清川あさみ × 最果タヒ『千年後の百
人一首』愛の縫い目はここ
清川あさみ × 最果タヒ『千年後の百人
一首』
千年を超えていくことと、一年を超えることは、きっと確実につながっている。『千年後の百人一首』は、この年末年始にぴったりのように思います。昔のひとが詠んだ言葉は、その時その瞬間は、なによりも新しい「今」の言葉だった。そのときの新鮮さをなぞるように、訳したいと思いました。ぜひ。 pic.twitter.com/awXfA30mEo
— 最果タヒ(Tahi Saihate) (@tt_ss) 2017年12月29日
千年前の言葉を「今」の言葉として語り
直す
その理由のひとつには、単純に、古典離れということがあげられるだろう。言葉は常に変わり続けるものなので、古い言葉はどこかのタイミングでアップデートしなければどんどん古くなってしまう。そしてなぜか、海外文学が定期的にあたらしく翻訳され直すのに対して、日本の古典はあまり新訳がなされない。その結果、いわゆる古文的なものには、古くて堅苦しいイメージがつきまとい、親しみやすさのハードルがあがっていく。
そうしたイメージを完全にくつがえすのが、『千年後の百人一首』だ。
本書は、単に百人一首の意味を説明するのではなく、現代のことばと絵であたらしく語り直し、ある意味ではまったくあたらしい百人一首を作り上げた本だと言っていい。
たとえば、こんな和歌がある。
おもひわび さても命は あるものを 憂きに耐へぬは 涙なりけり (道因法師 千載集)
細い糸のような私の命に絡まるように、私の涙が列を作って、つらつらと流れていく。 わたし、永遠に生きていくつもりなのでしょうか、あなたが、わたしを愛さなくても。
これ、実は『ゴロウ・デラックス』(12月14日)にて、稲垣吾郎が「共感」した作品。
番組内では稲垣吾郎がこの詩を朗読し、「切ないなあ」「ロマンチックだなあ」とため息をもらし、「ずっと引きずってる恋ってあるよね」と共感した。さらに、この詩に添えられた清川あさみの絵を見て「このトンネルの向こうに自分の過去が思い浮かんだ」と絶賛。稲垣吾郎の心の琴線に触れることになった。
本書は、最果タヒが新訳した一つひとつの詩と、清川あさみの絵がセットで構成されている。つまり詩も絵も100個ある。そして巻末には原文と解説も収録。
百人一首の10番、「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」という蝉丸の歌。発売中の『千年後の百人一首』(清川あさみ+最果タヒ)では、↓の画像のような絵と言葉に生まれ変わりました。百首、こんなふうに向き合って作りました✨ pic.twitter.com/XXhccBceTI
— 最果タヒ(Tahi Saihate) (@tt_ss) 2017年11月30日
ロマンティックあげるよ
丸谷才一『新々百人一首』によれば、「髪」は性的魅力そのものを表すという。その一文字に、語り手が抱える愛についての様々な情報や感情が、ぎゅーっと詰まっているわけだ。
そうして濃縮された愛の言葉たちを、現代詩と現代アートで解きほぐし、文字通り「千年後」の(つまり今の)言葉としてよみがえらせたのが本書だということになる。コンセプトからしてすでに超ロマンチック。
最果タヒは、ブログにこう書いている。
わたしは、その人が生まれて、伝えたいと思って、言葉を一つ一つ手にした瞬間、そのきらめきに触れた上で言葉にしたかった。一般的な概念としての愛やかなしみではなくて、その人が見つけた、その人だけの愛やかなしみを、そのときの新しさのまま言葉にするしか、方法はないと思った。 (最果タヒblog 2017.11.1)
(…)言葉を尽くしても、言葉は燃えてはいかなかった、 あなたの体を焦がしてみたいと、 じりじりと赤色が今も私の喉でゆらいでいます。 どんな歌を贈っても、歌は燃えない、私の指も息も燃えない、 私を、焼き切るこの愛しさを、あなたはまだ、知らずにいる。 (第51首より)
ここにあるのは、時空を超えた愛の縫い目ーー。
先ほどTBS系列「王様のブランチ」内BOOK ランキングにて清川あさみ+最果タヒ『千年後の百人一首』が10位にランクインしました!(ジュンク堂書店池袋本店調べ)
お買い上げくださった皆さま、ありがとうございます。
まだご覧になっていない方、週末の読書に「百人一首」はいかがでしょうか? pic.twitter.com/o7dkSFwKkw— リトルモアWEB (@LittleMoreWEB) 2017年12月16日
書籍情報
著者:清川あさみ、最果タヒ
定価:1,600円(税別)
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Text_Sotaro Yamada
清川あさみ × 最果タヒ『千年後の百人一首』愛の縫い目はここはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
ミーティア
「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。