行く良さもあるよ。そこには遠征するお客さんも居てくれて、もちろんそれは嬉しいことだけど、蓋を開けたら「だったら、東京でやれよ」という結果に陥ることもあるんですよ。もちろん力不足もあるけど。それに、場所によってはシーンが盛り上がっていないという話も聞くので、活性化したいという想いもあって。それで採算とか興業の盛り上がりとかを一旦考えず、こういうツアーだったら一番良いのにね…ということを軸にしてやることにしました。必ず良いツアーになると思うので、期待していて欲しいです。
アンディ:今度の主宰ツアーは行ったことのない場所にも行ったりするので、それが楽しみだなというのがまずあって。あとは、時期的に春ということで、みんな外に出たい気持ちになっている頃だと思うんですよ。なので、そういう欲求を抑えずにライブハウスに来てもらって、みんなで一緒に楽しい時間を過ごせると良いなと思います。
ワジョウ:ツアーは普通に楽しみです。ツアーが好きだし、かつ今回はコンセプチュアルな感じなので、より楽しみなところがあって。毎回、良いライブができる予感があるんですよね。だから、今は早くツアーに出たいという気持ちでいっぱいです。
ノヴ:リリース後のツアーで「KERBEROS」は良い曲が揃っているので、それを届けにいくことを楽しみにしています。また新しいギャロを見せることになるので、ぜひそれを味わって欲しいですね。来てくれた人達の期待を裏切らない自信もあります。
ジョジョ:地元のバンドと対バンするのも楽しみですけど、黒百合と影と一緒に廻れるのが本当に楽しみです。彼らは今年の8月から活動休止することが決まっていて、一緒に廻れるのは恐らく今回が最後になると思うから。黒百合と影のメンバーとは仲が良いけど、全員殺しにいく気持ちで廻りたいと思っています。あとは、ツアータイトルの“GALLOLUDE”は“PRELUDE=序曲”とかけているんですよ。それを頭に入れておいてもらって、何の序曲だったのかが明らかになる時を楽しみにしていて欲しいです。
取材・文◎村上孝之
「KERBEROS」
平成30年03月14日発売

価格:1,500円(税込)
収録曲

壱.KERBEROS

弐.蛔蟲

参.神鯨型潜水艦・黒鯨
発売元:ヱンペラーレコード

販売元:ONG DISTRIBUTION

<ギャロ主催公演『GALLOLUDE N°1』黒
百合と影 対決企画>

平成30年03月19日(月)

名古屋ホリデーネクスト
平成30年03月20日(火)

大阪ルイード
平成30年03月22日(木)

岡山イマージュ
平成30年03月23日(金)

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平成30年04月08日(日)

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